晴天、雪の山々 2025年 冬

年末から年始にかけて雪の降る日が多かった会津地方。天気予報で快晴となっていた今日、JR只見線の列車に乗って、雪を纏った山々を車窓から眺め続けた。

*参考:

 ・東日本旅客鉄道株式会社:「只見線について」(PDF)(2013年5月22日)/「只見線(会津川口~只見間)の鉄道復旧に関する基本合意書及び覚書」の締結について(PDF)(2017年6月19日)

・NHK:新日本風土記「動画で見るニッポンみちしる~JR只見線

・産経新聞:「【美しきにっぽん】幾山河 川霧を越えてゆく JR只見線」(2019年7月3日)

・福島県 :只見線管理事務所(会津若松駅構内)

・拙著:「次はいつ乗る?只見線」カテゴリ -只見線の冬- / -只見線沿線の“山”-

 

 


 

 

今朝、只見線の始発列車で金山町にやってくる間は青空が見えなかったが、11時を過ぎた頃から強い陽射しが注ぎ、上空には青い空が広がった。

 

会津川口駅から国道252号線を北東に700mほど歩き「かねやまふれあい公園」に行くと、只見川に突き出た大志集落を中心とする見事な景色を見る事ができた。*只見川は東北電力㈱上田発電所・ダムのダム湖

水鏡は冴え、背後に連なる「岳山」(941.7m)山塊のモザイクの山肌が映り込み、素晴らしい写し絵を見せていた。また、青空を映した水面の、青のグラデーションも美しく、この場で見た今までの中でもトップクラスの光景だった。


「かねやまふれあい公園」から駅に戻る際に、見続けた山も良かった。気温が上がっていないせいか綿帽子は残っていて、山肌の木々くっきりと浮かび上がり、躍動的で生命力を感じた。

 

会津川口駅に戻り、列車への乗車可能となる12時10分まで駅舎内で待つことにした。ホワイトボードに貼られた“Youはどこから?”を見ると、台湾が圧倒的で、中国、タイと続いていた。


12:00、駅頭に大型観光バスが停車し、その客が同じ列車に乗るようだったので、早めにホームに行き並ぶ事にした。会津若松行きの列車はキハE120+キハ110の2両編成だった。

引き込み線には、今年大活躍の除雪車が停車していた。

ホームに行き、先頭車両(キハE120)の後部扉の前に並んだ。

12時10分頃、車内を点検して回る運転手が運転台に移動しディーゼルエンジンが数度蒸かされた後、まもなく扉が開くようになった。開扉ボタンを押し、乗り込んだ。

 

12:29、会津若松行きの始発列車が、会津川口を出発。観光バスを降りたツアー客の大半は、後部車両に乗ったようで、先頭車両には空席もあった。

また、列車が動き出してまもなく、ワンマン運転をする運転手から『会津桧原まで只見川に架かる4本の橋梁で徐行運転をしますので、車窓からの景色をお楽しみください』との車内放送があり、続いて、JR東日本が作成した観光案内の音声が流れた。


列車が只見川右岸沿いを、左に大きく曲がりながら進むと、前方に大志集落が見えた。「かねやまふれあい広場」から見える景色よりも、「岳山」山塊に迫力を感じた。*参考:拙著「金山町「岳山」登山 2024年 春」(2024年5月4日)

大志集落の背後を駆け、しばらくすると高台に建つ東北電力㈱奥会津水力館「みお里」が見えた。*参考:拙著「金山町「東北電力奥会津水力館 みお里」2020年 晩夏」(2020年9月6日)

 

会津中川では、小動物の足跡だけが見える滑らかな雪面と大屋根の集落、そして「岳山」山塊とその尾根上に広がる青空の、素晴らしい絵が見られた。

 

上田ダムが近付くと只見川の川幅が広がり、湖面に「岳山」山塊の東に連なる山々が映り込んでいた。この場所は、電柱の地中化と木枝の適宜伐採をすれば、素晴らしい眺望区間になると個人的に思っている場所だ。

 

会津水沼手前で「第四只見川橋梁」を渡った。*以下、各橋梁のリンク先は土木学会附属土木図書館デジタルアーカイブス歴史的鋼橋検索

 

早戸手前で金山町から三島町に入った列車は、滝原トンネルを抜けて「第三只見川橋梁」を渡った。

*只見川は東北電力㈱宮下発電所の調整池・宮下ダムのダム湖

下流側の川面には、トラス橋を渡る列車の影が映っていた。

 

宮下発電所と宮下ダムの脇を駆けた列車は、会津宮下を経て「第二只見川橋梁」を渡った。正面には「三坂山」(831.9m、会津百名山82座)の山容が良く見えた。*只見川は東北電力㈱柳津発電所・ダムのダム湖

 

会津西方を出ると、桧の原トンネル内で減速した列車は「第一只見川橋梁」を渡った。下流側、正面右の「日向倉山」(605.4m)の南面は白く、際立っていた。*参考:拙著「柳津町「日向倉山」登山 2024年 春」(2024年4月13日)

反対側の車窓に移動し、上流側、駒啼瀬の渓谷を眺めた。ここは、木々の綿帽子がほとんど消えていた。*只見川は柳津ダム湖

前方上方にある「第一只見川橋梁ビューポイント」に向かってカメラをズームにすると、Cポイントと最上段Dポイントにはカメラを構える多くの人の姿があった。

今日は青空が広がり、陽光を受けた車両がくっきりと映り込み、良い写真が撮れたのではないかと思った。

 

会津桧原を出発した後に滝谷トンネルを抜けると、小出方面から列車に乗ってきた客に橋梁区間を終わりを告げる「滝谷川橋梁」を渡り、柳津町に入った。

 

滝谷を経て郷戸を出てまもなく、“Myビューポイント”を通過。無垢の雪原の向こうに「飯谷山」(783m、同86座)全体がよく見えた。

 

13:20、列車が会津柳津に停車すると、会津川口駅から乗り込んでいたツアー客が降りて、駅頭に待機していた観光バスに乗り込んだ。

この、会津川口(もしくは只見)~会津柳津間のツアー客乗車は、紅葉期を最盛期に状態化している。私は、会津柳津駅構内の2番線ホームを復活させ、会津川口(もしくは只見)~会津柳津間だけを往復運行する観光列車の導入が必要だと思っている。静かに列車旅を楽しんでいる乗り通しの客と、確実に座って客間でおしゃべりしながら一時の列車旅を楽しむツアー客、この双方にとって必要な事だと思う。

この案は巨額の設備投資と無人駅の会津柳津駅に職員の配置などを伴うものだが、まずは福島県が検討し、費用などの負担と併せてJR東日本に提案して欲しい、と改めて思った。

 

会津柳津を出た列車は、会津坂下町に入り「キハちゃん」の出迎えを受けて会津坂本に停車。*参考:会津坂下町「只見線応援キャラクター誕生!!」(2015年3月13日) https://www.town.aizubange.fukushima.jp/soshiki/2/3337.html / YouTube「キハちゃんねる」URL: https://www.youtube.com/channel/UChBGESkzNzqsYXqjMQmsgbg

  

会津坂本を出発すると、列車は七折峠を越えるために登坂を始めた。まもなく、木々の間“坂本の眺め”から、真っ白な「飯豊連峰」が見えた。

会津百名山のみならず日本百名山に名を連ねる霊峰「飯豊山」(2,105.2m、同3座)に、今年登る予定を立てているが、この山塊の圧倒的な姿を見ると、この稜線を縦走してみたいと思ってしまった。*参考:公益財団法人 福島県観光物産交流協会「ふくしま30座」飯豊山  https://tif.ne.jp/yamafuku/mt30/18.html

 

登坂を終え、下り途中の塔寺を出ると、木々の間から会津平野が見渡せ、冠雪した「磐梯山」(1,816.2m、同18座)もくっきりと見えた。

 

“七折越え”を終えた列車は、左に大きく曲がりながら会津平野に入った。

 

会津坂下で下りの小出行きと交換を行った列車は、進路を東から南に変えて、田園地帯の雪原の間を快調に駆けた。東の青空の中には「磐梯山」が見え続けた。

 

若宮を出てまもなく、列車は会津美里町に入った。南東に目を向けると、会津若松市街地の東に連なる背炙山地が見えた。*参考:拙著「会津若松市「羽黒山」「背炙山」登山 2021年 晩夏」(2021年9月22日)

そして、カメラをズームにすると、一部の山頂尾根には、風力発電の風車を確認した。*参考:コスモエコパワー㈱「会津若松ウィンドファーム

 

新鶴根岸を出ると、西部山地最高峰「明神ヶ岳」(1,074m、同61座)の山容が見えるようになった。*参考:拙著「会津美里町「明神ヶ岳」登山 2020年 初夏」(2020年6月7日)

そして、列車の進路を南から東に変える“高田大カーブ”の先には、「小野岳」(1,383.4m、同41座)が見えた。また、田んぼの畦道には、カメラを列車に向ける“撮る人”2人の姿があった。

 

会津高田に停車し、右の車窓から少し振り返ると、広大な田園越しに「飯豊連峰」が堂々たる山容を見せていた。

 

会津高田を出た列車は、宮川を渡った。上流側に、右に「明神ヶ岳」、左奥に「博士山」(1,481.9m、同33座)が見えた。

岩代国一之宮で会津総鎮守の伊佐須美神社は天津嶽(現・新潟県境の御神楽嶽)で創建されたが、「博士山」(第二山岳遷座)、「明神ヶ岳」(第三山岳遷座)と遷り、高田南原を経て現在の地に鎮座したという歴史を持っている。私は個人的に「御神楽嶽」、「博士山」、「明神ヶ岳」を“遷座三峰”としている。

 

会津本郷が近付くと、「磐梯山」が大きく見えるようになった。

 

会津若松市に入った直後に停車した会津本郷を出ると、大川(阿賀川)を渡った。正面には「大戸岳」(1,415.9m、同36座)の山塊が見えた。*参考:拙著「会津若松市「大戸岳」登山 2022年 春」(2022年5月4日)

 

 

14:15、西若松七日町と市街地を駅を経て、列車は終点会津若松に到着。

列車を降りて改札に向かったが、連絡橋からの眺めも良かった。

改札を抜ると、JR東日本 会津若松エリアプロジェクト オリジナルキャラクター の「ぽぽべぇ」が出迎えてくれた。

 

駅舎を抜けて、「鶴ヶ城」に向かうことにした。駅頭の通路の雪は融けて、乾いていた。

 

「まちなか周遊バス」の出発時刻まで時間があったので、駅から歩き、30分ほどで「鶴ヶ城」に到着。400年もの歴史を持つ石垣の上に立つ白亜の天守閣は、雪景色にも映え美しかった。

高石垣に昇り、城址公園越しに天守閣を眺めた。

そして、振り返って西の方を見ると、「博士山」と「明神ヶ岳」の稜線が並ぶように見られた。

   

「鶴ヶ城」を後にして、蕎麦を食べようと西若松駅近くにある「二丸屋 武蔵亭」に向かった。店のHP には日曜日の午後は通しで営業中と記されていた。

が、店の前には車が停まっておらず、店も静まりかえっていたので『まさかっ!』と思い入口前に来ると、“準備中”と記された札が立てられていた。“売店のみ営業中”ということで、HP情報もそちらを指していたのだろうと思った。

「二丸屋 武蔵亭」を後にして、路線バスで会津若松駅方面に戻った。

  

駅に到着し、『この店は開いているだろう』と思った、とんこつラーメン「こうみ家」に向かった。

入口前に立つ、“営業中”と記された幟を見て安堵。スロープを上り店に入った。

2度目となる今回は、味噌ラーメンと鶏チャーシューを注文した。

初めて食べて、その相性の良さにおどろいた刻みタマネギも載っていた。このスープにも良く合っていた。

ラーメンは、旨かった。前回は豚骨だったが、この味噌も濃厚で深みのある味だった。何度でも通いたくなる店だと思いながら、箸を進めた。

 

〆は、ご飯を入れておじやにした。スープが旨いので、レンゲが止まらず、丼はあっという間に空になった。

 

「こうみ家」の後は、日本酒を買おうと「渡辺宗太郎商店 會津酒楽館」に向かった。

 

四号瓶の地酒を手にして駅に戻ると、西の空に茜色の空が見えたので、連絡橋に上り西部山地の方面を眺めた。 藍色の山稜の上に美しい色彩の空が広がり、見事だった。

只見線沿線にそびえる山々の多くは 1,000m前後の低山だが、車窓から視界に収まり眺めることができる。そして、その山々は四季折々に多様な山容を見せ、気候や時間帯によって山肌を現したり稜線だけを浮かび上がらせる。

観光鉄道「山の只見線」”とは、国内屈指の観光路線となった日本海沿岸を駆ける五能線を「海の五能線」として引き合い名付けられた。しかし、走る列車の車窓から見える山岳風景や、列車撮影時に写り込む山々の姿から、そのような対比が無くても只見線は“観光鉄道「山の只見線」”を名乗るに十分な資質を持ち合わせていると私は思っている。

今日、青空の下で車窓から見える会津百名山を中心とする山々を眺め、“観光鉄道「山の只見線」”を堪能するとともに、「只見線利活用事業」を進める福島県が調査・分析に基づいて必要な周知活動をすれば、観光客や観光事業者に“観光鉄道「山の只見線」”という認識が定着するのにさほど時間はかからないのではないかとの感触を得た。

 

 

磐越西線郡山行きの列車に乗り込むと、さっそく「渡辺宗太郎商店」で購入した日本酒を呑んだ。選んだのは、会津坂下町の曙酒造㈱の「大俵引き 純米新酒 おりがらみ生酒」。この蔵が新年最初に上市する酒で、“大俵引き”とは、前日14日に行われた奇祭「大俵引き」からつけれらた名だ。*参考:会津坂下町観光物産協会「坂下初市 奇祭大俵引き

おりがらみ、ということで濁り酒だったが、爽やかですっきりとしていた。グイグイと呑める、旨い酒で、会津地酒の力を再認識させられた。

 

 

18:36、ほろ酔い気分で、郡山に到着。改札を抜け駅頭に出ると、西口広場のイルミネーションが輝いていた。

 

 

(了)

 

 

・  ・  ・  ・  ・

*参考: 

・福島県:只見線ポータルサイト

・福島県・東日本旅客鉄道株式会社 仙台支社:「只見線全線運転再開について」(PDF)(2022年5月18日)

・福島県:平成31年度 包括外部監査報告書「復興事業に係る事務の執行について」(PDF)(令和2年3月) p140 生活環境部 生活交通課 只見線利活用プロジェクト推進事業

 

【只見線への寄付案内】

福島県はJR只見線全線復旧後の「上下分離」経営での維持費や集客・地域振興策の実施費用として寄付を募集中(クレジット可)。

 ①福島県ホームページ:只見線復旧復興基金寄附金

・只見線応援団加入申し込みの方法

*現在は只見線ポータルサイト「只見線応援団」URL:https://tadami-line.jp/support/

  

②福島県:企業版ふるさと納税

URL:https://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/16005g/kigyou-furusato-zei.html

[寄付金の使途]

(引用)寄附金は、只見線を活用した体験型ツアーや周遊ルートの整備、只見線関連コンテンツの充実化等に活用させていただきます。 沿線地域における日本一の秘境路線と言われる観光資源を活用し、更なる利用者の拡大と認知度向上を図ります。


以上、宜しくお願い申し上げます。


次はいつ乗る? 只見線

東日本大震災が発生した2011年の「平成23年7月新潟福島豪雨」被害で一部不通となっていたJR只見線は、会津川口~只見間を上下分離(官有民営)し、2022年10月1日(土)、約11年2か月振りに復旧(全線運転再開)しました。 このブログでは、車窓から見える風景写真を中心に掲載し、“観光鉄道「山の只見線」”を目指す只見線の乗車記や「会津百名山」等の山行記、利活用事業に対する私見等を記します。

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