金山町「東北電力奥会津水力館 みお里」 2020年 晩夏

今年7月9日にオープンした、東北電力株式会社で初めての水力発電PR館である「東北電力奥会津水力館 みお里」を訪れるために、JR只見線の列車に乗って金山町に向かった

  

只見川が注ぎ込む阿賀川(新潟県に入ると阿賀野川)は国内有数の包蔵水力(利用可能な水力エネルギー力)を有している。全国3位の包蔵水力を持つ、阿賀野川水系の最大支流が尾瀬沼を源流とする只見川で、10基の発電用のダムがある。*参考:国土交通省北陸地方整備局 阿賀川河川事務所「阿賀野川水系の電源開発

電源開発㈱管理:奥只見、大鳥、田子倉、只見、滝

東北電力㈱管理:本名、上田、宮下、柳津、片門

また、伊南川(只見川最大支流)には只見川(本名ダム湖)に放流口を持つ東北電力㈱伊南川発電所(金山町)、沼沢湖を上池に只見川(宮下ダム湖)を下池とする揚水式の東北電力㈱第二沼沢発電所(金山町)もあり、只見川に放流口を持つ水力発電所は12ヵ所になる。

 

 

東北電力㈱は只見川沿いに7ヵ所の水力発電所を有し、同社初の水力発電所PR館である「東北電力奥会津水力館 みお里」を、只見川(上田ダム湖)を望む金山町の高台に建設した。

当初、このPR館は“2010(平成22)年に水力館の基本構想を発表し、翌2011年度の創立60周年記念事業として計画していたが、東日本大震災や新潟・福島豪雨で中断”、昨年4月に建設工事が開始され今年5月に竣工、そして7月9日にオープンした。*出処:福島民報 2019年3月8日付け紙面など


“みお”とは“水脈”の表し、“水脈のふる里”の意を込めた地元の生徒からの応募案を採用し、「みお里」という愛称に決まったという。*出処:東北電力からのお知らせ:「東北電力奥会津水力館」の愛称候補を「みお里(り)」に決定!~奥会津地域から親しまれる施設を目指し、7月9日(木)オープン~ (2020年3月4日)

 

ちなみに、電源開発㈱には「水とエネルギー 只見展示館」という“水力館”が只見町にある。只見発電所・ダムの左岸にある、コンクリート3階建ての特異な形状を持つ建物で、1991(平成3)年7月に開館している。

   

「東北電力奥会津水力館 みお里」は、只見線の会津中川駅から200mほどの徒歩5分とかからぬ至近距離にあり、只見線の列車の車内からも見えていたが訪れる機会が無かった。

今回、只見線を「トロッコ列車」が走る事になり、これを機に訪れようと考え、さらに“浜通り・富岡から日帰り只見線の旅”を試みるという計画を立て、金山町に向かった。

*参考: 

・福島県:只見線ポータルサイト

 ・NHK:新日本風土記「動画で見るニッポンみちしる~JR只見線」 

 ・産経新聞:「【美しきにっぽん】幾山河 川霧を越えてゆく JR只見線」(2019年7月3日) 

 ・東日本旅客鉄道株式会社:「只見線について」(PDF) (2013年5月22日)/「只見線(会津川口~只見間)の鉄道復旧に関する基本合意書及び覚書」の締結について(PDF) (2017年6月19日)/「只見線(会津川口~只見間)復旧工事の完了時期について」(PDF)(2020年8月26日)

・拙著:「次はいつ乗る?只見線」カテゴリ ー只見線の夏ー / ー観光列車

 

 


 

 

今朝は4時30分頃に富岡町を出て、広野から常磐線の始発列車に乗車。車窓からは、青空の下、穏やかな海が広がっていた。

 

いわきで磐越東線、郡山で磐越西線の列車に乗り換え、会津入り。真夏を思わせる青空は続いていたが、「磐梯山」の頂上は雲に隠れていた。

  

 

 

9:40、会津若松に到着。駅舎上空には青空が広がり、鶴ヶ城と同じ“赤瓦”が落ち着いた色を放っていた。

 

買い物を済ませ、再び改札に向かい見上げると、「トロッコ列車」が“団体専用列車”として表示されていた。


その下には、“風っこ「絶景、只見線トロッコ列車」”と記載されたウェルカムボードが置かれていた。

この「トロッコ列車」の運行は福島県「只見線利活用事業」の企画で、沿線の旅行代理店に委託され実施されている。通常、JR東日本が同線で「トロッコ列車」を運行させる場合、2週の土日計4日間だが、今回の企画では8月10日から9月21日間の土日月に計12日間運行させるという“大型企画”になっている。ちなみに、9月12日(土)と13日(日)は岩手県内の三陸鉄道で運行される。

  

只見線のホームに向かうために連絡橋を渡る。ホームを見下ろすと、「トロッコ列車」は入線していた。

 

「トロッコ列車」の正式名称は“びゅうコースター 風っこ”。只見線を走っていたキハ40形の兄弟車であるキハ48形を改造した車両だ。

“びゅうコースター 風っこ”は、春から秋にかけては窓を取り外した「トロッコ列車」として、冬は「ストーブ列車」として、主に所有者であるJR東日本管内で運行されている。

 

内部も良い雰囲気だ。むき出しの天井に吊るされた白熱灯の下には、木材をふんだんに使った空間が広がる。今回で二度目の乗車となったが、改めて良い雰囲気だと思った。

 

木製のテーブルや椅子は小ぶりで、親子4人家族を想定したであろうサイズになっている。

  

今回の「トロッコ列車」は団体専用列車ということで、独特の乗車区間(A,B,C,D)設定で席予約がなされていた。席はBOX席単位で発売され、1人でも4人でも同じ金額だった。私は7月に上り列車(会津川口→会津若松)予約をし、コンビニの発券機でチケットを手にしていた。

このチケットの右上に記載された“開演9:55”。これは、列車の出発時刻ではなく、その日の一番列車の出発時刻となっていた。

当時私は、上りD区間(13時50分 会津川口発、会津若松行き)を予約していたのだが、先月半ばにチケットを見て“出発時刻9:55 会津若松発”と勘違いしてしまい、この日を迎えてしまった。運よく、空席があったため、乗る事ができたが、旅行代理店の方には大変な迷惑を掛けてしまった。

  

 

9:55、「トロッコ列車」が会津若松を出発。ホームでは駅職員が横断幕を掲げ見送ってくださった。

   

「トロッコ列車」は快速運転で運行。

七日町を通過し、西若松では、只見線の上り列車とのすれ違いを行うため24分間停車。普段列車が入線することが無い1番線に待機した。ホームに接した構内では、会津鉄道㈱のスタッフによるお土産販売が行われた。 

 

停車時間が長いということもあって、列車の入線に合わせて写真を撮る家族連れの姿も見られた。

   

 

西若松を出発すると、只見川が注ぎ込む阿賀川(大川)を渡った。

  

「トロッコ列車」は会津本郷を通過後に会津美里町に入り、会津平野の田園の中を進んで行く。車内には稲の香りを含んだような風が吹き抜け始め、気持ちよかった。

 

町の旧高田地区の背後には、“遷座三峰”の一つである「明神ヶ岳」(1,074m)を頂点とする山々の稜線が綺麗に見えていた。*参考:拙著「会津美里町「明神ヶ岳」登山 2020年 初夏」(2020年6月7日)

  

会津高田を出発すると列車は真北に進路を変え、広大な田園の中を駆け抜ける。稲穂は色付いていて、秋の近づきを感じた。

 

右手、東側を見ると、「磐梯山」は頂上に雲を被ったままだった。

   

 

「トロッコ列車」は根岸新鶴を通過し、会津坂下町に入り若宮を通過後に会津坂下で3分停車。その後、キハ40形の聞き慣れたディーゼルエンジン音に近い轟音を響かせ、七折峠に向かっていった。

 

登坂途上、列車の進路が西に変わる手前で、木々の切れ間から会津平野を見下ろす。青空に強い陽射し、緑に囲まれ色付き始めた田園。季節の変わり目の風景が広がっていた。

  

塔寺を通過した後、第一花笠-第二花笠-元屋-大沢と連なる4つのトンネルを潜る事になるが、添乗スタッフが『風圧で大きな音が出るので...』と小さな子供を連れた家族に声掛けをしていた。「トロッコ列車」ならでは気配りに感心した。 

  

会津坂本を通過し、奥会津地域の玄関口になる柳津町に入る。天候に変化は無く、強い陽射しが照り付けていた。 

  

会津柳津に停車すると、ホームにいた多くの乗客が乗り込んできた。

  

出発後、郷戸手前で“Myビューポイント”を通過。「飯谷山」(783m)を頂点とする山稜は、夏空を思わせる背景にくっきりと見えた。 

  

 

 

「トロッコ列車」は滝谷を過ぎて三島町に入り、会津桧原を通過し桧の原トンネルを潜り抜けると速度を一気に落とし、「第一只見川橋梁」をゆっくりと渡った。 *以下、各橋梁のリンク先は土木学会附属土木図書館デジタルアーカイブス歴史的鋼橋集覧

 

車内では、全ての客が外に目を向け見入り、あるいはカメラのシャッターを切っていた。

  

 

 

このあと、列車は会津西方を通過し「第二只見川橋梁」を渡り、会津宮下で停車。ここでは、特産の赤かぼちゃを使った塩ジャムが、ホームに待機していた金山町の職員から添乗員に渡され、車内で全ての客に配られた。

  

「トロッコ列車」は、会津宮下を出発した後に、東北電力㈱宮下発電所の脇を通り過ぎ、宮下ダム湖(只見川)を右手に見ながら、気持ちよく進んだ。

  

 

その後「第三只見川橋梁」を渡る。下流側は国道252号線の高見沢スノーシェッド以外、人工物が見えない空間で、美しい自然美が見られるが、今日は陽射しが強く写真では色が抜けてしまった。

  

 

 

早戸を過ぎて金山町に入り、会津水沼を経て「第四只見川橋梁」を渡る。下路式で鋼材が邪魔して、車窓からの景色は堪能できないが、復旧後は「第六只見川橋梁」と「第七只見川橋梁」が下路式に変更される事を考えると、この斜材が“あるもの”として車窓からの景色の楽しみ方を考えなければならないと思った。

  

 

 

 

 

12:30、会津中川に到着し下車した。私の他に10人ほどが降り、添乗員の方が「道の駅 奥会津かねやま」など観光施設への行き方などを説明していた。

 

全ての乗客が構内踏切を渡り、駅舎側に移動したことを確認してから「トロッコ列車」は出発。3人の子ども達を連れた家族が手を振って見送っていた。

  

 

「トロッコ列車」こと“びゅうコースター 風っこ”号について。

外観の色調がキハ40形の東北地域支社色に似通っている事もあり、只見線との相性は良い。是非、只見線専用機を新たに調達し、週末や紅葉時に定常運行してもらいたい。

“びゅうコースター 風っこ”号は1編成しかなく、JR東日本管内の各地で運行され、JR北海道にも貸し出される事があるため、現状では只見線専用にはならない。福島県が“観光鉄道「山の只見線」”の確立を本気で目指すのであれば、JRにキハ48形車両の譲渡を交渉し、県が改造費用を搬出して欲しいと思う。四季それぞれに沿線の美しさをを持つ只見線には、その価値はあると思う。

只見線への専用観光列車の導入は絶対必要で、新幹線駅間(福島県側:郡山、新潟県側:浦佐or長岡)を往復する2編成の新造が目指すべき到達点だと私は考えている。「トロッコ列車」は“観光鉄道「山の只見線」”に厚みを持たせる、サブ的な役割が果たせられればベストだ。

現在の観光乗車の傾向は、観光バスを駅に着けて、橋梁区間である会津柳津ー会津宮下or会津川口間で只見線の列車に乗るという割合が多くなってきている。会津柳津の待避線(ホーム)を復活させるというコストは発生するが、この観光需要を弾力的に拾い上げるために「トロッコ列車」を定常運行させる事は、“観光鉄道「山の只見線」”の認知や定着につながるはずだ。更に、極端に利用者が減る会津坂下~只見間の乗降客増加を底上げし、利用者のよる物販や奥会津地域への再訪期待など、福島県は上下分離による公費投入の効果を示せるのではないか。

福島県は現運休区間(会津川口~只見)を上下分離で保有する事になり、「トロッコ列車」が会津柳津~会津川口間を定常運行してもJR東日本の“利”となってしまう懸念はある。しかし、福島県は「トロッコ列車」を導入し、“観光鉄道「山の只見線」”を確立するという大義を全うする事で得られるメリットの方が大きいのではないだろうか、と私は考えている。

  

 

会津中川駅から歩き出して、2分ほどで国道252号線沿いにある「道の駅 奥会津かねやま」に到着。奥に「東北電力奥会津水力館 みお里」が見えた。

   

大きな切妻屋根が印象的な、平屋の建物。写真などの映像より、存在感のあり、どっしりとしているなと感じた。

東北電力㈱の資料には“屋根の軒のラインが奥会津の⼭の連なりをイメージし、周囲の自然環境と調和する木材を使った外観。川面の眺望にも配慮した建築設計”と記されている。 *出処:東北電力情報 「東北電力奥会津水力館 みお里 MIORI®」が2020年7月9日に開館します (別紙)「東北電⼒奥会津⽔⼒館 みお⾥ MIORI®」概要(PDF)

  

裏側を見る。只見線の列車から見える側だ。正面と共通した切妻屋根が2か所あり、美しい外観だと思った。

  

この裏側は、只見川に面し、建物が切り立った場所に建てられた事もあって、開放的な空間になっていた。外観から、電力会社のPR館というより観光施設の立地と建造物だと思った。

  

正面に移動しエントランスに向かう。「道の駅 奥会津かねやま」とのデザインの親和性もあり、一体感のあるエリアを創出していると思った。

  

入口の脇には「水車ランナ ブレードモニュメント」が置かれていた。

 

只見線の「第六只見川橋梁」の直下にある東北電力㈱本名発電所で約60年間稼働した水車ランナのブレード”だという。 *参考:「東北電力奥会津水力館 みお里」施設ガイド ⑧水車ランナ URL:https://okuaizu-suiryokukan.jp/?page_id=1905

  

  

自動ドアから中に入り、風除室で消毒液を手にすり込み、もう一つの自動ドアから中に入ると、スタッフの方から自動体検温器の前に進むように言われ検温。35.5℃ということで、館内に入る事を許された。

   

入場者が多くなると、他スタッフが非接触型の体温計を持ち対応をしていた。

 

入場して、まず気になったのは、惜しみなく使われた木材の露出具合。壁や扉は木目の化粧板で覆われ、天井板の無い吹き抜けには組み合わされた柱が見られた。照明などがパーツだけ柱に取り付けられるという、設計者の意思が伝わる構造だった。冬の暖房効率を心配したが、造形美が感じられ、電力会社のPR館という堅苦しい印象をがらりと変える設えだと思った。

  

 

館内の設備。

オープンを祝して贈られた胡蝶蘭が並んだ、エントランスホールには「水力シアターホール」の入口があった。案内表示もデザインされ、優しい印象だった。

 

「水力発電のしくみと発電所紹介」「只見川の電源開発と東北電力の取り組み」「奥会津に生きる -自然と暮らしの暦 -」「片岡鶴太郎 奥会津を歩く」という4編の映像を2分の間をとって繰り返し上映していた。*参考:「東北電力奥会津水力館 みお里」施設ガイド ①水力シアターホール URL:https://okuaizu-suiryokukan.jp/?page_id=1891

中は広く、新型コロナウィルスの影響か間隔がとられ30席ほどだったが、ゆうに50名が入られる空間になっていた。映像は綺麗で、音響も良く、“シアターホール”の名にふさわしい設備だった。

  

この「水力シアターホール」のはす向かいには「只見川ギャラリー」があり、12名の作家のオリジナルの絵画や版画が展示されていた。

ギャラリーは4部構成で、「水源」「川」「水力発電施設」「灯り」の4テーマの区画に、彩り、構成、発想豊かな作品が展示されていた。*参考:「東北電力奥会津水力館 みお里」施設ガイド ④只見川ギャラリー URL:https://okuaizu-suiryokukan.jp/?page_id=1897

  

入口には『美術品の撮影はご遠慮ください』とのパネルがあった。

 

中に入ると12名の作家の作品は個性的で、美術館と遜色無い本格的な絵画や版画が並ぶ、明るく鑑賞に集中できる展示空間に感動した。

あとで「企画展示室」を訪れて分かったのだが、この12名の作家はこの奥会津の地に招かれ、只見川や水力発電施設を訪れ、インスピレーションを受けてから、作品の製作取り掛かったという。この「水力館」に対する東北電力の心意気が感じられ、12名の作家の作品の重みを知る事になった。

私が特に気に入ったのは、「水の祝祭」(水沢そら氏)、「水面 -minamo-」(山田博之氏)、「夜曲」(舟橋全二氏)の3作品。 

 

「只見川ギャラリー」の4つ展示スぺースには、“River”と名付けられた杉材のベンチが置かれていた。“只見川の流れをベンチ全体で有機的に表現したデザイン”と説明パネルがあり、飛騨の家具職人の作だという。

  

そして圧巻は、「只見川ギャラリー」の最大の作品にして、この施設を象徴してゆく事になるであろう“奥会津讃歌”と名付けられた巨大ステンドグラス。本県出身のステンドグラス工芸家である臼井定一氏が製作し、区画された“個室”の南西の壁の上部一面にはめ込まれていた。 

9月の太陽とは思えない強い陽射しが、ステンドグラスを透過し美しい紋様となって床や壁にふり注いでいた。

  

このステンドグラスの前には“Ridge”と名付けられたベンチがあった。“奥会津の自然の姿、そのシンボルである山々の稜線(Ridge)をデフォルメして表現”し、只見川の流木(ブナ、杉等)を使って飛騨の家具職人によって作られたものだという。

ステンドグラスの見え方は、空模様によって違った見え方になるだろうから、次回はこのベンチに座り、ゆっくりと眺めたいと思った。

  

「只見川ギャラリー」の隣には「只見川と白州次郎」展示室。

 

東北電力㈱の初代会長を務めた白州次郎の経歴と只見川電源開発への功績が記されたパネルや、愛用の品などが展示されていた。*参考:「東北電力奥会津水力館 みお里」施設ガイド ⑤只見川と白州次郎 URL:https://okuaizu-suiryokukan.jp/?page_id=1899

 

この展示室は只見川を望む南側に面していて明るく、東北電力㈱の氏への敬意を感じた。

  

そして、「みお里」の南面を最大限に利用していたのが「MINAMOラウンジ」。


木製のテーブルと2脚のスツールが20セット並んだ休憩スペースで、飲酒を除く飲食が可能になっている。給水装置があり冷たい水が飲め、ドリップ式コーヒーの自動販売機も置かれていた。

 

木製のテーブルとスツール。あらゆる角が取れていて、スツールはおしりを包み込むように磨き上げられていた。

  

壁には、只見川をイメージしたオブジェが飾られていた。“川の水面を波立たせる風と軽やかに舞う木の葉や花びらたち”を表現しているという。*出処:「東北電力奥会津水力館 みお里」施設ガイド ⑥MINAMOラウンジ URL:https://okuaizu-suiryokukan.jp/?page_id=1901 

 

「みお里」は切り立った高台に建てられた事から眺望が良く、只見川(東北電力㈱上田発電所のダム湖)と大志集落が見えた。良い場所に建てたなぁ、とこの景色を見て実感した。

  

左(只見川右岸)に目を向けると、只見線を走る列車も見る事が可能だ。

  

「MINAMOラウンジ」を抜けるとと、「水力スクエア」があった。*参考:「東北電力奥会津水力館 みお里」施設ガイド ②水力スクエア URL:https://okuaizu-suiryokukan.jp/?page_id=1893

 

“水力発電PR館”の肝というべき展示コーナーで、まず、只見川と水力発電の軌跡を、多くの写真を交え説明する巨大パネルで全体像を把握できるようになっていた。


その後、展示スペースに中央にある、只見川流域を表現したジオラマへのプロジェクションマッピングとスクリーンで、映像を見ながら地理的な感覚を得て理解を深められる展示構成になっていると感じた。

  

ジオラマは、等高線を元に立体化された無地のものだった。


このジオラマに投影された映像は、鮮やかで滑らかだった。

 

水源地である尾瀬から流れ出る、只見川の様子も良く分かった。

 

東北電力㈱のダム式の発電所も表示されていた。できれば、只見川の包蔵水力を周知してもらうためにも、奥只見や田子倉などの電源開発㈱の発電所も表示するくらいの器量は欲しかったと思った。

 

只見線については、「第一只見川橋梁」を走る列車の映像を用いるなど、効果的に引用されていた。

  

このジオラマに対するプロジェクションマッピングには、子ども達も興味津々で、光を追いながら見入っていた。映像は入れ替えも可能であるから、良い展示方法だと思った。

   

ジオラマの隣には、水力発電のしくみを可動式の模型で伝えるコーナーや東北電力㈱の再生可能エネルギーに対する取り組み、エネルギーをAIロボットのナビゲートで学ぶコーナーがあった。子ども達は興味を引き、学びを深められると思った。

    

「水力スクエア」の向かいには、二つの部屋があった。ひとつは「企画展示室」。*参考:「東北電力奥会津水力館 みお里」施設ガイド ⑦企画展示室 URL:https://okuaizu-suiryokukan.jp/?page_id=1903 

地元住民に絵画展や写真展など作品を発表する場として開放されるようだが、現在は「只見川ギャラリー」の絵画や巨大ステンドグラス、隣にある地元逸品ギャラリーの絵(片岡鶴太郎氏作)などの創作過程に関する企画展となっていた。   

 

「企画展示室」の隣の部屋が「地元逸品ギャラリー」 。 *参考:「東北電力奥会津水力館 みお里」施設ガイド ③地元逸品ギャラリー URL:https://okuaizu-suiryokukan.jp/?page_id=1895

 

片岡鶴太郎氏が、奥会津地域の7町村(柳津町、三島町、金山町、昭和村、只見町、南会津町、檜枝岐村)の名物・特産品を描いた絵画が飾られ、その下には7町村の観光案内パネルが置かれていた。

  

館内の展示物は以上。 

「東北電力奥会津水力館 みお里」は電力会社のPR館という枠に収まらない施設だと思った。美術館であり、白洲次郎と昭和史の歴史資料館であり、展望所をもった休憩スペースでもある、複合的な可能性のある施設だと感じた。この施設が、只見線の駅チカにできた事を、私は嬉しく思った。

  

見学を終え、エントランスに向かう。館内は周回できるような構造になっていた。

 

 

「東北電力奥会津水力館 みお里」を後にし、只見線の列車の中から建物の外観を撮るため駅に向かい、会津川口行きの列車に乗った。

 

会津川口では、観光客と思われる方々が、歓声を上げながら只見川(上田ダム湖)にカメラを向け、シャッターを切っていた。

  

折り返し運転となった列車は、まだ青春18きっぷの利用期間内ということもあってか混雑した。只見駅からやってきた代行バスが到着すると、次々に席が埋まっていった。

 

列車が出発し、只見川に架かる村道の上井草橋を潜ると、左前方に大志集落が綺麗に見えた。この景観は、住民の理解を得て守られるべきものだと思う。景観保全条例などの制定が望まれる。

  

そして、会津中川が近づくと山間の良い雰囲気の中に「東北電力奥会津水力館 みお里」が見えてきた。立地の良さを、改めて理解した。

  

「東北電力奥会津水力館 みお里」は、電力会社のPR館ではあるが立地と施設内容が良く、金山町を代表する観光エリアを構成する中核となる可能性があると思った。会津中川駅の至近距離にあり、周辺には「道の駅 奥会津かねやま」の他、「中川温泉」もある。

金山町には「東北電力奥会津水力館 みお里」周辺をエリアマネジメントして、育ててほしいと思う。

  

例えば、「東北電力奥会津水力館 みお里」の裏側、南面の崖下には中世の遺構(宮崎館)に中川農村公園があるが、私は人影を見たことが無い。

このロケーションは活かせると思う。

キャンプ場にするのはどうだろう。只見線屈指の景観地である大志集落を只見川越しに見られる、駅チカの水辺のキャンプ場としてPRできる。キャンプ場のプロデュースは、只見町も連携した新潟県三条市に本社を構える世界的なアウトドアメーカーである㈱スノーピークスに委託する、という方法も考えられる。

 

また、「中川温泉」は町の福祉センター「ゆうゆう館」内にあり、一般利用は可能であるものの、地元の高齢者の利用が多い。源泉を“分湯”し“別館”を作る事はできないだろうか。「東北電力奥会津水力館 みお里」の西側には空き地があるので、荒唐無稽な話ではない。

  

この地は「東北電力奥会津水力館 みお里」が建設された事によって、山間の水辺の好立地に、道の駅と温泉を伴った多様的・複合的な集客・交流エリアになった。金山町にはこの可能性を精査し、まずは調査費用を予算化し、5か年計画で魅力的なエリアに育て、“観光鉄道「山の只見線」”の代表的な観光地にして欲しいと思う。

 

 

17:18、只見線の列車は順調に進み、終点の会津若松に到着。駅前にある「ラーメン金ちゃん」で夕食を摂って表に出ると、陽が沈みかけていた。

この後、磐越西線の列車に乗り、磐越東線、常磐線と乗り継ぐ経路で富岡町を目指して帰路に就いた。 

 

今回の旅も天候に恵まれて、良い一日になった。

今日の「トロッコ列車」のように、会津若松発9時台に只見線の列車が設定されていれば、いわき方面からも日帰り列車旅が可能、という事を体験できた事も大きかった。

只見線を福島県民の“Myレール”とする意味でも、浜通りの住民利用は促進されるべきだ。福島県は再来年に伸びた只見線の全線再開通に向けて、ダイヤに対しても戦略を持って、予算化などを進めて欲しいと思う。


 

(了)

 

 

・  ・  ・  ・  ・

*参考: 

・福島県 生活環境部 只見線再開準備室 :只見線の復旧・復興に関する取組みについて

  

【只見線への寄付案内】  

福島県はJR只見線全線復旧後の「上下分離」経営での維持費や集客・地域振興策の実施費用として寄付を募集中(クレジット可)。 

①福島県ホームページ:只見線復旧復興基金寄附金・只見線応援団加入申し込みの方法 *現在は只見線ポータルサイト「只見線応援団」URL:https://tadami-line.jp/support/

  

②福島県:企業版ふるさと納税

URL:https://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/16005g/kigyou-furusato-zei.html

[寄付金の使途]

(引用)寄附金は、只見線を活用した体験型ツアーや周遊ルートの整備、只見線関連コンテンツの充実化等に活用させていただきます。 沿線地域における日本一の秘境路線と言われる観光資源を活用し、更なる利用者の拡大と認知度向上を図ります。

 

 以上、よろしくお願い申し上げます。。 

次はいつ乗る? 只見線

東日本大震災が発生した2011年の「平成23年7月新潟福島豪雨」被害で一部不通となっていたJR只見線は、会津川口~只見間を上下分離(官有民営)し、2022年10月1日(土)、約11年2か月振りに復旧(全線運転再開)しました。 このブログでは、車窓から見える風景写真を中心に掲載し、“観光鉄道「山の只見線」”を目指す只見線の乗車記や「会津百名山」等の山行記、利活用事業に対する私見等を記します。

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