観光鉄道 “山の只見線” を目指して

一昨日の8月29日に福島県の内堀知事とJR只見線沿線の4町長が、観光鉄道としてその地位を確立しているJR五能線(秋田県-青森県)を視察した。同行取材した地元紙・福島民報の記者の特集記事が昨日と今日の地面に掲載されていた。

『JR只見線復興の進路 五能線から探る』と題された記事は、昨日は一面を大きく飾り、今日は第三面で取り上げられ、五能線が観光路線として確立するまでの軌跡と課題を中心に報じられていた。

 *記事出処:福島民報 (左)2018年8月30日付け紙面、(右)2018年8月31日付け紙面

 

もう一方の地元紙・福島民友新聞では30日付け紙面で、29日視察当日の様子が写真入りで細かく報じていた。

  *記事出処:福島民友新聞 2018年8月30日付け紙面より

『廃線』もささやかれた五能線は観光鉄道として地位を確立し、『日本一乗りたいローカル線』とも言われるようになった。只見線は3年後の“第二の全線開通”に向けて、この五能線の成功例を見習おうとしている。上掲記事では“景観・観光列車・地元名物・景勝地回遊(二次交通)”の組み合わせが五能線の成功要因という旨が指摘されていた。

 

平成23年7月新潟福島豪雨」被害で27.6kmが運休中の只見線は、2021年度中に被災区間が「上下分離(公設民営)」方式で再開通する予定で、現在、復旧工事が進行している。

 *参考:拙著「JR只見線全線復旧 正式合意」(2017年6月20日)

駅舎などの鉄道施設を保有し、運行経費の赤字分を補填する福島県と沿線17市町村が中心となり、「只見線復興推進会議」で乗客と沿線への経済効果を増やすために「只見線利活用計画」(PDF)を立て、予算計上し今年度から事業を進めている。

 *参考:「只見線復興推進会議」構成員
福島県知事(会長)、会津地方17市町村長、会津耶麻・南会津・両沼地方町村会長、新潟県交通政策局長、魚沼市長、関係団体(会津総合開発協議会、只見線活性化対策協議会、只見川電源流域振興協議会、奥会津五町村活性化協議会、只見川ライン観光協会)、県企画調整部・生活環境部・観光交流局・土木部・農林水産部関係部局長、県会津・南会津地方振興局長

 

この「利活用計画」は4分野9プロジェクトで構成されているが、その中心が“目指せ海の五能線、山の只見線プロジェクト”となっている。

「目指せ海の五能線、山の只見線」プロジェクト
【概要】会津のものづくりや伝統文化体験の企画列車を運行する。列車内や停車駅での地酒や食の振舞い、おもてなし、地域資源をパッケージ化して売り込む。

 *上掲資料出処:福島県生活交通課「只見線の利活用

  ・「只見線利活用計画」(PDF) 24.5MB

  ・「アクションプログラム2018」(PDF) 1.16MB

 *参考:拙著「復興推進会議検討会 “9つの重点プロジェクト”」(2017年12月28日)

 

沿線の高齢化と人口減少で沿線自治体は、住民の只見線利用促進策をあきらめ、只見線を観光鉄道にして集客し地域振興策へと繋げる政策を前面に押し出す事になった。

只見線同様、都市部から離れ地元の生活利用者が減り続けている共通項があり、廃線の危機を乗り越え『日本一乗りたいローカル線』と言われるようになり、国内外の旅行者や旅行会社に浸透している五能線を引き合いに、只見線が観光路線化を図るため謳う“目指せ海の五能線、山の只見線”というキャッチコピーは分かりやすくて、私は良いと思っている。

そして、この“海の五能線、山の只見線”を「利活用計画」の中心に据えた事を最善の選択だったと感じている。それは五能線が、同じ東北にあり、“海”と“山”という競わず協業できる仲間ということで、只見線の「利活用計画」に携わる人間が、手が届く具体的な目標としてとらえられ、気兼ねなく教えを乞えると思うからである。

 

私は五能線の「リゾートしらかみ」号に10年前の夏に乗車したことがある。

あいにくの曇り空だったが、海沿いの車窓からの景色をリクライニングシートに座り快適に見続ける事が出来た。

全長147.2kmの全てが海に面しているわけではないが、民家などの人工物が視界に入る事が無い海岸線区間は目が離せなかった。

私は岩手県の三陸鉄道北リアス線にも乗車したが、五能線は海への近さ(距離、高度)が勝っていて、海の透明度の視認性や海岸線の多様性などを合わせると“景観東北一の海岸鉄道”ではないだろうかと思っている。

 

この“海の五能線”に対して只見線が、“山の只見線”として認知される能力は十分にある。

只見線には“山”に期待される美しい山並みや多様な緑、そして清流があり、その只中を列車が走る。また、低山ながらも豪雪地帯特有の雪崩路(アバランチシュート)が奥会津のいたるところに見られ、ブナや杉・松などの落葉樹と常緑樹の組み合わせは春と秋に美しい色合いとコントラストを見せてくれる。

さらに、ダム湖が連続する只見川の川(湖)面は、水鏡(湖面鏡)となり、車窓から見られる場所が多くある。赤や青、緑のトタン屋根を持つ曲屋など、風情ある家屋も車窓からの風景に山里の趣きを与えてくれている。

只見線は“山の幸”に恵まれ、五能線に匹敵するような観光鉄道、“山の只見線”になり得る可能性を十分に秘めてる。後は、“料理人”の腕に掛かっている。 

今回視察した福島県知事、会津美里町・柳津町・三島町・只見町の4町長をはじめとした“料理人”たる関係者は、只見線の一部を所有し経費負担に貴重な予算(税金)を使い「利活用計画」を実行してゆくという重い責務を強く認識し、五能線に多くを学びながらも只見線ならではの魅力の訴求力を高め、旅行者に広く確実に認知される観光鉄道“山の只見線”となるよう尽力し、結果を出して欲しい。

  *「五能線」参考記事等:
 ・JR東日本 秋田支社「五能線リゾートしらかみの旅
 ・国土交通省「第16回 日本鉄道賞」(2017年9月29日)(PDF)

  →特別賞「沿線地域の魅力をつないで走る五能線『リゾートしらかみ』20 年」

 ・全国町村会:町村長随想「五能線は健在なり-秋田県八峰町長 加藤和夫-」(2010年1月18日)

 ・ITmedia ビジネスオンライン:地方創生のヒントがここにある「廃止寸前から人気路線に復活した「五能線」 再生のカギは“全員野球”の組織」 (2016年9月6日)

 ・PHP Online衆知:「五能線にみる「秋田発」のイノベーションと地方創生(2016年7月23日)」遠藤功(ローランド・ベルガー日本法人会長)

 


以下、観光鉄道“山の只見線”となるための2つの私案を挙げる。

 

(1)リゾートトレインの調達(改造→新造)

五能線が観光路線として成功したのは専用列車の運行によるところが大きい。今では「白神山地」が世界遺産登録されてはいるが、企画列車(ノスタルジックビュートレイン(1990年)→リゾートしらかみ(1997))の運行を積み重ねる事により観光鉄道としての地位確立したと言える。

2016年度はこの「リゾートしらかみ」号に過去最高の12万人が乗車したという。同期間の同線の通過人員を一年に換算すると約24万7千500人。つまり、五能線の半数は「リゾートしらかみ」号に乗車した観光客ということになる。

只見線が“山の只見線”を目指すのであれば専用の観光列車の運行が欠かせない。

観光列車は、他線で現在運行中の列車を借りる事から始める方法も考えられるが、私は「改造」もしくは「新造」し調達すべきだと考える。参考になるのは、奇しくも、同じく新潟県内を走る「越乃Shu*Kura」と「雪月花」だ。

 

A.改造:参考「越乃Shu*Kura」(JR東日本 新潟支社)

改造する場合、現在只見線を走っているキハ40系を改造した車両を一部に使っている「越乃Shu*Kura」号が参考になる。

酒処・新潟の日本酒と地元食材の料理を、ジャズやクラシックの生演奏とともに楽しめる、3両編成の列車だ。金土日に運行され、3つのコース(越乃、ゆざわ、柳都)が設定されている。

車両編成は前後が客室で、中間車両がバーカウンターとイベントスペースになっている。

ちなみにこの列車3両中2両の改造は郡山総合車両センターで行われている。

 *参考:JR東日本 「越乃Shu*Kura」パンフレット(PDF)


B.新造:参考「雪月花」(えちごトキめき鉄道㈱)

新造する場合、参考になるのはの「雪月花」。

天井まで迫ろうかという大きな窓枠に、2両編成というコンパクトさは只見線に適った車両だと思う。前後には展望席のハイデッキが設置され、2号車にはバーカウンターを伴ったラウンジがある。

「雪月花」は車窓からの景観をゆったりと寛ぎながら楽しめるつくりになっていて、只見線には最適な仕様になっている。

新造車は導入費用が巨額になるが、仕掛け次第で投資に見合った沿線への効果が期待できると思う。

 *参考:えちごトキめき鉄道㈱ 「雪月花」パンフレット(PDF)

 

 

只見線では「改造」、「新造」いずれの場合でも、最終的には2編成で運用し、東北新幹線・郡山駅と上越新幹線・浦佐駅の発着便を設定し、4往復とするのが理想だ。また、運行本数を補う意味でも、観光列車の一部に地元住民が自由に乗り降りできる席を設置できれば良い。

この観光列車内では会津地方を中心の地酒を振る舞う。日本酒ならば会津若松市、会津坂下町、会津美里町の各酒蔵、焼酎は只見町の蒸留所、ワインは現在新鶴地区(会津美里町)で進められているワイナリーの建設され稼働を待つ。これだけ多種多様な地酒を提供できれば料理のレパートリーも増え、訴求力が高まると思う。

只見線の車窓からの景色と、沿線の地酒を中心とした料理という組み合わせを楽しむ事ができる専用の観光列車は必ず多くの旅行者を惹きつけるだろう。

只見線復興推進会議では来月(9月)15日に企画列車を運行させる計画を立てている。この企画列車の成功を積み上げ、只見線専用列車の調達にまでつなげて欲しい。

 

“山の只見線”専用観光列車の調達と運行には、資金調達という難題があるが、他にも課題がある。

 

①仙台支社と新潟支社の協力

五能線は全線をJR東日本の秋田支社が管轄しているが、只見線は二つの支社となっている。

 ・仙台支社:会津若松〜只見

 ・新潟支社:只見〜小出

この二社が連携しないと、高額な投資を伴う観光列車の導入と調達は難しい。

「只見線復興推進会議」には新潟県や魚沼市が、「只見線復興推進会議 検討会」にはJR東日本(本部経営企画部)がオブザーバーとして名を連ねている。福島県はこれらの場を活かし、観光列車の必要性をを共有し、仙台支社と新潟支社が協業できる環境をつくって欲しい。


②浦佐駅へのスムーズな乗り入れ(小出駅構内のポイント新設)

観光列車が導入された場合、人口集積地である東京圏からの周遊性を考慮し、上越新幹線と東北新幹線へのアクセスを向上させる必要がある。

東北新幹線の郡山駅へは只見線の会津若松駅で列車への平面乗換えや磐越西線への直接乗入れなどコストをかけずに実現できる。

しかし、上越新幹線の最寄り浦佐へは、レールが繋がっておらずスイッチバッグを行わなければならない。

同じ新幹線駅の長岡へは一度の折り返しで向かえるが、東京方面から離れることになる。

乗客の快適性や乗車時間を考慮するのであれば小出駅構内のポイント新設が必要だ。

ただし、この実現はハードルが高い。巨額な費用調達と貨物列車の運行に支障が出ない工事なるからだ。

只見線復興推進会議での意見集約と『絶対必要だ!』という熱意が必要になってくるだろう。関係者は乗客の増加に努め、旅客収入に沿線経済効果を合わせた数値を用いた収支のプラスを目指して欲しい。

小出駅構内の浦佐方面へのポイント新設は時間はかかるかもしれないが、世界屈指の東京圏から観光客が快適に只見線を利用できるよう実現して欲しい。

 

 


(2)乗客をターゲットとした“車窓からの景観創出”事業

観光鉄道となるためには、何より“乗る人”が車窓から見える風景を楽しめなければならないと思う。

私案は後で挙げる事にして、まず前述の「只見線利活用計画」の景観創出事業で、“撮る人”(撮り鉄)メインターゲットとしている点について述べたい。

  *資料出処:(上掲)福島県 只見線復興推進会議「只見線利活用計画」 一部筆者加工

 

今年度の景観創出事業は「只見線活性化事業120万円」(金山町)、「只見線景観整備事業50万円」(只見町)などのが施行予定で、他関連事業もある。

 *資料出処:(上掲)福島県 只見線復興推進会議「アクションプログラム2018」 一部筆者加工

 

先日、この景観創出事業(樹木の伐採)が行われたと先日の地元紙に記事が掲載されていた。

 *記事出処:福島民報 2018年8月24日付け

この事業は福島県宮下土木事務所が委託業務として行ったようなので、おそらく会津若松建設事務所の今年度事業の一つである「ビューポイント整備」事業の一環であると思われる。「第三只見川橋梁」(会津宮下~早戸間)の国道252号線にある撮影ポイント付近の枝木が伐採されたようだ。

  *資料出処:福島県 会津若松建設事務所「平成30年度概要」 67ページ抜粋

このように只見線の景観創出事業は、まず“撮る人”を呼び込む事を目的にスタートした。

おそらく、撮られた写真がSNS等のネット空間に発信される事が只見線の集客につながると考えているのだろう。だが、只見線は昔から多くの“撮る人”を惹きつけており、沿線の様々な場所から撮られた多くの写真が世に出回っているが、今回の事業でそのコストに見合った写真が撮られ世間に発信されるのだろうか。

また、今まで只見線を“撮る人”が、その作品(写真)が乗客を増やし、沿線に明らかな経済効果をもたらしているという話も耳にしたことはない。最近、“撮る人”の作品の影響でインバウンドが増えたという報道はあるが、乗客が何%、沿線の宿泊客や土産物購入金額がどれだけ増加したという数字は公表されていないと思う。そして何より、全国各地のローカル線が“撮る人”々の集客・経済効果で支えられ廃線を免れているという事を、私は聞いた事が無い。

 

“撮る人”が只見線の乗客増や沿線経済効果にどれだけ貢献したのか、あるいは、するかの評価は難しい。撮られた写真が何人の集客につながったのかはアンケートを取らなければ判明しない。また、只見線の乗客が、同じ写真を撮りたいとその場所を目指しても、駅から遠い場所が少なくなく、徒労や失望と感じさせてしまうマイナスの面が出てくる可能性もある。上掲新聞記事の場所は、会津宮下駅から歩道が整備されていない国道252号線の坂道をを3.4kmも歩かなければならない。

そして、一番重要な点は『撮られた写真の風景を“乗る人”は見られない』という事だ。これが鉄道が他の観光資源と大きく違う。“撮る人”と“乗る人”が見る風景は違う。“撮る人”の為に景観を良くしても、車窓から景色を眺める“乗る人”の満足に確実に結びつくとは言えないのだ。

“撮る人”の沿線への経済効果については、撮る場所が無料で、移動が車の方が多いので食事や休憩・宿泊場所が沿線から離れる可能性がある。渋滞や違法駐車、私有地侵入などの“不経済”だけをもたらし、全国チェーンのコンビニだけで買い物を済ませてしまうような“撮る人”が居るもの事実だ。

 

「只見線利活用計画」の「景観創出事業」は“撮る人”をメインターゲットとして、他線では実現できなかった新しい歴史を作ろうとしているのかもしれない。それはそれで良い事だと思う。ならば、景観創出箇所で撮られた写真がどれだけ新たな客を呼び込んだのかを集計し効果を確認し、“撮る人”が確実に只見線沿線におカネを落とす仕組み・仕掛けを構築しなければならないと私は思う。税金を使う以上、単に訪れた“撮る人”の増加で評価するような事業であってはならない。

 

先日、地元紙の投書に以下のようなものがあった。

この方は、林産物の経済的価値を考えて、『運行に支障が出るならいざしらず』と『一握りのマニアのために...木を伐採する必要はない』述べられている。ただ、もし“撮る人”が只見線の乗客を増やし沿線にお金を落とすなどして、地域に貢献しているという文化ができていたのならば、このような投書は無かったかもしれない。

 “撮る人”の貢献度が具体的な数値で示され周知されれば、地元の人と“撮る人”の関係は一層良好になり、物心両面で地域の良い影響をもたらす可能性もある。

  

福島県ならびに只見線復興推進会議の関係者は、事業を進める上で参考にした“撮る人”がもたらす只見線への集客と沿線経済効果の数値や見込みがあるのならば公表して欲しい。そうすれば“撮る人”は『只見線のため、沿線地域のために撮っている』という自負を持って、気持ちよくシャッターを切れるのではないだろうか。関係者には“撮る人”をメインターゲットとした景観創出事業が、只見線を税金で支える事になる沿線住民や県民に支持され、只見線の利活用に確実に効果をもたらすようにして欲しい。

 

 

【車窓からの景観創出 事業希望箇所】

私が考える、“車窓からの景観創出”を進める場所を示す。 

①七折峠途上(会津坂下~塔寺)

会津と奥会津を隔てる七折峠を走行中、ほんのわずかだが車窓の上部から会津坂下町の田園が見え、夜は街の灯りを見る事ができる。

ここは樹木の伐採だけでは景観創出はできない。切土をレベルと下げるなどの検討が必要だと思う。

 

その1:貴重な“見晴らしスポット”だが、雑草が生い茂っている。

その2:見晴らしが良い果樹園らしき場所があるが、一瞬で通り過ぎてしまい、注意しないと見過ごしてしまう。

その3:夏場は草木が生い茂り、一層見晴らしが悪くなる。

その4:木々を伐採しなくても、枝打ちで開ける場所もある。


その5:冬場、低木や草は雪に覆われるが、切土があるため、見晴らしに欠け惜しい景観となってしまっている。


この「七折峠途上」は列車がスピードを出しているため、実際にどのような景観創出が可能か定かでない部分がある。確実に会津坂下町の街並みと田園は見えるが、他の場所からは会津美里や会津若松へと広がる広大な田園風景が見られるかもしれない。

「七折峠途上」は景観創出の可能性を大きく秘めた場所だと私は考えている。自治体とJR東日本が協力し、列車を徐行させ草木の除去でどのような景観が現れるのかシミュレーションし、沿線の地権者の了解を得て試験伐採するなど時間を掛けて取り組んで欲しい。

 

 

②早戸駅と早戸あかり区間(会津宮下~早戸)

“早戸俯瞰”として鉄道風景写真が撮られている滝谷トンネルと早戸トンネル間の「早戸あかり区間」は只見川(東北電力㈱宮下発電所の宮下ダム湖)が近接し、両岸が切り立っている渓谷を見る事ができる景観スポットだ。

早戸あかり区間 その1:只見川が直下を流れ、対岸が切り立った渓谷が見られるのにも関わらず、枝木が見事に視界を塞いでいる。

早戸あかり区間 その2:積雪期、木々が綿帽子を被り美しいが、冴えた空気の下に広がる只見川の“湖面鏡”の方が見応えがあると思ってしまうほど、木々の間から見える景色に期待が持てる。

早戸あかり区間 その3:同じく積雪期、木々が乱立している場所は綿帽子の美しさも半減されてしまう。

早戸あかり区間 その4:ここからは、かつて東洋一の揚水式水力発電所だった「沼沢沼水力発電所」跡が見えるが、木々が遮っている。

 *参考:水力ドットコム「東北電力株式会社 沼沢沼発電所 跡

 

早戸あかり区間 その5:積雪期も枝が遮り、「沼沢沼水力発電所」跡は一部しか見えない。

早戸あかり区間 その6:只見川の下流に目をやると、両岸が狭まった箇所が確認できる。鉄塔以外の人工物が無く秘境感が味わえる。ただ、木々が生い茂り一瞬の光景で、枝葉が遮る夏場はほとんど見えない。

 

「早戸あかり区間」から早戸トンネルと抜けた直後にある早戸駅は線内随一の秘境駅だ。

路盤と只見川の間にある景観を損ねている樹木の根が土砂の崩落防止に役立っているのであれば、伐採には注意が必要だと思っている。

早戸駅 その1:駅を俯瞰するとレールと只見川の間に木々が多い事が分かる。

早戸駅 その2:上流側は、奥に雪崩路(アバランチシュート)を持つ低山の連なりが見えるが、木々が只見川を塞ぎ、景観を損ねている。

早戸駅 その3:只見川下流も同じように遮られている。草木が無いのは一部区間のみ。

早戸駅 その4:車窓越しに見る風景。ここが唯一開けた場所だ。

早戸駅 その5:春先、視界を塞ぐ木々に新緑は見えるが、対岸の木々も同様であるため、伐採しても春の風景は楽しめる。

早戸駅 その6:夏場は枝葉が視界を一層塞いでしまう。

早戸駅 その7:秋の紅葉時期、只見川下流の見晴らしも、手前の木々で、惜しい場所になっている。

早戸駅 その8:冬、冴えた只見川の“湖面鏡”を見入る事はできない。

 

③上田ダム直下(会津水沼~会津中川)

「第四只見川橋梁」を渡り、国道252号線の架道橋を潜るとしばらく只見川と並行し見下ろしながら列車は走る。ここの只見川は東北電力㈱上田発電所ダムの直下であるため浅瀬となり、貴重な流れを見る事ができる区間となっている。

上田ダム直下 その1:線路と国道脇に杉並木が立つ場所。ここは下部の枝打ちで良いと思っている箇所だ。

上田ダム直下 その2:只見川が見える開放的な場所は電柱と電線が景観を損ねている。

上田ダム直下 その3:積雪期は、電線に雪が載り、電線の存在が大きく見えてしまう。

この「上田ダム直下」は電線地表化するという景観創出事業を希望する。

 

「上田ダム直下」の清流部分を過ぎると、只見川は一旦遠のき、上田ダム湖となり再び近づく。

上田ダム その1:ここは対岸の雪崩路を持つ低山の全体が川面(湖面)に映る様が見える場所だが、視界は木々と電線に阻まれている。

上田ダム その2:上田ダム湖は、下流の宮下ダム湖より幅が広く、只見線沿線一大きい水鏡(湖面鏡)を見下ろせる貴重な場所だ。

 

④越川道陸神跡付近(本名~会津越川)

ここは現在運休区間であるため、現地の様子と地図から景観創出が可能と考えた場所だ。 

その1:本名を出て、会津越川が近づき、登坂を終えた辺りで線路が国道を挟んで只見川に近づく。この辺りの只見川は両岸に岩場が見える、これまでには無かった場所となっている。車窓からどれだけ見えるかシミュレーションし、どれだけの樹木の伐採が必要か検証する必要がある。

その2:越川道陸神跡付近に近づく上り坂。列車が走れば絵になると思っている。このあたりから右手(写真では左手)に只見川を見下ろす事になる。

 

⑤田子倉駅跡

2013年3月16日に廃止されてしまった田子倉駅だが、スノーシェッドと一体化した駅舎はまだ残っている。ここは「只見ユネスコエコパーク」内にあり、国内第三位の貯水量を誇る田子倉ダム湖に接している、別格な秘境駅だった。雄大な湖と民家一つ無い大自然が車窓から見えるが、駅跡とダム湖に間には木々が多い。

その1:写真撮影時は貯水量が少なく、湖底が見えていたが、田子倉駅跡は湖に近接したすばらしいロケーションにある。

その2:ホームを覆うスノーシェッドの前には草木が生い茂り、手つかずになっている。

その3:駅の前の湖は鋭角になっていて、駅跡前に対岸が迫っている。この斜面にはブナがあり、春先から紅葉までの長い期間、見ごたえのある山肌の色の変化を見せてくれる。

その4:田子倉駅跡手前の余韻沢橋梁上の見晴らしが、この場所の可能性を思い知らせてくれる。

その5:余韻沢橋梁上で車窓から見る事ができる風景。見えるのは僅かな時間だ。


樹木伐採などの景観創出事業とは別に、復旧が決まった橋梁の設計変更も、景観創出に結びつく。しかし、これは設計が済み、予算化されたJR東日本側の事業で変更は容易ではないが、観光鉄道“山の只見線”として生まれ変わるためには『見えていたものが見えなくなる』ような復旧は避けたいと私は思っている。以下、私見を述べる。

 

【復旧工事での設計変更希望箇所】

復旧工事では豪雨下の増水で流された橋梁の再建工事がメインになるが、元の形状から大きく変更されてしまう橋がある。「第六」と「第七」橋梁で、どちらも開放的で車窓からの見晴らしが良い上路式から、鋼材が視界に入る下路式に変更されてしまう。

  

A.「第六只見川橋梁」

東北電力㈱本名発電所・ダムの直下に設置されていた「第六只見川橋梁」は、線内屈指の高度感とそれにともなう開放感を味わえた「上路式プレートガーター」混成橋だった。復旧工事では、「下路式ワーレントラス」混成橋になるようだ。

B.「第七只見川橋梁」

会津横田~会津大塩間2.2kmの間にある「第七只見川橋梁」上からは「大塩温泉 共同浴場」から国道252号線の二本木橋へと真っすぐ伸びる、何にも邪魔されず只見川を見る事ができた。「上路式プレートガーター」混成橋が、復旧工事では、「第六」同様に「下路式ワーレントラス」混成橋になるようだ。

ここは、もし設計変更ができないのであれば、平行する町道にかかる四季彩橋(中路式ローゼ橋、水色)との“共存”を考えて欲しい。

橋梁形状の変更は「平成23年7月新潟福島豪雨」の増水時の水位より橋桁を上にするための措置で止むを得ない点があるが、設計段階で『できるだけ車窓からの景観に配慮する』という考えはあったのだろうか。架橋されれば失われた景観は帰ってこないという点を考えると、設計の変更是非は話合われるべきではないだろうか。何%の事業費の上乗せがあるのか見積もった上、JR東日本と福島県は話合う機会を持って欲しい。



最後に、“乗る人”が景観を楽しめるために、徐行運転や景観ポイント前での車内放送の他、比較的導入のハードルが低い項目を挙げたい。

 

【ロングシート車両の運行回避】

車窓から景色を見ながら旅をする、車窓からの景観に見入る際、ロングシートは疲れる。そして、車両に足を踏み入れた際に旅情は吹き飛んでしまう。

ロングシートは通勤通学対策で、出来るだけ多くの乗客を乗せるための座席だ。

只見線は会津若松を出た後、会津高田で大沼高、会津坂下で会津農林高と坂下高の計3県立高校の生徒の利用があるため、朝夕は混雑する。だからロングシート車両が運行されるのは仕方ない部分がある。だが、日曜日や休日まで運行するのは避けなければならないと私は思っている。

また、平日についても、会津坂下でロングシート車両を切り離すなどの車両運用も、いずれ検討しなければならないと思う。ただ、駅構内に待機線を作り、職員の配置が必要などのコストが発生するため、ハードルは高い。

只見線が車窓からの景観を楽しめる観光鉄道を目指すのであれば、ロングシートに乗客を座らせる事の無いよう、福島県を中心にJR東日本と話し合い、観光客の為の車両運用を実現させて欲しい。


【窓の汚れ除去】

車窓から景色を見るにであれば、窓がキレイな方が良い。窓を通して景観を楽しむので、窓ガラスの役割は観光鉄道にとって最も重要な部分かもしれない。

JR東日本は定期的に洗車を行っているようだが、窓も車体の一部として洗われているのか、窓ガラスに薄い汚れやくすみが残っている事がある。

例えば、月一回、ボランティアを募集して窓を徹底的に洗い、撥水コーティングするというのはどうだろうか。観光鉄道“山の只見線”に生まれ変わろうとしている“マイレール”を住民が後押しするという取り組みだ。

只見線の列車の窓掃除も、人員とコストが新たに発生してしまう。関係者が知恵を出し合って、観光客がキレイな窓を通して車窓からの景観を楽しめる環境を作り上げて欲しい。

 

 

 


以上、“山の只見線”になるため「観光列車の改造・新造」と「車窓からの景観創出事業」について私案を述べた。

これからも只見線の乗車を続け、私なりに“山の只見線”になれるよう情報の発信と、私案を述べてゆきたいと思う。

(了)

 

・ ・ ・ ・ ・ ・

*参考:福島県 「只見線の復旧・復興に関する取組みについて」/「JR只見線 福島県情報ポータルサイト

*参考:政府 インターネットテレビ「見どころたくさん 福島に来てくなんしょ!」(2017年1月26日)

 

【只見線への寄付案内】

福島県はJR只見線全線復旧後の「上下分離」経営での維持費や集客・地域振興策の実施費用として寄付を募集中(クレジット可)。

・福島県ホームページ:只見線復旧復興基金寄附金・只見線応援団加入申し込みの方法

 

寄付金の使途は以下の通り。

・お寄せいただいた寄附金は、福島県、会津17市町村や新潟県などで 組織する「福島県JR只見線復興推進会議」で協議の上、只見線の復 旧や利活用促進のため使われます。(「只見線復旧復興基金寄附金募集」チラシより)

・ 寄附金は、只見線を活用した体験型ツアーや周遊ルートの整備、 只見線関連コンテンツの充実化等に活用させていただきます。 日本一と言われるロケーションだけに頼らない観光振興を推進し、 新たな観光収入の増加を図ります。 (「JR只見線企業版ふるさと納税(地方創生応援税制)の御案内」より)

よろしくお願い申し上げます。


次はいつ乗る? 只見線

東日本大震災が発生した2011年の「平成23年7月新潟福島豪雨」被害で一部不通となっているJR只見線は、2017年6月19日に福島県とJR東日本間で「復旧基本合意書」が交わされ、2018年6月15日の復旧工事起工式を経て、2021年度中の全線再開通に向けて工事が本格化しました。ブログでは車窓の風景や沿線の見どころを伝える「乗車記」等を掲載します。

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