「只見線復旧工事起工式」 2018年6月15日

平成23年7月新潟福島豪雨」(2011年7月27~30日)被害で運休となり、約6年を経て復旧が決定したJR只見線の復旧工事起工式の様子を見ようと、会場となる金山町に只見線を利用し訪れた。

復旧工事には約3年かかる予定で、只見線は災害運休から10年振りに全線復旧するという国内鉄道史最長の記録を更新することになる。

 

「平成23年7月新潟福島豪雨」で只見線(135.2kmの)は約85%にあたる113.9km(会津坂下~小出)区間が運休に追い込まれた。

 *記事出処:福島民報 2011年7月30日付け紙面より

以後、JR東日本(東日本旅客鉄道㈱)は多額の費用を掛け、順次復旧させてきた。

【JR只見線 運休から一部復旧の経緯】
2011年7月29日 運転見合わせ 会津坂下~小出(113.9km)
 
2011年 8月7日 運転再開 会津坂下~会津宮下(23.8km)
2011年8月11日 運転再開 大白川~小出(26.3km)
2011年12月3日 運転再開 会津宮下~会津川口(15.4km)
 ⇒復旧費用(JR東日本負担) 約5億円 *会津坂下~会津川口間
2012年10月1日 運転再開 只見~大白川(20.8km)
 ⇒復旧費用(JR東日本負担) 約2億円

 *出処:東日本旅客鉄道㈱ 「只見線の状況について」(2016年11月30日)(PDF)

 

復旧が進む中にあって、鉄橋が4箇所で流出・破損するなどし被害が甚大だった会津川口~只見間(27.6km)は流出鉄橋の撤去工事(費用約21億円)があっただけで再開通にはいたらず、代行バスでの運行が続いている。

この会津川口~只見間は電源開発㈱が田子倉発電所(ダム)建設の為に敷設した「田子倉発電所建設用専用鉄道」路線が前身で、当時の国鉄が不承不承引き継いでいる。当時から沿線人口が少なく『採算が採れない』と買取を拒否した国鉄を国が押し切り引き継がせたという歴史を持つ。国鉄の懸念通り、この区間は只見線全線で最も利用者が少ない“不採算区間”のまま、2011年7月に災害運休となり、当然の如くJR東日本は復旧に難色を示し続けた。

  *記事出処:福島民報 2013年5月13日付け紙面より


しかし、JR東日本と福島県と沿線自治体を中心とした協議の中で、復旧区間だけを福島県が保有するという全国初の「上下分離」(公有民営)方式で運営し、運行経費を福島県と会津地方17市町村で負担し続けるという国内鉄道史初の手法が挙がり、只見線は復旧に向けて進むことになる。

 *記事出処:福島民報 2017年2月1日付け紙面より

路線や駅などの土地や構造物を保有するということは、自然災害などで損壊した場合、復旧する責任を持つ事になる。相当踏み込んだ決断をしたことになる。

 

そして、昨年6月19日にJR東日本と地元自治体を代表した福島県が正式な協定を結び、只見線は復旧される事になった。

地元(自治体)の復旧させたいという“熱意”と、2/3の復旧費用搬出と上下分離での施設保有と経営参画、運営費負担という“覚悟”が、只見線の復旧を渋り続けたJR東日本を翻意させた。

 *記事出処:福島民友新聞 2017年6月20日付け紙面より

只見線の復旧工事は歴史的な事業で、復旧後の利活用も含めローカル線を抱える自治体や鉄道関係者の注目を浴び続ける事になる。

起工式の模様は、NHKと全民報の夕方のテレビニュースで特集という形で大きく報道されていた。

 *テレビ画面出処:福島放送(5ch)「スーパーJチャンネル」2018年6月15日

 

 

私は只見線の“第二の全線開業”を実現する工事の始まりという節目をこの目で見たいと、仕事の休みを合わせ起工式会場が設営された金山町に向かった。

 

今日の旅程は、前泊した会津若松から只見線の始発列車に乗って、現在の終点である会津川口まで行く。そこから輪行した自転車で金山町の運休区間を見て回った後、「大塩炭酸場」と「大塩温泉 共同浴場」を利用する。

そして、11時開始の起工式の様子を時間の許す限り見て、11:56会津横田発の代行バスに乗り、列車を乗り継いで郡山に戻るというもの。

 

  

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今朝6時前の会津若松駅の上空。一面雲に覆われていたが、明るく雨は降らない予報は当たるだろうと思った。

切符を購入し、改札を通り連絡橋を渡り只見線のホームに向かう。橋上から列車を眼下に磐梯山方面(右手)を見るが雲にすっぽり覆われていた。

6:00、列車は定刻に出発。私の乗る車両は10名に満たない客の姿があった。

 

終点の会津川口までは1,140円。

会津若松までは「Wきっぷ」を利用しているが、郡山から報復4,000円を超える。郡山と只見の往復は5,000円を超える。休日は「小さな旅ホリデーパス」(2,670円)で当日限りだが往復・途中下車が可能になり、只見線の旅が手ごろになる。

私は宿泊を想定した“連続2日間利用可能、曜日限定無し、往復、途中下車可能”な「(仮称)只見線ツーデイパス」を3,000円(税込み)で設定すべきだと思う。

 

列車は七日町西若松会津本郷を経て会津美里町に入り、会津高田根岸新鶴を過ぎて会津坂下町に入る

若宮を出発すると北東にある湯川村に続く田園の広がりに圧倒される。

会津坂下で客の大半を占めていた高校生を降し、車内は閑散とする。

会津若松行きの列車とすれ違いを行った後に会津坂下を出発し、直後に七折峠への登坂を始める。塔寺会津坂本を経て、柳津町に入り会津柳津郷戸と各駅に停車してゆく。

 

滝谷を過ぎ滝谷川橋梁を渡り三島町に入る。

 *以下、各橋梁のリンク先は土木学会附属土木図書館(http://www.jsce.or.jp/library/archives/index.html)「歴史的鋼橋集覧

 

会津桧原を経て「第一只見川橋梁」を渡る。東北電力㈱柳津発電所の調整池である柳津ダムにより只見川はダム湖となっている。

只見川は正面右に見える日向倉山(605m)の手前で大きく東に蛇行しているため“湖”に近い見え方になっている。柳津ダムの貯水量も上位で安定しているため湖面の“水鏡”も安定した美しさがある。

 

名入トンネルを抜け、会津西方を経て「第二只見川橋梁」を渡る。

“アーチ3橋(兄)弟”の“長男”である大谷川橋梁を渡り、“次男”宮下橋を見下ろしながら列車は減速する。

 

7:29、会津宮下に停車。会津若松行きのラッピング車両を連結した列車とすれ違いを行う。

只見川をイメージした青緑色がベースとなっている。今日の只見川はこの色に近いと思った。

列車は5分停車に出発。東北電力㈱宮下発電所とその調整池である宮下ダムを右に見ながら進み、宮下ダム湖の直側を掛け抜ける。

只見川の姿が一時消えるが「第三只見川橋梁」を渡る際に再び現れる。正面には国道252号線のスノーシェッドが見える。

 

 

滝原トンネル、早戸トンネルを抜け早戸を経て金山町に入り、直後に「細越拱橋」(めがね橋)を渡る。

電柱電線が無く、丈のある木々が植生していない開放された空間で、現在線内で最も非電化路線の醍醐味を感じられる場所だと思う(復旧すれば、叶津川橋梁(只見町、372m)が最高の開放感を味わえる)。


会津水沼を出発すると下路式トラスの「第四只見川橋梁」を渡る。

下路式のため、上路式の「第一」から「第三」と違い、鋼材が視界を邪魔することになる。

復旧工事で再建される「第六」と「第七」はこの下路式トラス橋に変更される予定だ。

 

東北電力㈱上田発電所と上田ダムを北に見て、列車は進路を西から南に変える。

会津中川を経て、大志集落を抜け、前方に上井草橋を見ながら列車は減速する。

只見川(上田ダム湖)には小さな波が立ち、完璧な水鏡とはいかなったが、青緑の表面に新緑のコントラストが映り込み、まずまずの絵だった。

8:01、終点・会津川口に到着。県立川口高校の生徒を中心に20名ほどが下車した。


この先が「平成23年7月新潟福島豪雨」被害で約7年間運休になっている。信号は赤のままだ。

この列車は折り返し、会津若松行きになるため、おばあちゃんが乗り込もうとしていた。

ホームと列車床の間に出現する段差。高齢者には大き過ぎる仕事となる。

赤字ローカル線の段差解消事業まで投資できない事情は理解できるが、移動式でも良いので、一ヶ所だけでもスロープを設置するだけの資金力と知恵をJR東日本は持っているはずだ。是非、実現して欲しい。


駅舎を抜けると、駅頭ではテレビ局のカメラが代行バスを取り囲んでいた。復旧起工式の関連したニュース番組の取材だろうが、報道陣が来る事を聞いていなかった運転手は困惑した様子だった。

ちなみに、この様子は夕方の福島県内のニュースで放送されていた。

 

私は輪行バッグから自転車を取り出し組み立てて、只見線とほぼ平行して走る国道252号線に乗り出す。

 

野尻川を渡り国道から旧道に入り、会津川口駅から500mほどの只見川に進んだ場所に立ち寄る。

7年間の雑草の堆積物の上に、今季の雑草が生えて、運休期間の長さを改めて思い知らされた。

   

国道に合流し西谷地区の丘を越え、下る途中で右手(北)に目を向けると「第五只見川橋梁」が見える。

豪雨災害により会津川口寄りの1間の橋桁が流出した。

「第四」と同じ下路式トラスとブレードガーターの混成橋だが、只見川(上田ダム湖)の水位が高い事が多く、水鏡が期待できる。今日もはっきりと写り込んでいた。

復旧費用は約3億円で、運休前と同じ形状で復旧される。

 *下図出処:東日本旅客鉄道㈱「只見線の状況について」(2016年11月30日・12月1日)(PDF)  以下、同じ。


国道にかかる西谷橋から大きく蛇行する只見川と東北電力㈱本名変電所と本名発電所と一体化した本名ダムを見る。

8:30、本名駅に到着。“会津”が冠らず、集落の中にある沿線では特異な駅だ。

東北電力㈱本名発電所と本名ダムはここから500mほど西南の位置にある。豪雨被害前はダムの前を只見線が横切っていた。右(会津川口)側の橋桁と対岸の橋脚が只見線の「第六只見川橋梁」のものだ。


国道に戻り只見線本名架道橋を潜り抜けた先に広がる本名バイパスの工事現場を見る。

バイパスの大半を占める本名トンネルの掘削が1,429m中、343mまで進んでいると掲示があった。

 

坂を上り、発電所と一体化した本名ダムの天端(本名橋)に向かい右に直角に曲がるとフェンスが切れた場所で「第六只見川橋梁」があった空間を見下ろす。

「第六」橋梁を流出させた豪雨時の激流の様子が当時の金山町広報の表紙に載っている。

復旧工事は先行して始められていて、橋脚の撤去が終わり、次の工程が進められているようだった。

前述の通り、ここは見晴らしの良い上路式から鋼材が車窓に現れる下路式に変わる。復旧費用は約16億円。

「第六」は高度があり列車内からの見晴らしが良い。今からの設計変更は難しいかもしれないが、観光路線ならば最新の技術で災害時想定水位を避けられる上路式トラス橋にすべきだったと強く悔やまれる。


国道を進む。本名橋(天端)を再び直角に左折し本名スノーシェッドに入ると、大型車両のすれ違いに遭遇した。

この狭隘さが本名バイパスが作られた理由の一つになっている(他、老朽化など)。

只見方面は住民の高齢化率が高く人口減少が進んでいるが、国内屈指の水力発電エリアで、ダムの保守に大型車は欠かせない。只見線にとってもダムの浚渫事業は必須で、10トンダンプなど車両が安全に往来できる環境は必要だ。

本名バイパスの総事業費が約110 億円で国が55%、福島県が45%を負担するという。只見線等の鉄道に充てられる国費との差は小さくないが、このバイパスが大きな自然エネルギーインフラを支える為に建設されている事を考えると妥当性があると思える。この作業車のギリギリのすれ違いを見て実感できた。

 *参考:福島県「本名バイパス 平成29年度事業別評価調書」(PDF)

  

スノーシェッドを出ると“本名バイパス”の接続予定箇所に着く。新し本名橋(仮称)が大きなカーブを描きこの現道に接続する。

この接続予定箇所に「民宿橋立」がある。

私はこの付近に新たな駅「(仮称)会津橋立」を作って欲しいと思っている。現在、代行バスの「湯倉入口」という停留所がある。


ここには湯倉温泉があり、かつて橋立温泉もあり再掘削すれば湧出する可能性もある。只見川の両岸に温泉があるという特異な場所となる。只見線内最長(県境の只見~大白川間は除く)の駅間(6.4m)であり、駅を新設する条件の一つもクリアし、そして新駅は只見線135.2kmの中間駅、“ヘソの駅”となる。

そして、何より「会津」の名の発祥地である御神楽岳(新潟県、旧会津藩領)の登山口最寄りとなり、“聖地への入口”ともなる。御神楽岳は会津総鎮守でもある伊佐須美神社の創建の地で、南に隣接する本名御神楽(福島県金山町)の山頂付近にはには祠があるという。

(伊佐須美神社HPより引用)『古事記』には「大毘古命は先の命のまにまに、高志国に罷り行きき。ここに東の方より遣はさえし建沼河別、その父大毘古と共に相津に往き遇ひき。かれ、そこを相津と謂ふ。ここを以ちて各遣はさえし国の政を和平して覆奏しき。ここに天の下太平けく、人民富み栄えき。」とあり、“会津”地名発祥の由来と創始を共にしております。

オーナーの了解が必要だが、民宿裏の近いところを只見線が通過している為、1面のホームだけを作り、連絡道を設け民宿の一部に待合室などの駅機能を設置させて頂ければ10億円と言われる新駅設置費用は大きく抑えられるのではないだろうか。

国道を進むと間もなく湯の岳(612m)の東壁にある地蔵岩が見える。案内板には次のように記載されていた。

地蔵岩
只見川の川向いに見える湯の岳の一部の岩が地蔵菩薩に似ていることから地蔵岩と呼んでいます。地蔵尊と子供の結びつきは強く、親しみを深め子守地蔵とも呼び、子供達が健やかに成長することをお祈りしています。

 

国道を進む。

戦国期の大布蟹・小布蟹古戦場跡が現れる。只見線の橋立トンネルと大深入沢橋梁が見える。

この地を治めていた“会津四家*”と呼ばれた山ノ内氏が伊達政宗軍の侵攻を『山上から大石、大木を放ち落とす石弓の戦術で』妨げ、伊達軍の進路変更を強いたという。

 *会津四家:葦名家(黒川)、長沼家(南山)、山ノ内家(金山谷)、河原田家(伊南郷)

 

国道を進み、長く緩やかな上り坂が終わる場所に越川道陸神(道祖神)跡がある。レールの周囲は草刈がされていた。豪雨被害の少ない箇所はこのようにして路盤の点検をするのだろうか。

この付近、写真左手の木々の向こうに只見川が流れている。木を伐採し、電線を地中化できれば野趣味ある岩肌の川岸が見られる景観スポットとなる。

伐採による道路法面の強度などを調査し、可能な限り開放的な空間を創出して欲しい。

 

国道を進み越川地区に入ると、駅付近に大きな工事現場が現れる。東北電力㈱発注の「本名(発)調整池上流船着場設置工事」だ。

「下流船着場」は先ほどの大布蟹・小布蟹古戦場跡前に完成済みで、ダム湖堆砂除去を進めている。豪雨などの増水時に只見線に影響が出ないためにも、着実確実に堆砂浚渫工事を進めて欲しい。また、その際は除去土の土捨場が只見線からの景観に影響しない場所に確保されるようにして欲しい。

 *参考:国土交通省 第11回 平成23年7月新潟・福島豪雨での 只見川等の災害に関する情報連絡会 東北電力㈱「地域の安全確保に向けた取り組みについて」(平成26年7月8日)(PDF)

 

この「上流船着場」から国道を挟んで、少し入ったところに会津越川駅がある。

地域住民による請願駅の一つだ。

 

駅から600mほど西に進むと只見川電源開発の先鞭をつけた東北電力㈱伊南川発電所がある。

只見町小林地区で只見川に注ぐ伊南川の水が分岐され、9.5kmの水路トンネルを経て、有効落差109mの水勢でタービンを回し、最大19,400kwを出力している。

 *参考:拙著「金山町「東北電力 伊南川発電所」 2017年 初夏

 

只見線はこの構内を横切っており、列車は3本の水圧鉄管跨ぐ伊南川発電所橋梁を渡る。

伊南川発電所橋梁の建設は発電所構内ということもあり、特別な困難があったという。

(引用)発電所より約10m離れるに過ぎない所に新設されるため、設計並びに施工については架空線などが繁雑しているので慎重を期し、東北電力K.K.と綿密なる協議をなし発電所を中心として150m内における火薬の使用は厳禁されたので根掘その他の作業に予想以外の困難がともなった。*出処;国鉄 新橋工事局「田子倉発電所建設用専用鉄道工事誌」p230

 

国道を約3kmほど進む。

9:28、側道に入り左折し会津横田駅に到着。

駅の近くには山ノ内家の屋敷跡があり地域の中心地という面があり、只見線運休区間では最も居住者の多い場所だ。

金山町はこの駅前にある住宅を改修し、除雪の負担軽減などを目的に冬期の生活支援の場所なる多目的共同住宅(上横田共同住宅)を今年の5月1日に開所した。高齢化率が福島県で最も高い金山町の試金石となる施設が会津横田駅前にある。只見線と組み合わせた利活用も十分可能だと思われる。今後に注目したい。

 *記事出処:福島民報 2018年5月2日付け紙面

 


駅から近い国道にかかる“新”二本木橋から横田地区を見る。

只見川沿いの護岸工事の状況を見る。この狭隘部は水位がかなり上昇し二本木橋を流出させた。住宅も、これほど高い位置にありながら大きな被害を受けたという。

只見川の反対側(上流)を見ると、流出した「第七只見川橋梁」で残った橋桁が見える。水色の橋は豪雨での流出を免れた町道の四季彩橋。

国道から只見線に沿う町道を走り、「第七」橋梁に近づく。

残った橋桁越しに、対岸のコンクリート製の橋脚を見る。

無事だった四季彩橋。中路式ローゼ橋のため増水の影響を受けなかった。

この四季彩橋上から「第七只見川橋梁」を見る。川床に設置された橋脚が痛々しい。

前述の通り、この「第七」も上路式から下路式トラス橋に変わり、景観が一変する。

四季彩橋が無事だった事を考えると、自然な形状変更だ。

復旧費用は約14億円。設計は終わっていると思うが、色は四季彩橋との共存を考えて塗って欲しい。

 

町道を進むと雑草に覆われた鉄路越しに、式典会場となっているテントが見えた。梅雨時の為か、“壁”付きの閉ざされた仮設で近づきがたい印象を受けた。

この「第七」を式典出席者の何人が見たかは定かでないが、流出鉄橋のそばで節目となる起工式が行われる事は素晴らしいと思った。

 

起工式は11時開始。さらに町道を進む。

 

9:44、「第七」橋梁から800mほど西にある会津大塩駅に到着。

住宅地からは離れていて、駅舎だけを映すことが可能だ。電柱電線を地中化すれば映画のロケなどに使えそうだと個人的には思っている雰囲気の良い駅だ。

 

 

この先も運休区間は続き、滝トンネルを抜けると只見町に入る。只見町内の様子は先月訪れた際の画像を使う。

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駅は2つあり、補修される大型の橋梁は1つ。

会津塩沢駅。「河井継之助記念館」の最寄りで、個人的に会津川口側に移設すべきだと思っている。

 

運休区間最大の費用がかかる「第八只見川橋梁」。

路盤の修繕や補強など、橋脚の前後1,000mにわたり施される。復旧費用は約25億円で、工費中最大だ。

 

会津蒲生駅。「只見四名山」の一つである“会津のマッターホルン”こと「蒲生岳」の麓にある。登山拠点となる駅だ。

5月にはカタクリの花が咲く公園も目の前にある。

 

次駅は只見で、それより先は終点・小出まで運行されている

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金山町の運休区間の様子を見終わり、予定通り時間が空いたため近くにある「大塩炭酸場」と「大塩温泉 共同浴場」を利用することにした。

 

炭酸場に移動。5分とかからず「大塩炭酸場」に到着する。

井戸には丸太組みの屋根が掛けられている。

井戸を覗くと水位が下がっていた。

だが“コポッコポッ”と音がするので、炭酸水が湧き出てるのは間違いないと思った。


取水にはヤカンを使うようだ。

ペットボトル一杯に炭酸水を入れ、炭酸場を後にする。

 

国道に戻り「共同浴場」に向かう。途中、起工式の案内板があった。

 

5分程で「大塩温泉 共同浴場」に到着。

3度目の訪問。協力金300円を箱に入れて中に入る。変わらぬ、清潔な館内。

「共同浴場」の前には只見川が流れ、浴室から眼下に見る事になる。

只見川に温泉が排出され、河岸には析出物が堆積していた。

「大塩温泉 共同浴場」の概要は以下の通り。

[泉質] ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩温泉
[泉温] 38.3℃(pH値6.46)
[泉質別適応症] 切り傷、やけど、慢性皮膚病、慢性婦人病など
[一般適応症] 神経痛、筋肉痛、間接痛、くじき、痔疾、冷え性など

 

浴場には2名の先客があり、私の後にも1名が来られた。

湯はかけ流しだが、加温されていながらも少しぬるめだった。露天風呂も使用可能で、湯船に浸かりながら只見川を見る事はできないが、外気を浴びながらの入浴は気持ち良かった。

「共同浴場」では30分ほど滞在した。

 

国道に戻り、旧町営野球場跡に向かう町道に入る。

野球場は予定通り芝生が養生されグラウンドゴルフ場になろうとしていた。

起工式会場は只見線の線路寄り、グラウンドの奥にある。

別の道から会場を見る。巨大な仮設テントの前には砂利が敷き詰められ、多くの車が停められていた。何人かの地元の方も会場に入っていった。

テント前は多くの人であふれていた。緑の腕章をつけているのがJR東日本職員で、20名前後の方がせわしなく動いていた。

次から次へと来賓が到着し、JR職員は恭しく出迎えていた。

10:49、内堀知事も黒塗りのバンで乗り付けた。周囲が騒がしくなる。

 

警備員に聞いたところ、話合いが持たれたが、一般人の入場は不可となったという。式場には一部工事関係者の作業服以外、スーツ姿のお歴々が次々と入っていった。

10:56、司会者の声がマイクを通り外まで聞こえてきた。そして、11時を待たずに起工式が始まった。

架設テントでありながら、内部はほぼ完ぺきに覆われ、中の様子を伺い知る事はできなかった。帰宅後、夕方のニュースを見て式典の様子を知った。

 *テレビ画面出処:テレビユー福島(6ch)「Nスタふくしま」2018年6月15日

 

式場の外では、地元のお母さん方が佇んでいた。地元席を用意して臨席させる程度の配慮ができなかったのか思ってしまった。残念な光景だった。

 

「只見線会津川口・只見間鉄道復旧工事起工式」次第は以下の通り。

一、開式の辞
一、主催者挨拶
一、御来賓祝辞
一、工事概要説明
一、鍬入式
一、閉式の辞

 

主催者挨拶ではJR東日本の常務取締役(総合企画本部長)・石川明彦氏が“地元あっての復旧”とする旨を述べ、会社としても可能な限り協力してゆくと冷静に話をしていた。

 

来賓祝辞では、まず内堀雅雄知事が『つい先ほど「鉄道軌道整備法」の一部改正案が参院を通過し、可決成立しました!』と声高らかに述べられ、『おめでとうございます!』と拍手を促していた。自治官僚から福島副知事を経た経緯から、官僚然としているかと思いきや、すでに政治家なった事に感心してしまった。知事は最後に『日本一の地方創生路線にする!』と力強く宣言していた。27億円もの巨費と、年間2億1千万円を搬出し続ける只見線の復旧・運営に主体性を持って携わり結果を出すことを内堀県政には期待したい。

 *テレビ画面出処:テレビユー福島(6ch)「Nスタふくしま」

 

続いて、国土交通省鉄道局長・藤井直樹氏がマイクを握る。「鉄道軌道整備法」改正による国費投入を見越して出席したのだろうと思った。赤字ローカル線の復旧工事ならば東北運輸局の管理職の登場と思っていたので、本省の局長を派遣した事の意味を考えてしまった。“「鉄道軌道整備法」改正による国費投入の第一号になろうとしてる只見線の責任は重いですぞ。しっかり結果を出して下さい”と暗に念押ししているように思えた。中央官庁の懸念は理解できる。地元で確実な結果を出さなければならない。

 

次は、国会会期中に手続きを経て出席した地元選出の衆議院議員(自民)が祝辞を述べた。氏は「鉄道軌道整備法」改正に奔走した中心人物で、党は氏の国会欠席と起工式出席を了承したという。氏は自らの功績を述べ、この日を迎えた事を感慨深く語っていた。政治家らしい内容と思ったが、私としては超赤字路線に国費約27億円を投入する覚悟と、只見線の今後の利活用と集客に先頭を切って対応する方に力点を置いて話をして欲しかった。カネを持ってくるだけの時代は終わり、今はカネが活かされ経済を潤し雇用を生むまでやり遂げての政治家が必要な時代だ。国会を休み起工式に出席した以上、氏の只見線に関する今後の活躍に大いに期待したい。

 

次は地元の金山町町長・長谷川盛雄氏。印象的だったのは『観光』を強調していた事。町長はテレビ局のインタビューでは『生活路線から観光路線に軸足を移していく』と宣言していた。

 *テレビ画面出処:テレビユー福島(6ch)「Nスタふくしま」2018年6月15日

 

高齢化率が県内一高く、人口減が進む町で住民利用促進を叫ぶ事はできないだろう。他局のインタビューでは町民の一人も『観光』しかない、と答えていた。

 *テレビ画面出処:福島放送(5ch)「スーパーJチャンネル」2018年6月15日  

 

只見線の運休区間は金山町と只見町をまたぐが、金山町の距離は長く、「第五」「第六」「第七」各橋梁の再架橋と補修を含め6割以上の復旧費用が掛かる。

金山町内の沿線にも見どころが多く、只見線が『観光』により経済や雇用、人口動態に好影響を与える可能性は小さくない。町長をはじめ、町民一体となって『観光』産業創出に取り組み、『海の五能線、山の只見線』と国内を問わず世界から認知されるように努力して欲しいと思った。

 

以後、地元選出の政治家の代理による祝辞などが続いたが、代行バスの時間が近づいてきたため、会場を後にした。

 

 

国道に入り横田地区を目指す。只見川に架かる二本木橋を再び渡ろうとすると、“乗ろう 守ろう つなごう みんなの只見線”、“JR只見線にみんなでてをふろう”とスローガンが載った幟がはためいていた。

 *参考:只見線にみんなで手をふろう条例(平成27年3月12日)

 

スーパーで昼食の買物をして、折り畳み自転車を輪行バックに入れて会津横田“駅”となっているバス停で代行バスを待つ。

会津横田から会津若松までは1,490円。会津若松から郡山は昨夜使ったWきっぷの残りを利用する。

時刻通りに代行バスは到着。

11:56、私を含め2人乗り込んだ。車内には2人に客の姿があった。

代行バスは会津越川“駅”、湯倉入口、本名“駅”と停まり、一人の乗降者を出す事なく国道を進んでゆく。

 

12:15、会津川口駅に到着。駅舎を抜け、ホームに向かう。会津若松行きの列車は三両編成で静かにディーゼルエンジンを振るわせていた。

12:32、定刻に出発。復路は往路と反対側の車窓から景色を見た。

 

「第四只見川橋梁」(金山町)。下路式トラス橋の車窓か見える風景。開放感が無く、景色の良さが損なわれる。

会津水沼を出発した後に見える、不動沢トンネル上の社。石段、社、トンネル、列車が周囲の自然と一体化した味のある景色だと思う。

 *参考:拙著「金山町「不動沢トンネル上の社」 2017年 初秋

 

細越拱橋(めがね橋)。三両編成だと、渡橋する姿が良く見える。

「第三只見川橋梁」(三島町)。緑深い渓谷。何にも邪魔されず風景を堪能できる上路式トラス橋の良さが堪能できる。以後の橋梁も同じだ。

「第二只見川橋梁」(三島町)。電線が邪魔だが、只見川がスウッーと延びる様を見る事ができる。

「第一只見川橋梁」(三島町)。こちら(南)側は駒啼瀬の難所を見る事ができる。1971(昭和46)年まで、左(東)の河璧には国道(川井新道)が岩を穿つように通っていたという。荷台を引く馬(駒)が泣(啼)くほどという難所であった事は容易に想像できる河岸の形状だ。

 

現在見る事ができるこれらの景色をはじめ、只見線は「第一」から「第八」の橋梁が“みどころ”の中心となる。この各橋梁からの車窓風景や橋梁を渡る車両を収めた写真をもって只見線が“絶景路線”である旨が喧伝されていて、起工式でも“絶景路線”という言葉は複数の方から何度も出てきた。しかし、国内大半の旧国鉄路線を乗った私には“絶景”という言われ方に違和感がある。只見線は“絶景路線”と言うより“良い景色が多く、多様で間断なく続く路線”だと思っている。

只見線の絶景は天候や空気が最高の状態で現れるもので、その確率は高くないという実感がある。只見線の絶景は偶然によるところが大きい。撮り鉄の方々が只見線の列車と風景を撮影した“絶景”と思える写真を見る事があるが、その光景を乗客は見られないという点も私が“絶景”に懐疑的な理由の一つになっている。

しかし、只見線沿線の車窓からの風景の質と量は他線を圧倒していると確信があり、いつ見ても良い景色と実感できると思っている。

只見町の「ユネスコエコパーク」を中心に沿線は発電用ダム以外に手つかずの自然が多く、複数のダム湖が続く只見川には湖面鏡が現れ、四季折々の周囲の自然を映し出す。奥会津地域の家々はトタン屋根の曲り家が多く昔の日本を感じられる。集落を取り囲む山々は1,000m級の低山ながら雪崩路(アバランチシュート)を持ち野趣味あふれる。そして、その中を国鉄時代から走る続けるキハ40系がディーゼルエンジンを蒸かしながら、カタコトカタコトと行く。奥会津地域手前にも会津若松から会津坂本まで、会津を支え続ける広大な田園や七折峠の登坂など見せ場もあり、新潟県(魚沼市)側は末沢川の渓谷と破間川の清流に沿うように走り、会津盆地とは違った河段段丘に広がる田園を抜けて終点の小出に至る。

只見線は全135.2km、トンネル内以外は車窓に目を向け続けても飽きない景色の多様性があり、そこに四季の変化が乗されるという国内随一の良い景色が多い路線だ。

"絶景"(Best Scenery)は、撮り鉄諸氏を中心に、その瞬間を撮った写真などをSNSなどに投稿していただき個別にアピールしてもらい、行政などでは、良い景色(Better Scenery)が多数135.2kmにちりばめられている国内随一の路線である事を念頭に集客と沿線への経済効果を狙った策を打つべきだと、私は「第四」から「第一」橋梁からの景色を見ながら考えた。

  

 

14:25、列車は無事に会津若松に到着。乗り換えて郡山に向かう。

 

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帰宅後、夕方のニュースを見ると、全ての局でこの起工式の模様を伝えていた。

 *テレビ画面出処:福島放送(5ch)「スーパーJチャンネル」 2018年6月15日

 

各局とも特集枠で映像やフリップを用い、只見線の運休から今後について分かりやすく報じていた。

復旧工事の華々しい門出を知らせるとともに、おカネにまつわる心配事も全局時間を割いていた。

まずは、復旧費用の81億円。「鉄道軌道整備法」改正で地元(福島県と会津17市町村)の負担が半減するとはいえ、27億円と巨額のおカネを支払う事になる。

  *テレビ画面出処:福島テレビ(4ch)「テレポートプラス」 2018年6月15日

 

そして、年間維持費の2.1億円。これは毎年出費(JR東日本に支払い)することになる。下図のフリップでは『只見線全体の運賃収入1.7億円』とあるが、会津川口~只見間の運賃収入は運休前で500万円という。

 *テレビ画面出処:福島放送(5ch)「スーパーJチャンネル」 2018年6月15日

 

単純計算で42倍の乗客増があって、やっと収支がゼロになる。これだけ厳しい条件を受け入れ、福島県と会津17市町村は只見線の復旧させる。

乗客数を現行水準の42倍まで増やし維持するには10年単位の努力の積み重ねが必要だろう。

運賃収入の増加は長期目標にして、只見線による沿線経済効果を得るために来訪者(観光客、撮り鉄諸氏)の滞在時間を伸ばす事とおカネを落としたくなるような物販とサービスづくりを官民一体となって速やかに確実に進め、“日銭”を稼がなければならないと私は思う。


そこで、滞在時間を増やすにはまず二次交通の整備が欠かせない。只見線の列車から降りて観光地を巡り、できるだけ長く当地に滞在していただく。夕方のニュースでも金山町復興観光課の坪井崇氏が『只見線に乗ってきた客が町内の観光スポットに行くまでの2次交通が問題になる』とインタビューに答えていた。

  *テレビ画面出処:福島放送(5ch)「スーパーJチャンネル」 2018年6月15日

  

二次交通はデマンドバスやタクシーがまず考えられるが、Uberに代表される配車サービスなども含め検討(必要であれば特区申請)し、低価格で気軽に利用できる体制が必要だ。そして、自転車も二次交通として組み込むべきだと思う。自転車は軽量でシフト付きのクロスバイクが基準で、電動アシスト付きのMTBが最善だ。いわゆるママチャリは、只見線沿線の河段段丘には不適だ。

 

私は『滞在時間を伸ばす事とおカネを落としたくなるような物販とサービスづくり』に必要な施策に、この二次交通の整備のほか、食の充実と宿の多様化が必要だと思うようになった。

 

食の充実

只見線沿線では会津坂下の馬刺しと日本酒、会津柳津の柳津ソースカツ丼、会津宮下の地鶏、只見のマトン(羊)と米焼酎ねっか、などがあるが、山間部ならではの山菜やキノコ、川魚や沼沢湖のヒメマス、そして蕎麦を只見線乗客が手軽に食べる事ができない。

私が参考にしたいのが昨年私が参加した三島町の「志津倉山 かしゃ猫ロード トレッキング大会」後に集会所で間方地区集会所でいただいた昼食。

ネリ(天日干し)の新米で作られたおにぎり、イワナの串焼き、コゴミの炒めもの、味噌焼き、漬物とアツアツの豚汁が提供された。味は申し分なかったが、ここでしか食べられない地元感満載の料理に胃袋も心も満たされ、また来たいと思った。

只見線沿線の住人が日ごろから食べているものを、遠方からやってきた旅行者は食べたいと思う。日常の食が盛り付けや器に気を遣えば、十分に商品となることを地元の方に理解していただき、協力を仰いで只見線の駅周辺で食べられる取り組みをして欲しいと思う。

 

宿の多様化

これはインバウンドに顕著かも知れないが、宿には最低限の出費で、できるだけ多くの場所に行き地元のものを食べる方におカネを使いたい、という旅行者の心理がある。国内でも個人旅行が増えている事情を考えれば、日本人にも同様に考える方が少なくないかもしれない。私も寝る場所はテントでもいいから、見て食べたい派だ。

そこで、沿線の旅館事情。素泊まりで3,300~4,000円となっている。私はカプセルホテルや仕切りの付いたフロアを2,000円程度で利用できる泊まれる場所(宿)の整備が必要だと思う。

同時に一泊二食付き7,000円という旅館の宿泊内容をPRし、観光客の選択の幅を広げて欲しい。

駅周辺の空家の改修や、敷地の広い駅の増築、既存旅館の改築など、低コストで実効性のある方法を採り、できるだけ早く実現して欲しい。

 

二次交通の整備、食の充実、宿の多様化が三本の柱ならば、これを支える基盤に二つの施策が必要だと私は考える。


基盤①:只見線専用観光列車の改造or新造SL(C11)の定期運行

五能線(147.2km、秋田県と青森県)が廃線の危機を乗り越え、観光路線としてに賑わっているのは専用観光列車「リゾートしらかみ」が運行しているからだ。現在は3編成があり、内2編成はハイブリット気動車という新型車両も投入されている。

景色を見ながら列車に乗ると体をひねるので疲れてしまう。只見線に窓に正対した座席を持つ車両は無く、是が非でも必要だ。また、135.2kmの長大路線を乗り切る場合、車内販売は必要で日本酒県である福島県と新潟県を跨ぐ列車であれば日本酒のBarカウンターがあれば訴求力は格段に上がる。只見線の観光列車は景色を見ながら日本酒を楽しめる空間を持つ編成であって欲しい。

私案として、只見線の観光列車は3両編成で前後は展望を意識した構成にして、中間車両はラウンジとBarカウンターで、10席程度地元の方が指定券無しで自由に乗り降りできるスペースを確保するという編成を考えている。

また、SL(C11)の運行だが、只見線では栃木県の第三セクター・真岡鐡道㈱から借りたC11 325号が2001(平成13)年10月から毎年運行されてきた。しかし、2016、2017年と5月末に運行されてきた「SL只見線新緑号」が今春は見送られたように、JR他線での運行などにより定期運行にはなっていないのが現状だ。只見線は山間部で、古い家並みが多く、SLとの親和性が高い。新緑・紅葉・積雪の中を蒸気を蒸かして駆け抜けるSLは、“乗って、撮って、見て”三方良しの観光コンテンツだ。

只見線専用のC11型を確保し定時運行させる事は、只見線の集客と沿線に持続的な経済効果をもたらす可能性が高い。運行可能なSL自体が少ない中、かつて只見線を運行していたC11型に限定して探し出し、保守用パーツまで取りそろえるのは難儀だと思うが、是非チャレンジして欲しい策だと思う。

観光列車とSL。優先順位は観光列車が高いが、真岡鐡道からC11 325号を借り受け運行する中でSLの可能性を探り、車両確保と定時運行を検討してもらいたい。

 

基盤②:通信環境の整備(列車内で無料Wifiが使える環境整備)

これは観光客のみならず、沿線でのテレワークや列車内でのPC作業という企業活動や雇用にも結び付く。

只見線の乗車は長い。只見~会津若松間(88.4km)で2時間30分を越える。車窓からの景色は楽しめるが、乗客がネットで沿線の観光地を調べたり、写真をSNSやクラウドにアップしたいと思うのは当然の時代だ。車内でWifiが使えるならば、利用者の満足度は上がるだろう。

また、会津大学を中心にICT都市を目指す会津若松の企業に勤め、只見線沿線に住み、只見線を通勤に使いたいと思う方が増える事も想定される。車内でWifiが使えれば、仕事を継続して行う事ができ、只見線は走るオフィスとしての機能も持つだろう。

そして各駅でも半径500m以内であればWifiが使える環境であれば、観光客は観光情報を気軽に検索することができ、企業の方は駅周辺に住みテレワークが可能になる。

只見線の通信環境の整備は、福島県立会津大学と協業して進めて欲しい。只見線の起点にあるICT先進学府である会津大学が、只見線に関わる事は自然であり、山間とICTという組み合わせとその実践は、国内の過疎化問題の解決に大いに役立つであろう。これによって只見線のプレゼンスは向上する。「上下分離方式」で只見線の経営に関わる福島県が、会津大学と只見線を結びつけるのは当然の行為だと思う。福島県には只見線内の通信環境の整備を足掛かりに、会津大学との協業を形にして、学内に「只見線ICT利活用推進室」なる部署を設け実績を上げ、全国に発信して欲しい。

 

私は基盤①只見線専用観光列車の改造or新造&SL(C11)の定期運行と基盤②通信環境の整備(列車内で無料Wifiが使える環境整備)の上に、①二次交通の整備、②食の充実、③宿の多様性の三本柱が立てば、観光客が滞在時間を伸ばし物販とサービスにおカネを落とす雰囲気、文化ができると思っている。こうなれば、中世から幕末の武家などの歴史を背景に持つ会津を走る只見線は国内屈指の観光コンテンツとして認識され、乗客は増え、沿線への経済効果は確実に発生するだろう。

 

 

福島県の動き。

只見線の利活用に関して、県は生活環境部生活交通課が事務局となっている只見線利活用プロジェクトチーム*で「只見線利活用計画」を策定し、100もの事業を行うという。関係者の大半が待ち望んでいる観光列車は「企画列車」として今年の夏から冬にかけて運行を目指し、定期運行を目指す事になっている。

 *記事出処:福島民報 2018年3月30日付け紙面より

*只見線利活用プロジェクトチーム
福島県、会津若松市、会津美里町、会津坂下町、柳津町、三島町、金山町、只見町、只見川電源流域振興協議会 、只見町観光まちづくり協会(酒井治子氏)、会津大学短期大学部産業情報学科(髙橋延昌氏)、特定非営利活動法人素材広場(横田純子氏)、ふくしま自治研修センター(吉岡正彦氏)、 国土交通省東北運輸局*オブザーバー
[事務局]福島県生活環境部生活交通課

 

上記計画書は、“「ここにしかない、ヒト・モノ・コト・イロを活かし、地域の未来を切り拓く」 只見線135.2kmの挑戦”と題して、マーケティング手法を取り入れた重厚なものになっている。

只見線の利活用を目指し「観光」「教育」「生活」「産業」の4部門から“9つの重点プロジェクト”を決め、それぞれに数値目標を定め、100事業を展開するようだ。

事業の評価も適宜行い、戦略の再検討も以下のように行うという。
・個別事業の拡大縮小、継続、中止、延期
・各段階で実施する内容と時期
・個別事業の実施状況を踏まえた戦略の方向性

走り出したら止まらない、といった一般的な行政施策とは違うようで、目標達成(只見線の乗客増から会津地域の交流人口・定住人口の拡大を図り、只見線を起爆剤とした地方創成)に向けてPDCAを繰り返してゆくという。

 

この“9つの重点プロジェクト”には、以前に私見を述べたが、守備範囲が広く福島県という広域行政が関わっているが故に対応が可能な面があると思う。県は目標達成(只見線の乗客増から会津地域の交流人口・定住人口の拡大を図り、只見線を起爆剤とした地方創成)に向けて、各施策が同じベクトルを向くように調整し、取捨選択という大ナタも振るって欲しい。公金(税金)を投入し、現在は実がならない果樹(只見線)を譲り受け育てる厳しい選択をした以上、県はその樹が確実に実を結び、会津17市町村住民をはじめとした県民がその果実(恩恵)を受けられるよう、成果を出すことを望みたい。

 *参考:拙著「復興推進会議検討会 “9つの重点プロジェクト”」(2017年12月28日)

 

 

私は只見線の乗客増と沿線経済効果が実現できる方策を考え、今後も発信してゆきたいと思う。(了)

・ ・ ・ ・ ・ ・

*参考:福島県 生活交通課 「只見線復旧に向けた検討

【只見線への寄付案内】

福島県はJR只見線全線復旧後の「上下分離」経営での維持費や集客・地域振興策の実施費用として寄付を募集中(クレジット可)。

・福島県ホームページ:只見線復旧復興基金寄附金・只見線応援団加入申し込みの方法

 

寄付金の使途は以下の通り。

・お寄せいただいた寄附金は、福島県、会津17市町村や新潟県などで 組織する「福島県JR只見線復興推進会議」で協議の上、只見線の復 旧や利活用促進のため使われます。(「只見線復旧復興基金寄附金募集」チラシより)

・ 寄附金は、只見線を活用した体験型ツアーや周遊ルートの整備、 只見線関連コンテンツの充実化等に活用させていただきます。 日本一と言われるロケーションだけに頼らない観光振興を推進し、 新たな観光収入の増加を図ります。 (「JR只見線企業版ふるさと納税(地方創生応援税制)の御案内」より)

 

よろしくお願い申し上げます。


次はいつ乗る? 只見線

「平成23年7月新潟福島豪雨」で一部不通となっているJR只見線は、2017年6月19日に福島県とJR東日本間で「復旧基本合意書」が交わされ、2018年6月15日に復旧工事起工式が開かれ、全線再開通に向けて復旧工事が本格化しました。 ブログでは車窓からの風景や沿線の見どころを伝える「乗車記」等を掲載します。

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