今冬の雪は“災害級”で、JR只見線は通学利用が突出して多い会津若松~会津坂下間を含め、福島県側区間(会津若松~大白川 間)の運休が数日続いている。歴史的な豪雪に見舞われた沿線の状況を知りたいと、福島県保有区間(只見~会津川口)を中心に車で巡った。
今年の雪は多く、特に会津地方は人口の多い会津若松市内でさえも除雪が追い付かず、市民生活は大きな影響を受けている。*下記事出処:すべて福島民報の紙面 (左)2025年1月31日付け、(中)2025年2月5日付け、(右)2025年2月14日付け
只見線は、日本有数の豪雪地帯である六十里越(福島県‐新潟県境)や只見町のみならず金山町も記録的な大雪で、会津坂下~大白川 間は今月4日から運休が続いている。そして、ここ数日の大雪で、とうとう“只見線のドル箱区間”とも言える会津若松~会津坂下 間まで運休となってしまった。
この異常事態とも言える只見線沿線の現状を見たいと、天気予報で降雪確率が低く晴れ時々曇りの予報を聞き、急遽レンタカーで只見線に沿って延びる国道252号線を走行し只見町に向かった。
*参考:
・福島県 :只見線管理事務所(会津若松駅構内)
・東日本旅客鉄道株式会社:「只見線について」(PDF)(2013年5月22日)/「只見線(会津川口~只見間)の鉄道復旧に関する基本合意書及び覚書」の締結について(PDF)(2017年6月19日)
・福島県:平成31年度 包括外部監査報告書「復興事業に係る事務の執行について」(PDF)(令和2年3月) p140 生活環境部 生活交通課 只見線利活用プロジェクト推進事業
・拙著:「次はいつ乗る?只見線」カテゴリ -只見線の冬-
6:00、大雪の影響で、磐越西線も区間(磐梯熱海~会津若松間)運休となっているため、レンタカーで未明の郡山市内の自宅を出た。
7:04、会津若松市に入り、国道49号線から県道33号(会津坂下河東)線に入ると、会津盆地の西部山地が見えた。高台になっているためか、「明神ヶ岳」(1,074m、会津百名山61座)などの山容が、只見線の列車内からとは違って、より立体的に見えた。
駅舎(待合室)周辺とホームは除雪されていたが、路盤には雪が載ったままだった。
今後も断続的な降雪予報で、運転再開も未定ということで積もるがままにしているようだった。
三島町内の早戸駅までもがレールが見えない状態になっているとは思わず、今年の雪の多さを金山町と只見町の積雪量を見る前に思い知らされた。
8:08、金山町に入ると、除雪面である道路脇の“雪の壁”が一段と高くなった。
そして、国道では除雪・排雪作業が度々見られた。只見線本名架道橋を潜る際には、ロータリー式の除雪車とすれ違った。
滝沢地区に入る。国道と家々の間には分厚い雪塊が続いていた。
会津塩沢駅手前、「河井継之助記念館」(冬期休業中)の前では、只見線の路盤に載る4m近い“雪の壁”が見られた。圧巻だった。
町の市街地に入ると、国道と建物の間にある雪塊の列は見られなかったが、所々に巨大なものがあった。
9:00、電源開発㈱只見発電所・ダムに到着。国道252号線とダム湖の間には3mを越える“雪の壁”が続いていた。
車から降りて、堰堤を少し歩いて上流側の谷間を塞ぐ電源開発㈱田子倉発電所の田子倉ダムを眺めた。
9:10、只見ダムから引き返し、只見駅に到着。
駅頭の“2022年10月1日全線運転再開”カウントボードは、868(日)を表示していた。
引き戸を開け、無人の駅舎に入った。待合スペースの端に置かれた情報端末には、列車の運行情報が表示されていた。そこには、明日から会津若松~会津坂下間で運転を再開すると表示されていた。
駅舎を出て、宮道踏切を塞ぐ雪塊に載って構内を俯瞰した。
今月4日から運行休止となり12日。この間の積雪は多くなかったようだが、レールが見えない駅は異様だった。
ただ、小出側に延びる除雪車用車庫に通じる引き込み線のレールは露出していた。
只見駅を離れ、駅前で今月7日~9日の3日間行われた「第52回 只見ふるさとの雪まつり」の会場を見た。石像の一部は残り、雪に埋もれていた。
9:25、レンタカーに戻り、国道252号線を会津若松方面に向かって引き返した。
八木沢スノーシェッドを抜け短い坂を上ると、正面に「蒲生岳」(828m、同83座)が見えた。
国道を少し進み、「蒲生岳」登山者用の駐車場にレンタカーを停めて、駅に向かった。国道252号線を左折し住宅地に入ると、屋根の雪下ろしをしている方がいた。屋根に載った2mほどの雪塊の圧はすさまじく、事故無く作業を終えることを願った。
踏切のある場所に着くが、雪の壁で行き止まりになっていた。
たが、その雪の壁に近づき駅の方向を見ると、雪壁が割れ駅に続く踏み跡があったため、そこに入り進んだ。
9:38、会津蒲生駅に到着。レールはホームと同じ高さほどの雪に覆われていた。
雪壁の方へ引き返し、雪塊の上に載って駅を俯瞰。
振り返って小出方面を眺めた。無垢の雪面は美しかったが、列車の運休状態を考えると複雑だった。
会津蒲生駅を後にして車に戻る途中、蒲生集会所の脇でバックフォーが雪塊に乗って除雪をしていた。
レンタカーに戻り、次の会津塩沢駅へ向かった。
国道252号を進み、只見川に架かる寄岩橋を渡り、しばらくしてから左折し車を停めた。ここでも駅に向かって、雪塊の間に道が作られていた。
9:51、会津塩沢駅に到着。この駅のホームは除雪されていた。
ホーム脇に立つ積雪目盛は、2m40㎝から上を雪上に出していた。
ここでも雪の上に載って、会津塩沢駅を俯瞰。
振り返って、小出方面の様子。
ワカンを装着し、雪上を歩き駅舎(待合室)の正面に回った。昨年5月に公開された「青春18×2 君へと続く道」(日台合作)のヒロインが描く絵画の作画を担当した吉田留美さんが、昨年9月に描いた壁画の一部が見られた。*参考:映画「青春18×2 君へと続く道」公式サイト URL: https://happinet-phantom.com/seishun18x2/
*下掲載記事出処:福島民報 2024年9月29日付け紙面
会津蒲生駅同様に、駅前は雪捨て場になっているようで、“雪山”ができていた。双耳峰に見える雪食地形の「似蕪山」周辺の山塊との対比が面白かった。
レンタカーに戻り、次の会津大塩駅へ。
只子沢を渡り、金山町に入った。
滝トンネルを抜けて、福島県道路管理課「県内道路等画像情報」の“金山町 滝沢”ライブカメラがある場所を通過。
大塩地区に入り、大塩体育館の手前で右折し、除雪された道を進むと、右前方に駅が見えた。
駅舎(待合室)には、大きな雪塊が載っていた。
10:19、会津大塩駅到着。この駅のホームは除雪されていなかった。
只見方面に移動し、雪の上に載り駅を俯瞰した。
振り返って、小出方面の様子。
レンタカーに戻り、次の会津横田駅へ。
国道252号線を進み上横田地区に入り、「ヒロセ」(滝沢商店)の手前を鋭角に右折し駅に向かった。
10:27、レンタカーを停めて降り、少し歩いて会津横田駅に到着。
鉱山踏切まで移動し、会津横田駅を俯瞰。
振り返って、小出方面の様子。
レンタカーに戻り、次の会津越川駅へ。
国道を進み、東北電力㈱伊南川発電所の前を通過し越川地区に入る。国道脇の空きスペースに車を停めて駅に向かった。
10:47、会津越川駅に到着。第2越川踏切から駅を俯瞰した。
振り返って、小出方面の様子。
路盤のやや右の先、木々の上に真っ白に冠雪した「浅草岳」(1,585.3m、同29座)が見えた。
駅に移動すると、ホームは除雪されていた。
ホームより高く積もった雪には驚いた。
レンタカーに戻り、次の本名駅に移動。
11:00、本名駅に到着。ここもホームは除雪されていた。
ワカンを装着し、小出方面に少し歩いて駅を俯瞰。住宅地の中にある駅だが、家々の1階部分をふくめ、すっぽりと雪に覆われていた。
振り返って、小出方面の様子。
この本名駅で、全線運転再開(2022年10月1日)を機に上下分離で福島県の所有となった各駅の、現在の姿を見終えた。運休期間中(2011年7月~2022年9月)、雪に埋もれたこれらの駅を見てきたが、運転再開後に見る事になるとは思わず、只見線が通る奥会津の自然の厳しさを思い知らされた。
11:14、会津川口駅に到着。屋根からの落雪があるようで、駅頭には崩れた雪塊が広がっていた。
駅舎に入ると、明日(16日)開催予定だった「第47回会津かねやま雪まつり」のポスターに“開催中止”を記された紙が貼られていた。
駅構内にある売店に行き、ホームに行く事はできるかスタッフに確認すると、除雪した雪が山のようになり危険なので駄目だと思います、との事だった。
そこで、ホームの様子は、扉から眺めた。雪塊越しに、数人のスタッフがいて話し込んでいるようだった。
売店で柳津町の「赤べこ堂」の杵つき玄米団子を買って駅舎を出た。列車が運行されていないが、毎日納品されているうようだった。
駅頭に出て、駅前の建物の屋根を見ると、雪下ろしの最中だった。
レンタカーに乗り込み、国道252号線を会津若松方面に向かった。まもなく国道を片側通行にして、高所作業車を使い崖の上の雪を降ろす作業が見られた。『確かにこの雪塊は除かないと危ないな』と思った。
11:43、三島町の会津宮下駅に到着。
駅員やスタッフ不在だったが、駅舎は封鎖されておらず、ホームにも立ち入ることができた。
小出方面の様子も眺め、『まさか会津宮下駅までもが、除雪されないほどの長期運行休止になるとは...』と独り言ちた。
駅舎内には変化が。待合スペースの椅子が変わっていたのだ。
三島町の特産品である会津桐を使った椅子とテーブルで、テーブルは只見川を表現したと説明書きが貼られていた。*参考:三島町観光ポータルサイト「会津桐」
毎年、小正月にあたる1月15日に行われているが、今年大登地区は2日間に分けて行われたようだった。
令和7年「三島のサイノカミ」
~大登地区~
1月14日(火) 午後7時00分~ オンペ切り
1月15日(水) 午前9時00分~ 御神木迎え、御神木立て
午後7時00分~ 点火
3年前は1日で全ての祭事を行い、御神木切りから点火まで見られ、この祭りの醍醐味を味わうことができた。*参考:拙著「三島町「サイノカミ」(大登地区) 2022年 冬」(2022年1月15日)
12:15、会津柳津駅に到着。駅舎の屋根には、もっさりと雪が載っていた。
駅舎に入ると、“駅長帽”を被った赤べこ・やなぎまるが出迎えてくれた。駅はカフェを併設する柳津町観光情報拠点になっていて、数名の客が居た。
壁に掲げられた時刻表の下には、“本日運休”を記された紙が貼られていた。
スタッフに確認を取って、ホームに行き駅構内を俯瞰した。
振り返って、小出方面の様子。
会津柳津駅を後にして、柳津町名物・あわまんじゅうを求めて「いなば屋菓子店」に向かった。つぶあんのあわまんじゅうと、大栗まんじゅうを購入し、さっそく食べた。旨かった。
あわまんじゅうと大栗まんじゅうを食べ、小腹を満たしてからレンターに乗り、次の駅に向かった。
国道252号線を進み、会津坂下町に入り国道49号線にぶつかり右折。その後七折峠を越えて、会津平野に入った。雲一つない青空が広がっていた。
12:47、最後の目的地になる、会津坂下駅に到着。屋根に載る雪は少なかった。
駅舎入口には、列車運休を知らせる掲示があった。
そして、駅舎脇を見ると、車が雪に埋もれていて驚いた。
駅の西に設置されている跨線橋に上り、構内を見下ろした。2番線が除雪されていてレールが見え、キハE120の2両編成の列車が停車していた。
列車の行き先表示には“回送”と表示されていて、明日の運転再開に備え試運転をしているのだと思った。
振り返って、小出方面の様子を眺めた。
除雪は、踏切の少し先で終わっていた。
橋上から北に目を向けると、綺麗に冠雪した飯豊連峰が見えた。*参考:公益財団法人 福島県観光物産交流協会「ふくしま30座」飯豊山
そして、東には「磐梯山」(1,816.0m、会津百名山18座)も鮮明に見えた。この会津を代表する山の美しい姿を眺め、今日の予定を終えた。
(了)
・ ・ ・ ・ ・
*参考:
・福島県:只見線ポータルサイト
・福島県・東日本旅客鉄道株式会社 仙台支社:「只見線全線運転再開について」(PDF)(2022年5月18日)
・NHK:新日本風土記「動画で見るニッポンみちしる~JR只見線」
・産経新聞:「【美しきにっぽん】幾山河 川霧を越えてゆく JR只見線」(2019年7月3日)
【只見線への寄付案内】
福島県はJR只見線全線復旧後の「上下分離」経営での維持費や集客・地域振興策の実施費用として寄付を募集中(クレジット可)。
①福島県ホームページ:只見線復旧復興基金寄附金
・只見線応援団加入申し込みの方法
*現在は只見線ポータルサイト「只見線応援団」URL:https://tadami-line.jp/support/
②福島県:企業版ふるさと納税
URL:https://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/16005g/kigyou-furusato-zei.html
[寄付金の使途]
(引用)寄附金は、只見線を活用した体験型ツアーや周遊ルートの整備、只見線関連コンテンツの充実化等に活用させていただきます。 沿線地域における日本一の秘境路線と言われる観光資源を活用し、更なる利用者の拡大と認知度向上を図ります。
以上、宜しくお願い申し上げます。
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