乗り初め(沿線冬景色) 2019年 冬

只見町で「第47回 只見ふるさとの雪まつり」が開かれるのを機に、沿線の冬景色を見ようとJR只見線に乗車した。

今年は雪が少ないようで、豪雪地帯・只見町であっても雪像作りは苦労したと聞く。車窓から見える冬の景色を含め、沿線の雪景色を楽しもうと思った。

 

今日の予定は、只見線を利用し只見町まで行き、雪まつり会場や只見ダムを訪れ、会津若松に戻り「絵ろうそくまつり」を見て当地で宿泊。

当初は、雪まつりで打ち上げられる花火を見て、そのまま宿泊しようとしたが、手配が遅れ只見町の主だった宿の予約が取れず断念した。

*参考:

・福島県:JR只見線 福島県情報ポータルサイト

・NHK:新日本風土記「動画で見るニッポンみちしる~JR只見線」 

・東日本旅客鉄道株式会社:「只見線について」 (2013年5月22日) 

・拙著:「次はいつ乗る?只見線」カテゴリ ー只見線沿線のイベントー / ー只見線の冬

  

 


 

 

今朝、磐越西線の始発列車に乗るために、郡山駅に向かう。夜は明けていなかった。

  

自動改札を通り、1番線に停車中の列車に乗り込んだ。

5:55、会津若松行きが定刻通りに出発。


 

 

7:09、会津若松に到着。途中、猪苗代付近は雪が多かったが、こちらは道路や歩道に積雪は無かった。

 

買い物を済ませ、改札を通り連絡橋で只見線のホームに向かう。喜多方行きとともに、2台のキハ40形が並んでいた。

7:37、会津川口行きの列車が会津若松を出発。全てのBOX席に乗客の姿はあったが、私が乗った車両は15名程だった。

  

切符は、土曜日ということで郡山駅から「小さな旅ホリデー・パス」を利用した。

通常、郡山~只見間は3,020円なので、断然お得だ。

  

 

列車は住宅街にある七日町西若松を経て、大川(阿賀川)を渡り会津平野に入ってゆく。

  

会津本郷を出た直後に会津美里町に入り、会津高田を過ぎると右に大きくカーブして列車は北上し、根岸新鶴で停発車を繰り返す。

 

刈田の稲株が見えるほど積雪は少なかった。

  

 

若宮の手前から会津坂下町となり、会津坂下で高校生の下車があり、上り列車とすれ違いを行った。

   

会津坂下を出発するとしばらくはトコトコと静かに進むが、やがてディーゼルエンジンを蒸かして、七折峠を登坂する。雪はだいぶ多くなってきた。

現在、只見線は雪崩・落雪対策として先月21日から冬ダイヤで運行されているため、スピードを抑えながらゆっくりと登っていった。


 

峠の途上にある塔寺を過ぎても登坂は続き、第一花笠から、第二花笠、元屋敷、大沢と続く四連のトンネルを抜けると下り坂となり、会津坂本を経て柳津町に入る。会津柳津では数人の乗降があったが、車内の様子は変わらずだった。

  

郷戸手前の“Myビューポイント”で前方の「飯谷山」(783m)上空を見る。雪雲が掛かっていたが少なく、奥会津の天候は大荒れはしないだろうと思った。

 

 

列車は滝谷を出発した直後に滝谷川橋梁を渡り三島町に入る。眼下には水墨画のような風景が広がっていた。*以下、各橋梁のリンク先は土木学会附属土木図書館(http://www.jsce.or.jp/library/archives/index.html)「歴史的鋼橋集覧

 

 

 

会津桧原を出発し、桧の原トンネルを抜けると「第一只見川橋梁」を渡る。東北電力㈱柳津ダム(発電所)が創る“水鏡”が見られた。

  

 

名入トンネルを経て、会津西方を出た直後に「第二只見川橋梁」を渡った。

   

列車は減速し、“アーチ3橋(兄)弟”の長男・大谷川橋梁を渡り、眼下に県道の宮下橋(次男)を見ながら進んだ。

  

会津宮下で数名の乗降があり、上り列車とすれ違いをした後に出発。東京電力㈱宮下発電所の脇をゆっくりと進んだ。

  

宮下ダム湖(只見川)との距離は近く、並行して走りながら濃い青緑の湖面から見上げるように見える峡谷の風景は、現在、沿線唯一だ。*全線復旧すれば、会津川口から「第五只見川橋梁」手前でも只見川は近く、渓谷美を楽しめる。

 

 

僅かな時間、只見川と離れた後に「第三只見川橋梁」で渡った。

  

渡河直後に滝原トンネルに入り、短い明かり区間を経て早戸トンネルを潜り抜けた。

   

早戸で停発車し、金山町に入った直後に細越拱橋(8連コンクリートアーチ橋)を左に大きく曲がりながら進んだ。

   

 

会津水沼を経て、下路式の「第四只見川橋梁」を渡る。冬期ダイヤで列車の速度が遅いため、鋼材に邪魔されず只見川を見る事ができた。

ここは東北電力㈱上田ダム(発電所)の直下であるため、水深が浅く、川の流れが見える。

 

 

次の土曜日(16日)に「なかがわ雪月列火」が行われる会津中川を経て、大志集落を抜けて列車が減速する。雪が舞い、前方の上井草橋が霞んで見えた。

 

 

 

9:47、会津川口に到着。ホームと並行して広がる上田ダム湖(只見川)に雪が吸い込まれていた。

 

ホームに降り立った客の多くが、カメラを構え、眼前に広がる景色を撮っていた。

  

 

線路を渡り駅舎に入ると、“Youはどこから?”ボードが、小さくなって売店の脇に置かれていた。

台湾とタイからの旅行客が圧倒的で、以下、香港、オーストラリアと続いていた。中国と韓国はそれぞれ一人で、同じアジアでも雪が降る地域の方にとっては只見線沿線の雪景色は魅力的ではないのだろうか。

   

このボードが移ったおかげで、売店に置かれた金山町のゆるキャラ「かぼまる」の姿を久しぶりに見る事ができた。


  

 

しばらく、暖房のきいた構内で待つ。係員の合図で表に出ると、代行バスとなる中型のバスが付けられていた。

10:25、只見行きの代行バスが会津川口を出発。乗客は21名だった。 

  

代行バスは国道252号線を進み、本名会津越川会津横田会津大塩会津塩沢(ここから只見町)、会津蒲生の各駅に近いバス停で停発車を繰り返していった。

沿道の風景は、社内の窓が曇っていたためによく見られず、写真も撮れなかった。

 

 

 

 

 

11:15、只見に到着。上空は雪雲に覆われ、湿った雪が舞っていた。

 

「第47回 只見ふるさとの雪まつり」の看板が掲げられたゲートを潜り、会場に入るとブースが並び、酒となめこ汁振舞われていた。

私は、只見産の米焼酎「ねっか」を燗でいただきながら、なめこ汁を啜った。体が芯から温まった。会場入口にこのようなサービスがあり、ありがたかった。

 

雪壁に描かれた絵やかまくらを見ながら進むと、会場となる広場に出た。昼前ということもあってか、“これから”という感じだった。

今年のメインステージ上の大雪像は北海道胆振東部地震の復興応援ということで、北海道庁旧本庁舎(赤れんが庁舎)。

雪不足が心配されていたが、しっかりと作り込まれていた。今夜、この大雪像を背景に打ち上げられる花火は綺麗だろうと思い、もっと早く宿を予約しておけばよかったと後悔した。

 

一旦、会場を後にして、只見ダムに向かった。 


 

 

国道252号線を進み、電源開発㈱只見ダム(発電所)に約20分ほどで到着した。 

国道は小出方面への通り抜けができないため、通る車は少なく、周囲はしーんと静まり返っていた。その中で見る湖と周囲の雪景色が映し込まれた水鏡は見応えがあった。しばらく見入る。

 

湖面にはカモの群れが居て、その奥には、復旧された万代橋の下路式トラスと巨大な田子倉ダムの躯体が見えた。

ダム湖を通してダムが見えるというこの構図は、国内で他に見られるのだろうか。この景観は秀逸で、春夏秋冬の各季節にここを訪れ、コーヒーでも飲みながら一日過ごしたいと思える場所だと私は思っている。

しかし、側にある「歳時記会館」は冬期間(11月中旬~4月下旬)休業し、位置も少し奥まっているため、このダム湖越しの正面にダムが見える事はない。

私は、電源開発の協力を得て、ダム天端の道路にトレーラーハウスを置かせてもらい、カフェとするのはどうかと考えている。この景色を楽しめる仕掛けがあれば、観光客の只見町の滞在時間がのびる可能性があるのではないだろうか。

ついでに言うと、この只見ダムの近くにある「青少年旅行村いこいの村」も“冬キャンプ”など雪を利用したアクティビティを用意し、通年営業とする検討をしてみてはどうかと思う。

短期的な費用対効果は望めないかもしれないが、2021年度中の只見線全線再開通に向けて、5年程度の長期視点で取り組めば活路はあるのではないか。

この素晴らしい景色を活かす取り組みを、只見町には期待したい。

   

次は只見ダムを後にして、只見スキー場に向かう。来た道を引き返し15分ほどで到着。

 

昼食を摂るため、レストハウス2階にあるレストランに向かった。13時になろうとしていたが、スキーヤーをはじめ多くの客で賑わっていた。

 

ソースカツ丼を頼んだ。南郷トマトラーメンは人気なようで、売り切れていた。

カツは柔らかく、ソースが浸み込み、シャキシャキのキャベツとの相性は抜群だった。以前は、マトン丼を食べたが、私の中でこのレストランの星がまた一つ追加された。

 

軽やかに滑り下りてくるスキーヤーや、そりで楽しく遊ぶ子供たちを見ながら、ゆっくり食事をしてから、スキー場を後にした。

   

再び、雪まつり会場に向かうと、来場者は増えていて、これから始まるものまねショーを見るべく、メインステージ前に集まっていた。

空は明るくなっていて、雪は止み、薄っすらと陽も差してきた。

 

代行バスの出発時間まで、特産品のブースなどを見て過ごした後、「只見ふるさとの雪まつり」会場を後にして只見駅に向かった。

 

 

  

14:35、駅頭に付けられた代行バスに乗り込み、只見町を後にした。

代行バスの車内は、往路よりも多くの乗客が乗り込んでいた。

 

途中、雪が激しく降る事もなく、代行バスは順調に進み会津川口に到着。 

 

駅構内を抜け、バスを降りた大半の客と共にホームに停車中の列車に乗り込んだ。

15:31、会津若松行きの列車が会津川口を出発。

 

前回、「只見ふるさとの雪まつり」に訪れた時は大雪で出発が遅れたが、今回はダイヤ通りに進んでいった。車内では往路とは反対側を席に座り、車窓から景色を眺めた。

 

 

早戸付近の只見川(宮下ダム湖)の様子。沼沢湖を湛える沼沢の上部は雪雲に覆われていた。

   

早戸トンネルと滝原トンネルの間の明かり区間。冬は葉が無く、速度も遅いため只見川を見る事ができる。

 

 

「第三只見川橋梁」から、上流方向を見る。中心に見える界の沢は水量が少ないようで、滝は微かに見えた。

  

 

「第二只見川橋梁」から下流方向を見る。電線が邪魔だが、只見川がスゥッーと伸び、前方には微かに町道に架かる歳時記橋が見えた。

 

 

「第一只見川橋梁」から上流方向を見る。駒啼瀬の険しい崖の様子がよく見え、かつての国道(廃道)が如何に過酷な場所に敷設されたかが分かった。

   

列車は、七折峠を降りるまで冬期スピードで走り、会津坂下から少しスピードを上げて会津平野を順調に進んだ。

  

  

17:27、七日町に到着。今回はここで降りて、宿に向かった。 

 

今年初めての只見線の旅は、言われていた通り雪が少なかったが、相応の雪景色を見る事ができ満足できるものになった。只見ダムから見通す田子倉ダム周辺に広がる景色は、申し分なく、価値の高い景観であると改めて思った。

只見線沿線の冬の風景を、もっと多くの人に楽しんでもらうため、今季はあと一、二度只見線に乗り、現地を訪れ情報発信してゆきたいと思う。

  

 

 

今夜は「第20回 会津 絵ろうそくまつり」の最終日。会津若松駅の改札前には、ポスターと絵ろうそくが並べられていた。

 

宿でチェックインを済ませてから、鶴ヶ城に向かった。街中で行き交う人は少なかったが、城内に入ると多くの人出があった。

  

追手門から太鼓門を抜け、天守閣が近づくと、ろうそくの火があちこちに見られ、雪に影を落とし幻想的だった。

 

天守閣前に広がる公園は、ろうそくの列が優しく雪と空間を照らしていた。

 

ろうそくの他に、電灯を用いた作品も展示されていた。会津鉄道を通じて会津若松とゆかりのある栃木県日光市の鬼怒川温泉公園で開かれた「月あかり花回廊」で用いられた「和傘華浪漫」が置かれていた。華やかだった。


雪が降る中、気温が低くなっていったが、心温まる素晴らしいイベントだった。

 

 

(了)

  

 

・ ・ ・ ・ ・ ・

*参考

・福島県 生活環境部 只見線再開準備室: 「只見線の復旧・復興に関する取組みについて

・東日本旅客鉄道株式会社:「只見線(会津川口~只見間)の鉄道復旧に関する基本合意書及び覚書」の締結について(2017年6月19日)  

 

【只見線への寄付案内】

福島県はJR只見線全線復旧後の「上下分離」経営での維持費や集客・地域振興策の実施費用として寄付を募集中(クレジット可)。

①福島県ホームページ:只見線復旧復興基金寄附金・只見線応援団加入申し込みの方法 *現在は只見線ポータルサイト「只見線応援団」URL:https://tadami-line.jp/support/

 

②福島県:企業版ふるさと納税

URL:https://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/16005g/kigyou-furusato-zei.html

[寄付金の使途]

(引用)寄附金は、只見線を活用した体験型ツアーや周遊ルートの整備、只見線関連コンテンツの充実化等に活用させていただきます。 沿線地域における日本一の秘境路線と言われる観光資源を活用し、更なる利用者の拡大と認知度向上を図ります。

 

以上、よろしくお願い申し上げます。

次はいつ乗る? 只見線

東日本大震災が発生した2011年の「平成23年7月新潟福島豪雨」被害で一部不通となっていたJR只見線は、会津川口~只見間を上下分離(官有民営)し、2022年10月1日(土)、約11年2か月振りに復旧(全線運転再開)しました。 このブログでは、車窓から見える風景写真を中心に掲載し、“観光鉄道「山の只見線」”を目指す只見線の乗車記や「会津百名山」等の山行記、利活用事業に対する私見等を記します。

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