会津若松市の居酒屋で、高い人気を誇る酒家「盃爛処」。只見駅からJR只見線の列車の乗車し、訪れた。
*参考:
・福島県:只見線ポータルサイト
・福島県・東日本旅客鉄道株式会社 仙台支社:「只見線全線運転再開について」(PDF)(2022年5月18日)
・福島県:平成31年度 包括外部監査報告書「復興事業に係る事務の執行について」(PDF)(令和2年3月) p140 生活環境部 生活交通課 只見線利活用プロジェクト推進事業
・拙著:「次はいつ乗る?只見線」カテゴリ -只見線の夏- / -只見線沿線の食と酒-
12:53、臨時運行された、観光列車「SATONO」号に乗って只見に到着。
反対側のレールを見ると、錆びていた。
只見駅は、昨年6月にJR東日本から「只見駅一部設備改修」案が示され、半年後の12月に旅客列車交換に必要な信号設備など一部施設が使用停止となり棒線化されてしまった。*下掲出処:只見町議会だよりNo.172(2023年7月) 表紙と4ページ *筆者にてボカシ加工と赤線記入
URL: https://www.town.tadami.lg.jp/parliament/2023/08/01/172.pdf
この措置で只見駅での対面乗換が不可能となり、臨時列車の増発や列車遅延発生時の復旧でネックになるのではないかと言われている。
駅舎を抜け、駅頭のカウントボードを見ると、“664”日を示していた。
この後、会津若松に回送列車として帰る「SATONO」号を「叶津川橋梁」付近で撮影した後、只見駅に戻り上り列車を待った。
ホームに立ち列車を待っていると、まもなく姿が見えた。
列車はキハ110東北本部色+キハE120の2両編成だった。
車内は、双方とも混雑していた。金曜日ということで、それほど混んでいないだろうと考えていたが、違った。私は座れなかったが、嬉しい想定外だった。
14:35、会津若松行きの列車が只見を出発。
列車が入叶津地区に入ると、“会津のマッターホルン”「蒲生岳」(828m、会津百名山83座、只見四名座)の山容がよく見えた。*参考:一般社団法人東北観光推進機構「只見四名山」
この直後、列車は只見線最長の「入叶津橋梁」(372m)を渡った。*以下、各橋梁のリンク先は土木学会附属土木図書館デジタルアーカイブス「歴史的鋼橋検索」
14:43、会津蒲生に停車。駅前の電柱には、黄色いハンカチが取り付けられた4本のロープが取り付けられていた。
会津蒲生を出ると、蒲生原越しに、遠く「浅草岳」(1,585.4m、同29座、只見四名山)が見えた。
本名手前では「第六只見川橋梁」を渡った。上流側の東北電力㈱本名発電所・ダムは、珍しく4門のゲート全て開放し、豪快に放流していた。
次の「第五只見川橋梁」を渡る際、只見川を見ると川面にはうっすらと川霧が出ていた。*只見川は東北電力㈱上田発電所・ダムのダム湖
列車が、只見川右岸縁を進むと、一面を覆う濃い川霧が見られた。
15:25、会津川口に停車。下りの小出行きと交換を行った。
15:35、会津川口を出た列車は、左に大きく曲がった。只見川には川霧が張り出し、
只見川に突き出た大志集落に、せせり上がるようになっていた。“雲上の集落”のようで、見応えがあった。*只見川は上田ダム湖
会津中川を出て、しばらく国道252号線を左に見ながら進んだ列車は、国道を潜り「第四只見川橋梁」を渡った。只見川は、上田ダムの直下で水深が浅く、水勢もあることからか川霧は全く見えなかった。
だが、会津水沼を出て、再び只見川が見えると川霧が発生していた。*只見川は東北電力㈱宮下発電所の宮下ダムのダム湖
川霧は、細越橋梁を渡ると水面全体を覆っていた*只見川は宮下ダム湖
そして、三島町に入り国道252号線の三島大橋を潜ると、観光和舟の乗降場に多くの観光客の姿が見られた。
川霧の中には客を乗せた和舟が見え、“霧幻峡の渡し”の名に違わぬ光景だと思った。
早戸を出た列車は、早戸トンネルと滝原トンネルを立て続けに潜り抜け、「第三只見川橋梁」を渡った。ここでも、均整のとれた川霧が見られた。*只見川は宮下ダム湖
列車が只見川の右岸縁を進むと宮下ダムの直脇となり、ダムはゲート1門から放流していた。
会津宮下を出た直後には、「みやしたアーチ3橋(兄)弟」の“長男”大谷川橋梁を渡った。*参考:福島県土木部 まちづくり推進課「ふくしまインフラツーリズム」宮下アーチ3兄(橋)弟
そしてまもなくして、「第二只見川橋梁」を渡った。ここでも川面には川霧があふれ、上流側には「三坂山」(831.9m、同82座)の稜線がくっきりと見えた。*只見川は東北電力㈱柳津発電所・ダムのダム湖
会津西方を出て、名入トンネルを抜けると「第一只見川橋梁」を渡った。ここで只見川は見納めとなった。今日は、川霧の“当たり日”で、私を含めこの列車に乗った客は幸運だった。*只見川は柳津ダム湖
郷戸を出発後、会津柳津手前では“Myビューポイント”を通過。「飯谷山」(783m、同86座)は、曇り空の下で稜線をくっきりと見せていた。
会津坂本手前で会津坂下町に入り、七折峠に入った列車は塔寺を出て坂を下りに、左に大きく曲がりながら会津平野に入った。
会津坂下を出て、右に大きく曲がり進路を南に変えた列車は、田園の間を駆けた。
17:19、七日町に停車、私は降りて、列車を見送った。前方の「磐梯山」(1,816.2m、同18座、日本百名山22座)の山頂付近には雲が掛かったままだった。
駅舎を出て左に曲がり、七日町通りを歩き神明通りに向かった。
途中、赤いがデザインがはっきり分からない幟が、方々に並べられていた。よく見ると、無数の赤べこが描かれたものだった。インパクトのある幟で、面白いと思った。
17:40、神明通りにぶつかり横断歩道を渡って左折し、まもなく「盃欄処」に着いた。看板は出ておらず、建物は蔵のようで居酒屋然としておらず、調べてこなければ信じがたい外観だと改めて思った。
以前「盃欄処」は、会津若松駅により近い大町二丁目にあったが、2019年7月に当地に移転し再オープンした。
「盃欄処」は、予約無しでは入られない人気店で、私は旧店舗で2回『満席です』と言われ、入店できなかった。今回は1カ月ほど前に予約を入れ、今日を迎えた。
入口は鉄扉で、『ここが入口か』と不安になりながらも開けて中に入ると、左に「盃欄処」を染め抜かれた暖簾が掛かっていて、安心して扉を開けた。
店内に入ると、開店直後というころで、誰も居なかった。
店内には、“有名な”ご主人の似顔絵が、いたるところに見られた。
案内されたカウンター席に座り、メニューを開いた。メニューにもご主人の似顔絵が描かれ、賑やかだった。
「盃欄処」は何といっても会津の地酒。見慣れた銘柄が並んでいたが、“ほんの一部を紹介”と書かれている通り、目の前の巨大な冷蔵庫には、知る銘柄の見たことがないラベルの日本酒が並んでいた。
また、カウンターの背後には熱燗にお勧めの酒がずらりと並んでいて、この店(ご主人)のに日本酒に対する情熱を感じた。
結局、日本酒はメニューからは選ばず、ご主人のおすすめから選び、いただくことにした。
お通しが運ばれてきた。湯葉刺しと、会津の名産であるアスパラとベーコンの炒めものだった。
酒が、ご主人が『数が呑めるよう』と勧めてくれた半合銚子に注がれた。
初めの酒は、「会津中将 夏限定吟醸酒」(鶴乃江酒造、会津若松市)。ちなみに、テーブルに載っていたアヒルちゃんは、呼び鈴替わりだということだった。
日本酒をカメラに収めていると、ご主人が『写真撮りますか?』と聞いてきて、ポーズを決めてくれた。どうやらこれが“ちょむりえポーズ”で、けっこうな種類があるとのことだった。
料理はメニューからも選べたが、“おすすめ”で出していただくことにした。
まず運ばれてきたのが、ハラミ串焼き。脂がのりジューシーだったが、しつこくなく旨かった。
続いて、アナゴの白焼き。身がホクホクして、溶けるような柔らかさだった。
おまかせの3品目は、イワシの煮つけ。骨まで柔らかく煮てあり、絶妙な出汁加減だった。
二種目の酒は、「会津娘 純米酒一火」(髙橋庄作酒造店、会津若松市)。「会津中将」が吟醸酒だったので、純米酒にしてみた。濃厚とまではゆかない香りとまろやかさで、爽快な純米酒だった。
“ちょむりえポーズ”は、カメラ目線でいただいた。
おまかせの4品目は、カツオのたたき。万能ねぎがたっぷりと載り、ポン酢も香り高く、旨かった。
5品目は、口直しの枝豆。
6品目は刺身。何の魚か聞きそびれたが、白身の甘みが感じられた。
7品目はレバー刺し。ゴマ油が掛かっていることもあり、風味が増し、レバーの濃厚さを堪能できた。
三種目の酒は、まさかの「飛露喜 純米吟醸」(廣木酒造、会津坂下町)の純米吟醸。呑めるとは思っておらず、ご主人が繰り出した“ちょむりえポーズ”を撮って、直ぐに口にした。
旨い! 控え目な芳醇さと純米の爽快感、そして口を付けてから呑み終わった後まで感じられたほど良い香りが感じられた。高い人気を得続けている「飛露喜」の質の高さを、改めて実感した。
料理では、メニューの中で食べてみたい品が2品あり、別に注文したものが運ばれてきた。
1つは、「はいらんしょ玉子焼き」。平たくふわふわした玉子にシラスが乗ったもので、シラスの塩味と卵の濃厚さが絶妙で、人気の品であることがうなずける旨さだった。
もう1つは、「油揚げ納豆」。日本酒には豆腐系の料理が欲しいと思い注文した。サクっと焼かれた油揚げの食感がよく、同じ大豆である納豆との相性はよく、これだけで2合はいける品だった。
四種目の酒は「會津龍が沢 純米大吟醸」(榮川酒造、磐梯町)。「榮川酒造」にこの銘柄があるあとは知らなかったが、この酒蔵が龍ヶ沢湧水を使って酒造りをしている事を知り、合点がいった。
酔って、細やかな味は分からなかったが、「會津龍が沢 純米大吟醸」は、香り深く、濃厚であることは理解できた。
“ちょむりえポーズ”は、バッティングポーズ。同じ客に同じ型を見せない、ご主人の気配りに恐れ入った。
おまかせの8品目は、カツオの刺身。
最後、日本酒の〆は「風が吹く 純米吟醸生酒 福乃香」(白井酒造店、会津美里町)。*参考:福島県南酒販㈱「合資会社 白井酒造店」*参考:福島県農林水産分水田畑作課「福島県オリジナル酒米「福乃香」」
最後の“ちょむりえポーズ”。“ちょむりえポーズ”には、楽しませてもらった。
「風が吹く 純米吟醸生酒」、旨い旨いと酔いが回った中で呑んだが、生酒のフレッシュさは感じることができた。
そして、〆の料理、おまかせの9品目は、「会津牛のステーキ」にもよく合った。
19:50、「盃欄処」での、約2時間の酒宴を終えた。事前に得られた情報以上の、酒と料理の旨さだった。
「盃欄処」で盃を重ね思ったのは、会津を起点するとする只見線は、利活用で日本酒を活かすべきと。企画列車でのイベント開催や、会津宮下・会津川口・只見などの奥会津地域の主要駅で会津地酒が常時呑めるようにする。また、終点・小出のある魚沼市とJR東日本・新潟支社と連携し、会津と越後の日本酒を列車内や沿線でふるまう、などの企画が考えられる。
呑みすぎや悪酔い客の出現というリスクはあるが、これは工夫次第で避けられると思う。重要なのは、多様で旨い会津の日本酒と抜群の車窓風景を見続けられる只見線をコラボさせ、消費増と乗客増の相乗効果を得る事だ。双方とも高い力(商品力、観光力)があるが、周知途上だと感じているので、福島県と中心とする「只見線利活用計画」の中で進めて欲しいと、切に思った。
「盃欄処」を出て、徒歩で20分かけて会津若松駅に移動。
20:16、乗り込んだ磐越西線郡山行きが会津若松を出発し、帰途に就いた。
(了)
・ ・ ・ ・ ・
*参考:
・福島県 :只見線管理事務所(会津若松駅構内)
・NHK:新日本風土記「動画で見るニッポンみちしる~JR只見線」
・産経新聞:「【美しきにっぽん】幾山河 川霧を越えてゆく JR只見線」(2019年7月3日)
・東日本旅客鉄道株式会社:「只見線について」(PDF)(2013年5月22日)/「只見線(会津川口~只見間)の鉄道復旧に関する基本合意書及び覚書」の締結について(PDF)(2017年6月19日)
【只見線への寄付案内】
福島県はJR只見線全線復旧後の「上下分離」経営での維持費や集客・地域振興策の実施費用として寄付を募集中(クレジット可)。
①福島県ホームページ:只見線復旧復興基金寄附金・只見線応援団加入申し込みの方法 *現在は只見線ポータルサイト「只見線応援団」URL:https://tadami-line.jp/support/
②福島県:企業版ふるさと納税
URL:https://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/16005g/kigyou-furusato-zei.html
[寄付金の使途]
(引用)寄附金は、只見線を活用した体験型ツアーや周遊ルートの整備、只見線関連コンテンツの充実化等に活用させていただきます。 沿線地域における日本一の秘境路線と言われる観光資源を活用し、更なる利用者の拡大と認知度向上を図ります。
以上、宜しくお願い申し上げます。
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