【参考】観光列車「海里」乗車記 2020年 冬

『JR只見線に観光列車を導入するならば...』と自分なりの考えを深めたいと思い、JR東日本で最新の新造観光列車「海里」号に乗車した。

 

「海里」号は、ちょうど3ヶ月前の2019年10月5日に運行を開始した観光列車で、新潟駅と酒田駅(山形県)間(168.2km)で運行されている。車窓からの見所は「笹川流(れ)」を中心とする、区間の約半分を占める日本海の景色。上り列車(酒田→新潟)は日本海に沈む夕日が見られるようなダイヤになっている。*参考:東日本旅客鉄道(株) のってたのしい列車「海里

  

2021年度中に復旧(全線再開通)を予定している只見線では、現運休区間を上下分離で保有する事になる福島県が、中心となって「只見線利活用計画」(2018年3月)を作成、“観光鉄道「山の只見線」”を目指し、企画列車の定期運行等の実現を目指して活動が行われいてる。企画列車は“車内や停車駅で地酒やご当地の食の提供、振舞いや伝統芸能の披露など、会津地域ならではの、ものづくりや伝統文化の体験をセットにした”列車と福島県は想定している。*下資料(一部抜粋)出処:福島県 只見線ポータルサイト「只見線利活用計画」(2018年3月) URL:https://tadami-line.jp/data/use_plan_02.pdf

 

私は、只見線は全長135.2kmのほとんどで車窓からの田園と山間の良い景色を見る事ができるため、ホスピタリティを高めた観光列車を運行させることで、乗るだけでも楽しめると思っている。

 

「海里」号は只見線でも走行可能なディーゼルハイブリット車両で、内装や乗車時の快適性にJR東日本が持つ最新の知見が反映されていると考え、只見線を走る“乗るだけでも楽しめる”観光列車の参考になるのではないかと思い乗車することにした。

 

 


  

 

前日に会津若松から只見線の列車に乗って、小出経由で新潟入りして宿泊。今朝、高架駅への改築工事が進む新潟駅に向かった。

 

工事は現在2期工事中で、只見線が復旧する2021年度に高架駅が全面開業するという。*参考:新潟市「新潟駅付近連続立体交差事業」URL: https://www.city.niigata.lg.jp/smph/kurashi/doro/ekisyu/renzoku/renritsu.html

この高架工事は、今春の列車の置換え(キハ40形→E120形)につながった事を考えると、只見線とも無縁ではない。 

 

 

9:58、3-4番ホームで待っていると入線を告げるアナウンスがあり、「海里」号が車両基地からやってきた。

  

「海里」号が4番線に停車すると、多くの方に囲まれ、撮影された。

 

「海里」号は現在JR東日本内で最も新しい観光列車内だが、車両は2010年に製造が開始されたHB-300系が使用されている。

HB-300系は、観光列車として高い人気を続けている五能線の「リゾートしらかみ」(橅と青池)などにも使用されている。

  

「海里」号は、新潟~酒田間を18年に渡り運行されていた「きらきらうえつ」号の後継として、新潟県・庄内エリア デスティネーションキャンペーン(2019年10月1日~12月31日)を機に営業運転が開始された。

   

「海里」の名称(愛称)やロゴマークの由来と外観のコンセプトについて、JR東日本の資料には以下のように記述されている。*以下、引用出処「「新潟県・庄内エリア デスティネーションキャンペーン」の開催について」(2019年9月2日)の8ページより

①「海里」
(引用)新潟県や庄内地方には豊かな海や里があります。その海や里の美味しいものや景色を楽しんでもらえるように「海」と「里」を入れ「海里」としました。
②ロゴマーク
(引用)厳しい豪雪地帯の中で人々が助け合う「結の精神」が新潟・庄内の食文化を支えています。その精神を形に込めた水引をモチーフに雪の結晶を表現しました。加えて、海と里、和と洋など、この地域の多様な側面を結びつけたサービス(列車)に込めた、おもてなしの心を表現しました。
③外観
(引用)車両エクステリアは、「夕日」と「新雪」のダイナミックな融合をグラデーションで表現し、新潟の新たな風景の創出となるようなデザインとしました。

  

  

「海里」号に乗り込むと、さっそく新車特有の匂いに包まれた。

内装は“夕日と新雪”をイメージした外観同様、オレンジと白の色使いに統一感があり、運行開始から約3ヶ月というだけあって、隅々まで綺麗で光沢が目立っていた。また、重厚で落ち着きのあるデザインとライティングに、さっそく魅了されてしまった。

  

全4両の車両を見て回る。 *写真は新潟~酒田間、酒田駅、それぞれで撮影したものも含む

 

1号車:リクライニンシート(30席)

オレンジをアクセントに明るく落ち着いた室内になっていた。天井、照明の設えも上品に感じた。

 

シートも「海里」専用のようで、とても快速列車(乗車券+指定券¥840で乗れる)とは思えない質感だった。

そして、特筆すべきは、この1号車の全シートは窓側に約3度傾けられ、車窓からの景色を見やすくしているという。確かに、車両側面に対してシートは直角ではなかった。
観光列車ならではの配慮だった。只見線の観光列車も見習って欲しいと思った。

  

1号車の先頭部分はフリースペースが設けられていて、運転台は腰高で全面ガラス張りで区切られ、開放的で展望がきく構造になっていた。運転手は乗客の視線を感じ、気になると思うが、乗客に列車の旅を楽しんでもらいたいという意図を感じる設計に感心した。

  

 

2号車:コンパートメントシート(32席)

海側を4人席で区切り、山側は廊下になっていた。寝台列車を思わせる作りで、廊下の雰囲気は一層上品に感じられた。

 

座席に扉はなく、仕切りは天井まで届いていなかったが、閉じていると感じられる“個室”だった。スイッチ式の照明(廊下側、窓側)、コンセント1か所(新潟寄り)もあり、グループには最適だと思った。

 

荷棚は各席の上に設けられて、円形のデザインが採られていた。


シートは背もたれの下部を引き倒しフルフラットにする事が可能で、靴を脱いで寛ぐことができる。

 

この2号車コンパートメントで注意しなければならないのが、以下の二点。

・個人旅行の場合、見知らぬ人と同席になる可能性がある点
・窓側はA席とD席で、下り(酒田行き)の場合はD席、上り(新潟行き)の場合はA席が進行方向に正対することになる点

私は出発の2週間前にネット(えきねっと)で1号車の座席と思い購入したが、券売機で指定券を発券して2号車であることに驚き、自席に行きA席が進行方向を背にすることが分かり落胆してしまった。車窓から後方に過ぎ去る景色を見る事になってしまったため、海が見え始めると3号車に移動した。

 

今回、私はコンパートメント席の良さは理解したが、只見線の場合、福島県側は只見川と、新潟県側は末沢川・破間川と交差しながら進み両側に見どころが現れるので、コンパートメントは無い方がよいと思った。

  

 

3号車:イベントスペースと売店

窓側にカウンターを設け、フリースペースは可能な限り広くとられていた。

 

売店は車内の約1/4を占めていた。4号車(旅行商品)の稼働時は複数のスタッフで休む暇もなく忙しいということだが、今日は4号車が閉鎖されているということで、係員が一人、落ち着いた対応で客に接していた。

 

カウンターの前に設けられた窓は大きく、新潟寄りの二つの窓(両側)は開閉可能で、外の空気を取り入れる事ができる設えだった。

 

そのカウンターの下には手すりも組み込まれていて、すっきりとしたデザインに感心した。

  

車両の両側上部にはディスプレイが組み込まれ、先頭車に取り付けられたカメラの映像が流されていた。

車内全体で気になったのが、壁のオブジェ。夕焼け空をイメージした光沢のある壁板に間接照明で落ちゆく太陽を表現させていた。「海里」号のイメージカラーでもあるオレンジが柔らかく空間を彩り、落ち着き、かつ優しい気持ちにさせられた。上り列車(酒田→新潟)は夕暮れ時に日本海を通過するダイヤ設定がなされ、このイメージのような美しい夕焼けが見られるという。

   

 

4号車:ダイニング(24席) *旅行商品専用

今日は旅行商品の販売が無く、閉鎖されていて、中を見る事はできなかった。

 

JR東日本の資料によると、2組の2人席が海側に正対し、他は2人用と4人用のBOX席になっているという。

窓に正対する席を除けば、このダイニングカーは只見線の観光列車にも良いと思った。

  

 

今回4号車内を見る事はできなかったが、1~3号車内を見て、車内全体を貫く、秀逸なデザインに感動すら覚えた。

快速列車(指定券は必要だが...)をここまでのクオリティに仕上げるのかと思いつつ、快速列車でもここまでできるというJR東日本の体力を改めて思い知った。只見線も、沿線の魅力が認知され集客の見込みが立つのであれば、このクオリティーの観光列車の新造も夢ではないと感じた。 

 

 

 

10:12、酒田行きの「海里」号は定刻に新潟を出発。ホームには駅スタッフを含め、手を振って見送る多くの人の姿が見られた。

 

列車はエンジン音をさせずに、すぅーっと、滑り出すように動き出した。電車よりも静かと思える走り出しに驚いた。その後、ディーゼルエンジンを蒸かす事になるが、音はするものの、耳障りな尖ったものではなく、床を振動させるような轟音にも感じられなかった。

「海里」号が走る白新線と羽越本線は電化され、特急列車が高頻度で運行される幹線ということもあり、走行は安定していた。さらに、区間で8駅で停発車をしたが、毎回停止時の揺れや発車時のディーゼル車両特有の轟音も感じず、停車に気付かない事もあった。

「海里」号の乗り心地は大変良く、JR東日本の最新の列車への期待に応えてもくれた。

  

車内放送では、停車駅を前にして、沿線の観光案内が行われた。女性の車掌によるもので、スピーカーからの音質も良く、聞き取りやすかった。バスガイドではないが、観光列車には機転を利かせた観光案内人が必要だと思った。

 

  

11:12、村上を出発してしばらくすると、日本海が見えるようになった。私は3号車に移動して、景色を見続けた。

 

窓枠のデザインも良く、違和感なく“借景”を楽しむ事もできた。

  

3号車には、入れ代わり立ち代わり多くの客が訪れ、景色を見ていた。運悪く山側の席となってしまった客も、これならば満足できるだろうと思った。

  

 

11:21、沿線の見どころ「笹川流(れ)」の南端と言われる鳥越山が見えた。

 

弁天島の脇を通り、桑川に入って行く。

 

桑川は「笹川流れ観光汽船」の発着所の最寄りで、「海里」号の通常ダイヤでは20~30分停車し、上り列車(酒田→新潟)では夕日が見られる可能性がある。

 

「海里」号は桑川を出た後、漁港から笹川海水浴場を過ぎると、ニタリ岩や眼鏡岩などが点在する「笹川流(れ)」のクライマックスに差し掛かる。しかし、残念ながら列車はトンネルに入り見る事ができなかった。

 

トンネルを抜けると、前方に鷹巣岩が...

  

振り返ると、恐竜岩が見えた。

通常ダイヤでは桑川と次駅・越後寒川で徐行運転されるが、冬ダイヤではそれが無く、列車は90km前後と思われるスピードで走っていたため、連続するトンネルの間に見られる景色を見る(撮る)のは大変だった。

  


11:31、蓬莱海岸と蓬莱岩の脇を通過。


11:33、「笹川流(れ)」の北端と言われる狐崎を過ぎても、岩場の海岸線が続き、日本海の荒波との組み合わせは絵になっていた。

  

11:39、海岸区間の後半、雲に隠れ続けていた粟島の全体が見えた。

  

 

11:45、新潟県から山形県に入り、奥州三大古関の一つがある鼠ヶ関を過ぎた。

 

12:02、五十川手前で、最後に眼下に見えた、日本海の光景。冬の日本海のイメージ通りの荒波が見られた。

 

 

 

列車は小波渡を通過し日本海と離れてゆき、しばらくすると庄内平野の苅田の間を進んで行くことになった。

  

まもなく鶴岡というところで、予約しておいた弁当を食べる事にした。ネット(えきねっと)で申し込み、今朝新潟駅の券売機で(食事用)バウチャー券を発行しておいた。

 

売店に行き、スタッフにバウチャー券を渡し、弁当を受け取った。あわせて、「JR海里デザイン缶」の缶ビールと、沿線の村上市に蔵がある大洋酒造㈱の「大洋盛 特別純米」を購入した。

 

弁当は「新潟加島屋」(安政2年(1855年)創業)の「海里特製 加島屋御膳」(¥1,800)。

小分けにされた「魚沼産コシヒカリ」に、「キングサーモン味噌漬」や「いくら醤油漬」、「海老しんじょう」など9種のおかずが入っていた。

「海老しんじょう」の風味と柔らかさに驚き、肉厚な「キングサーモン味噌漬」焼きの食べ応えに満足した。おかずは、酒のつまみにもなり、美味しく完食した。

 

この弁当は“駅弁”としては高額(上り列車は「海里特製 庄内弁」¥2,000)だが、その価値はあるものだった。この弁当は「海里」号の旅をより良きものし、観光列車内での食の重要性を考えさせてくれた。

只見線の観光列車に食を提供するとなると、クルーズトレイン「TRAN SUITE 四季島」の朝食会場になっている「田季野」など会津若松市内の店舗が中心になると思うが、企画や調整などやるべき事は多いと感じた。

 

 

 

12:44、終着の酒田に到着。

 

ホームには「海里」号用の駅名標があった。これも“夕日のグラデーション”になっていて、「海里」号の停車駅全てに設置されているという。

 

酒田は北前船で栄えた街。ホームの空きスペースには、北前船をイメージしたと思われる船が俵を積んでいた。

2017年4月、酒田市が代表自治体として申請した「荒波を越えた男たちの夢が紡いだ異空間〜北前船寄港地・船主集落〜」が日本遺産の認定を受けている。*参考:酒田市「祝 日本遺産認定!」/日本遺産ポータルサイト「荒波を越えた男たちの夢が紡いだ異空間〜北前船寄港地・船主集落〜」/北前船日本遺産推進協議会「北前船寄港地・船主集落 KITAMAE

  

 

列車の乗り換えまで時間があったので、市街地を巡った。 

まず、「山居倉庫」に行く。酒田を象徴するケヤキ並木と黒い板壁(塗装)に圧倒された。

ケヤキ並木は、倉庫を西日や風から守るために倉庫建築に合わせて植えられたという。

 

この「山居(さんきょ)倉庫」は1893(明治23)年に旧庄内藩酒井家によって建てられ、14棟のうち12棟が現存。10棟をJA全農山形が所有し、うち9棟が米保管倉庫として現在も使われている(1棟は庄内米歴史資料館)。残り2棟は酒田市の所有で観光物産館「酒田夢の倶楽」となっている。*参考:酒田市「山居倉庫

 

酒田はNHK朝の連続テレビ小説「おしん」の舞台ともなった場所で「山居倉庫」でもロケが行われたという。「酒田夢の倶楽」には写真などが展示されていた。

  

 

酒田に繁栄をもたらした酒田港にも立ち寄った。最上川の河口にあり、現在は山形県唯一の重要港湾・国際貿易港になっている。

  

 

酒田港から駅に戻る途中、北前船で巨財を成し、“日本一の地主”と呼ばれた本間家旧本邸(県指定文化財)があった。休邸中で見学する事はできなかったが、壁の外周の長さや、顔を出している園庭の松から当時の栄華を伺い知る事ができた。また、“豪商”家屋として、旧鐙屋(国指定史跡名勝天然記念物)もあった。

  

  

約3時間、酒田市の主な観光地を駆け足で巡り、酒田駅に戻った。

駅から徒歩圏の観光地を巡り、観光列車の発着地に観光地があるのは大きいと改めて思った。只見線は、福島県側は会津若松という歴史・文化都市だが、新潟県側は小出となり駅周辺に観光地は少ない。魚沼地域全体では豊富な観光資源があるが、只見線の旅とどう絡めるか工夫が必要だと感じた。

   

16:00、私が乗ってきた「海里」号は上りの新潟行きとなり酒田を出ていった。今日は雲が多いが青空も見えるという天気だったが、車内から日本海に沈む夕日を見る事ができるか、気になった。

 

16:44、私は陸羽西線経由で福島に帰るため、0番線に停車中の列車に乗車。酒田を後にして、「海里」号乗車の旅を終えた。

   

今日乗車した「海里」号は素晴らしかった。特急などの優等列車ならいざしらず、快速列車のクオリティーとは思えない乗車空間と乗り心地だった。また、大きく綺麗な車窓を通して、日本海の見応えのある景色を堪能し、弁当も大満足の旨さで、充実した時間を過ごさせてもらった。

   

*参考

・日本経済新聞「新潟と庄内結ぶ観光列車「海里」出発 景観と食堪能」(2019年10月5日)

・東洋経済新報「過剰装飾なし、JR東の観光列車は新基準になる? デザインすっきり、新潟―酒田に「海里」登場」(2019年10月17日)

 

 


 

 

【私案】只見線を走る観光列車について

今回、「海里」号に乗車した事で、只見線に導入して欲しいと思う観光列車について、改めて考えた。私は只見線の観光列車について、新造ならば「雪月花」(えちごトキめき鉄道)、改造ならば「越乃Shu*Kura」(東日本旅客鉄道(株))のような日本酒をコンセプトにした列車が良いと思っている。

 

今日「海里」号に使われているHB-300系に乗り、その快適性を安定性を体感し、この車両を毎日走る常時運行列車にできないものかと思った。“観光鉄道「山の只見線」”を周知浸透させ多様な乗客を呼び込むには、毎日運行される観光列車は必要だ。

  

[運行形態]

只見線の運休(2011年7月)前の時刻表では、下り上りとも5時間以上列車の無い時間帯がある。HB-300系の観光列車を2編成導入して、この時間帯に毎日、往復で走らせるのはどうだろうか。

下り(会津若松→小出)
・7:37から13:08まで、5時間31分間、列車無し(会津若松~会津川口間)
・13:08から17:01まで、4時間53分、列車無し(大白川~小出間を除く)
上り(小出→会津川口)
・5:30から13:17まで、7時間47分間、列車無し(会津川口~会津若松間を除く)
・13:17から16:08まで、2時間51分、列車無し(会津坂下~会津若松間を除く)


運行区間は、只見線限定とせず、東北新幹線・郡山→(磐越西線)→会津若松→(只見線)→小出→(上越線)→上越新幹線・浦佐として、東京を起点に新幹線を利用した周遊旅を可能にし、東京圏の乗客を呼び込む。運行時間は5時間~6時間を見込む。“海の観光鉄道”五能線で運行されている「リゾートしらかみ」号も運行区間の両端は新幹線駅(青森側は新青森)で、5時間5分から5時間52分の間で運行されている。*参考:東日本旅客鉄道(株)「リゾートしらかみ 停車駅と運行時刻

郡山~会津若松間では快速運転し、観光客が指定席で快適に移動できるようにする。磐越西線は単線路線だが、過密ダイヤではないため、上下2本の列車を組み込む事は可能かと思う。

只見線内では、あえて各駅停車にして、観光客にローカル線の雰囲気を味わってもらい、沿線の住民も利用できるようにする。HB-300系は走り出しが静かであるため、繰り返される停発車が、乗客に大きな不快な思いさせることは少ないと思う。

このHB-300系観光列車は、只見線内では観光列車でありながら、普段使いの地域住民にも利用してもらい列車本数の少ないという不便さを解消する、という二兎を追う運行形態とする。

  

[車両編成]

この観光列車は3両編成を想定。「海里」号の2号車コンパートメント車両を外した形で、先頭と後部車両は全て座席指定にする。中間の売店+フリースペース車両には、サロン式のソファか折り畳み式の席を20ほど設ける。ここは自由席にして只見線内で沿線の住民が利用できるようにする。通学定期券利用を不可とすれば、高校生などが大挙して利用することも抑えられると思う。

売店には、福島県(63蔵)と新潟県(89蔵)の中から定期的にラインナップを変えた日本酒と地元食材のアテを用意し、弁当は「海里」号と同じく事前予約+バウチャー券で取り扱う。会津柳津駅では、蒸したての「あわまんじゅう」を個別販売やお土産として補充するなどの運用があってもよい。

  

[調達(導入)]

前述した「リゾートしらかみ」は3編成あるが、最新の橅編成(4両)はHB-300系で14億円で新造されたと言われている。1両あたり3.5億円だ。*出処:旅行総合研究所タビリス「「リゾートしらかみ」にハイブリッド車両を追加投入」

只見線に3両・2編成導入すると21億円となる。とてつもない巨費だが、JR東日本は「リゾートしらかみ」号にHB-300系4両・2編成(橅と青池)導入している実績があり荒唐無稽な話ではない。

ただ、「リゾートしらかみ」号は、1990(平成2)年に五能線に導入された「ノスタルジックビュートレイン」から積み上げた観光鉄道(列車)としての実績があったため新型車両となり得たと私は思っている。他方、只見線は、運休区間の復旧をJR東日本が頑なに拒み続けたという路線であり、現状、JR東日本が多額の投資を進んで行うとは考え難い。

一番夢があるのは、国内外を問わない資産家が只見線観光列車新造のために21億円を寄付してくれる事だが、只見線の認知度は未だ途上にある事もあり期待はできない。

 

現実的な方法として、JR東日本と福島県の共同出資+寄付という形が良いと思う。まず、JR東日本が『只見線は投資対象に資する』と少しでも思わせなければならない。そのため、福島県は2021年度の全線再開通時に企画列車や観光列車を土日祝日にを中心に走らせ、“観光鉄道「山の只見線」”の認知度を上げ、座席販売率8割を目指す告知・周知活動を行う必要があると思う。

只見線観光列車(東京圏周遊旅)に一定の稼働率があるとなれば、JR東日本は東北新幹線と上越新幹線利用などによる運賃収入増が見込め、会津や魚沼地方への誘客へも繋がり、投資の面目もたつ。もちろん、地域貢献という点で企業価値を高め、地域企業としての役割を果たす事もできる。こうなれば、HB-300系2編成21億円を、例えばJR東日本80%:福島県20%で分担することは絵空自事ではないのではないだろうか。

  

[仙台支社と新潟支社の協力・協業]

只見線は会津若松~只見間が仙台支社、大白川~小出間が新潟支社とJR東日本管轄でありながら、担当支社が異なる。「海里」号は新潟支社、「リゾートしらかみ」号は秋田支社と一支社で収まっているのとは事情が異なっている。

JR東日本内の企画が、支社単位で行われているのであれば、只見線全線を走らせる観光列車の導入には仙台支社と新潟支社の協力・協業が必要で、本社の調整も欠かせない、と私は考えている。

もちろん、行政も福島県のみならず、新潟県も関わらなければならないが、こちらは会合が重ねられてきた「福島県JR只見線復興推進会議」に新潟県(交通政策局)と魚沼市がメンバーに入っているため、観光列車導入の協力・協業体制構築に大きな支障はないと思われる。*参考:福島県 只見線再開準備室「全線復旧に向けた検討




私は只見線に専用の観光列車を走らせるべきだと思っている。只見線はそれに値する路線で、“観光鉄道「山の只見線」”とアピールしても名倒れしない車窓から見える風景がある。 

「只見線利活用事業」を推進する福島県は、何よりも2021年度の復旧(全線再開通)後のできるだけ早い時期に観光列車の運行させる事に注力し、車窓から見える景色の景観創出事業を進めるべきだと私は考えている。

  

今回、「海里」号に乗車して、その観光列車に何を導入するか、自分なりに考える材料がまた増えた。今後は、“本命”と思っている「雪月花」(えちごトキめき鉄道)と、「海里」号と同じ車両を使っている「リゾートしらかみ」号(橅編成)に乗車して、考えを深めてゆきたいと思う。

 

 

(了)

 

 

・ ・ ・ ・ ・ ・

*参考:

・東日本旅客鉄道㈱:「只見線について」(PDF)(2013年5月22日)/「只見線(会津川口~只見間)の鉄道復旧に関する基本合意書及び覚書」の締結について(PDF)(2017年6月19日)

・福島県:「只見線の復旧・復興に関する取組みについて」/ 只見線ポータルサイト

・NHK:新日本風土記「動画で見るニッポンみちしる~JR只見線

・産経新聞:「【美しきにっぽん】幾山河 川霧を越えてゆく JR只見線」(2019年7月3日)

・拙著:「次はいつ乗る?只見線」カテゴリ ー観光列車ー / ー只見線の冬

  

【只見線への寄付案内】

福島県はJR只見線全線復旧後の「上下分離」経営での維持費や集客・地域振興策の実施費用として寄付を募集中(クレジット可)。

①福島県ホームページ:只見線復旧復興基金寄附金・只見線応援団加入申し込みの方法 *現在は只見線ポータルサイト「只見線応援団」URL:https://tadami-line.jp/support/

 

②福島県:企業版ふるさと納税

URL:https://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/16005g/kigyou-furusato-zei.html

[寄付金の使途]

(引用)寄附金は、只見線を活用した体験型ツアーや周遊ルートの整備、只見線関連コンテンツの充実化等に活用させていただきます。 沿線地域における日本一の秘境路線と言われる観光資源を活用し、更なる利用者の拡大と認知度向上を図ります。

  

以上、よろしくお願い申し上げます。

次はいつ乗る? 只見線

東日本大震災が発生した2011年の「平成23年7月新潟福島豪雨」被害で一部不通となっていたJR只見線は、会津川口~只見間を上下分離(官有民営)とし、2022年10月1日(土)に、約11年2か月振りに復旧(全線運転再開)しました。 このブログでは、“観光鉄道「山の只見線」”を目指す、只見線の車窓からの風景や沿線の見どころを中心に、乗車記や「会津百名山」山行記、利活事業に対する私見等を掲載します。

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