南会津町「大博多山」登山 2021年 晩夏

観光鉄道「山の只見線」”の「会津百名山」登山。JR只見線を利用し南会津町の「久川ふれあい広場キャンプ場」入りして3日目の今日は、(自称)“古町三座”の第一峰で、一等三角点を持つ「大博多山」(1,314.8m)に登った。

 

「大博多山」は南会津町の旧伊南村地域古町地区、伊南川左岸の青柳にあり、今回“古町三座”登山のベースキャンプにした「久川ふれあい広場キャンプ場」から、登山口までは4㎞ほど離れている。


“古町三座”とは、私が付けた名だ。只見線とゆかりのある旧伊南村古町地区が、「会津百名山」三座のほぼ中心になり、ここを起点に登山をすることが“観光鉄道「山の只見線」”の有力な山岳アクティビティのコンテンツになるのではないかと思い、考え付いた。

三座とは、一等三角点を持つ「大博多山」、古町地区を見下ろすようにそびえる「尾白山」、そして伝説山・修験道の山「唐倉山」。

 


「大博多山」は「会津百名山」の第45座で、「会津百名山ガイダンス」(歴史春秋社)では以下の見出し文で紹介されている。

大博多山 <だいはたやま> 1315メートル
南会津郡南郷村と伊南村の村境界にあり、只見川の源流、伊南川左岸の第三紀層からなる山塊の主峰である。北に延びる主稜線上には辰巳山があり、北東に小牧岳、東に大窪山、南東に関の山、南に向う稜線上には丸山が位置している。[登山難易度:上級]*出処:「会津百名山ガイダンス」(歴史春秋社)p76


また、「新編會津風土記」(1809(文化6)年編纂完了)の古町組下十三箇村・青柳村の項に、「大博多山」を指すと思われる“豪はた山”の記述がある。*出処:新編會津風土記 巻之四十四「陸奥國會津郡之十六 古町組 下十三箇村」(国立国会図書館デジタルライブラリ「大日本地誌体系 第31巻」p237-238 URL:https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1179202)

古町組下十三箇村
●青柳村 ○山川
○山川 ○豪はた山 村西一里餘にあり、頂まで三十町 雜木多し 



南会津町は只見線沿線自治体ではない。只見線“最寄り”となる只見駅からも、伊南川を沿うと20kmほどに町境がある。南会津町は、中心地である旧田島町地域を走る会津鉄道(旧国鉄会津線)沿線との言われ方が一般的だ。 しかし、かつて只見駅から南会津町の旧伊南村の古町まで、鉄道を敷設する計画があったことを考えると、只見線と南会津町は無縁ではない。

また、只見駅と会津田島駅(会津鉄道)を結んでいるワゴン車(自然首都・只見号)を利用すれば、輪行と組み合わせれば、“古町三座”に無理なく登れると思い、今回の登山計画を立てた。


天気予報は晴れということで、一等三角点峰からの眺望を期待し、「久川ふれあい広場キャンプ場」から自転車で「大博多山」登山口に向かった。

*参考:

・NHK:新日本風土記「動画で見るニッポンみちしる~JR只見線」 

・産経新聞:「【美しきにっぽん】幾山河 川霧を越えてゆく JR只見線」(2019年7月3日)

・福島県 生活環境部 只見線再開準備室:「只見線の復旧・復興に関する取り組みについて

・東日本旅客鉄道株式会社:「只見線について」(PDF) (2013年5月22日)/「只見線(会津川口~只見間)の鉄道復旧に関する基本合意書及び覚書」の締結について(PDF)(2017年6月19日)

・拙著:「次はいつ乗る?只見線」カテゴリ ー只見線沿線の“山”(登山/トレッキング)ー / ー只見線の夏


 


 

 

今朝、「久川ふれあい広場キャンプ場」上空は、天気予報通り雨は上がっていたが、鼠色の雲が未だ空に残っていた。

 

ただ、陽が昇ってくるとともに、青空が広くなってきた。

  

朝食は、米を炊いた。鍋で炊くのは初めてで、火加減が不安だったが、まずまず“ふっくら”とした炊き上げりになった。ネットで調べたところ『米を水に1時間ほど浸け込めば、微妙な火加減調整をしなくても、おいしく炊き上がる』と書いてあったが、本当にその通りになった。

 

朝食は、「南郷トマト」と炒り卵、そして鍋底にできたオコゲにした。

 

 

 

 

9:03、「久川ふれあい広場キャンプ場」を出発。すでに陽射しは強く、今日の登山は、昨夜の雨の影響で高温多湿となるだろうと思った。

 

  

県道に出て、滝倉川橋を渡り、林道に入る。この林道は久川を挟んでキャンプ場の反対側にあり、橋があればショートカットできる。 *あとで分かったが、久川には古いコンクリート製の橋があり、道になってはいなかったが、キャンプ場からショートカットできる空間が刈り払いされていた。 

 

県道と林道の交差点の角には、「大博多山登山口」と書かれた案内板があった。この案内板のデザインは、この山中の登山道に設置されていたものと同じだった。

 

  

しばらく舗装された林道を進むと、木立が両側に茂り、チェーンが外されたゲートが現れた。

 

ゲートの向こう側には、大山祗神社の社があった。自転車を降りて参拝。登山の無事を祈った。

 

 

この社の先から、人気が無くなり、林道に山の斜面が迫っている場所が見られたため、熊鈴を身に着け、音楽を流す事にした。

 

 

 

 

林道は久川に沿い、途中から未舗装に変わった。

 

 

さらに林道を進むと、前方、木々の間に「大博多山」の前衛峰(1,062m)の頂が見えた。

 

 

 

 

9:21、カーブミラーが現れ、林道の分岐点に到着。左にのびる民有林林道横向線では刈り払い機のエンジン音が聞こえた。里山に人の手が加えられている現状を知り、熊などの野生動物との共存が未だ続いているのだろうと思った。

 

標杭と案内板に従い直進。

  

 

久川が分岐し横向沢と縦向沢になり、「大博多山」登山口に続く林道は縦向沢沿いに延びていた。道は洗堀された荒れた場所があり一部凹凸が激しかったが、途中からまた舗装になり、1kmほど続いた。

 

舗装から未舗装に再び変わり、傾斜が増した林道を、自転車押しながら進むと、前方に広い空間が現れた。

 

 

 

 

 

  

9:40、「大博多山」登山口に到着。キャンプ場から37分掛かった。

 

自転車を登山者カードを書こうと思い、ポストを開けた。中に入っていた鉛筆を手に取ると芯がぐらついていて、カードに書き出すと、間もなく芯が折れてしまった。カードを書かずに、登山する事になった。

  

南会津町がホームページに掲載している地図を見て、改めて登山ルートを確認。

 

 

9:48、「大博多山」登山を開始。幅広く刈り払いされた、緩やかな上りの登山道を、左に縦向沢を見ながら足を進めた。

 

まもなく、縦向沢に向かう涸れ沢を越えた。



 

 

つづいて、倒れた標杭が見え、登山道は直角に曲がり取付になった。

下調べで、“尾根まで直登が続く”と知ってはいたが、どれだけの傾斜で、足元どうなっているかまでは、実際登ってみないと分からないと思っていた。取付から斜面を見上げ、気合を入れて登坂を始めた。

 

昨日の雨の影響があると思っていたが、足元は岩と木の根が多く、しばらくは滑るような場所もなく、安定していた。

 

 

まもなく、ヒモ場になり、トラロープが這わされていた。


“ヒモ場の連続する急坂”との事前情報通りだったが、トラロープを借りずとも登る事に支障はなかった。ただ、下山時には、お世話になるだろうと思った。

 

 

 

 


斜面をしばらく登ると、空間が明るくなり、見上げると、ブナ葉に陽光が透過し綺麗だった。

 

また、クロベの巨木もあり、美しい森の中を歩いている事を実感し、心地よかった。

森の中は、未だ夏を思わせていたが、これから秋になりこれら木々が色づくと思うと、また歩いてみたくなった。 

 

 

 

 

 


足元には、キノコも増えるようになり、季節は秋に向かっている事を実感した。

 

 

 

 

 10:11、巨大アカマツに到着。


急坂の直登はここで終わり。振り返って登山道を見下ろすと、結構の登ってきたことが分かった。

 

町の登山図には、巨大アカマツは標高900mと記載されていた。

 

 

 

 

 


巨大アカマツから先は、尾根道となり、直ぐ先は鞍部に向かって緩やかな下りになった。

 

 

10:18、21箇所目のヒモ場を登る。

 

 

登山道にはベニダケも目立つようになり、熊にかじられたものもあった。

 

 

 

 

10:32、前方が明るくなり、尾根上(1,062m)に到着。誤侵入防止のトラロープが張られていた。

 

ここから、登山道は北西に進路を変える。

  


直後は、痩せ尾根を歩く事になった。

 

右(北)側は切れ落ち痩せ尾根になった。がけ下から、冷たい風が吹き抜けた。

  

登山道は緩やかな上り下りを繰り返すが、一部ヒモ場となる急坂もあった。

 

 

前方が開け、明るくなった。

 

その場に立つと、麓の様子が見え、先月登った会津百名山「明神岳」(766m)が確認できた。

 

 

 

 

登山道は尾根に続いた。

 

 

また、前方が明るくなった。

  

 

 

 

 

その場を通過して、少し進むと「大博多山」前衛峰(1,280m)に到着。

 

案内板があり、その先には、すこし下り気味の開けた登山道が延びていた。

 

山頂はまもなく。

 

木々の間から、なだらかな稜線の「大博多山」山頂が見えた。

 

 

 

 

緩やかな登山道を下り、再び登ってゆくと、前方が大きく開けたようだった。

 

 

更に登って行くと、思った通り開け、広い青空が飛び込んできた。

 

登り終わり、平場を進んでい行くと、標杭が見えた。

 

 

 

 

 

 

 


11:17、一等三角点峰「大博多山」山頂に到着。

 

一等三角点標石に触れ、登頂を祝った。

 

標杭の背後、東側を含め北北東から南南東にかけては、見晴らし良く、『さすが一等三角点峰!』と思い、しばらく眺め入った。ほぼ、快晴の下、初秋のすこしひんやりした風が吹き抜け、気持ちよかった。

 

山頂の眺望は、北から南にかけては、枝葉が茂り、眺望は得られなかった。

 

 

北北東には、先月に登った会津百名山「明神岳」(766m)。さいたま市保養所・南郷ホテルの赤三角屋根の存在が、この山を特定し易くしてくれる。

 

東には「大博多山」前衛峰(1,280m)があり、その右奥には、麓の古町市街地が見えた。

 

古町の市街地は、全体が俯瞰できた。

  

前衛峰先には、明後日登る予定の会津百名山「唐倉山」(1,175.8m)。その、背後には栃木県境に連なる男鹿岳(1,777.1m)などの山々の稜線が見えた。

  

  

  

11:41、頂上で20分ほど滞在し、下山を開始。登ってきた道を、引き返した。 

  

 

 

 

11:48、前衛峰(1,280m)を通過


 

12:09、尾根上(1,080m)を通過。

 

12:20、巨大アカマツ(900m)を通過。

  

  

取付の急坂下りに入る。登る時には気にならなかったが、一部ザレ場があり足元が不安定になった。そのような場所は必ずヒモ場になっていて、トラロープを掴んで慎重に下りた。

   

 

途中、地面をゆっくりと動く物体があった。近づいてみるとアズマヒキガエルのようだった。繁殖は池、湿原などの浅い止水という事で、この個体はオスだろうかと思った。*参考:国立環境研究所「侵入生物データベース

 

 

 

 

 

急坂を下り切り、縦向沢沿いにを進む。

 

まもなく、前方に明るい空間が見えてきた。

 

 

 

 

12:35、登山口に戻った。山頂から55分で下山することができた。

 

無事に、「大博多山」に登頂することができた。

「大博多山」は事前の情報通り、巨大アカマツ(900m)までの序盤は、ヒモ場が連続する“直登急坂”だったが、足場がしっかりしていたので、さほど苦痛は感じなかった。初心者や女性でも、無理せず登る事ができる山だと思う。

ただ、直登部分は土の部分が多いので、雨の日は注意が必要だと思った。また、ザレ場が少しあるので、下山時は無理せずトラロープを利用した方が良いだろう。トラロープは化学繊維なので、握った際に高速で滑ると高温を発するので、軍手などの手袋は必須だ。

「大博多山」の登山道はよく整備されていて、踏み跡不明瞭な場所もなく、案内板の数も十分だと感じた。尾根上(1,062m)には行きどまりを示すトラロープも張ってあたので、初心者でも登山道ロストの憂き目にあう可能性も低いと思う。

山頂には山名標杭が立ち、かなり広い範囲が平場の空間になっていたので、登頂時に達成感は得られる。ただ、南から西にかけて枝木によって遮られていたので、眺望を得るための工夫をすれば、登山者の山頂到着時の満足感は、各段に高まるだろうと感じた。


「大博多山」は一等三角点峰だけに、眺望に対する登山者の期待も高い。まずは南側の「尾白山」(1,398m、会津百名山-伊南三名山-“古町三座”)がはっきり見えるようにして欲しいと思った。


 

 

12:56、「大博多山」登山道を後にし、寄り道せずに「久川ふれあい広場キャンプ場」に戻ると、ライダーを中心に客が増え、広場から奥の林の中まで、多くのテントが張られていた。

  


テントで一休みして、買い物をするために古町の市街地に向かった。寄り道して、高台から明日登る「尾白山」を眺めた。旧伊南村を象徴する山と言われただけあって、堂々とした山容だった。明日、登るのが楽しみになった。

 

 

日曜日ということで心配したが、フクエストアーは開いていた。

 

店では、味付けマトン300gとビール、そして氷を購入した。

 

 

 

 

キャンプ場に戻り、さっそく昼食を兼ねた夕食にした。焚き火をし、炭を熾し、マトンを焼いて食べた。一昨日たべた山田屋より、すこし辛めだったが、臭みは全く感じず、肉感も感じられ旨かった。

  

今夜は雨の心配は無く、ようやくキャンプで、一晩焚き火し続けることができた。


〆は、塩ラーメン南郷トマト入り。完成間近にトマトを入れ、少し煮込んで仕上げた。思った通り、愛称が良く、旨かった。

  

キャンプ場内は賑やかだった。明日、久しぶりに満月で迎えるという中秋の名月が、明るい月が場内を明るく照らし続け、良い雰囲気の夜が続いた。

 

明日は、“古町三座”の二座目となる「尾白山」に登る。「尾白山」登山道が記された地図などを見て、明日に備えた。

 

(了)

 

 

・  ・  ・  ・  ・

*参考:

・福島県:只見線ポータルサイト

・東日本旅客鉄道株式会社:「只見線(会津川口~只見間)復旧工事の完了時期について」(PDF)(2020年8月26日)


 

【只見線への寄付案内】 

福島県はJR只見線全線復旧後の「上下分離」経営での維持費や集客・地域振興策の実施費用として寄付を募集中(クレジット可)。

 

 ①福島県ホームページ:只見線復旧復興基金寄附金・只見線応援団加入申し込みの方法 *只見線ポータルサイト「只見線応援団」URL:https://tadami-line.jp/support/

 

②福島県:企業版ふるさと納税

URL:https://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/16005g/kigyou-furusato-zei.html

[寄付金の使途]

(引用)寄附金は、只見線を活用した体験型ツアーや周遊ルートの整備、只見線関連コンテンツの充実化等に活用させていただきます。 沿線地域における日本一の秘境路線と言われる観光資源を活用し、更なる利用者の拡大と認知度向上を図ります。

 


以上、宜しくお願い申し上げます。



次はいつ乗る? 只見線

東日本大震災が発生した2011年の「平成23年7月新潟福島豪雨」被害で一部不通となっていたJR只見線は、会津川口~只見間を上下分離(官有民営)とし、2022年10月1日(土)に、約11年2か月振りに復旧(全線運転再開)しました。 このブログでは、“観光鉄道「山の只見線」”を目指す、只見線の車窓からの風景や沿線の見どころを中心に、乗車記や「会津百名山」山行記、利活事業に対する私見等を掲載します。

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