【参考】エコステ 山梨県「小淵沢駅」

駅の改築話が持ち上がっているJR只見線の中核駅である只見駅。同じ山間地にあり、今年の7月3日に改築され営業開始した山梨県北杜市にある小淵沢駅を訪れる事にした。

只見駅の改築について知ったのは、2年半前の地元紙。

まだ“構想の段階”で、“只見駅を複合施設化”との記事があった。

この記事と同じ年、只見町の2015年6月議会では町商工会が町に提出した、只見駅改修案を含む「中心市街地活性化事業」報告書が開示され、一部が議会報に掲載されていた。

 *只見町:「只見 議会だより No.140 2015 JULY」(PDF)

駅舎案は、上記報道と同じで、2階建て駅舎に鉄道資料館併設し、一体化整備するというものだ。

この情報から2年が経ち、現在の状況は分からないが、只見町中心市街地活性化協議会の核である只見町商工会が国土交通省が管轄する「中心市街地活性化基本計画」の認定に向けて奔走しているのだろうか。

 *参考:国土交通省

 「中心市街地活性化のまちづくり

 「コンパクトシティの形成に関連する支援施策集(平成29年度)

 

只見駅は、「ユネスコエコパーク」の内部にあり、沿線ダムの“親分”ともいえる国内屈指貯水量を誇る田子倉ダムの最寄りということから、名実ともに“景観路線”只見線の最中核駅となっている。その駅舎の改築は只見線の復興に大きな影響を与えると、個人的に思っている。

只見駅の改築は先になりそうだが、最新の駅の改築状況を見て自分なりに案を考えたいと思い、今回の旅に臨んだ。

 

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小淵沢駅は山梨県北杜市にある。平成の大合併で誕生した北杜市に合流した旧小淵沢町の人口は5,955人(2006年3月1日)だった。ちなみに、只見町の人口は4,325人(2017年9月1日)となっている。

この北杜市は一部が「南アルプスユネスコエコパーク」に指定されている。奇しくもユネスコでの登録決定日が2014年6月12日で、「只見ユネスコエコパーク」と同じ日になっている。

「只見」(78,032ha)が只見町全域と桧枝岐村の一部となっているのに対し、「南アルプス」(302,474ha)は山梨・長野・静岡の三県にまたがり、10市町村の広域に及んでいる。

 

小淵沢駅の利用者数は、2016年実績(一日平均)で小淵沢駅が1,458人。ちなみに只見駅は23人となっていて、主要幹線・中央線と地方線・只見線の差が如実に現れている。*出処:JR東日本「各駅の乗車人員 2016年度

 

 

「エコステ」とはJR東日本が創り出した造語で、全体で環境に配慮した取り組み(エコロジー)を行っている駅(ステーション)の事を指している。

JR東日本のHP(CSRの取り組み「環境活動」)には次のように記述されている。 

(引用)「エコステ」とは、省エネルギー、再生可能エネルギーなど、さまざまな環境保全技術を駅に導入する取り組みのことです。「省エネ」・「創エネ」・「エコ実感」・「環境調和」を4つの柱として掲げ、それぞれのエコメニューが駅に導入されています。

小淵沢は6駅目で最新となっていて、福島県内には4駅目の湯本(常磐線)、5駅目の福島(東北本線)が「エコステ」となっている。

 *参考:JR東日本 URL:https://www.jreast.co.jp/eco/ecostation/

・2015年3月使用開始 エコステ「湯本駅」(PDF)

・2015年4月使用開始 エコステ「福島駅」(PDF)

北杜市は国内最長の日照時間があり、小淵沢駅は太陽光パネルを148枚設置し、太陽熱給湯を活用した「エコステ」となっている。

 *参考:北杜市、JR東日本「中央線 小淵沢駅が生まれ変わります」(2017年5月18日)(PDF)

 

「エコステ 小淵沢駅」の改築は、JR東日本単独事業ではなく、駅舎を北杜市と合同で建てるなど官民一体事業となっている。

さらに「都市再生整備計画(旧まちづくり交付金)」事業として国からの補助を受けて整備されている。只見駅の今後にも参考になるのではないだろうか。

 *参考:北杜市

・「都市再生整備計画事業(旧まちづくり交付金事業)

・「基本構想における駅舎位置と駅前広場整備案」(小淵沢駅周辺地域活性化計画策定員会第一回配布資料、2012年7月4日、PDF)

・「小淵沢駅舎・駅前広場基本構想 概算工事費」(2011年6月、PDF)

 

 

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7:25、八王子駅を始発で出発し、小淵沢駅に到着。

下車するのは二度目になる。

ホームからは南アルプス(赤石山脈)の北端、甲斐駒山脈が見える。

ホームの正面にこれから見る新駅舎があった。

以前は新宿寄りの端にあり、小さかった。

 

新駅舎は、旧駅舎の面影もない全く新しいもので、木材を多用し色合いも統一され温かみを感じるものの、筋肉質な堂々した風格も感じた。

連絡橋を渡り、改札に向かう。

寒冷地ということで自動ドアが設置され、風の通り抜けを防いでいた。

改札の向こうの壁にはガラスがはめ込まれていた。

住宅地の向こうに横たわる南アルプス北端を一望できる。

只見駅周辺の山々とは標高が違い壮大だが、比較すると景観美はそれぞれにあると感じた。

 

改札はSuica対応の簡素化されたものだが、天井・壁に角材がそのまま使われ、洗練されたデザインに“自然”を感じる構造になっていた。

コンコースも同様だが、天井に吊らされた防犯カメラが時代を反映していると感じた。

券売機の先にはガラス戸を挟んで階段があり、「展望台入口」とあった。

階段を上ってみる。

 

屋上に出ると、素晴らしい光景が広がっていた。

八ヶ岳と赤岳の威容が私を見下ろす。

 

展望デッキに立ち、振り返ると、南アルプス北端が眼前に広がる。

デッキには“山型”の木製ベンチがあり、調和していた。

デザインの力を感じる。

 

デッキの南東(新宿方面)には太陽光パネルが並べられ、燦燦と降り注ぐ陽を受けていた。

北西(松本方面)を見下ろすと、ホーム屋根の上にも太陽光パネルがあった。

駅舎屋上が40枚、ホーム屋根が108枚という太陽光パネル。これが「エコステ 小淵沢駅」の源泉だ。

これが晴天時の駅全体の消費電力を100%とまかなうという。


 

展望デッキを後にして駅舎内に戻る。

待合室に向かうと、入口脇に小淵沢駅名物の「そば屋 丸政」があった。以前はホームで営業していた。

前回の訪問では、ホームで山菜そばを食べた。

 

奥の待合室に入る。

ふんだんに木材が使われていて、壁材も色が統一されていた。

壁には台形の大きなガラスがはめ込まれ、八ヶ岳が借景されていた。

この台形は外観の至るところに見られたが、“山”をイメージしたものだろうか。

ゴツゴツした感じが、山岳地帯の駅であるイメージに適っていると思った。

 

待合室の長椅子。細部までよくデザインされているが、実は椅子の下にはパネルヒーターがあり、太陽光で温められた温水が通水されるという。

パネルヒーターは中央の長椅子の背もたれ部にもあり、床暖房と合わせて待合室全体が太陽熱で温められるという。

駅舎全体の太陽光発電量や使用電力量等はコンコース上部にある「エコ表示モニター」で見る事ができる。

画面は5通りあり、時間別の発電電力量と消費電力量表示画面では、前日との比較がリアルタイムで確認できる。

“見える化”でこの小淵沢駅が血の通った生き物のようで、親近感を覚える。

 

小淵沢駅は日照時間日本一という地の利を活かし太陽光で駅舎のエネルギーを賄っているが、只見駅は地の利を活かした“水力”だと思う。詳細は文末に記したい。

 

 

「エコ表示モニター」の向かいにはサントリーの工場の案内板があった。

土日祝日には無料のシャトルバスが運行されていて、駅を起点に観光客の流れを作っているようだ。

このような“キラーコンテンツ”は、集客策立案には助かる。

只見駅周辺では電源開発㈱田子倉ダムが“キラーコンテンツ”だろう。国内第三位の貯水量と発電量を誇る巨大施設が徒歩圏の只見ダムから見る事ができる。自転車を使えば、送電施設とコンクリートの躯体を間近で見る事ができる位置まで容易に行く事ができる。

 

 

コンコースの先にある自動ドアがJR東日本と北杜市の境になる。

北杜市とJR東日本が合築した「エコステ 小淵沢駅」の構内区分は北杜市とJR東日本が連名で発表している資料に詳しい。

北杜市側から“駅”の様子を撮る。

デザインは同じで、外壁にはめ込まれた窓も台形になっている。

窓から住宅越しに南アルプスの山々が見えた。

 

北杜市側のコンコースの様子。

この先に「交流スペース」がある。

天井が高く、開放的な空間だ。

壁には台形のガラスがはめ込まれ、八ヶ岳が見えた。

 

階段を下りて、1階の出入口に向かう。

正面に台形のガラス窓があり、開放的で明るい。

壁などのギザギザの構造は、角材を組み合わせたもので、階段の両サイドにも使われていた。

この木材はアカマツらしく、北杜市の“市の木”が建材として用いられている。

1階に下りると、駅舎正面が南アルプスで囲まれている事が実感できた。

駅舎1階は、角材が組み合わされたデザインになっている。

北杜市側のエリアには「観光案内所」があり、エレベータも設置されている。

JR東日本のエリアには「MASAICHI」という名の売店がある。

この先には外壁と一体化したベンチがあり、送迎を待つ方が利用するようだ。

駅舎は完成したが、旧駅舎の取り壊しが終わっておらず、それに付随する工事がまだ進行中だった。

「小淵沢駅舎・駅前広場整備事業」の概算事業費は駅舎13.7億円、駅前広場3億円、用地取得0.4億円というものだった。東日本大震災やオリンピックの建築需要の高まりで実際の費用がどれだけかかったか分からないが、巨額であることに変わりはない。国の補助が最大40%受けられたとしても、行政の支出は多大になり、市民の理解を得てきた過程の苦労が偲ばれる。

只見町は役場の改築も検討されており、町の財政規模からも、只見線の改築には国の最大補助のみならず、県の補助や、広く寄付を募る事が必要になるだろう。

 

駅前の市道に出て駅舎を見る。

一段高い場所に駅がある。

駅は2階建てだが、これにより3~4階建て相当の眺望が得られてるようだ。

 

反対側から駅舎を見る。

市道から駅頭に向けて一方通行の侵入路が減速を強いるカーブを伴って造られている。

歩道も広く、ゆったりとした構造になっている。


 

旧駅舎は基礎など一部が残っているだけになっていた。

11年前の2006年9月に訪れた時には、八ヶ岳に抱かれた赤屋根の駅舎に情緒を感じた。

新しい小淵沢駅は、まったく新しい駅に生まれ変わっていたが、考えられたデザインは南アルプスをはじめとした山間部の中核駅として、「ユネスコエコパーク」の入口の駅の一つとして景観や人心と一体化し、愛され続けるだろう。

また、日照時間日本一という立地は、太陽光発電の利点を最大限発揮でき、「エコステ」の模範駅として存在感を増すだろうと思った。

遠征し「エコステ 小淵沢駅」を見に来た甲斐があった。

  

 

 

只見駅の改築について

まず「エコステ」として改築される事を目指して欲しい。その際利用する自然エネルギーは水力と地中熱が良いのではないかと個人的に思う。

 

 

近隣に田子倉と只見、二つのダムを持つ只見駅は、この水資源を存分に生かせる環境にある。

駅の西側には1m超える幅の用水路がある。

この用水路に小水力発電機を並べ、発電し、蓄電池経由で駅の電力を賄うことはできないだろうか。

水利権など、クリアしなければならない問題はあるが、小水力発電機も改良が進んでいるようで、実現すれば地の利を活かした日本初の「水力発電のエコステ」として集客に力を発揮するのではないか。

 *参考:福島県「福島県小水力発電関連情報のページ

 

 

また、熱は地中熱を用いる。

 *参考:産総研 福島再生可能エネルギー研究所「地中熱チーム」

先行する福島駅では敷地内駐車場の地下130mに配管を遠し、地中熱をヒートポンプ技術で取り出しているという。得られた熱は新幹線待合室の空調に利用している。

 *出処:JR東日本仙台支社「福島駅が「エコステ」モデル駅としてオープンします

 

只見駅は寒冷地であり国内有数の降雪地であることから、熱の利用頻度は高い。

待合室のみならず広い範囲での暖房や融雪に利用できる環境を創り出す事ができれば「エコステ」としての価値は高まると思う。

ヒートポンプ設備は未だ高額だが、只見駅を実証実験施設と位置付けたり、大学と協業するなどして補助金や民間資金を得ることはできないだろうか。

 *参考:

・日本大学工学部 再生可能エネルギーシステム研究室 郡山市湖南町旧赤津小学校跡地共同研究施設

・長岡技術科学大学 機械創造工学専攻・課程 「雪氷工学研究室」

新潟県地中熱利用研究会


只見駅周辺には空地もある。山間地のため、温泉をはじめとした熱源が地中に豊富にある可能性もある。

只見駅改築の際は、小水力発電と地中熱を利用する「エコステ 只見駅」を目指して欲しい。

 

駅の利用者は、「平成23年新潟福島豪雨」の前後変わらず30名/日と少ないが、周辺にある自然環境は「ユネスコエコパーク」として認められるほど、世界基準の豊かさを誇る。そして、容易にアクセスできる国内屈指の水資源を持つ。

只見駅が改修され人が集える場所、交流施設として生まれ変われば、この駅周辺の環境を集客に活かせると思う。「エコステ」ならば、集客の際の訴求力も高まるのみならず、利用者の満足も高まるだろう。

 

只見駅の改築は、会津地方17市町村と福島県が費用を捻出し経営に関わる「上下分離」鉄道・只見線の復興に大きな影響を与える事業だと私は思っている。費用の工面、町民の理解など越えるべきハードルは高いが、広く協力を求めて是非実現させて欲しいと思う。(了)

 

 

 

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【只見線への寄付案内】

福島県はJR只見線全線復旧後の「上下分離」経営での維持費や集客・地域振興策の実施費用として寄付を募集中(クレジット可)。

・福島県ホームページ:只見線復旧復興基金寄附金・只見線応援団加入申し込みの方法

 

寄付金の使途は以下の通り。

・お寄せいただいた寄附金は、福島県、会津17市町村や新潟県などで 組織する「福島県JR只見線復興推進会議」で協議の上、只見線の復 旧や利活用促進のため使われます。(「只見線復旧復興基金寄附金募集」チラシより)

・ 寄附金は、只見線を活用した体験型ツアーや周遊ルートの整備、 只見線関連コンテンツの充実化等に活用させていただきます。 日本一と言われるロケーションだけに頼らない観光振興を推進し、 新たな観光収入の増加を図ります。 (「JR只見線企業版ふるさと納税(地方創生応援税制)の御案内」より)

 

 

よろしくお願い申し上げます。





次はいつ乗る? 只見線

「平成23年7月新潟福島豪雨」で一部不通となっているJR只見線は、2017年6月19日に福島県とJR東日本間で「復旧基本合意書」が交わされ、2018年6月15日に復旧工事起工式が開かれ、全線再開通に向けて復旧工事が本格化しました。 ブログでは車窓からの風景や沿線の見どころを伝える「乗車記」等を掲載します。

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