三島町「からんころん茶屋」 2023年 冬

三島町観光協会が運営する観光交流館「からんころん」で、毎月第2・第4土曜日と日曜日に「みやした蕎麦と豆腐の会」が提供する、打ちたての新蕎麦を食べたいと、JR只見線の列車に乗って三島町に向かった。

*参考:

・福島県:只見線ポータルサイト

・福島県・東日本旅客鉄道株式会社 仙台支社:「只見線全線運転再開について」(PDF)(2022年5月18日)

・福島県:平成31年度 包括外部監査報告書(PDF)(令和2年3月) 「復興事業に係る事務の執行について」 p140 生活環境部 生活交通課 只見線利活用プロジェクト推進事業

・拙著:「次はいつ乗る?只見線」カテゴリ ー只見線沿線の食と酒ー / ー只見線の冬

 

 


 

 

9:07、会津若松から乗った列車が、会津宮下に到着。


駅舎を出て、駅前通りを県道237号線に向かって歩いた。

 

駅から100mほど歩き、三島町観光交流館「からんころん」に到着。営業時間は9時~18時。

“からんころん”の由来について、「からんころん便り」の第1便(2011年)には次のように記されている。*出処:三島町観光協会 三島町観光ポータルサイト「からんころん便り」第1便 URL: https://www.town.mishima.fukushima.jp/uploaded/attachment/1983.pdf

からんころんの由来は?
三島町特産の“桐下駄”の音が全国に鳴り響くこと。また、多くの人に愛用されることを願ってという想いが込められています。


引き戸を開けて中に入る。2016年11月に初めて訪れ、会津宮下駅を利用する場合は立ち寄ることにしているが、落ち着いた店内の雰囲気は変わっていない。

 

厨房のカウンターには、「蕎麦と豆腐の会」と墨書された一枚板が掛かっていた。

蕎麦の提供開始は11時からということで、スタッフに断りを入れ、コーヒーを飲みながら読書をして待つことにした。

コーヒーは桐製のコースターに載せられて出された。桐は三島町の特産品で、その花は町花になっている。*出処:三島町観光協会 三島町観光ポータルサイト「会津桐

室内では無料のWi-Fiが利用できるようになっている。

 

 

椅子に座り、落ち着いた頃に館内を見て回った。

「からんころん」ではお土産の物販が充実していて、会津地鶏ラーメンやえごま油、はちみつなどの食品の他、木工製品が所狭しと並んでいた。

木工製品では、三島町の特産品である会津桐を使ったネコとネズミの置物が目を引いた。

そして、「かしゃ猫」の置物。「かしゃ猫」とは漢字で“火車猫”とも“化裟猫”とも書き、町内の間方地区に伝わる「志津倉山」にまつわる伝説の主人公。

「志津倉山」には、その伝説に由来する「猫啼岩」がある。 *参考:三島町流センター・やまびこ 「かしゃ猫」「かしゃ猫伝説」/ 拙著「三島町 「志津倉山」山開き登山 2018年 初夏」(2018年6月3日)

(POPより引用)
“かしゃ猫こけし”について
 このこけしは、奥会津志津倉山に伝わる山の守り神となった化け猫であり、山のふもと三島町間方地区の『長郷工房』にて創作されました。
 町が観光で賑わっていたころには民芸品として親しまれましたが、時代は流れ、かしゃ猫も、かしゃ猫こけしも、共に幻の存在となっておりました。
 しかしこのたび、長郷のもとへ通い指導を受け、再興の運びとなりました。
 コシアブラの木で1体1体すべて手作りしており、今回は現代にあったストラップ調のものや、置物は大小も様々に仕上げてみました。
 皆々様の交通安全・家内安全と諸々の「魔除け」として、そして、三島町の思い出の一品としてご愛顧いただければ幸いと存じます。
三島町宮下『夢坊匠庵』栗城 2016.1.28


レジ前には、只見線に関するTシャツやタオル、そして色とりどりのタンブラーとマグカップが置かれていた。

アウトドアブランド「mont-bell」(モンベル、大阪市)の三島町オリジナルグッズとなるタンブラーとマグカップ。今回の訪問では、これを買いたいと思っていた。

マグカップは2色で、茶色を選んだ。会計を済ませると、先週開催された「第51回 雪と火のまつり」のクリアケースをプレゼントされた。

マグカップには、「志津倉山」に「かしゃ猫」の像と「志津倉の鐘」、「三坂山」に山頂の「電力反射板」と北裾の「美坂高原」上空に広がる満点の星空(ミサカノヨゾラ)、そして「第一只見川橋梁」を渡る列車が描かれ、天体観測をしているのがクマという洒落もきいていた。

モンベル社の三島町オリジナルグッズは、Tシャツもあり、マグカップと同じ画が胸にプリントされていた。ちなみに、2023年9月から販売された“第一弾”のTシャツには、「第一只見川橋梁」を渡る列車は描かれていなかった。

2022年6月、モンベル社は福島県会津地方振興局管轄の13市町村と、「人生100年時代 会津・モンベル広域連携共同宣言」を共同発表し、それに関わる包括協定を結んだ。三島町では「からんころん」を含む3箇所が2023年9月1日からモンベルフレンドショップに登録されている。*下掲記事:福島民報 2022年6月3日付け紙面

ちなみに、「人生100年時代 会津・モンベル広域連携共同宣言」には、只見町(南会津地方振興局管轄)は只見線沿線唯一加わっていないが、町は2021年8月2日にモンベルと個別に包括協定を締結していて、町内には6箇所のモンベルフレンドショップがある。*下掲記事:福島民報 2021年8月3日付け紙面 / 参考:只見町「株式会社モンベルとの連携と協力に関する包括協定締結式を行いました」(2024年8月4日)

  


...店内では、「蕎麦と豆腐の会」のスタッフが出勤し準備を始めるなどで厨房の方が賑やかになり、そして、10時30分過ぎにホール担当のスタッフが私に近づき、『(時間は)早いですが、蕎麦の準備が出来ました』と告げた。

そこで、メニューを見て大盛り蕎麦を注文した。裏面を見ると、“新メニュー”として極盛り蕎麦の「三坂山」(831g)があり、蕎麦好きにはたまらないだとうと思った。

蕎麦は、昨秋に収穫された新蕎麦で、メニューには次のように記されていた。

宮下地区の遊休農地で地区住民が蕎麦を栽培し、手刈り・天日干し・自然乾燥した玄蕎麦を町の最新鋭の製粉機で石臼引きした新そば粉10割の手打ち蕎麦です。
*その玄蕎麦は数量に限りがあり3月で終了します。4月からは風穴熟成蕎麦になります。

“風穴熟成蕎麦”とは、滝谷地区にある「滝谷風穴」の貯蔵室で保管している蕎麦だ。



注文後、まもなく、芳ばしい香りが立ち上がる蕎麦茶が運ばれてきた。蕎麦茶に手抜きが見られない蕎麦屋は間違いない、という“格言”が思い出された。

 

10分ほどで桐盆に載せられた蕎麦が運ばれ、直ぐに蕎麦湯の追加された。『さぁ、食べようか』としたところ、スタッフがお椀を持ってきて『蕎麦につけて召し上がってみてください』と、アツアツのけんちん汁を置いてくれた。想定外の嬉しいサービスに、嬉しくなった。

 

さっそく、蕎麦から食べた。

香りは控えめだが、適度にコシがあり、風味良く、のど越し爽やかな旨い蕎麦だった。つけ汁はこの蕎麦の旨さを引き立てる、さっぱりしたものだった。

薬味には、みずみずしい刻みネギとワサビ。

 

手作り豆腐は、大豆の香りが立ち、甘みが感じられるものだった。『日本酒が呑みたい』と思ってしまった。

そして、けんちん汁。濃いが深みある良い香りが立ち上がり、口に入れる前から旨さは確定していた。

飲んでみると、出汁と醤油に根菜の滋味がまろやかに重なり、心底旨いと思った。蕎麦を付けて食べたが、これまた旨く、次の機会は期間限定の「田舎けんちん蕎麦」を食べてみたいと思った。

 

 

11:15、蕎麦を食べ終え、「からんころん」を後にした。外には、私が入館する時にはなかった、“手打ちそば”と記された幟が立てかけられていた。

 

「からんころん」を出ると、「名入鉄橋ビューポイント」に向かった。

県道237号(小栗山宮下)線を進み、只見線の大谷川橋梁に連続する高架橋を潜り抜けた後に旧沼田(伊北)街道に入り進んだ。

1kmほど歩くと、左側に「からんころん茶屋」でスタッフが話題にしていた町民運動場が見えてきた。毎年2月に行われている「雪と火のまつり」の会場になっていたが、移転の決まった県立宮下病院の建設工事が始まるため、ここでの開催は今年(第51回)で終了となった。

*下掲記事:福島民報 2021年3月6日付け紙面より

町では、新たな会場を検討しているというが、未だ決まっていないという。「雪と火のまつり」は三島町の大きなイベントで、雪まつりで国指定重要無形民俗文化財(三島のサイノカミ)が見られるという只見線沿線でも貴重な観光コンテンツだ。町民と観光客が、アクセスに苦労することなく、共に楽しめる場所で来冬に開催されて欲しいと思った。*参考:拙著「三島町「第48回 雪と火のまつり」 2020年 冬」(2020年2月8日) / 「三島町「サイノカミ」(大登地区) 2022年 冬」(2022年1月15日)

 

 

 

12:32、山間に延びる沼田(伊北)街道から「(桧原)丸山城」跡に続く稜線を歩き、「名入鉄橋ビューポイント」に到着。しばらく待って「第二只見川橋梁」を渡る列車を眺め、撮影した。会津百名山「三坂山」(831.9m)の堂々とした山塊を背景にした風景は、見応えがあった。

 

13:22、沼田(伊北)街道に引き返し街道を横断し、四等三角点「桧原」に向かい三角点標石を見つけられた。

 

 

14:07、「第一只見川橋梁ビューポイント」に移動し、最上部Dポイントのさらに上部に到着。ここでも、しばらく待って「第一只見川橋梁」を渡る列車を眺め、撮影した。

 

 

 

14:41、トレッキングで腹を空かせ、「雪国茶屋」で名物の「お餅ラーメン」を食べようと、国道252号線を歩き進むと店が見えてきた。

だが、入口に暖簾が掛かっておらず、店内の照明も消えていたので、『まさか⁉』と思い店に近づくと、何と閉まっていた。

往路、通り掛かった時は確かに開いていたため、スマホを取り出し調べると、公式サイトで営業時間は“午前11時頃より午後2時頃まで”と記されていた。事前調査ではグルメサイトを見て、“営業時間10時~18時”となっていたので安心していたが、古い情報だった。残念。

 

 

15:22、どうしてもラーメンが食べたかったので県道237号線沿いの「山モ 斎藤商店」でカップラーメンを購入してから、会津宮下駅に戻った。

駅舎に入り、待合室でカップラーメンを食べた。「お餅ラーメン」の代役は、ペヤングのカップラーメン。10代~20代に何度か食べて以来見かける事もなかったが、「山モ 斎藤商店」で目にして迷わず購入した。

カップラーメンを食べながら、カーテンが掛かった駅の窓口を眺めた。かつては、駅員が常駐し、その後、会津若松駅から交代制で駅員が窓口業務を担っていたが、とうとう昨年12月1日から終日駅員不在となった。

この駅員不在を機に、町もしくは町観光協会がJRから窓口業務の委託を受け、合わせて駅舎を改修し、「からんころん」の一部機能を分離し、物販や十割蕎麦の提供ができないものかと思った。

 

 

列車の到着時刻が近付き、ホームに出て待っていると上り列車がやってきた。先頭がキハE120形で後部がキハ110の朱色の復刻カラー(タラコカラー)の2両編成だった。

16:04、会津若松行きの列車は、定刻をわずかに遅れて会津宮下を出た。 


週末の昼の時間帯を走る、只見線全線乗車(小出~会津若松)が可能な列車ということで、車内は混雑していた。そして、双方の車両では、赤べこが描かれた法被を着た沿線・柳津町の関係者による観光案内がなされていた。

 

今回の旅は、郡山を起点に日帰りの旅行ということで、切符は「小さな旅ホリデー・パス」を使った。

  

列車は、「名入鉄橋ビューポイント」から見えた「第二只見川橋梁」を渡った。上流側の「三坂山」は、山頂付近にうっすらと雲が掛かっていた。*以下、各橋梁のリンク先は土木学会附属土木図書館デジタルアーカイブス歴史的鋼橋検索

 

会津西方を出て、名入トンネルを抜けると「第一只見川橋梁」を渡った。

 

会津桧原を出て滝谷手前で三島町から柳津町に入り郷戸を経て、会津柳津に停車。複数の客が降り、JR東日本から町に譲渡され改修工事が進む駅舎に入っていった。また、観光案内をされていた法被を着た方々もここで降りた。


立ち客は居なくなったが、双方の車両にはそれぞれ30名前後の客が残った。

 

会津坂下町に貼った列車は会津坂本に停車。スマホを構え、列車を撮影しているような方が居た。その後方には、貨車駅舎に描かれた「キハちゃん」が満面の笑みを見せていた。*参考:会津坂下町「只見線応援キャラクター誕生!!」(2015年3月13日) https://www.town.aizubange.fukushima.jp/soshiki/2/3337.html

会津坂本を出て列車は奥会津と会津(平野)を隔てる七折峠に入った。登坂を始めてまもなく、木々の間の“坂本の眺め”では、真っ白に冠雪した飯豊連峰が浮かび上がって見えた。

 

峠の登坂を終え塔寺を出ると、左側(東)に会津平野が見えてきた。

 

“七折越え”を終え、田園地帯に入ると、左前方に真っ白に冠雪した山並みが見えた。「雄国沼」(1,090m、会津百名山59座)を取り囲む、「雄国山」(1,271.2m)や「古城ヶ峰」(1,287.8m)などの山塊だ。

 

会津坂下で高校生を中止に10名ほどの客を乗せて、列車は進路を東から南に変えた。左(東)には、山頂付近に雲が掛かる「磐梯山」(1,816.2m、同18座)が見えたが、“古城ヶ峰山塊”より標高が高いにも関わらず、冠雪は少なかった。

 

若宮を出て、会津美里町に入った列車が新鶴を経て根岸を出ると、右(西)に西部山地の最高峰「明神ヶ岳」(1,074m、同61座)が見えてきた。

 

“高田 大カーブ”で進路を南から再び東に変えた列車が、会津高田を経て会津本郷の直前で会津若松市に入った。車両の後部に移動し西陽に照らされたレールを見ると、その先に「明神ヶ岳」が見えた。

この直後、列車は大川(阿賀川)を渡った。上流側に聳える「大戸岳」(1,415.9m、36座)山塊の山肌にはうっすらと雪が見えた。

 

 

 

17:25、大川渡河後に市街地に入った列車は西若松七日町を経て、終点の会津若松に到着。今日も、只見線の旅は、無事に終わった。

 

この後、私は磐越西線の列車に乗り換えて、郡山に向かって帰宅の途についた。

 

 

(了)

 

 

・  ・  ・  ・  ・

*参考:

・NHK:新日本風土記「動画で見るニッポンみちしる~JR只見線」 *2008年放送

・産経新聞:「【美しきにっぽん】幾山河 川霧を越えてゆく JR只見線」(2019年7月3日)

・福島県 :只見線管理事務所(会津若松駅構内)

  

【只見線への寄付案内】

福島県はJR只見線全線復旧後の「上下分離」経営での維持費や集客・地域振興策の実施費用として寄付を募集中(クレジット可)。

 

 ①福島県ホームページ:只見線復旧復興基金寄附金・只見線応援団加入申し込みの方法 *現在は只見線ポータルサイト「只見線応援団」URL:https://tadami-line.jp/support/

 

②福島県:企業版ふるさと納税

URL:https://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/16005g/kigyou-furusato-zei.html

[寄付金の使途]

(引用)寄附金は、只見線を活用した体験型ツアーや周遊ルートの整備、只見線関連コンテンツの充実化等に活用させていただきます。 沿線地域における日本一の秘境路線と言われる観光資源を活用し、更なる利用者の拡大と認知度向上を図ります。

 

以上、宜しくお願い申し上げます。

次はいつ乗る? 只見線

東日本大震災が発生した2011年の「平成23年7月新潟福島豪雨」被害で一部不通となっていたJR只見線は、会津川口~只見間を上下分離(官有民営)とし、2022年10月1日(土)に、約11年2か月振りに復旧(全線運転再開)しました。 このブログでは、“観光鉄道「山の只見線」”を目指す、只見線の車窓からの風景や沿線の見どころを中心に、乗車記や「会津百名山」山行記、利活事業に対する私見等を掲載します。

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