JR只見線全通記念日に国費投入を考える

1971年8月29日、旧国鉄・只見線が難所“六十里越え”(大白川~只見)のトンネル貫通を経て全線開業してから、今日で46年目を迎えた。現在、豪雨災害で部分運休している区間が復旧することが“内定”しているが、国費が投入される可能性も高まってきた。“国民が支える”事にもなるJR只見線について考えた。

 *上掲記事:福島民友新聞 2017年8月2日付け

 

今月1日に与党自民党の国土交通部会が「鉄道軌道整備法」の改正案を了承し、今秋の臨時国会に提出される予定だと地元紙2紙(8月2日付け)が伝えていた。

 *下掲記事:福島民報 2017年8月2日付け

21日には全国紙・毎日新聞も3面に同様の記事を掲載していた。

 *下掲記事:毎日新聞 2017年8月21日付け

只見線が国の援助を受け、復旧される事が現実味を帯びてきた。

 

只見線だけではなく、今年7月の九州豪雨での鉄道被害(JR九州)もあり、国費投入が当初の1/3から1/4に減っている事などから野党からの大きな反対も無いと予想され、9月に予定されている臨時国会に提出されれば可決成立する可能が高いと思われる。

自衛隊日誌隠蔽や加計学園獣医学部新設問題などが国会審議に影響しない事を祈るばかりだ。

 

 

鉄道軌道整備法」は被災した鉄道に対して復旧費の一部を国費で補てんする制度で、適用には条件がある。JR東日本が保有する只見線は以下の条件に該当しないため、適用されなかった。

・過去3年間の鉄道事業が赤字

・復旧費が鉄道収入の1割を超える

 

自民党国土交通部会で了承された改正案の主な補助対象要件は以下の通りで、JR只見線は全ての要件を満たすことになる。

①(被災の原因が)激甚災害に準ずる大規模災害

②災害復旧にかかる費用が被害を受けた路線の年間収入以上となる

③被害を受けた路線が過去3年間赤字

  

補助率は復旧費用の1/4ままだが、当該路線が公有民営の場合、国費負担率は1/3に上昇する。

「平成23年新潟福島豪雨」(激甚災害指定)で部分運休となっている只見線は、JR管内で初めて復旧区間の会津川口~只見間が「上下分離方式」という公有民営で営業運転されるため、1/3の国費投入となる。

 *参考:筆者ブログ「JR只見線全線復旧 正式合意」(2017年6月20日)

  

 

「鉄道軌道整備法」が自民党原案の通り可決成立した場合の国費補助1/3(27億円)は、会津17市町村と福島県が搬出する54億円に充てられると思われる。

そうなれば、復旧費に充てる予定の搬出金を只見線の年間維持費である2億1千万円に回せ、単純計算で13年間分を確保できることになる。

可能性は低いが、27億円を「只見線復旧復興基金」に積み立てられるのであれば、工夫次第で各自治体の財政状況を考慮した運用も可能になる。

 

「鉄道軌道整備法」改正案の可決成立は、財政が厳しい会津17市町村と福島県にとって朗報となる。

 


 

利用者減で赤字になる、人口減で将来の見通しがたたない地方のローカル鉄道をどうするかは議論が分かれる。

今回の自民党改正案に対しても、“復旧しても赤字が続けば路線が廃止される懸念”(前掲、毎日新聞記事)が出たりなど慎重論も多い。

 

私は、無条件に被災したローカル線の復旧に国費を投入するのは反対だ。

只見線のように、①沿線のみならず会津地方という地域全体の意向と福島県という広域自治体の意向、②運営企業(JR東日本)の判断、③当該地域の人口減=利用者減を補える乗車需要を喚起できる事由、この三つが必要だと思う。

特に③が重要で、只見線沿線には豊かな自然が広がり、只見川と5つのダムの水鏡が春夏秋冬、青空や川霧などの組み合わせ等で創り出される無二の景観は、新たな乗車需要をもたらすものだ。

私は只見線に国費が投入されることは賛成で、それに見合った効果が期待できると考えている。

 

国費が投入されることになるJR只見線はその成果を出してゆく事はもちろんだが、復旧費用を捻出する会津17市町村や福島県の住民だけではなく、国民に対しても情報発信し続けなければならない。

その為に必要な取り組みを以下の3つ提案したい。

①高齢者の利用を促し、駅周辺居住と列車移動という文化を創る
②列車を2本増発し、2時間に1列車というダイヤにする
③只見線の情報プラットホーム(NPOなど)を設置し、情報発信の基盤とする

 

 


①高齢者の利用を促し、駅周辺居住と列車移動という文化を創る

成果とは、第一に利用者を増やす事。まずベースとなる沿線住民の利用増が必要だ。現状のままでは厳しいが、取り組まなければならないだろう。

そこで、沿線利用者を絞って対策を打った方がよいと私は思う。

さらに範囲も絞る。只見線内で利用者が少なく連携が取れると思われる会津柳津~只見間(柳津町、三島町、金山町、只見町=奥会津地域)での利用者増を考える。

 

沿線住民の利用は、交通手段を持たない高齢者を想定する。

移動目的は通院買い物介護施設への通い(デイケア)とする。

通院の核となるのは、会津宮下駅徒歩圏の県立宮下病院。

買い物は徒歩圏に品揃えのある店を持つ、会津宮下、会津川口、会津横田、只見の各駅を使っていただく。会津柳津は徒歩圏には無いが、ホームセンターが隣接する大型スーパーがあるので無料シャトルバス(ワゴン車)の運行があれば買い物の幅が広がり、利用者の満足度は上がるだろう。

 

そして介護施設の通いだが、沿線の施設が社会福祉協議会で運営されている場合、隣接自治体の利用者を受け入れられるかの問題があり、広域調整が必要だが、取り組む価値はあると思う。また、沿線の駅には周囲が空地であるので介護施設建設の物理的制約は少ない。会津横田駅などは位置的にも良いのではないか。送迎車があれば、「大塩温泉 共同浴場」へも行ける。

さらに、会津大塩駅近くにある町営野球場跡地にはグラウンドゴルフ場の整備計画もある。駅から徒歩圏だ。総芝の8ホール2面という計画で地元・金山町を問わず集客できる魅力がある。沿線高齢者の健康増進度を見定め、介護予防プログラムに組み込み、利用料金値引きなどの特典を設ければ利用者増(只見線の乗客増)に繋がるだろう。

 *出処:福島民報「高齢者交流町振興の核に Gゴルフ施設整備 魅力発信」(2016年10月31日)」

 

 

このような取り組みをして、最終的に目指すのは、駅周辺居住と列車移動という文化を創る事だ。

沿線自治体は只見線から離れ、峠を越えた先に多くの小さな集落を持っている。車がなければ生活が成り立たない場所だ。現に交通弱者は居るだろうし、これから増え続ける事は間違いない。

さらに奥会津は雪が多い。小さな集落へ通じる道も除雪しなければならず、社会保障費が増える中、削られない除雪費用は自治体を悩ませている。

 

まずは、冬だけ駅周辺の高齢者施設で過ごしてもらい、そのような生活に慣れていただく。除雪から解放され、お隣さんとの会話が増え孤独を感じる事が薄れ、只見線を使った移動で歩く機会が増え、駅周辺居住と列車移動の良さを理解していただけるのではないだろうか。

その後は説明を繰り返し、駅周辺への移住のインセンティブ(引っ越し費用や住居費用の助成)などを提示し、終の棲家としていただく。

この移住に関わる担当者は、高齢者が自分の生まれ育った場所を離れたくないという強い思いを心に刻み、駅周辺への移住への明るい展望と生活への安心を感じてもらえるよう膝を突き合わせ、傾聴し根気強く説明をする必要がある。

 

高齢者が各駅周辺に住まい、通院・買い物・介護施設への通いという移動に只見線を使えば、固定された客層が生まれ、利用者のベースが底上げされるだろう。

そして、車ではない列車での移動というスタイルをもった居住環境は、首都圏をはじめとした移住希望者の注目を引き、只見線沿線が移住先として選ばれる事になってゆくのではないか。それは利用者のさらなる増加のみならず、“人が人を呼ぶ”という形で、この賑わいに引き寄せられ高齢者以外の移住者を呼び込む可能性が高い。そうなれば、さらに只見線の乗員ベースはかさ上げされる。

 


②列車を2本増発し、2時間に1列車というダイヤにする

現在のダイヤは以下の通り。*会津若松駅ホーム時刻表。右から、二列目が只見線。

これは下りダイヤだが、上りも同じ本数だ。空欄が目立ち、8時台~12台は一本も無く、通勤通学の為の運行設定となっている。また、会津坂下行きの列車が1本入っているので、会津柳津~会津川口間は一日に6本しかない。

右端の会津鉄道(旧国鉄会津線)のダイヤと比較すれば、極端に少ない事は一目瞭然だ。

これでは普段使いする沿線住民は列車をあてにしなくなるし、さらに旅行者は戸惑うことだろう。

 

「平成23年新潟福島豪雨」以前のダイヤ(2008年8月)を見ると、会津川口~只見間は一日上下3本という少なさだ。 *現在は会津川口~只見が代行バスとなっているが、列車のダイヤはほぼ変わらない。

さらに遡り、私が小学生6年生の時に使っていた時刻表(1984年8月)の只見線のダイヤを見ても「急行奥只見」があるだけで、普通列車の本数は変わらない。

只見線は30年以上、一日6本というダイヤで運行され続けた。

自家用車での移動が定着し、利用者が年々減ってゆくには十分な時間だった。

 

参考までに、会津鉄道の前身、旧会津線の国鉄時代のダイヤを見てみる。

当時は、一日に6本しかなかった。

しかし、第三セクター化され、現在は15本と倍増以上になり、最終列車も22時台に設定されている。

会津鉄道は赤字が続いているが、この体制を続けている。鉄道が機能するために必要な本数を維持し、鉄道が沿線にもたらす効果を理解し運営されているのだろう。

 

鉄道の利用者増と列車本数は、あるレベルまでは比例すると私は思っている。

費用対効果から列車の本数を減らすという経営方針は理解できるが、人口減+自家用車の普及という時代の中では、需要創出の策を打って、列車の本数を維持するというのも公共交通機関に課せられた使命だと思う。

只見線の列車本数は少なすぎる。只見線の中核である只見駅まで会津若松から行ける列車が一日3本というのは、需要創出はおろか需要放棄というべき設定だと私は考える。

 

只見線が全線復旧する時には、列車の本数を増やしたダイヤ設定をしなければならない。

JR東日本単独で難しいのであれば、「社会実験」として期間を定め福島県が費用を搬出し列車を運行させる手がある。

これには前例がある。富山県富山市が高山本線の利用促進を図って、列車の本数を増やし、駅まで新設した。同市の公共交通機関に対する取り組みは、課題は少なくないが、大いに参考になる。

 *参考:

 ・富山市「高山本線沿線地区事後評価

 ・国土交通省「富山市 公共交通計画」(PDF)

 ・㈱計画情報研究所「JR高山本線活性化社会実験における効果および今後の課題 」(200年、PDF)

 

只見線の“新”ダイヤの私案は以下の通り。

福島県の中心であり東北第3位の人口を持つ郡山市から只見町に行く利便性を高めるため、会津若松7:37発の列車は只見行きとする。

4時間以上列車無い時間帯に列車を新設し、会津若松~会津柳津~只見間の列車を概ね2時間毎に一本とする。

最終列車を只見行きにして、登山客や観光客が前日に只見入りできるようにする。

 

 


③只見線の情報プラットホーム(NPOなど)を設置し、情報発信の基盤とする

只見線の情報は、沿線自治体や観光協会、商工会、そして只見川電源流域振興協議会などがそれぞれ発信している。

しかし、只見線の情報は“one of them”、その中の一つでしかなく、薄まっているという印象がある。更に、観光情報は車やバスなどの利用者用と混在され、只見線を下りたら車を利用しなければそこに行けない、という観光客には絶望的な思いを抱かせている。

只見線とその沿線(会津川口からサイクリングも可能な昭和村も含む)の情報だけを扱うプラットホームは、絶対必要だ。

ホームページだけでも良いが、常勤の事務員が最低一人いる組織が部署の新設がベターだ。

私は、常勤職員2人(最小)、常勤事務員1人のNPOの設置がベストだと考える。

ホームページのリアルタイム更新は絶対で、SNSの管理も必要になり、常勤事務員は欠かせない。

毎日の定点撮影(第一只見川橋梁など)や沿線の情報収集、各種イベントへの出向、只見線観光関連施設の管理(案内板など)等、常勤の職員は必要で、135.2mの長大ローカル線を管理するには2人でも足りないぐらいだ。

また、NPOにすれば新潟県や只見線が走る魚沼市からの協力が得やすい。

新潟県側に常勤職員を一人置いて、新潟県側で同様の動きをしてもらえれば、情報の質が上がり、訴求力は増す。そして何より只見線が行政の枠を超えて一体化し、東北新幹線と上越新幹線という“世界的”な高速鉄道に挟まれた秘境のローカル線である認識が広まり、近い首都圏のみならず国内、そして海外での認知が進むのではないだろうか。

NPOは寄付や物販収入などの自主財源で運営されるのが望ましいが、沿線自治体や福島県の委託事業を請け、行政からの一定の“お墨付き”を戴き動いた方が、沿線住民からの広い協力が得られ易くなるのではないかと考える。行政への報告義務が生じるが、第三セクター機関よりは自由度はあるから、情報は“公平公正”より“良いもの”を重視し取り扱い情報発信できると思われる。

何より民間の側、只見線乗車や下車観光というサービスを受ける客の側に立っての活動に特化したNPOは必要で、国費投入後の需要創出=成果と情報発信に力を発揮できると、私は考える。

 


今日の地元紙に、只見線に関する記事が掲載されていた。

 *出処:福島民報 2017年8月29日付け紙面より

福島県とJR東日本が、復旧事業の費用と期間に関する協定を結び、復旧する橋梁(第五~第八)の設計などに入るという。

只見線の価値を左右する橋梁の架橋や補強にも、復旧後の乗客増(需要創出)を左右する要素がある。

 

只見線に国費を投入する大義を実現させる“道創り”が始まった。

時間は限られているが、不可能ではないと私は思う。

復旧費用や「上下分離」で運営費を搬出する行政関係者が、まずは熱を持って積極的に取り組んで欲しい。

『国税をドブに捨てやがって!』と言われる事の無いよう、私も福島県民の一人として只見線に乗車し、できる事をしてゆきたい。(了)

 

 



*追記 2018年6月22日(金)

「鉄道軌道整備法の一部を改正する法律案」可決・成立

2018年6月15日10時過ぎ、復旧が決定していたJR只見線の復旧工事起工式が開始される前に衆議院を通過した「鉄道軌道整備法の一部を改正する法律案」が参議院で可決され、無事に成立した。

これで、只見線復旧に国費が投入されることになる。金額は今後策定される政令によるというが、復旧費用の1/3にあたる、約27億円と言われている。

 

6月16日付けの地元二紙では起工式の様子とともに、法改正に関する記事が記載されていた。

福島民友新聞では一面で起工式により“工事開始”とトップで報じ、下段に「鉄道軌道整備法の一部を改正する法律案」を“只見線支援で改正法成立”と記述していた。

二面で法改正の詳細を述べ、“鉄道復旧、黒字会社も支援 改正整備法 被災条件に対象拡大”と見出しを打っていた。


もう一方の、福島民報は二面で起工式の模様と法改正決定を合わせて報じていた。

国費、日本国民から税投入を受けて只見線は復旧される。

沿線自治体はともより、復旧費用や「上下分離」による経費負担をする会津17市町村と福島県は広く国民に情報を発信し、只見線の集客や利活用の実績を出してゆかなければならない。

 

  

・ ・ ・ ・ ・ 

*参考:福島県 「只見線の復旧・復興に関する取組みについて

【只見線への寄付案内】

福島県はJR只見線全線復旧後の「上下分離」経営での維持費や集客・地域振興策の実施費用として寄付を募集中(クレジット可)。

福島県ホームページ只見線復旧復興基金寄附金・只見線応援団加入申し込みの方法 

 

寄付金の使途は以下の通り。

・お寄せいただいた寄附金は、福島県、会津17市町村や新潟県などで 組織する「福島県JR只見線復興推進会議」で協議の上、只見線の復 旧や利活用促進のため使われます。(「只見線復旧復興基金寄附金募集」チラシより)

・ 寄附金は、只見線を活用した体験型ツアーや周遊ルートの整備、 只見線関連コンテンツの充実化等に活用させていただきます。 日本一と言われるロケーションだけに頼らない観光振興を推進し、 新たな観光収入の増加を図ります。 (「JR只見線企業版ふるさと納税(地方創生応援税制)の御案内」より)

 

 

よろしくお願い申し上げます。

 

次はいつ乗る? 只見線

東日本大震災が発生した2011年の「平成23年7月新潟福島豪雨」被害で一部不通となっているJR只見線は、2017年6月19日に福島県とJR間で「復旧基本合意書」が交わされ、2018年6月15日の復旧工事起工式を経て、2021年度中の全線再開通に向けて工事が本格化しました。ブログでは車窓の風景や沿線の見どころを伝える「乗車記」等を掲載します。

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