JR只見線の現状

出処:福島民友新聞 2018年6月16日付一面より

「平成23年7月新潟福島豪雨」で一部不通

出処:福島民報 2011年7月30日、31日付 両日とも一面より

東日本大震災が発生した2011(平成23)年の夏、7月28日から30日にかけて福島県会津地方西部と隣接する新潟県中下越地方を記録的な豪雨(平成23年7月新潟福島豪雨)が襲い、JR只見線には路盤や橋梁の流失、護岸洗掘、線路への土砂流入などの被害が発生し、運転を見合わせました。

 *参考:福島県金山町 「JR只見線 鉄橋流失等の被害

 

その後、点検や復旧工事を経て順次運転再開をしてゆきましたが、橋梁が流失するなど多大な被害を受けた会津川口駅から只見駅の区間(27.6km)は、現在も運休したままになっています。

 

【JR只見線 運休から一部復旧の経緯】

2011年7月29日 運転見合わせ 会津坂下~小出(113.9km)

 

2011年  8月7日 運転再開 会津坂下~会津宮下(23.8km)

2011年8月11日 運転再開 大白川~小出(26.3km)

2011年12月3日 運転再開 会津宮下~会津川口(15.4km)

 ⇒復旧費用(JR東日本負担) 約5億円 *会津坂下~会津川口間

2012年10月1日 運転再開 只見~大白川(20.8km)

 ⇒復旧費用(JR東日本負担) 約2億円

 

2011年7月29日~現在 会津川口~只見(27.6km) 運休 *代行バス運行

【不通区間(会津川口駅~只見駅、27.6km)各橋梁の状況】

被害① 第五只見川橋梁(金山町)・・・一部流失

被害② 第六只見川橋梁(金山町)・・・流失

被害③ 第七只見川橋梁(金山町)・・・流失

被害④ 第八只見川橋梁(只見町)・・・橋脚洗掘、 盛土崩壊、路盤沈下、土留壁変状など

*参考:JR東日本「只見線について」(2014年8月、PDF)

【JR只見線の現状を伝える沿線地自体のホームページ】

会津若松市 只見線の全線復旧に向けて

会津坂下町 JR只見線関連

柳津町 只見線

金山町 JR只見線の状況

只見町 只見線の全線復旧をみんなで応援しよう!

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福島県 JR只見線の復旧復興を応援しましょう只見線に乗ろう!

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魚沼市(新潟県) 只見線にみんなで手をふろう!!

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新潟県 福島県による只見線早期復旧に向けた只見線復旧復興基金寄付金・只見線応援団にご協力ください 

 

 


沿線人口は20万7千人

JR只見線の沿線には福島県1市6町、新潟県1市の計8自治体があり、総人口は207,748人(2015年9月1日現在)となっています。


“鉄路復旧”内定

2017年6月19日、JR只見線の運休から丸6年を迎えようとしていたこの日、福島県が会津地方17市町村を代表する形でJR東日本と「復旧基本合意書」を締結しました。

県議会での予算承認などの手続きはあるものの、JR只見線は運休区間が鉄路で復旧し、全線が再開通することがほぼ決定しました。

地元二紙(福島民友新聞と福島民報)は一面などで大きく取り上げていました。

出処:福島民報 2017年6月20日付紙面より
出処:福島民友新聞 2017年6月20日付紙面より

運休から6年という時間が示す通り、ここに至るまでの道は険しく、「バス転換」を強く推すJR東日本を会津地方17市町村と福島県が“熱意と覚悟”(福島民友新聞)で翻意させました。

復旧工事開始

2017年6月19日の「復旧基本合意書」締結から約1年後の、2018年6月15日に「只見線会津川口・只見間鉄道復旧工事起工式」が開かれ、復旧工事が本格化することになりました。

この起工式の様子は地元二紙(福島民友新聞、福島民報)でも大きく取り上げられ、「上下分離」で経営参画し公費負担し続ける福島県をはじめとした関連自治体の只見線利活用・集客に向けた取り組みが重要である旨の報道がされていました。

出処:福島民報 2018年6月16日付紙面より

【みちのり】復旧困難、バス転換を検討

JR只見線の復旧工事開始までの“みちのり”を地元紙(福島民報、福島民友新聞)の記事でたどります。



JR東日本は、部分運休後の2年10ケ月を前に“単独での復旧は困難”と表明し、バス転換ならば地元負担無しで運行させると、鉄路での復旧には後ろ向きでした。

出処:福島民報 2013年5月13日付紙面より
出処:福島民報 2014年4月24日付紙面より
出処:福島民報 2016年6月19日付紙面より

この潮目を転換させたのが“覚悟”の部分、福島県による鉄道施設保有(上下分離)と地元(福島県と会津地方17市町村)による経費負担でした。


【みちのり】費用の工面

JR東日本は部分運休から2年10か月を迎えようしていた2012年5月21日、運休区間(会津川口~只見)の復旧費用を約85億円と初めて算出しました。

出処:福島民報 2013年5月22日付紙面より

沿線住民の反応。

JR只見線の沿線では『絶対に守る』などの声が聞かれる一方、高額な復旧費用に『「廃線」よぎる不安』と行政関係者が苦悩する姿を地元紙が伝えていました。

出処:福島民報 2013年5月13日付紙面より
出処:福島民報 2013年5月23日付紙面より


福島県と会津17市町村の動き。

福島県はJR東日本からの金額提示に対して、復旧費用を積み立てるための「只見線復旧復興基金」を設けました。

“寄付募る”とありましたが、そのほとんどは行政による財政搬出で、費用の地元負担割合を1/4とし、2016年度中に14億8000万円を、残りの金額(6億3750万円)を会津地方17市町村が積み立てる計画を立てました。


【 只見線復旧費用分担 福島県案 】

  復旧費用 85億 =

   福島県・会津地方17市町村 1/4

 + JR東日本 1/2

 + 国 1/4


会津地方17市町村が積み立て割合について、只見町の1億9,876万円を筆頭に沿線7市町が97%、残りの3%を非沿線10市町村とする決定を地元紙が伝えていました。

出処:福島民報 2013年11月19日、同12月26日付紙面より

この基金には、JR只見線の終点・小出駅を抱える魚沼市と新潟県も積み立てするとの報道がありました。

『生活路線の維持の必要性』(新潟県)という理由で“県境またぎ異例の拠出”と地元紙は伝えています。

出処:福島民報 2014年3月11日付紙面より

不通区間は福島県側(会津川口~只見)にも関わらず、JR只見線全線の復旧・振興という観点から支出を決めた新潟県と魚沼市の英断は非常に重かったと思います。

また、福島県はJR只見線の復旧を広く支援してもらおうと「只見線応援団」を設立し、現在も“団員”を募っています。

*参考:福島県生活交通課「只見線応援のための活動について


【みちのり】「上下分離」案

JR東日本の動き。

2016年6月18日、JR東日本は会津若松市で開かれた第三回只見線復興推進会議で運休区間(会津川口~只見)間の復旧後、土地と鉄道設備を地元に無償譲渡し、JRは地元から「委託」を受けて従来通り運行するという「上下分離」案を提示しました。

出処:福島民報 2016年6月19日付紙面より

この「上下分離」制は、第三セクターとは違い、モノ(設備など)とコト(運行サービスなど)を別の事業者が担うというもので、JR東日本管内では初めてといいます。

この制度が多く採用されているヨーロッパでは「モノ=行政」「コト=企業」という役割となっており、今回の提案では「モノ=地元(福島県と沿線自治体)」「コト=JR東日本」を想定しています。

参考:国土交通省「今後の鉄道整備の支援方策のあり方


復旧工事から運行開始後の役割や費用分担案は以下の通りです。

・復旧費用 85億円   

 ⇒工事はJR東日本が実施行うが、地元(県と沿線自治体)と分担して費用負担する。

・施設維持管理費 2.1億円/年

 ⇒復旧後に地元が施設を保有し、維持管理費を管理する=「上下分離」方式

・運行経費(人件費、車両整備維持費) 7千万円/年

 ⇒復旧後に沿線自治体がJR東日本に運行を依頼し、経費はJRが負担する


復旧費用を含め、「上下分離」方式により恒久的な地元負担(=税金)となるため、住民の理解がなお一層必要になります。


福島県と沿線自治体の動き。

JR東日本からの「上下分離案」を受け、2017年1月31日に開かれた只見線復興推進会議(福島県+沿線7市町)ではこの提案を受け入れ、福島県がJR只見線の線路や施設の保有・管理を担う方向性が示されました。

翌日の地元紙では一面で“全国初”として報じられていました。

出処:福島民報 2017年2月1日付紙面より
参考
「上下分離」方式で路面電車(LRT)を整備運行している富山県富山市の取組み
コンパクトシティでまちも人も生き生き~富山市における公共交通を軸とした拠点集中型のまちづくり
(2014年2月19日、日経スマートシティコンソーシアム)

【みちのり】費用、大半を県負担へ

復旧費用は、東京オリンピックの影響などもあり108億円(JR東日本)に跳ね上がりましたが、福島県が試算し「第八橋梁」に掛かる費用を圧縮するなどし、81億円になりました。

2016年11月27日に開催された復興推進会議では、復旧する場合は地元(福島県+会津19市町村)が2/3、JR東日本が1/3を費用負担する事となりました。

出処:福島民報 2016年11月28日付紙面より

福島県は復旧費用の負担を、JR東日本が1/2、地元が1/4、国が1/4と想定していました。

 

しかし、国の支援が確定せず、JR側からも1/3の負担としたいとの申し入れがあり地元負担割合が2/3に引き上げられ、「只見線復旧復興基金」への積み増しの必要性が出てきました。

これを受けて福島県は、地元負担分となる54億円の大半を負担する方針を固めたと地元紙が一面で報じました。

出処:福島民報 2016年12月27日付け

そして、2017年3月31日、福島県と沿線7市町の首長がJR東日本を訪問した後、鉄路での復旧へと大きく動き出した事が地元紙で報じられていました。

(JR東日本の)冨田哲郎社長が「県、市町村の復旧への重いを踏まえ、地元との調整がまとまり次第、会社として意思決定したい」と復旧に前向きな考えを示した。
*出処:福島民報 2017年4月1日付紙面より

この“JR只見線鉄路復旧内々定”を受けて、話題は以下に移ってゆきます。

①地元(福島県+会津地方17市町村)負担の資金確保

②復旧後の復興策

③「鉄道軌道整備法」の改正


①の資金確保について、地元は行政費(税金)と「ふるさと納税」と「CF(クラウドファンディング)」を組み合わせて財源の一部を確保する方針を固めた、と地元紙が伝えていました。

出処:福島民報 2017年5月30日付紙面より

②の復旧後の復興策については、地元住民を巻き込んだワークショップなど行うなど、これから行政が関わる具体的な策が上がってくるようです

③の「鉄道軌道整備法」改正案は、2018年6月15日「只見線復旧起工式」が開始される1時間程前に参議院で可決され、成立。同月22日に交付されました。

「鉄道軌道整備法」は被災した鉄道に対して復旧費の一部を国費で補てんする制度で、適用には条件がありました。JR東日本が保有する只見線は以下の条件に該当しないため、適用されませんでした。

・過去3年間の鉄道事業が赤字

・復旧費が鉄道収入の1割を超える

公布された改正案では補助対象が以下の通りで、JR只見線は全ての要件を満たすことになると言われています。

①激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律(昭和三十七年法律第百 五十号)第二条第一項に規定する激甚災害その他これに準ずる特に大規模の災害として国土交通省令で定めるものに係るものであること。

②当該災害復旧事業の施行が、民生の安定上必要であること。

③ 当該災害復旧事業に要する費用の額が、当該災害復旧事業に係る災害を受けた日の属する事業年度の前事業年度末から遡り一年間における当該鉄道の運輸収入に政令で定める数を乗じて得た額以上であること。

④ 基準事業年度の前事業年度末から遡り三年間における各年度に欠損を生じている鉄道に係るものであること。

補助比率については、別途政令で定める事になりますが、只見線は福島県が「上下分離」で経営に参画し経費負担をし続けるため最大の1/3の補助が受けられると言われています。搬出予定だった金額(約27億円)分の余裕が生まれ、財政難の地元にとっては朗報となります。


出処:福島民友新聞 2018年6月16日付紙面より

2013年7月29日に分断されたJR只見線は、2017年6月19日「復旧基本合意書」が締結され復旧が内定し、図らずも2018年6月15日に改正「鉄道軌道整備法」の可決成立直後に「復旧工事起工式」が開かれ、再び一本の鉄路に結ばれる事になりました。

復旧までの“みちのり”は日本鉄道史に特筆される過程で、全国からその成否が注目されると思われます。


*参考:国土交通省北海道運輸局「地域公共交通シンポジウムin旭川」(2012年6月12日)

事例発表②『平成23年7月新潟・福島豪雨から6年「只見線」復活に向けた福島県の取組』(福島県生活環境部長 尾形淳一氏)




「鉄道軌道整備法」が改正され、費用が約27億円に圧縮される予定とは言え、福島県と会津17市町村は巨費を注ぎJR只見線を復旧させ、再開通後も毎年2.1億円を施設維持管理費として支払い続けるという前代未聞の取り組みには大きな課題があります。地元紙では特集を組み、只見線復旧に関する課題を上げていました。

出処:福島民報 2017年6月20日、21日、22日付紙面より

“100円の運賃収入を得るために6,700円の費用が必要な超赤字路線”であるJR只見線の復旧後は前途多難と言えます。


今後、政治行政が中心となり、民間も関心を持ち大きな“県民運動”のうねりを起し、県民が乗車しベースを作り、国内外の観光客を呼び込み、JR只見線沿線に交流人口をもたらさなければなりません。