沿線4つ目の伝統工芸品「奥会津昭和からむし織」

JR只見線が走る奥会津地域にある昭和村の特産品である「(奥会津昭和)からむし織」が、国から伝統工芸品に指定された。「会津塗」「会津本郷焼」「奥会津編み組細工」に続く沿線4つ目の国指定伝統工芸品となった。

今日の地元紙・福島民報の一面(中央)と第二社会面で報じられ、指定を受けた地元の様子が報じられていた。

経済産業省による指定は昨日(11月30日)付け。

今回はこの他に4都県(千葉・東京・愛知・富山)の品と合わせて5点が指定され、国指定伝統工芸品は全国で230品となった。

  *経済産業省:「奥会津昭和からむし織」、「千葉工匠具」、「東京無地染」、「三州鬼瓦工芸品」及び「越中福岡の菅笠」を伝統的工芸品として指定しました。(平成29年11月30日)

 

 

奥会津昭和からむし織」については昭和村のホームページに詳しい。

 *昭和村「からむし織について」 URL:http://www.vill.showa.fukushima.jp/making.stm

 

「からむし」はイラクサ科の植物で苧麻(ちょま)とも呼ばれ、昭和村は織物の原料となる「からむし」の本州唯一の生産地となっている。

 

昭和村は只見線の駅を持たないが、只見線沿線を中心に構成されている只見川電源流域振興協議会に加入していて、「只見線乗車体験」を企画している奥会津五町村活性化協議会のメンバーでもある。また両会が使っている“奥会津”は只見線の枕詞として頻繁に使われいるため「沿線」と呼んでも違和感は無い。

    

「奥会津昭和からむし織」の指定は福島県で5品目だが、只見線沿線(県内)で4品と集中する。(他1品は浪江町の「大堀相馬焼」)

只見線は沿線に広がる大自然や、JR東日本の新幹線サービス誌「トランヴェール11月号」に掲載された戊辰戦争をはじめとした歴史的価値の他、今回の4品目の伝統工芸品の指定により文化的価値に触れる事ができる鉄道路線でもある事が示され、観光路線としてさらに厚みが増したと私は思った。

 

只見線沿線の国指定伝統工芸品は以下の通り。

 ①会津塗(会津若松市、喜多方市等:1975(昭和50)年5月10日指定)

 ②会津本郷焼(会津美里町:1993(平成5)年7月10日指定)

 ③奥会津編み組細工(三島町:2003(平成15)年9月10日指定)

 ④奥会津昭和からむし織(昭和村:2017(平成29)年11月30日)

 *リンクは東北経済局「みちのくの匠 -東北の伝統的工芸品-」より 

 

経済産業省のホームページによると伝統工芸品に指定される要件は5つ。

(1) 主として日常生活の用に供されるものであること。
(2) その製造過程の主要部分が手工業的であること。
(3) 伝統的(100年以上)な技術又は技法により製造されるものであること。

(4) 伝統的に使用されてきた原材料が主たる原材料として用いられ、製造されるものであること。

(5) 一定の地域において少なくない数の者がその製造を行い、又はその製造に従事しているものであること。

 *関連法:伝統的工芸品産業の振興に関する法律(昭和 49 年法律第 57 号)

 

「奥会津昭和からむし織」はこの全てに該当したということになる。

上記(2)~(3)に関わる事になる技術は「からむし(苧麻)生産・苧引き 」として国選定保存技術になり、道具類は「会津のからむし生産用具及びその製品」として国指定重要有形民俗文化財に指定されている(2011年)。「奥会津からむし織」は日本の文化財としての価値も高い事が認められている。

また(5)について、村が後継者育成のため「からむし織体験生『織姫・彦星』」募集制度を設けていて、定住・後継者が生まれるなど成果を上げている。

 *参考:

  ・文化庁「福島県昭和村『からむし織体験生「織姫・彦星」』事業」(PDF)

  ・㈱Wasei「灯台もと暮らし」【福島県大沼郡昭和村】畑から布がつくられる不思議。からむしに引き寄せられて、この村にやってきた。 (2017年9月27日)

 

 

さらに、昭和村産の「からむし」は、お隣の新潟県で伝統工芸品でもある「小千谷縮」や「越後上布」の原料となり、その生産を支えている。

 *参考:

 ・越後上布・小千谷縮布技術保存協会「歴史」「主な製作工程

 ・新潟県南魚沼市「国指定重要無形文化財・ユネスコ無形文化遺産「越後上布」

 

 

昭和村の「からむし織」は単独での価値のみならず、上越地方を治めた上杉家の会津移封や江戸期の会津藩領(預地)内の関係などを含めた、地域の広域的かつ歴史的なつながりを評価され、今回の伝統工芸品認定につながったのではないだろうか。

 

 

私は2015年2月に初めて昭和村を訪れ、「からむし織」を見た。

植物が織物になるという事に驚き、乾燥からむし(冒頭掲)を手に取り『これが糸になるのか!!』と感嘆した。そして、色とりどり多種多様な製品を見て感動したことを鮮明に覚えている。

製造工程の一つである「雪晒し」は見ごたえがあり、自然の中でモノを作り出す工夫やその一体感に感激したことを今でも思い出す。


 

「奥会津昭和からむし織」は多くの方々に見て、触れて欲しい魅力的な工芸品だと私は思う。

只見線に乗車し「からむし織」が作り出される昭和村を訪れるには会津川口駅で下車するが、二次交通は路線バスしかない。

本数は極めて少なく(3便)、料金は1,000円と高い。

 *参考:昭和村 「昭和村交通情報

 

昭和村を訪れ「からむし織」産業を多くの観光客に触れてもらうためには、二次交通の整備が欠かせない。しかも、一回の乗車がワンコイン、500円程度で、往復で1,000円以内であることが必要だと私は考えている。

 

すると、Uberのような自家用車配車サービスが頭に浮かんでくるが、規制緩和が進まず実現は先であろうと言われている。

妥当なところで「野焼き」や「刈り取り」、「雪ざらし」などの時期に、只見線のダイヤに合わせたデマンドバスになるだろう。イベントや期間設定をすれば、一定の集客を見込め、運行コストは回収できるのではないか。

仮に運行毎に回収できなくても、観光客の流れができるまでの投資として2~3年は予算を組み実施する取り組みが必要だと思う。

 

また他の二次交通として、ロードバイクのレンタルサイクルも考えられる。

会津川口駅から「からむし織工芸博物館」まで約20km。やや急な坂やアップダウンもあるが、変速機付きで軽量なロードバイクならば、適度な負荷で1時間半前後での移動が可能だ。

春から秋にかけては、野尻川沿いの野趣に富んだ風景を楽しみながらサイクリングができる。昭和村(しらかば荘)や途中の金山町玉梨地区(せせらぎ荘)には温泉がありサイクリングでの昭和村訪問は快適になる。*「平成23年7月新潟・福島豪雨」水害で被害を受け閉鎖してしまった会津川口駅最寄りの「玉縄の湯」があったなら、より良かったが...。

 

 

私は「奥会津昭和からむし織」は只見線の価値を高める重要なコンテンツだと考えている。

只見線に乗車し、気軽にストレス無く「奥会津昭和からむし織」に触れる機会を増やすため、まずは二次交通の整備は不可欠だ。

 

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「奥会津昭和からむし織」をまとった雛飾り。

室町時代から600年の歴史を誇る「奥会津昭和からむし織」は朝廷への貢ぎ物にもなったという。

 

この歴史の重みと潮流に耐えた製品と、それを支え続けた昭和村(旧野尻村・大芦村)の方々の姿は、只見線を経て多くの観光客を惹きつけるだろうと私は思う。(了) 

 

 

 

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【只見線への寄付案内】

福島県はJR只見線全線復旧後の「上下分離」経営での維持費や集客・地域振興策の実施費用として寄付を募集中(クレジット可)。

・福島県ホームページ:只見線復旧復興基金寄附金・只見線応援団加入申し込みの方法

  

寄付金の使途は以下の通り。

・お寄せいただいた寄附金は、福島県、会津17市町村や新潟県などで 組織する「福島県JR只見線復興推進会議」で協議の上、只見線の復 旧や利活用促進のため使われます。(「只見線復旧復興基金寄附金募集」チラシより)

・ 寄附金は、只見線を活用した体験型ツアーや周遊ルートの整備、 只見線関連コンテンツの充実化等に活用させていただきます。 日本一と言われるロケーションだけに頼らない観光振興を推進し、 新たな観光収入の増加を図ります。 (「JR只見線企業版ふるさと納税(地方創生応援税制)の御案内」より)

 

 

よろしくお願い申し上げます。

次はいつ乗る? 只見線

東日本大震災が発生した2011年、「平成23年7月新潟・福島豪雨」で一部不通となっているJR只見線。 2017年6月19日に福島県とJR東日本は復旧の基本合意書を締結し全線復旧が内定しました。 ブログでは車窓からの風景や沿線の見どころを伝える「乗車記」等を掲載します。

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