会津美里町「生江食堂/CAFEかわぞえ」 2021年 冬

“乗り初め”で「伊佐須美神社」に訪れる計画を立てた際に目にした、「生江食堂」のラーメンと「CAFEかわぞえ」の生姜焼きを食べたいと、会津美里町に向かった。

 


*参考:

・福島県:JR只見線 福島県情報ポータルサイト

・東日本旅客鉄道株式会社:「只見線(会津川口~只見間)復旧工事の完了時期について」(PDF)(2020年8月26日) 

・拙著:「次はいつ乗る?只見線」カテゴリ ー只見線沿線の食と酒ー / ー只見線の冬

 

 


 

 

今回は、富岡から、いわき、郡山で乗り継ぎ、会津若松に向かった。

 

7:30、常磐線いわき行きの電車が富岡を出発。

  

Jビレッジから広野を経て、夕筋海岸付近で海を眺める。波はいつもより高い感じがした。

  

いわきで磐越東線、郡山で磐越西線に乗り換え。徐々に上空の雲が厚くなり、沼上トンネルを抜け会津地方に入り、猪苗代付近で列車は濃い霧の中を駆け抜けた。「磐梯山」は、雪雲に覆われその姿は全く見えなかった。

  

沿線の雪は、徐々に少なくなり、磐梯町から東長原を経て、広田の手前で会津盆地を眺めると、ほとんど見られなくなった。

 

 

 

11:50、会津若松に到着。一部青空が見えたが、駅舎上空にはまだらの雲が広がっていた。

会津美里町方面に向かう只見線の次の下り列車は13時9分発。時間が空いてしまうということで、今回は路線バスを利用することにし、駅から80mほど先にある、若松駅前バスターミナルに向かった。

  

 

 

バスターミナルに着き、窓口で両替がてら乗車券を購入し、ターミナルに入ってきたバスに乗り込んだ。

13:00、永井野行きが、7名の乗客を乗せて出発。 


路線バスは、最短路を通らず、会津若松市内の住宅地の中をくねくねと経由し、国道401号に入るとようやく会津美里町高田地区方面に進路を取った。車窓から見える田んぼには積雪も見られたが、道路に白いものは全くなかった。

  

12:46、定刻から7分遅れて大沼高校入口バス停に到着。少子化の影響で、県立大沼高校は隣町にある県立坂下高校と統合され、来年4月に「会津西陵高等学校」に生まれ変わる。大沼高校の校舎を使用するということで、このバス停も“会津西陵高校入口”になるのだろう。*参考:福島県教育委員会「統合校の校名について

  

バス停から600mほど南に歩くと横町門前通りとの交差点に到着。高田インフォメーションセンターを見ながら左折。

 

電柱・電線が見当たらない横町門前通りを、「伊佐須美神社」の鎮守の森に向かって100mほど歩く。

  

 

 

12:53、「生江食堂」に到着。 

  

暖簾をくぐり、引き戸を開け中に入ると、『いらしゃいませ』というスタッフの元気な掛け声に迎えられ、券売機を案内された。

 

店内はテーブル席が5卓。先客は2人居た。

 

注文は「中華そば」。お盆に載せられた品は、まもなく運ばれてきた。

 

“これぞラーメン”という風格が感じられる盛り付けに、しばし見入ってしまった。そして、立ち上る香りは、煮干し出汁のスープであることを知らしめ、チャーシューの濃厚な香りとともに、食欲をかき立てさせられた。

まずは、スープをいただく。煮干しベースの強い香りに、濃厚と思いきやノド越しがさっぱりとし、余韻を楽しませてくれるスープだった。ラーメンの奥深さを、また一つ学んだ。

次は麺。太く強く縮れた麺で、スープが期待通りに絡まり、麺のコシも適度だった。食べ応えがあり、旨い旨いと頷きながら箸を進めた。

そして、チャーシュー。香りから想像していたものとは違い、肉の脂身とスープの調和を乱さない、適度に濃厚な味と食感だった。作り手の創意工夫が感じられ、逸品だと思った。チャーシュー麺は、間違いなく大満足をもたら一品だろう。

 

「生江食堂」のご主人は、東京・池袋のつけ麺の名店「大勝軒」で修業されたという。私も東京在勤の時は何度か訪れたが、あのつけ麺は旨かった。今回、「生江食堂」の券売機にその名はなかったが、以前はつけ麺を提供していたという。是非、復活させて欲しいと思った。

現在、営業時間はランチタイム(11:00~13:30)と短いが、都合をつけて、また「生江食堂」に訪れたいと思った。次は、手作りワンタンが6個入った“名物”ワンタン麺かチャーシュー麺か、胃袋が求めるものを食べたい。

  

 

 

「生江食堂」を出て、横町門前通りを西に向かう。

 

まもなく、左手に次の目的地である「CAFEかわぞえ」が見えた。

  

この交差点を右に入り、直後の十字路を左折すると「新富座」がある。

 

「新富座」は大衆劇場(信富座劇場)として1916(大正5)年に開館し、その後“会津初”の映画館として1972(昭和47)年まで営業していた。その後、倉庫として残り解体を免れていたが、東京から只見町を経て移住した方が借り受け、映画館としての復活を目指している。

昨年の夏から地域の交流の場として開放され、現在は懐かしの映画ポスターを展示したり、手作りの横幅12mの大型スクリーンで試写を行っているという。また、“JR只見線復興応援企画”なども開催している。

「新富座」は消防法の規定で、現状では映画館としての営業はできないということで、支援を得て設備を整えられるまでは、“ホームシアターとして地域に開放し、不定期で試写会を開くなどして当面は町民の憩いの場を目指す”という。*出処:福島民友新聞「カムバック!50年ぶり旧映画館「新富座」 70歳・斎藤さん奮闘」( 2020年7月8日)  

 

  

 

来た道を戻り、「CAFEかわぞえ」に到着。横道門前通り側にテラス席を設けているが、冬場ということで、囲いがされていた。

 

店内は、木目調に統一され、柱や梁は光沢を放ち、BGMはジャズが流れていた。モダンで落ち着いた雰囲気だった。見たところテーブル席が5卓で、カウンターが2席だった。先客に2つの女性のグループが居た。


テーブル席に通され、生ビールを注文した後、メニューを見る。生姜焼きと思ったが、ラーメンを食べても胃袋に余裕があったことから、『もう一食いける』と生姜焼きが載った人気の「かわぞえランチ」を追加注文した。

 

 

カウンター席の向こう側にキッチンがあった。

 

そのカウンターには、地元会津本郷焼宗像窯の名を世界に知らしめた「ニシン鉢」が置かれていた。

   

まもなく、生ビールが運ばれてきた。列車旅の楽しみ。一気に、半分ほど流し込んだ。アテは菜の花のからし醤油和え。茹で具合は程よく、旨い小皿だった。これから出される料理に期待が持てた。

 

 

しばらくして、スープとともに「かわぞえランチ」が運ばれてきた。

 

ベーコン、エビ、玉ねぎ、ピーマン、マッシュルームが入った具沢山のピラフに、大きな豚生姜焼きとサラダが盛られたワンプレート。盛り付けに驚いたが、華やかな彩りに圧倒され、感動を覚えた。

ピラフからいただく。バターの香りがほのかに立ち、ライスの炒め具合も良かった。何より、具材の一つ一つが、味の一体感を乱さずそれぞれの特徴を出していた。玉ねぎのシャキッという歯ごたえ、ピーマンの適度な苦みは、特に印象に残った。

そして、お目当ての生姜焼き。厚みがあったが柔らかく、生姜の風味と豚肉の旨味の相性が抜群だった。もう一枚欲しくなってしまった。次に訪れることがあったら「ブタしょうが焼セット」を頼みたいと思った。

サラダも妥協なく、鮮度が良くドレッシングの選択も違和感が無く、目と耳と舌を楽しませてくれた。

「CAFEかわぞえ」の「かわぞランチ」は、空腹を満たしてくれるばかりでなく、色が失われた冬に元気がもらえる逸品でもあった。 

  

食後には、濃いめのコーヒーが給仕された。カップにも主人のセンスの良さが感じられ、気持ちよく“長い”昼食を締めくくることができた。

「CAFEかわぞえ」は、ランチ(11:00~14:00)とディナー(17:30~22:00)で営業時間が分かれているので、訪れる際は注意が必要だ。また、5名からの予約で“焼肉ハウスかわぞえ”にもなり、他ライブ演奏にも応えてくれるという。会津美里町に只見線を利用して訪れた際は、是非足を運んで欲しい。

  

 

今夜は、鶴ヶ城で開催されているイベント「アイヅテラス」を見に行くが、只見線の列車の出発(16時56分)まで3時間ほどあるため、図書館に行くことにした。

向かったのは「じげんプラザ」(会津美里町役場本庁舎・複合文化施設)。一昨年の5月7日に業務が開始され、庁舎機能の他、公民館、図書館、ホールが併設されている。

 

玄関では、町のキャラクターである「あいづじげん」(しろ)がお出迎え。


「あいづじげん」は、館内のあちこちに“出現”していた。起き上がり小坊師や達磨をイメージしたという卵型の形は、違和感なく溶け込んでいた。 *参考:会津美里町観光ポータルサイト:あいづじげんについて

  

「じげんぷらざ」の設計は、会津にゆかりがあり、県内で数多くの物件を手掛けてきた㈱清水公夫研究所(郡山市)。仕上材や家具建具に地元産木材をしたといい、天窓からの採光や間接照明で、落ち着いた館内だった。

 

また、館内には会津本郷焼のタイルがいたるところに掲げられ、東階段脇の壁面には各窯元の作品が並べられていた。

 

タイルは4枚一組で、同じものを組み合わせたもの、4枚で一つの作品となるものなど、多様だった。


この20の作品は、会津本郷焼事業協同組合の13のうち11の窯元のもので、一部窯元は複数を“出品”していた。

 

 

図書館は1階で、玄関のほぼ正面にあった。自動検温機とアルコールが庁舎入口にあったが、念のため図書館入口でもアルコール消毒をしてから入館した。

内部は明るく、児童書の開架がまず現れ、左奥にはじゅうたん敷のこども図書コーナーがあり、よく見られる図書館の構造になっていた。右奥には閲覧席と学習コーナー等があり、複数の生徒が自習をしていた。*参考:会津美里町図書館「館内図

館の新型コロナウイルス対策では、“本を読んだら、手をアルコール消毒”、“館内滞在は1時間”ということだったので、私は一般書の開架にあった椅子に座り、蔵書を読んで1時間を過ごした。

  

 

 

会津美里町図書館をあとにし、会津高田駅に向かい、待合室で列車を30分ほど待った。暖房は無かったが、思いのほか寒くはなく、耐えられた。

  

 

遠くで列車の汽笛が聞こえホームに出ると、西部山麓を背景に南進する列車が見えた。

    

16:56、他3名の客が乗り込み、会津若松行きの列車が出発。会津美里町での予定を終えた。

  

今日訪れた「生江食堂」と「CAFEかわぞえ」は、前述の通り、営業時間に注意が必要だが、魅力的な飲食店なので、是非多くの方に只見線を使って訪れて欲しい。

明神ケ岳」登山後や「伊佐須美神社」参拝後に「生江食堂」で昼食を摂ったり、町内を散策した後に「高田温泉 あやめの湯」に入り「CAFEかわぞえ」でお酒を呑むなど、会津高田駅から徒歩で移動できない距離ではないので、只見線の列車に乗って利用することは難しくない。レンタルサイクルがあれば、移動範囲が広がり、観光客にとって良いが、会津高田は無人駅という事で設置には工夫が必要だろう。

いずれにせよ、駅からそう遠くない距離に魅力的な飲食店があることは、只見線の利活用にはプラスに働く。ただ、残念ながら福島県が運営している「只見線ポータルサイト」の各駅観光情報の会津高田駅のページに、この両店は載っていない。全ての店を掲載することは難しいとは思うが、駅徒歩圏であり、「伊佐須美神社」に近く旨い料理を提供している両店は掲載されるべきだと思う。今後、ポータルサイトが更新される際に、検討して欲しい。

 

会津美里町は、2町1村が合併して生まれ、今日訪れた高田地区の他、本郷地区、新鶴地区がある。ただ、なぜか日本酒の蔵は全て高田地区にある。白井酒造店(1765年創業)、末廣酒造㈱博士蔵(1996年建造、末廣酒造は1850年創業)、そして昨年末に8代目により20年振りに復活した男山酒造店(1865年創業)。次に高田地区を訪れた際は、これら酒蔵を訪れたいと思うが、見学が可能かどうか調査したいと思う。

 

 

(了)

 

 

・  ・  ・  ・  ・

*参考:

・NHK:新日本風土記「動画で見るニッポンみちしる~JR只見線

・産経新聞:「【美しきにっぽん】幾山河 川霧を越えてゆく JR只見線」(2019年7月3日) 

・福島県 生活環境部 只見線再開準備室:「只見線の復旧・復興に関する取組みについて

・東日本旅客鉄道株式会社:「只見線について」(PDF) (2013年5月22日)/「只見線(会津川口~只見間)の鉄道復旧に関する基本合意書及び覚書」の締結について(PDF)(2017年6月19日)


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①福島県ホームページ:只見線復旧復興基金寄附金・只見線応援団加入申し込みの方法 *現在は只見線ポータルサイト「只見線応援団」URL:https://tadami-line.jp/support/

  

②福島県:企業版ふるさと納税

URL:https://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/16005g/kigyou-furusato-zei.html

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(引用)寄附金は、只見線を活用した体験型ツアーや周遊ルートの整備、只見線関連コンテンツの充実化等に活用させていただきます。 沿線地域における日本一の秘境路線と言われる観光資源を活用し、更なる利用者の拡大と認知度向上を図ります。

 

以上、よろしくお願い申し上げます。

次はいつ乗る? 只見線

東日本大震災が発生した2011年の「平成23年7月新潟福島豪雨」被害で一部不通となっていたJR只見線は、会津川口~只見間を上下分離(官有民営)し、2022年10月1日(土)、約11年2か月振りに復旧(全線運転再開)しました。 このブログでは、車窓から見える風景写真を中心に掲載し、“観光鉄道「山の只見線」”を目指す只見線の乗車記や「会津百名山」等の山行記、利活用事業に対する私見等を記します。

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