会津美里町「桜、桜、桜」 2019年 春

会津若松周辺の桜が満開になったと聞き、JR只見線の列車に乗って会津美里町に向かった。

 

今日の予定は、会津若松から新鶴まで只見線を利用し、その後は輪行した自転車で会津美里町内の名物桜を見て回る。

 

昼前に会津若松市内に移動し、鶴ヶ城の桜を見て会津での予定は終了。その後、白河と二本松に行き、郡山に戻るという旅を予定している。

*参考:

・福島県:JR只見線 福島県情報ポータルサイト

・東日本旅客鉄道株式会社:「只見線について」 (2013年5月22日)

・NHK:新日本風土記「動画で見るニッポンみちしる~JR只見線

・産経新聞:「【美しきにっぽん】幾山河 川霧を越えてゆく JR只見線」(2019年7月3日)

・拙著:「次はいつ乗る?只見線」カテゴリ ー只見線の春ー 

 

 


 

 

今朝、出掛けに新聞を見ると只見線に関する記事が一面を飾っていた。

観光誘客を強化するため新組織「只見線利活用推進協議会」を立ち上げるという。今後、実行組織である「福島県JR只見線復興推進会議」、事務局である「只見線再開準備室」(県庁内)と三位一体となって只見線の利活用に取り組んでゆくという。多くの観光客に“乗りたい”と思わせる企画を実行し、只見線に“乗る人”を増やし、2021年度の全線再開通後に存廃議論が噴出しないよう安定した乗客数を確保して欲しい。

 

「只見線利活用推進協議会」の構成員は次の通り。*沿線8市町(会津若松市、会津美里町、会津坂下町、柳津町、三島町、金山町、只見町、新潟県魚沼市) ・各市町の観光協会、商工会議所、商工会  他、福島県など20団体ほど

ちなみに、今年2月に福島民報で、今年度に設立準備会を発足すると報じられていたDMO(観光による地域づくり組織)は“民間”主導の組織となる。只見川電源流域振興協議会・奥会津五町村活性化協議会が母体となり、地元旅行会社も関わるようだ。 *参考:観光庁「日本版DMO」URL:https://www.mlit.go.jp/kankocho/page04_000053.html

福島県が主導する「只見線利活用推進協議会」とは独立した動きをするのか、協業するのかは不明だが、『予算を使うため』の組織とならぬよう、只見線の乗客増と沿線交流人口増、経済需要創出に向けて活動して欲しいと思った。

  

 

 

始発列車に乗るために郡山駅に向かう。天気予報は中通りも会津も晴れ。

 

駅頭で自転車を折り畳み、輪行バッグに入れてから構内に入り切符「小さな旅ホリデー・パス」を購入。自動改札を抜け、1番線に停車中の磐越西線の始発列車に乗り込む。

5:55、会津若松行きの列車が定刻に出発。

  

 

沿線には綺麗な青空は広がり続け、猪苗代町に入るとわずかに冠雪した「磐梯山」の全容がくっきりと見えた。

 

 

 

7:11、会津若松に到着。駅舎上空の雲一つない素晴らしい青空が広がっていた。

 

買い物を済ませ、再び構内に入り、連絡橋を渡り只見線のホームに向かう。列車越しに磐梯山も見えた。

7:37、会津川口行きのキハ40形2両編成が会津若松を出発。車内は観光客、県立大沼高校の生徒などを含め2割程度。

  

 

七日町西若松で高校生が乗り込み、車内は賑やかになる。

  

列車が大川(阿賀川)を渡ると、遠くに冠雪した飯豊連峰、河原には新緑が見え、春を実感した。

   

会津本郷出発直後に会津美里町に入り、宮川を渡る際、桜並木越しに飯豊連峰を見る。よく見ると、こちらにレンズを向けるカメラマンの姿があった。“桜越しの只見線”を狙っていたのだろう。

   

会津高田では大沼高校の生徒が大量に降り、車内は一気に静かになった。出発直後に列車は大きく右に曲がり、真北に進路を採る。このカーブは車窓の景色がダイナミックに変化しているが、線路脇の草が景観を損ねてしまっている惜しい場所になっている。

只見線利活用事業では「景観創出」があるが、対象は鉄道写真愛好家である“撮る人”になっている。まずは、“乗る人”が車窓からの景色に満足するよう「景観創出」事業を展開して欲しいと、私は思っている。

   

沿線付近の桜の咲く場所をよく見ると、“撮る人が居た。只見線に乗ってきた方は居るのだろうか、と考えた。車でやってきた“撮る人”方々には、せめて沿線で食事をして、土産物を買って帰宅して欲しいと思った。


 

 

 

 

8:11、根岸を経て新鶴に到着。1村2町が合併し会津美里町となる前の新鶴村の中心駅だった。

 

向かい側の廃ホームに植えられた山桜も満開だった。すっきりとした青空に桜が映え、美しかった。

 

 

新鶴駅からは自転車で移動。輪行バッグから取り出し組み立てて、出発。

  

まず向かったのは先ほど脇を通り過ぎた春日神社。まもなくやってくる上り列車を桜越しに撮るためだ。

  

4.12mしかない中田橋梁を潜り抜けて、鳥居前に到着。参拝してから撮影場所を探すが、“先客”もあり適当な場所が無く、逆光だったが、鳥居の後ろから列車を追って撮る事に決め、コンデジを構えた。

  

 

8:33、ほぼ定刻に会津若松行きの列車が通過。強い逆光で、桜の色合いが出るか心配だったが、なんとかそれらしい一枚を撮る事ができた。

このような悪条件下で一眼レフなどの高性能カメラが欲しくなってしまうが、コンデジの機動性は私のスタイルには合っていると思いとどまる。

  

“先客”が居た場所から見る構図はこの通り。桜は綺麗に見え、陽も高いので列車は順光を受け良い一枚を撮る事ができたのではないだろうか。

  

 

春日神社を後にして、西部山麓に続く高台を目指した。吹上団地の手前の道に入り、坂の上の桜を見ながら自転車を押して上る。

 

この桜も見事な咲きっぷりで、花弁越しに見る「磐梯山」は絵になった。

  

坂を上りきると、県立会津農林高校の新鶴農場があり、家畜舎が並んでいた。おそらく鶏舎もあり、そこで採れた卵が、近所にあるカフェ「Hattando」の絶品オムライスになるのだろう。

  

すこし先に進むと「ふれあいの森スポーツ公園」があり、その敷地の一番高い所には合同会社「会津コシェル」が運営する観光型ワイナリーの建設が進んでいた。醸造所の他、ショップ(イベント)、飲食のスペースを設けるという。*参考:合同会社 会津コシェル URL:https://www.aizucoshell.com/aizu-coshell


この「会津コシェル」は約1.5haの畑を確保し、地域おこし協力隊も加わりカベルネソーヴィニヨンなどのブドウの苗を順次植え付けている。この軌跡は地元紙・福島民報で取り上げられていた。

昨年12月4日の紙面では初めて醸造が行われた様子、今月4日の紙面では(同)会津コシェル代表社員が県庁を訪れて知事に完成報告をした様子が報じられていた。只見線を走る観光列車内で新鶴産ワインが呑める日が訪れることを期待したい。

   

新鶴はブドウの栽培適地が多く、良質の原料を大手ワイン醸造所であるメルシャン㈱に出荷し続けている歴史がある。

「会津コシェル」の他、当地でワイン作りをしようとNPO法人「会津ワイナリー会」が結成され、ブドウの植え付けが行われたと福島民報で取り上げられていた。相乗効果を期待したいが、この三者が個性を発揮し“新鶴のワイン”を広められるよう、必要があれば行政などが“交通整理”をして、三者の発展を支えて欲しいと思う。 *参考:NPO法人「会津ワイナリー会」URL:http://aizuwinerykai.mainURL:

   

ワイナリー建設現場を後にして、今日の目的である会津美里町の名物桜を見る行軍を開始。

(会津)銀山街道の分岐塚を右に見て県道365号(赤留塔寺)線の坂を下り始める。*参考:拙著「柳津町「軽井沢銀山の大煙突」 2017年 晩秋」(2017年11月21日)

  

直後、ブドウを中心とする果実畑の間を抜けてゆく。

  

 

まず訪れたのが「米沢の千歳桜」。樹齢約700年以上のベニヒガンザクラで、開花間もないということで濃紅の咲き様だった。

  

続いて法用寺に向かい、講堂前の「虎の尾桜」を見に行くが、まだ蕾だった。今日は「虎の尾桜 野点茶会」が行われるようで、境内にはテントも張られ多くの関係者が居た。肝心の「虎の尾桜」が咲かず、残念だと思った。

  

法用寺を後にして、県道から町道に入り旧高田町の中心部に向かう。水が張られ、代掻きが行われている田もあり、うっすら冠雪した山々が写り込んでいた。

 

一番高いのが「明神ヶ岳」(1,074m)。

 

南に目を向けると真新しい大きな屋根が見えた。来月7日に開庁を迎える新役場と市民ホールなどの複合文化施設「じげんプラザ」だ。

ここで、只見線の列車を撮るために来た道を引き返した。

 

 

10:12、すっきりと晴れ渡った飯豊連峰を背景に会津若松行きの列車がやってきた。非電化路線の被写体としての良さが実感できる構図だった。

     

 

桜を見る行軍を再開。

県立大沼高校のサブグラウンドにある「古御田神社の種蒔桜」。エドヒガンザクラで、豊臣秀吉が伊佐須美神社に寄進した御正作田(ミショウサクデン)だった場所に立つ。一年前に訪れた時は散っていたが、今日は、素晴らしい咲きっぷりを見させてもらった。

   

続いて、青龍寺境内にある「文殊院 知恵桜」。樹高があるベニヒガンザクラで、気高い女王の風格だった。

 

続いて、道を挟んだ向かい側の伊佐須美神社敷地にある「高天原 神代桜」。樹齢300年のエドヒガンザクラで、柵が施されていた事もあり、荘厳さを感じた。

  

隣接する、あやめ苑内の桜も満開だった。

  

伊佐須美神社に参拝。

  

境内にある「薄墨桜」(会津五桜の一つ)は咲いていなかった。

 

つぼみは固く閉ざされ、開花はまだ先のようだった。

 

 

神社の敷地を抜けると視界が一気に開け、「宮川の千本桜」が目に飛び込んできた。

  

上流側に目をやっても、美しい桃色の帯が見られた。この「宮川の千本桜」は“片岸植栽”が基本で、この付近は右岸が整備されている。

  

神社の駐車場には桜があり、“両岸に桜が見られる”場所となっている。

  

 

宮川を離れ、南に進み「馬ノ墓の種蒔桜(薬師堂の種蒔桜)」に向かった。

 

去年は訪れる事ができず、初めて見た。果樹園に立つ一本桜は、飯豊連峰の残雪と相まって、素晴らしい景観を作っていた。

 

樹齢300年のベニヒガンザクラ。咲きっぷり、立地、背景など、今日見た桜でナンバーワンの桜だった。

    

 

...会津美里町の主要な桜を駆け足で見て回った。「虎の尾桜」と「薄墨桜」が咲いておらず残念だったが、他は満開の桜を見る事ができ大満足の旅となった。

 
「米沢の千歳桜」から「馬ノ墓の種蒔桜」までは平坦な道が多く、自動車の交通量も少ないため“自転車で桜巡り”はベストな移動手段ではないかと思う。只見線を利用して、新鶴や根岸から高田、本郷に向かってサイクリングする環境を整備すれば、需要はあり、滞在時間がのびる事で経済効果も期待できる、と今日の旅でその思いを強くした。 

また、会津美里町には多様な桜があり、咲く時期や、咲いてからの色の移ろい(ベニヒガンザクラ)も楽しめることから、2、3週間は桜のシーズンとして観光客を呼び込む事も可能だ。伊佐須美神社や本郷焼、慈眼大師(天海大僧正)ゆかりの地など文化材と組み合わせれば、この4月は分厚い観光需要を取り込むことが可能ではないだろうか。*参考:拙著「「蓋沼森林公園」2017年 春(2017年5月2日)」、「「向羽黒山城跡・会津本郷焼」2018年 初秋(2018年9月18日)」

 

来月から新役場で業務が始まり、本郷・高田・新鶴各地区が一層協力関係を強め、会津美里町一丸となって只見線を利用した観光客の誘致に取り組むよう、大いに期待したいと思う。

  

 

「馬ノ墓の種蒔桜」の近所には、これから復活しようとしている酒蔵がある。合資会社「男山酒造店」だ。

 

「男山酒造店」は1865(慶応元)年創業。「會津男山」を出荷し、六代目の死去を機に1998(平成10)年に製造を休止していたが、この春から七代目の甥である小林氏(千葉県出身)が“八代目”として跡を継ぐという。昨年末に福島民報で、IT企業から酒造りに転身する小林氏の軌跡と決意が特集されていた。 *出処:福島民報 2018年12月30日付け

 

「男山酒造店」が製造を再開すれば、会津美里町の酒蔵は3ヵ所目となる。「白井酒造店」「末廣酒造 博士蔵」とともに、会津美里町の酒造界を盛り上げ、旨い酒で会津を訪れる観光客を喜ばせて欲しい。 

   

「男山酒造店」を後にして、会津若松市に自転車で向かう。約12km、1時間のサイクリングだ。まずは、宮川沿いを北上。

  

只見線のガードを潜り、国道401号線を東に進む。途中、「末廣酒造 博士蔵」の脇を通った。

  

 

11:36、若松城公園の堀に到着。ここも桜は満開だった。

  

城に向かって車の大渋滞が発生し、城内も多くの人で賑わっていた。

   

鶴ヶ城の天守を取り囲む満開のソメイヨシノ。最高の日和で、行き交う方、花見を楽しむ方は皆笑顔だった。

 

満開の桜越しに天守を見上げる。春の青空も広がり、良い構図となった。

 

本丸では茶会が行われていたため、芝生の上には複数のテントが張られ、和装の方々も多くいた。テントが無ければ風流だと思ったが、致し方なしか。

 

 

鶴ヶ城を後にして、北出丸大通り沿いにある真新しい建物に向かった。

 

来週月曜日にオープンするICTオフィス「AiCT」だ。先月、福島民報には完成を祝って一面の広告が掲載されていた。*参考:スマートシティAiCT URL: https://aizu-aiyumu.co.jp/

 

4階建てのオフィス棟には15社予定に対して13社が入居の意思を示していて、予想される従業員は420人にのぼるという。

「歴史文化都市・会津」に先進ICTに取り組む企業が活躍する事は、会津のプレゼンスを高めるばかりか、福島県の活力にもつながると思う。「スマートシティAiCT」に入居する企業の成長や、ここを起点として市民が交流し新たな歴史文化を創造してゆく事を期待したい。

  

神明通りに出て、会津若松駅に向かうが、アーケードの人通りを見て気になった。鶴ヶ城に向かって渋滞する道路と、閑散とするアーケード。

城内の賑わいから取り残された市街地に、観光地特有の課題が解決されずにいる事を痛感した。駐車場の郊外化とバス・タクシー・自転車等の二次交通整備を組み合わせるなど、突出した観光地の人の流れを周辺部に拡散する方法は考えられているが、実行されてはいない。

“桜の鶴ヶ城”は魅力的で、たとえ城内の駐車場を無くしても、中長期的に見れば観光客の減少は発生しないと思う。それより、駐車場の郊外化し導線を延ばす事によって、市街地に散らばる歴史文化や食の観光資源に触れられる機会を得られて方が観光客は喜び、春以外に会津を訪れるきっかけをつかむのではないだろうか。関係者には今一度、この“大渋滞と閑散”を問題視し、会津若松の観光産業の進展と充実を目指して欲しいと思う。会津若松の観光都市化は只見線の乗客増にも大きく寄与するはずだ。

  

 

 

 

 

...会津若松市を後にして、白河市に向かった。 

友人の墓参りを終え、東日本大震災で崩落した石垣の修復作業が終了した小峰城に向かう。桜は散り始めていたが、まだ見応えがあった。

 

城内には多くの方が居た。

 

小峰城は鶴ヶ城と比べれば小さいが、美しく見応えがある。桜にも、やはり映えていた。

  

...白河市の後は、用事があるため実家のある二本松市に向かった。霞ケ城の桜も見たかったが、陽が落ちてきたため諦めた。 

岳温泉向かう国道から市道に入ると、見慣れた安達太良山の全貌が見えた。私の故郷の景色だ。

 

 

(了)

 

 

・ ・ ・ ・ ・ ・

*参考:

・福島県  生活環境部 只見線再開準備室:「只見線の復旧・復興に関する取組みについて

・東日本旅客鉄道株式会社:「只見線(会津川口~只見間)の鉄道復旧に関する基本合意書及び覚書」の締結について(2017年6月19日)

  

【只見線への寄付案内】

福島県はJR只見線全線復旧後の「上下分離」経営での維持費や集客・地域振興策の実施費用として寄付を募集中(クレジット可)。

①福島県ホームページ:只見線復旧復興基金寄附金・只見線応援団加入申し込みの方法 *現在は只見線ポータルサイト「只見線応援団」URL:https://tadami-line.jp/support/

 

②福島県:企業版ふるさと納税

URL:https://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/16005g/kigyou-furusato-zei.html

[寄付金の使途]

(引用)寄附金は、只見線を活用した体験型ツアーや周遊ルートの整備、只見線関連コンテンツの充実化等に活用させていただきます。 沿線地域における日本一の秘境路線と言われる観光資源を活用し、更なる利用者の拡大と認知度向上を図ります。

  

以上、よろしくお願い申し上げます。

次はいつ乗る? 只見線

東日本大震災が発生した2011年の「平成23年7月新潟福島豪雨」被害で一部不通となっていたJR只見線は、会津川口~只見間を上下分離(官有民営)とし、2022年10月1日(土)に、約11年2か月振りに復旧(全線運転再開)しました。 このブログでは、“観光鉄道「山の只見線」”を目指す、只見線の車窓からの風景や沿線の見どころを中心に、乗車記や「会津百名山」山行記、利活事業に対する私見等を掲載します。

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