金山町「貉ヶ森山」登山 2021年 秋

観光鉄道「山の只見線」”沿線の「会津百名山」登山。今日は、今年のゴールデンウィークに登頂を断念し、途中で引き返すことになった金山町の一等三角点峰「貉ヶ森山」(1,315.1m)に再び挑む事にした。

 

「貉ヶ森山」は、金山町の北西部、新潟県との県境にある一等三角点の山。以前は“人を寄せ付けない山”、“登るのが困難な一等三角点峰”と呼ばれていた。しかし、、山頂から北へ1.3㎞にある塩ノ倉峠(1,130m)を頂点とする、林道本名室谷線が整備され、一転、登頂は容易になったという。

今年5月、この山に挑んだが、積雪+冷雨+低温+時間不足という理由で山頂が見える林道途中で引き返した。

 

「貉ヶ森山」は「会津百名山」の第46座で、「会津百名山ガイダンス」には、次のような見出しで紹介されている。*出処:「会津百名山 ガイダンス」(歴史春秋社) p138

貉ヶ森山 <むじながもりやま> 1,315メートル
低いながらも会越国境の奥深い山の魅力を感じさせ、山頂からは北方に御神楽岳、そして前衛峰の前ヶ岳の岩壁を一望できる。[登山難易度:中級]


*他、「貉ヶ森山」の詳細については、前回の記録(拙著「金山町「貉ヶ森山」登頂断念 2021年 春」(2021年5月3日))を参照。

 

 

今日の旅程は以下の通り。

・前泊した会津若松から、只見線の始発列車に乗る

・会津川口到着後、構内にある金山町観光協会 電動アシスト付き自転車をレンタルする

・会津川口駅から、レンタルサイクルで、塩ノ倉峠に向かう

・塩ノ倉峠から「貉ヶ森山」登山を開始する

・「貉ヶ森山」登頂後、時間があれば、北にある「日尊倉山」に登る

・塩ノ倉峠から会津川口駅に戻る *レンタルサイクルの返却期限は15時

・駅でレンタルサイクルを返却し、今夜の宿である「民宿 朝日屋」に向かいチェックインする

 

天気予報は曇り時々晴れで、初雪があったとも聞いていなかった。紅葉も見頃ということで、眺望に期待し「貉ヶ森山」山頂を目指した。

*参考:

・福島県:只見線ポータルサイト

・東日本旅客鉄道株式会社:「只見線(会津川口~只見間)復旧工事の完了時期について」(PDF)(2020年8月26日)

・拙著:「次はいつ乗る?只見線」カテゴリ ー只見線沿線の“山”(登山/トレッキング)ー / ー只見線の秋

 

  


 

 

昨夜、富岡町から会津若松市入りし宿泊。今朝、只見線の始発列車に乗るために会津若松駅に向かう。夜半の雨は止んでいて、上空の雨雲が切れ、薄紺の空が見えていた。


  

輪行バッグを抱え駅舎に入り、切符を購入してから改札を通り連絡橋を渡り、只見線のホームに向かった。橋上からこれから乗り込むキハE120形を見下ろすが、いつも右奥に見えている会津百名山「磐梯山」(1,816.2m)は雲に覆われていた。

6:03、会津川口行きの列車が会津若松を出発。私が乗った後部車両には他1人の客の姿があった。

 

  

切符は会津川口までで、1,170円。金山町や只見町に泊まりで行く場合、2日間有効のフリー切符があればといつも思う。

 

 

 

 

列車は、七日町西若松を経て、阿賀川(大川)を渡る。前方の会津平野の田園地帯には鼠色の雲が広がっていた。

  

 

会津本郷を出発直後に会津美里町に入り、会津高田を出ると、列車はまもなく右大カーブを駆け抜け、進路を西から真北に変えた。

  

 

根岸を過ぎ、新鶴手前で西部山麓を見ると、“巨大山脈”のような雲の塊がその上に現れていた。

 

 

 

  

列車は若宮から会津坂下町に入り、会津坂下に停車。反対側のホームには、上り列車を待つ多くの高校生がいた。

  

  

会津坂下を出発すると、陽が差し、刈田を照らした。列車は出力を抑えたディーゼルエンジンを豪快に蒸かして、七折峠の登坂を始めた。

 

峠に入る手前で、振り返って会津盆地を眺めた。朝、澄んだ空気の中で陽光が差している時、一段と美しく見える車窓からの風景だ。

 

 

 

  

列車は、峠の中の塔寺を過ぎてしばらくして登坂を終え、会津坂本を経て柳津町に入った。会津柳津出発直後に、山の上部にある柳津温泉スキー場跡を見ると、虹が掛かっていた。

ただ、この後、陽光は遮られ、車窓から見える風景はどんよりとしてしまった。 

 

 

   

郷戸手前の“Myビューポイント”から、会津百名山「飯谷山」(783m)を見ると、霞んでいたが、山の稜線は見えた。

  

 

滝谷出発直後には、滝谷川橋梁を渡り三島町に入る。渓谷の紅葉は始まったばかりだった。*以下、各橋梁のリンク先は土木学会附属土木図書館デジタルアーカイブス歴史的鋼橋集覧

 

 

 

 

 

  

列車は会津桧原を出て、桧の原トンネルを抜けると「第一只見川橋梁」を渡った。空は一層暗くなり、小雨も降ってきた。*ダム湖(只見川)は東北電力㈱柳津発電所・ダムのもの

 

 

 

 

会津西方を出発直後には「第二只見川橋梁」を渡った。上流方向にある会津百名山「三坂山」(831.9m)の稜線は、雨雲を通してうっすらと見えた。*ダム湖(只見川)は東北電力㈱柳津発電所・ダムのもの

 

 

 

会津宮下では、上り列車とのすれ違いを行った。

 

 

 

列車は会津宮下を出発し、東北電力㈱宮下発電所と宮下ダムの脇を駆け抜けると「第三只見川橋梁」を渡った。下流側を見ると、山肌が色づき始めているのが分かった。

  

 

早戸に停車。ホームの下段には菊が咲いていて。秋を感じる事ができた。

 

  

早戸を出発すると金山町に入り、8連コンクリートアーチ橋・細越拱橋を渡った。

 

 

会津水沼を出て、まもなく「第四只見川橋梁」を渡った。*ダム湖(只見川)は東北電力㈱宮下発電所の宮下ダムのもの

 

 

列車は会津中川を経て、只見川に近づき、終点を告げる車内放送が流れる中で減速し、前方に林道の上井草橋を見ながら進んだ。 

 

 

振り返って、車窓から只見川に突き出た大志集落を眺めた。*ダム湖(只見川)は東北電力㈱上田発電所・ダムのもの

  

 

 

   

8:06、終点の会津川口に到着。ここから先只見までの27.6kmは「平成23年7月新潟・福島豪雨」で運休している。

 

観光客と思われる方を中心に、10名ほどの客が降りた。



輪行バッグを抱えホームから駅舎に入り、駅頭を見ると只見行きの代行バスが待機していた。列車に乗っていた数人が、乗り込んでいった。

 

 

  

 

今回は、電動アシスト付き自転車を借りようと計画した。レンタルサイクルは駅舎の西にある、みんなのトイレに駐輪されていた。*参考:金山町「金山町レンタサイクルマップ完成しました

 

申し込みは、駅舎内にある金山町観光情報センターで行う。私は、事前に電話連絡し予約しておいた。

 

 

駅頭にも、レンタルサイクルが置かれていた。スタッフの話によるとレンタルサイクルは2種あり、どちらも電動アシスト付きだが、金山町が調達した赤色と、県の会津振興局が調達した黒色で分かれているという。

 

金山町の“赤”は、Panasonic社製の「ビビ」 。

 

ハンドルに①電動アシスト機能の電源、②アシスト力の調整等ができるボタンが付いていた。

  

  

私は今回、振興局の黒を選んだ。売店を併設した、駅舎内の金山町観光協会で受付をし、保証金1,000円を預けたのち、バッテリーを装着してもらい、駅頭に運んだ。

 

振興局の自転車も同じPanasonic社製だが、機種は“ママチャリ”型ではない「SW」。電動アシスト機能のON-OFFボタンしかなく、タイヤは小径ながら、ブロックがあり、未舗装の林道走行にも耐えられると思った。

ただ、バッテリーについては注意が必要だった。 

町の資料に『強アシストで約59㎞走られます』と書いてあり、スタッフに『赤(町)の自転車と黒(振興局)の自転車、バッテリーの持ちに違いはありますか』と尋ねたところ、『変わらないと思います』と言われたため、何も気に留めず出発してしまった。

会津川口駅から「貉ヶ森山」登山口にある塩ノ倉峠まで約20㎞あるので、往復40㎞で十分バッテリーは持つだろうと思った。しかし、後で知ったのだが、赤は16Ah、黒は8Ahの容量で、“約59㎞走られます”は町で手配した赤い自転車の数値だった。

黒(振興局)の自転車を選択したこの時点で、半分の容量しか持たないバッテリーが、途中で切れる事は確定していた...。

  

 

 

9:00、登山の準備をし、“バッテリー切れ”など露にも思わず、会津川口駅前を出発した。いつの間にか雨は上がり、上空には青空も見え始めた。天気がこのまま回復し、「貉ヶ森山」からの眺望が得られると思った。

   

 

 

 

国道252号に入り、野尻川を渡ると、さっそく坂道になり、電動アシスト機能の威力が発揮された。ペダルを軽く漕げば、スイスイと坂を上った。

 

道が下りになり、途中で「第五只見川橋梁」を眺めた。レールの敷設も完了し復旧工事は終わったという。

 

 

西谷橋を渡ると、前方に架替工事が終盤を迎えた、“新”「第六只見川橋梁」が山間に見えた。

 

  

国道252号線本名バイパス工事現場では、只見線本名架道橋が完成形に近づいていた。

  

架道橋の手前で只見方面を見ると、「第六只見川橋梁」の手前で、法面形成など路盤周辺の工事も終わりに近づいている状態だった。

  

国道をさらに進み、只見川右岸の上部を見ると、「第六只見川橋梁」工事のアンカーの土台が整然と並んでいた。これからステージや梯子など仮設の撤去工事が行われるが、最後まで安全作業で進めて欲しいと思った。

 

 

 

   

 

国道が左に直角に曲がり東北電力㈱本名発電所・本名ダムの天端に向かう場所に、林道本名室谷線の起点が見えた。

 

9:24、林道起点(標高323m)から、「貉ヶ森山」登山口に向けて登坂を始めた。林道は、新潟県阿賀町室谷地区まで総延長38.979㎞あり、最高点(約1,130m)である塩ノ倉峠までの距離は約17.5kmとなっている。

 

 

未舗装を進み、只見川の支流・霧来沢の河口に着くと、鋼鉄吊り橋の霧来沢橋と、本名バイパスの“新霧来沢橋”が、美しく延びていた。

  

 

進路が南西から北西に変わり、霧来沢沿いの緩やかな坂を上ってゆく。電動アシスト機能付きの自転車は、ペダルを漕ぐ力に比例して、スピードを上げた。

  

 

 

 

  

 

 

9:56、会津百名山「本名御神楽」(1,266m)登山口に向かう、林道との分岐に到着(同429m)。天気は変わりやすく、この手前で小雨が降ってきた。

  

左に下る林道に入り進む。左側を流れる川は霧来沢から大石田沢沿いに変わり、高度もドンドンと上がってゆく。モーターによるアシストはスムーズで強力で、前回より各地点を早く通過した。

 

 

 

 

大石田沢と分かれ、林道の傾斜も増し、九十九折りのカーブ進む。快調、快調と喜んでペダルを漕いでいたが、ふと、ハンドル下のヘッドチューブに設置されている電源を見ると、赤ランプが点滅していた。

『何だろう??』と思い、自転車を下りて、バッテリーの容量インジケーターを見ると、なんと“空”の位置に赤ランプが点灯していた。走り出して約14㎞の地点だった。“約59㎞バッテリーは持つ”というスペックからは、ほど遠い数値だった。

   

とりあえず、バッテリーが持つところまで行こうと先に進んだ。500mほど進むと、町が設置した通行止めの簡易バリケードがあった(同740m)。小型車なら通過できるスペースを確保するため、ズラされているようだった。

   

   

10:32、前回、積雪で自転車を置くことになった地点(同784m)を通過。前回より1時間31分も早い所要時間だった。

   

  

小笠倉山(808m)の西側を通過し、林道最初のピークに向かう。陽差しが出始めたが、上空を見ると青空は一部で、西から灰色の雲が流れてきているため、天気も心配になった。

  

 

 

 

10:37、林道の最初のピークに到着(同847m)。

林道は一旦、長く緩やかな下り坂になる。帰り道、バッテリーが無い状態で上る事になると思うと気が滅入った。 

   

 

林道が上りに変わり、自転車を漕ぎだすと、アシストは働かなった。バッテリーが無くなった、と思いアシスト機能の電源を切った。これで電動アシスト機能の無い一般の自転車と同じように動かせる、と思いペダルを漕いで驚愕。なんど、ペダルは恐ろしいほど重く、ほんど前に進まなくなってしまった。 借り先の金山町観光協会に電話して、ペダルが軽くなる方法を聞こうと思ったが、スマホは圏外でできなかった。

...結局、ここから塩ノ倉峠まで4.2㎞の道を、電動アシスト機能付き自転車、20kgの物体を押して進む事になった。  

  

 

  

自転車を押し始めてまもなく、右の崖側にピンクのテープが枝に巻き付けられていた。

 

近付くと、「幻の滝群」の入口を示す標杭が倒れていた(同797m)。

 

この区間は真北に面した斜面で、前回は残雪の傾斜を慎重に歩いた。景色の違いに驚いた。

 

 

 

 

11:17、林道起点から15.1㎞(同973m)で切通し箇所を通過。この辺りまでは、比較的新しい車のタイヤ痕があった。

 

前回と風景が違い、同じ場所を通っているとは思えなかった。

 

  

 

 

 

 

少し先を進むと、道の両側は、鬱蒼とススキなどの雑草が生い繁る区間になった。

 

ここも、前回歩いた場所とは思えない変わりようだった。雪が積もると様相が一変する事を実感した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

11:37、“断念ポイント”に到着。起点から16.2km、標高1,042mだ。前回より、2時間ほど早く到達した。「貉ヶ森山」山頂は、ガスが掛かり見えなかった。 

 

前回は、ここから山頂を眺め、登頂断念を決めた。

 

 

 

 

前回、歩くことができなかった林道に向かい、塩ノ倉峠を目指した。

  

林道は、しばらく車が走っていないような状態で、轍は認められず、丈の短い草が生え、洗堀されている箇所もあった。

   

カーブの先に立ち、見下ろした。雲が低い位置で広がり、特定できるような山は見えなかった。

   

 ヘアピンカーブを抜けると道が徐々に平坦になり、しばらく歩くと、開けた場所が見えた。

  

バリケードだったのだろうか、カラーコーンの間を通り平場に進む。

 

 

 

 

 

 

 

12:02、本名起点から18.5㎞、標高1,130mの塩ノ倉峠に到着。「會越街道開通記念碑」を前に、記念撮影した。

バッテリー切れというアクシデントがあったが、会津川口駅から約3時間でたどり着けた。もし、バッテリー切れが無かったら、30分以上は短縮できたのではないかと考えた。

  

林道を挟んだ「會越街道開通記念碑」の向かい側には「峰越林道本名津川線」と書かれたもの等、3本の標杭が立ち、その脇には祠もあった。

 

 

 

 

12:09、自転車を道の隅に置き、さっそく「貉ヶ森山」登山を開始。

石碑前から新潟方面に少し進むと、林道は舗装になり、左側を見ていると、事前情報通り、ピンクテープがあった。

  

テープは灌木2本に巻かれ、その間を通って進むことになる。踏み跡もはっきりしていたので、安心して藪の中に入る事ができた。

 

 

登山道は、低いがやや密集したクマザサと灌木の間に延びていた。踏み跡は終始鮮明で、かつ20~30mの不均等間隔にピンクテープが巻かれていた。

 

 

 

 

 12:16、開けた場所になり、登山道が分岐した。ここに着く頃に、小雨が降り出した。

 

左に進むと、小さな建物が見えた。

 

東北電力㈱の雨量観測所だった。

 

建物の脇には、アンテナが延びていた。

  

 

  

   

分岐に戻り、右に進んだが天候が悪化。冷たい風が吹くようになり、小雨は雹に変わり、身体を冷やした。

 

踏み跡は見逃すほどのものではなく、ピンクテープも所々にあり、ネマガリダケなどの藪に覆われても、進む方向を迷う事は無かった。

 

ピンクテープは、驚くほど多かった。一等三角点峰「貉ヶ森山」に多くの登山客が、訪れている証左だと思った。

 

 

 


12:27、登山道は、ブナの成木の間に延びた。この先、しばらく続くと思ったが、まもなく灌木が登山道を囲むようになった。 

 

倒木もあったが、幼木で簡単に越えられた。

 

 

幼木と灌木の間を進んでゆくと、前方が明るくなった。


 

12:36、尾根東側の、開けた場所に出るが、周囲は霧に覆われ何も見えなかった。晴れていれば、前方に「貉ヶ森山」山頂が見える位置だった。

 

 

踏み跡は右側(西)に続き、藪の中を進む事になった。背丈ほどのネマガリダケが行く手を阻み、葉に載った雹が衣類を濡らし、さらに全身を冷やした。天気予報ではこの時間晴れているはずだったが、越後山脈上の県境では、あてにならない事を実感した。

 

 

12:47、籔の中を進んでゆくと、踏み跡がピークに続いていた。「貉ヶ森山」は双耳峰と知っていたので、ここは北ピーク(1,300m)のようだった。

北ピークに立つが、霧に包まれ眺望は得られなかった。

 

 

 

北ピーク先は、尾根を直進できず、踏み跡は東に延びた後、切れ落ちる寸前で南東に進路を変えた。腰高ほどの籔だったが、足元に根も張り出していたため、苦労した。

 


少し進み、籔が切れた、と思ったが崩落箇所で土がむき出しになった斜面が50mほど下に続いていた。ここが塩ノ倉峠から登山を開始する場合、「貉ヶ森山」では最も危険な場所と言われている。

 

 

 

 

 

 

 

 

崩落箇所を過ぎ、踏み跡明瞭な歩き易い空間を3分ほど進むと、前方が平たい開けた場所になった。 

 

 

13:00、三角点標石が見え、「貉ヶ森山」山頂に到着した。土間は一部で、狭い山頂広場だった。

  

標石には、確かに“一等”の文字が刻まれていた。感動した。

 

一等三角点標石に触れ、約半年越しの登頂を祝った。

   

 

山頂は360度ガスに包まれ、眺望は得られなかった。ただ、籔が背丈ほどに伸びているので、晴れていても、台を用意しなければ周囲の山々は見えないと思った。 

 

 

東側の様子。灌木と低木が取り囲んでいたが、周囲にここより高い山は無いことから、霧が晴れていても眺望が期待できなさそうだった。

 

南側の様子。地面を見ると、踏み跡があり、この先、南西1.3kmほどの金山町と只見町境にある「雲河曽根山」(1,290m)に続いているようだった。

13:07、山頂を吹き抜ける風が冷たく、身体が冷えがどんどん進行してきたので、さっそく下山した。 

 

 

 

  

登ってきたルートを、足元に気を付けながら、黙々と下った。

しかし、雨量観測所の分岐手前で倒木で足を滑らせ、左ふくらはぎに激痛が走った。昭和村の「高館山」の下山時と同じように、肉離れだった。誰も居ない山の中で唸り声を上げ、傷みが治まるのを待った。ただ、身体も冷えてきたので、激痛が引いたのを見計らって、ゆっくりと下山を再開した。

 

 

 

 

籔をこぎながら、慎重に下って行くと堀のような場所になり、踏み跡の両脇の木にピンクテープが巻いてあるのが見えた。

 

堀を越え、アスファルトの上に立った。

 

右に目を向けると塩ノ倉峠の広場が見え、自転車は倒れておらずホッとした。食べ物は置いていなかったが、熊の攻撃を受けるかも...と思っていたので、杞憂に終わったようで安心して広場に向かった。


 

 

 

  

13:55、無事に塩ノ倉峠に戻り、「貉ヶ森山」登山を終えた。下山は48分だった。塩ノ倉峠から登れば、「貉ヶ森山」は手軽な一等三角点峰だと実感した。

寒かったので、水を一口飲んでから自転車にまたがり、林道を下る事にした。 

 

カーブの先から麓を見下ろすと、一部は晴れているようだった。

 

 

 

 

14:32、洗堀され凸凹になった林道をくだりきり、一旦上りになる場所に着いた。この付近では北に会津百名山「本名御神楽」(1,266m)や“会津の名発祥の地”「御神楽岳」(1,386.5m)などが見えるが、鼠色の雲に覆われ見えなかった。

 

ただ、代わりにそれら山々がある東側に出ていた虹を見ることができた。

  

この後、電池切れで電動アシストが効かず、駆動部はモーターのギアを介しているようで、普通にペダルをこぐこともできず、坂道は自転車を押した。

「小笠倉山」(808.6m)の西肩手前で、再び下りになって、自転車にまたがった。前回は、ブレーキが効かず下り坂で自転車を押して進む事になったが、今回借りた自転車の後部車輪のブレーキはディスク式ということもあり、効きも良かったため、安心して下る事ができた。自転車の威力を十分に発揮した。

 

 

 

 

途中、大石田沢右岸の切り立った山の斜面を見た。スラブと木々の組み合わせが良い。紅葉時は、美しいだろうと思った。

 

小笠倉山(808.6m)の西肩を過ぎると、林道は洗堀箇所も少なく、一部区間が舗装になるため、快調に下る事ができた。

 

 

 

  

15:10、「本名御神楽」「御神楽岳」登山口に通ずる林道の分岐に到着。

 

さらに、林道を下る。

途中、陽射しがあり、一休みした。冷えた体が、少し温まった。 

 

 

 

 

 

 

15:51、林道を駆け抜け、国道252号線に合流。

本名ダムの天端(本名橋)の中ほどまで進み、只見線の新「第六只見川橋梁」を見下ろした。

 

この後、国道を進み。西谷地区で上り坂となった。ダメもとで電動アシストの電源を入れたところ、アシスト力はほとんどなかったが、ペダルを普通の力でこぐことができ、なんとか坂を上りきった。 

 

 

 

 

 

 

16:06、会津川口駅に無事に戻った。15時30分が返却期限だったが、途中、携帯電話が使えた場所で、金山町観光情報センターに遅れる事を伝えておいた。


今日、天候には恵まれず、山頂からの眺望も得られなかったが、無事に一等三角点峰「貉ヶ森山」に登頂し、前回の悔しさを晴らす事ができた。

途中でレンタルサイクルのバッテリーが切れて、自転車を押して進むというアクシデントはあったが、電動アシスト付き自転車を利用すれば、只見線を利用した「貉ヶ森山」登山は過大な負担無く臨めると分かった。

 

林道本名室谷線は霧来沢や大石田沢の渓谷美や、高度が上がってからの見下ろせる山々の風景など、見所が多く、約2時間気持ちよくサイクリングができる。塩ノ倉峠から約1時間で山頂に行けるので、都合3時間の登山と思えば、心身の負担はあまり感じないのではないだろうか。

ただ、林道本名室谷線は最初のピークとなる小笠倉山(808.6m)から先は、雨水や雪解け水で洗堀箇所が多く、道が荒れているため、特に帰路の長い下りでは車体が振動し続けてしまい、せっかく自転車で上ってきたメリットが半減してしまう。このため自転車は車体剛性があり、サスペンションの付いたMTBが良く、電動アシスト付きMTBならば、会津川口駅から塩ノ倉峠登山口間の移動は、多くの方が受け入れられる二次交通になるのではないかと思う。

 

また、登山道については、案内板は見当たらなかったものの大きな問題は無いと感じた。

今回はピンクや赤のテープに助けられ登山道からの外れを経験することは無かったが、終始踏み跡があり、一部以外は鮮明だった。迷っても、尾根を目指せば良い。1,300mピークでは一旦手前に折れるが、その先はただ次のピークを目指せば良い。灌木や根曲り竹が一部登山道を覆っている場所もあるが、会越国境の越後山脈南端の一等三角点峰という特異性を考えれば、許容できるのではないだろうか。

「塩ノ倉峠」登山口からの登山道は、初心者でも山登りに対する最低限の注意を持てば、踏破できると、今回の登山で感じた。

 

「貉ヶ森山」が“観光鉄道「山の只見線」”の魅力的なコンテンツになるためには、「塩ノ倉峠」登山口までの二次交通の他、前回の訪問(今年5月3日)でも述べた、林道本名室谷線の“ショートカット登山道の開拓”が必要だと思う。

小笠原山から先の林道は、真北に正対する斜面になるため、残雪期間も長くなり、ゴールデンウィークに「貉ヶ森山」に登る事ができない。登山道が短くなり、登山可能期間が長くなるのであれば、ショートカット登山路の開拓は無駄ではないのではないだろうか。只見線を利用する登山者が増える兆しが見えてきたら、福島県を中心に検討してもらいたい。

 

 

 

 

駅では、泥はねでひどく汚れた場所を洗い、自転車を返却。預かってもらった大型リュックを返してもらい、 荷物を一つにまとめて、自分の自転車にまたがって今日の宿に向かった。

 

駅前から国道400号線に入り、坂を上り、小栗山地区で左折し県道237号(小栗山宮下)線の急坂を少し進むと「民宿 朝日屋」が見えてきた。会津川口駅から約2km、15分ほどの道のりだった。

 

一見、一軒家と思える外観。

 


玄関を入っても、一軒家のような感じて、家に帰ってきた感覚だった。

 

外観からは想像がつかないが、部屋数は多く、1階に1部屋と食堂(食事処)、2階に6畳から16畳の6部屋があった。私は、2階の階段脇6畳の部屋に通された。

   

 

さっそく風呂に入らせていただく。男女共有で、宿側の出入口の“男性”・“女性”の札を変えて入浴するシステムだった。

別棟に設けられた浴室は、綺麗で広かった。木枠の浴槽も大きく、底に真っ黒い石がケースに入って置かれていた。ブラックシリカ(神宿石)と呼ばれる北海道上ノ国町産の黒鉛珪石で、強力な遠赤外線などを発する、と浴室入口に貼ってあった紙に書いてあった。

 

浴室は、近年作られたようだった。シャワーも水圧も問題なく、快適な風呂だった。

 

 

夕食は18時20分過ぎに食堂に呼ばれて、摂った。昼食を抜いていたので、天ぷら、馬肉、鍋などがそろったボリュームには助かった。

 

米は新米ということで、艶やかで、香り良く、旨かった。

 

金山町といえばヒメマス。塩焼きで、桜色の肉厚の身は、旨かった。

 

会津の馬刺し。サシの入っていない赤身を、辛子味噌でいただいた。期待通りの旨さだった。

 

金山町のもう一つの名産、赤カボチャ。ホクホクして、甘みがあり、デザートとして最後に食べればよかったと後悔するほどだった。

 

食堂に顔を出したのがご主人だけだったので、これだけの料理を一人で用意したと思うと恐れ入った。全てが美味しく、色どりも良かった。

客の大半は常連のようで、給仕が終わると、ご主人は客の間に座り会話をされていた。人気の宿である事に納得した。

 

食後は、早めに休む事にした。明日は初めて西会津町の山(鳥屋山)に登り、自転車で峠(束松峠)越えする予定だが、頂上で眺望が得られるよう晴れる事を願った。

 

(了)

 


・  ・  ・  ・  ・

*参考:

・NHK:新日本風土記「動画で見るニッポンみちしる~JR只見線

・産経新聞:「【美しきにっぽん】幾山河 川霧を越えてゆく JR只見線」(2019年7月3日)

・福島県 生活環境部 只見線再開準備室:「只見線の復旧・復興に関する取組みについて

・東日本旅客鉄道株式会社:「只見線について」(PDF) (2013年5月22日)/「只見線(会津川口~只見間)の鉄道復旧に関する基本合意書及び覚書」の締結について(PDF)(2017年6月19日)


 

【只見線への寄付案内】

福島県はJR只見線全線復旧後の「上下分離」経営での維持費や集客・地域振興策の実施費用として寄付を募集中(クレジット可)。 

 ①福島県ホームページ:只見線復旧復興基金寄附金・只見線応援団加入申し込みの方法 *只見線ポータルサイト「只見線応援団」URL:https://tadami-line.jp/support/

 

②福島県:企業版ふるさと納税

URL:https://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/16005g/kigyou-furusato-zei.html

[寄付金の使途]

(引用)寄附金は、只見線を活用した体験型ツアーや周遊ルートの整備、只見線関連コンテンツの充実化等に活用させていただきます。 沿線地域における日本一の秘境路線と言われる観光資源を活用し、更なる利用者の拡大と認知度向上を図ります。

 

以上、宜しくお願い申し上げます。

次はいつ乗る? 只見線

東日本大震災が発生した2011年の「平成23年7月新潟福島豪雨」被害で一部不通となっていたJR只見線は、会津川口~只見間を上下分離(官有民営)とし、2022年10月1日(土)に、約11年2か月振りに復旧(全線運転再開)しました。 このブログでは、“観光鉄道「山の只見線」”を目指す、只見線の車窓からの風景や沿線の見どころを中心に、乗車記や「会津百名山」山行記、利活事業に対する私見等を掲載します。

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