復興推進会議検討会 “9つの重点プロジェクト”

JR只見線沿線7市町村と福島県で構成される「只見線復興推進会議検討会」の会合で、2021年度の全線復旧を見据えた利活用促進の計画案がまとめられたと、地元紙・福島民報が今日の一面で伝えていた。

もう一つの地元紙・福島民友新聞でも“「只見線の日」提案 利活用へ県 県民運動を展開”と一面で取り上げていた。

利活用促進の計画案は“4分野”(福島民報)で、“9つの重点プロジェクト”から成る。

目指せ海の五能線、山の只見線」/「みんなの只見線」/「奥会津サテライトキャンパス整備」/「奥会津景観整備」/「只見線学習列車」/「只見線産業育成」/「只見線2次交通整備」/「只見線魅力発信」/「只見線利活用プラットホーム構築」

“只見線の日”制定は「みんなの只見線」プロジェクトに入っている。

 

それぞれ記事では以下のように報じていた。

2011(平成23)年7月の新潟・福島豪雨で一部区間が不通となっている只見線の全線開通や、鉄道を核にした地域振興へ利用者数の増加が喫緊の課題となる中、県民が只見線に親しむ機会を創出する』(福島民友新聞)

「ここにしかないヒト・モノ・コト・イロ」を基本理念に、県と沿線市町、JR東日本、民間団体などが一体となって「日本一の地方創生路線」を目指す』(福島民報)

 

測量と一部橋脚の撤去が始まった復旧工事と両輪を成す利活用計画案=集客・振興策が9つに定まり、これから行政を中心に具体的に動き出す。

 

検討会は全線復旧まで3年、復旧後2年の合計5年の規模で事業を展開する考えを示しているようで、事業の大きさと行政(福島県と沿線7市町村)の意気込みを感じる。

今後、福島県と沿線7市町は今年度中に利用促進計画を正式決定し『来年度予算でそれぞれ関連費用を確保した上で各種事業に乗りだす』という。事業の進展で、新たに必要なコストが発生すれば補正予算も組まれるのではないだろうか。事業規模に必要な予算が組まれ、効果的に執行して欲しい。

  

来年4月以降に実施される「重点9プロジェクト」から立案された具体的施策とその実行度と結果、そして“県民運動”のうねりを起せるのかに注目してゆきたい。

 

 

*「只見線復興推進会議 検討会」構成員

会津若松市長、会津美里町長、会津坂下町長、柳津町長、三島町長、金山町長、只見町長、福島県副知事、県生活環境部長、(オブザーバー:国土交通省鉄道事業課長、JR東日本経営企画部長)
*参考:「只見線復興推進会議」構成員
福島県知事(会長)、会津地方17市町村長、会津耶麻・南会津・両沼地方町村会長、新潟県交通政策局長、魚沼市長、関係団体(会津総合開発協議会、只見線活性化対策協議会、只見川電源流域振興協議会、奥会津五町村活性化協議会、只見川ライン観光協会)、県企画調整部・生活環境部・観光交流局・土木部・農林水産部関係部局長、県会津・南会津地方振興局長

(出処:福島県生活環境部生活部生活交通課「只見線の全線復旧に向けた検討」)

 

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以下、両紙面に掲載されている、利活用の4分野「重点9プロジェクト」について私見を述べたい。 *以下、【概要】は上掲の福島民報記事から引用。

 

目指せ海の五能線、山の只見線」プロジェクト

【概要】会津のものづくりや伝統文化体験の企画列車を運行する。列車内や停車駅での地酒や食の振舞い、おもてなし、地域資源をパッケージ化して売り込む。

【私見】五能線は、確かに海沿い美しい景色を眺めながら乗車できる素晴らしい路線だ。

この五能線が観光路線として成功したのは専用列車の運行によるところが大きい。もちろん「白神山地」が世界遺産登録された事も大きいが、企画列車(ノスタルジックビュートレイン(1990年)→リゾートしらかみ(1997))の運行を積み重ねる事により観光路線としての地位確立したといえるだろう。

昨年(2016年)度は過去最高の12万人が「リゾートしらかみ」に乗車したという。同期間の同線の通過人員が678人/日ということで、一年に換算すると約24万7千500人。つまり、五能線の半数は「リゾートしらかみ」に乗車した観光客ということだ。

 *下図出処:JR東日本「路線別ご利用状況

これは想像だが「リゾートしらかみ」以外、普通列車に乗る乗客も観光目的が少なくないと思われる。そう考えると、五能線は乗車人員の大半が観光利用という観光路線になっているということになる。

只見線が観光路線化を図るため謳う『目指せ海の五能線、山の只見線』というキャッチコピーは分かりやすい。 

 

『山の只見線』を目指すのであれば専用車両を用いた企画(観光)列車の新造・運行は欠かせない。

参考になるのはえちごトキめき鉄道㈱の「雪月花」。天井まで迫ろうかという大きな窓枠に、二両編成というコンパクトさは只見線に適った車両だと思う。導入費用は巨額になるが、仕掛け次第で投資に見合った沿線への効果が期待できると思う。

最終的には2編成とし、東北新幹線・郡山駅と上越新幹線・浦佐駅の発着便を設定し、4往復を実現して欲しい。

福島県と新潟県、沿線8市町が協業し、車両建造の他、運行や保守までも含めた予算を公費と寄付(一般寄付+クラウドファンディング)を組み合わせ確保して欲しい。

 

この観光列車で振る舞われる地酒は、日本酒ならば会津若松市、会津坂下町、会津美里町の各酒蔵、焼酎は只見町の蒸留所など豊富だが、地産のワインを提供できるよう新鶴地区(会津美里町)で進められているワイナリーの建設も実現させ、多種多様な地元の酒を車内で提供できるようにして欲しい。これだけ多種多様な地酒を提供できれば料理のレパートリーも増え、訴求力が高まると思う。

原料生産から製造までを一貫した“新鶴ワイン”の実現は、他観光鉄路や観光地との差別化に大きく寄与し、『山の只見線』の実現に欠かせないピースとなるだろう。

 *参考:非特定営利活動法人 会津ワイナリー会

 

 

みんなの只見線」プロジェクト

【概要】通勤・通学などの生活利用を推進するため「マイレールポイント制度」を導入する。県民が年に一度は只見線に乗るという県民運動を実現、「只見線の日」の制定を目指す。

【私見】生活利用を促すのであれば、その目的と需要予測をして、区間の設定が必要だろう。会津若松を起点に、会津坂下までなのか、会津宮下までなのかを定め、最低限1時間に1便となる増便を行い、ダイヤ設定しなけれればならないと思う。

また、このプロジェクトの肝は『県民が年に一度は只見線に乗るという県民運動』だろう。浜通りの住民が乗るためには日帰りが可能なダイヤ設定が必要で、切符も「小さな旅ホリデーパス」に制限があるため、平日や浜通りからの利用が可能な“けんみん只見線パス”を作って需要喚起を行う必要があると思う。

 

 

奥会津サテライトキャンパス整備」プロジェクト

【概要】奥会津を大学生らの学びの場として活用してもらうため、空き家や古民家をサテライトキャンパスとして開設する。

【私見】福島県内と新潟県内の大学に声掛けし、只見線のモニターツアーを実施し意見を聞く、学生用のお得な切符を設定し利用を促するなどし、只見線の認知度と乗車頻度を高める工夫が必要だと思う。

コンピューター理工学で先端を行く会津大学とは、沿線付近の通信環境を整備し、ITの力で山間部の生活基盤の維持と新たな雇用の創出などを協業研究してもらいたい。

また、かつて只見線沿線に附属施設をもっていた首都圏の大学、東洋大学(金山町・セミナーハウス)と北里大学(只見町・教育実習寮)などに話を持ち掛け、当該学生を中心に“お試し利用”を促すとともに学生の意見を聞き、空き家や古民家利用の可能性を探るという方法も考えられる。

 

 

奥会津景観整備」プロジェクト

【概要】鉄道写真愛好家「撮り鉄」らを呼び込むため、奥会津の風景を阻害する杉や雑木を伐採し絶景の撮影場所を新設する。只見川と並行した廃道を自然散策路として再整備する。

【私見】まず「撮り鉄」諸氏が只見線沿線を訪れ、どれだけの経済効果をもたらしているのか試算する必要があると思う。沿線外や県外から自家用車でやってきて、撮影だけして帰宅してしまう「撮り鉄」諸氏は少なくない。実態を調査する事で、「撮り鉄」諸氏の只見線維持への貢献度が明らかなになり、公金を支出する名分も立つと思う。

そして「撮り鉄」諸氏が只見線に乗車した事になるように“撮り鉄乗車券”なるものを発券する事も併せて検討してもらいたい。発券機は「第一只見川橋梁ビューポイント」などの撮影場所に設ける。沿線7市町村に共通したデザインの案内板と一体化させ、現金ではなくJR東日本のSuicaを利用したものとする(盗難防止、利用実績の即時集計公表のため)。

「撮り鉄」諸氏も只見線は存続して欲しいだろうし、何らかの貢献を望んでいるだろう。乗車することが難しいのならば、“乗った事とする”仕組み作りで「撮り鉄」諸氏の呼び込みは沿線住民や行政の理解と納得を得られると思われる。

 

また、雑木の伐採などの景観創出は「撮り鉄」より乗客目線で行う必要があると思う。

只見線の車窓から眺める風景は素晴らしいが、枝木伐採で景観美が増す箇所は多い。まずは七折峠と会津宮下~早戸間の早戸俯瞰と早戸駅ホーム前、そして会津水沼~会津中川間の上田ダム眺望の三か所は早急に行う必要があると思う。上田ダム眺望では電柱地中化も同時に検討してもらいたい。

この乗客目線の景観創出は、「撮り鉄」諸氏の撮影場所の提供にもつながり、沿線に更なる人の流れを呼び込むのではないだろうか。

 

 

只見線学習列車」プロジェクト

【概要】沿線のダム、自然、暮らし、農業、食、体験などの教育資源を生かした小中学校向けの教育旅行を誘致する。只見線独自の教育専用車両の運行を目指す。

【私見】沿線のダムで生み出される水力発電電力に重きを置いた教育旅行が他地域との差別化ができると思う。東日本大震災まで多くの電力を日本の中心である東京圏に送り続けた福島県の立ち位置と役割の理解は、小中学生に歴史と自然、自らの生活について確かな学びの視座を提供するだろう。

沿線に次から次へと現れるダムを見て、途中下車して只見川に注ぎ込む川や沢の水量に触れ、生活を支えるエネルギーの源泉、日本の高度成長を支えた土台を知り、自分はどう生きるべきか社会はどうあるべきかの思考の基盤ができると思う。



只見線産業育成」プロジェクト

【概要】沿線の伝統、自然、食、文化を生かした只見線関連商品、駅弁、サービスを開発・復活させる。観光ガイドの養成する。インターネットで小口資金を集めるクラウドファンディングを活用する。

【私見】只見線沿線は“コト”消費につながるコンテンツにあふれている。

産業は、国の伝統工芸品に指定されている「会津漆器」「本郷焼」「三島編み組細工」「昭和からむし織」中心に多様な体験型ツアーを企画できるであろう。

自然は、1,000m前後の比較的疲労度の少ない登山とはじめ、低山を連続して歩いたり、沢登りなどのトレッキング適当箇所が多数ある事が強みだ。安全に、かつ学びトレッキングを楽しむためには現地ガイドが欠かせない。

知識の平準化やサービスの質向上、そして現地(野外)で参加者に声を届けるためのマイクなどの備品の整備など、ガイドの育成・整備環境は欠かせない。さらにガイドの簡易な予約法や利用しやすい料金設定なども必要だ。

沿線のどこで自然を楽しもうと思っても、同じサービスが受けられるようにして欲しい。

 


只見線二次交通整備」プロジェクト

【概要】沿線の駅を起点にデマンドバスやタクシー、周遊バスなどの二次交通を拡充し、旅行者や住民が地域を周遊できる公共交通網をつくる。

【私見】これを考える企画者は“車離れ”の思考を持つ必要がある。

日ごろ自家用車に乗って生活している思考を停止させ、只見線の列車を降り立った観光客が、目的地に行くためにどうしようかと悩み、途方に暮れる姿を想像し、“次の移動の形”を考えなければならないと私は思っている。

二次交通としてマイクロバスが挙がるが、広々と寛いだ列車の旅をしてきた乗客が、狭く揺れる車内に押し込めらる違和感や失望に思いを至らせることも必要だ。

観光路線として振興を考える只見線の二次交通は整備・拡充するだけではダメだ。二次交通利用客の移動の質に配慮して事業を行わなければならないと私は考える。

 

私は、二次交通の一案として自転車(クロスバイクと電動MTB)を提案したい。

只見線に沿って走る国道252号線は交通量も多く側道(歩道)も殆ど整備されていないため自転車での走行は注意が必要だが、国道から枝分かれする県道や市町村道は快適に走る事ができる。

若い世代は多段変速機付きのクロスバイクで、沿線の只見川河段段丘から延びる坂を上る事ができると思う。中高年の方には電動MTBが必要だと思う。

自転車の整備(整備士)やヘルメットなどの備品の用意、そして安価ではないクロスバイクや電動MTBを有効活用するため、予約制にしてトラックで各駅まで運ぶシステムも必要かもしれない。JRの協力を得られれば、拠点駅から列車に自転車を積み込む貨客混載の検討も可能だ。

 


只見線魅力発信」プロジェクト

【概要】国内外から注目を集めるために情報を集約、蓄積、発信する一元的な受け皿を作る。

【私見】このプロジェクトは次の「只見線利活用プラットホーム構築」と同列で、早急に取り組むべき施策だと思う。

只見線の乗客、乗りたいと思う方々、寄付をどうしようかと迷っている方々、そして非降雪地帯を中心とした海外の方々が、一つの窓口で、多様で多言語、そして信頼のおける情報に接しられる事は重要だ。

ホームページの立ち上げ、SNSよる定時発信、ライブカメラ設置による映像配信、低コストですぐに取り掛かれる施策は多い。早急に「プラットホーム」を創設し、情報発信をして欲しい。

 


只見線利活用プラットホーム構築」プロジェクト

【概要】これま各地域でそれぞれ取り組んできた官民の活動を一元化し連携する。全国で6万人を超える「只見線応援団」の協力を得て、利活用の機運を高める。

【私見】この“プラットフォーム”作りは急がなければならないが、行政の癖でもある公平・公正の方針を収める必要が何よりも重要だ。

只見線には観光客を惹きつけるコンテンツにあふれているが、沿線自治体に一様にあるわけではない。コンテンツ数や認知レベルの差がある。

まずは、「第一只見川橋梁」「只見ユネスコエコパーク」「伝統工芸品」など一定の認知度があり、他地域と差別化できるものを徹底的に周知させ、集客策を実行してゆく。そして、太い幹(確かな人の流れ)を創り出すことが必要だと思う。

この後に、人の流れを各自治体が知恵を絞って取り込む事を考えれば良い。

只見線は135.2kmの長さがあり、260名(キハ40系2両編成)もの乗客を一度に運ぶ力がある。太い幹を創る事で、沿線にもたらす経済効果は少なくない。

「只見線利活用プラットホーム」は、この太い幹を創るための組織でなければならない。

行政からのお墨付きや補助を受けるが、尖がって欲しいと思う。

 

「只見線利活用プラットホーム」に関わる自治体は、復旧費や上下分離経営後に維持費を支出する会津地方17市町村が好ましく、形態はNPO法人からはじめ、寄付の優遇が受けやすい認定特定非営利活動法人(認定NPO)に速やかに移行するのが望ましい。(了)

 

 

*「五能線」参考記事等:

・JR東日本 秋田支社「五能線リゾートしらかみの旅

・国土交通省「第16回 日本鉄道賞」(2017年9月29日)(PDF)

  →特別賞「沿線地域の魅力をつないで走る五能線『リゾートしらかみ』20 年」

・全国町村会:町村長随想「五能線は健在なり-秋田県八峰町長 加藤和夫-」(2010年1月18日)

・ITmedia ビジネスオンライン:「地方創生のヒントがここにある:廃止寸前から人気路線に復活した「五能線」 再生のカギは“全員野球”の組織」 (2016年9月6日)

・PHP Online衆知:「五能線にみる「秋田発」のイノベーションと地方創生(2016年7月23日)」遠藤功(ローランド・ベルガー日本法人会長)

 

 

 

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【只見線への寄付案内】

福島県はJR只見線全線復旧後の「上下分離」経営での維持費や集客・地域振興策の実施費用として寄付を募集中(クレジット可)。

・福島県ホームページ:只見線復旧復興基金寄附金・只見線応援団加入申し込みの方法

 

 

寄付金の使途は以下の通り。

・お寄せいただいた寄附金は、福島県、会津17市町村や新潟県などで 組織する「福島県JR只見線復興推進会議」で協議の上、只見線の復 旧や利活用促進のため使われます。(「只見線復旧復興基金寄附金募集」チラシより)

・ 寄附金は、只見線を活用した体験型ツアーや周遊ルートの整備、 只見線関連コンテンツの充実化等に活用させていただきます。 日本一と言われるロケーションだけに頼らない観光振興を推進し、 新たな観光収入の増加を図ります。 (「JR只見線企業版ふるさと納税(地方創生応援税制)の御案内」より)

 

 

よろしくお願い申し上げます。


次はいつ乗る? 只見線

東日本大震災が発生した2011年、「平成23年7月新潟・福島豪雨」で一部不通となっているJR只見線。 2017年6月19日に福島県とJR東日本は復旧の基本合意書を締結し全線復旧が内定しました。 ブログでは車窓からの風景や沿線の見どころを伝える「乗車記」等を掲載します。

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