“観光鉄道「山の只見線」”と福島県
“観光鉄道「山の只見線」”で会津観光におでかけください
JR只見線が、11年2か月振りに運休区間(会津川口~只見間)が復旧し、再び一本につながりました。復旧に27億円もの地元負担をし、存続する限り巨費(公費)を負担し続けることへの批判は残っているものの、私は一本につながった只見線にその価値はあると思っています。だから、今日の全線運転再開を心から嬉しく思うとともに、上下分離方式を導入し年間維持費3億円の搬出し只見線を生活路線ではなく観光路線に転換し「利活用事業」を行うとした福島県と会津17市町村の政治的決断に、敬意と感謝を表したいと思います。
奇しくも、只見線を分断した「平成23年7月新潟・福島豪雨」は、東日本大震災の約4か月後に発生しました。その東日本大震災での原子力災害からの復旧は、まだ完了しておらず、東京電力福島第一原子力発電所事故当時の衝撃的な情報と現在も続く風評は、県外・国外の少なくない方に固定化され更新されていない現実があります。 *参考:福島県 風況・風化戦略室 URL:https://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/11015f/ / 消費者庁「風評被害に被害に関する消費者意識の実態調査」URL:https://www.caa.go.jp/notice/entry/027787/
風評の払拭、原子力発電所事故直後の情報の更新のためには、行政を中心とする科学的根拠に基づいた情報発信をベースに、福島県への訪問者を増やす必要があると私は考えています。特に観光客です。
福島県の中で、最も“観光力”のあるのは会津地方です。私は中通りに生まれ育ち、東京から20年間故郷を見続けて、福島県の観光の中心地は会津地方であると確信しています。この会津地方への観光客を増やし、福島県の交流人口・関係人口を増やすことが、原子力災害の風評の払拭等に最も効果があると私は思います。“百聞は一見に如かず”です。
会津地方は、まだまだ広く知られていない観光資源があります。「日本遺産」にも認定された高僧・徳一による“仏都”の古刹や文化財や、会津若松市(会津若松酒造協同組合)のみならず会津美里町や会津坂下町にある酒蔵、会津美里町のワイナリー、只見町の芳醇な米焼酎蒸留所などの多様な酒、そして国指定の伝統工芸品は県内5つのうち4つが会津地方にあり、それらは只見線沿線で作品作りが営まれています。
広く知られた磐梯山や猪苗代湖などの自然や、各地に点在する豊富な温泉を合わせれば、会津地方にはもっと観光客を呼び込めるという認識を私は持っています。
只見線は、この会津地方を通ります。しかも日本最大の人口集積地である首都圏から放射線状に延びる、東北新幹線と上越新幹線に挟まれ、利便性の高い地にあります。今日、只見線が全線運転再開したことで、東北・上越どちらの高速鉄道を使っても会津地方を訪れることができ、首都圏の旅行者に目的地までの移動を選択する楽しみを、再び提供できるようになりました。
只見線は、盆地の中の田園や連続するダム湖の美しい水鏡、間近で見られる雪崩・雪食地形をもった荒々しい山肌などが車窓から見られ、これらが春夏秋冬で表情を変える国内屈指の“山の観光鉄道”です。会津観光に向かう途中、または会津観光を終えてから、只見線の列車に乗ってこれらを楽しめるというのは訴求力が高く、会津地方への集客に大きな役割を担うと私は考えています。
さらに、鉄道は大量輸送が可能で、降車地での滞在時間が延び経済効果が期待できます。また、乗るだけでも、車内で沿線の農作物を利用した食事や日本酒やワインなどの地場の酒を提供することことができ、胃袋に訴えかけてファンを増やすことが可能です。これらにより、観光産業の裾野が広がり、サービスの競争が生まれることで、もてなしの質が高まりさらに観光客を増やすことが期待できます。
今後、“観光鉄道「山の只見線」”に乗って一人でも多くの観光客が国内外から訪れ、会津地方を楽しんで欲しい。そして、その中で福島県の今を知り、地元に戻った観光客が福島の今を友人・知人に伝えることで、岩盤を穿つようにゆっくりと確実に風評は払拭され、原子力発電所事故直後の情報は更新されて欲しい、と私は強く願います。
多くの方がの訪福とそれによる福島に対する情報の更新の結果、福島県は震災以前のように移住や産品購買等の場面で多くの方々、特に至近に位置する首都圏の方々の、訪問や購買、そして移住鵜の選択肢の上位に戻るはずだ、と私は考えています。
只見線は、一部区間(会津川口駅~只見駅間27.6km)ではありますが、上下分離方式を採用したことで福島県民の“Myレール”になりました。私も県民の一人として、できるだけ乗車し沿線で消費し、微力ながら只見線を支えてゆきたいと思っています。
2022年10月1日
福島県郡山市
根本 潤
福島県(生活交通課)が行っている「只見線復旧復興基金」への寄付、「只見線応援団」への申し込み方法について、下記にリンクを貼ります。
JR只見線に乗れない方、“撮り鉄”の方々、是非こちらもお願いします。