南会津町「南会津マウンテンブルーイング」 2024年 春

JR只見線に乗車した後、自転車に乗って昭和村と南会津町にまたがる「駒止湿原」(会津百名山)でトレッキング。帰りは会津鉄道を利用するため会津田島駅に移動し、「南会津マウンテンブルーイング Taproom BeerFridge」に立ち寄り、終電までクラフトビールを堪能した。

*参考:

・福島県 :只見線管理事務所(会津若松駅構内)

・NHK:新日本風土記「動画で見るニッポンみちしる~JR只見線

・産経新聞:「【美しきにっぽん】幾山河 川霧を越えてゆく JR只見線」(2019年7月3日)

・東日本旅客鉄道株式会社:「只見線について」(PDF)(2013年5月22日)/「只見線(会津川口~只見間)の鉄道復旧に関する基本合意書及び覚書」の締結について(PDF)(2017年6月19日)

・拙著:「次はいつ乗る?只見線」カテゴリ -只見線の春- / -只見線沿線の食と酒-

 

  


 

 

前日に会津若松市入りし、宿泊。今朝は、只見線の始発列車に乗り込んだ。

6:08、小出行きの1番列車が会津若松を出発。

 

列車は、田植え終盤の会津平野の田園の間を駆けた。左車窓の前方には、霞んだ青空の下、冠雪した飯豊連峰が見えた。*参考:公益財団法人 福島県観光物産交流協会「ふくしま30座」飯豊山 

 

“七折越え”を終え、会津平野から奥会津に入り、会津桧原~会津西方間で“只見線八橋”の「第一只見川橋梁」を渡った。*以下、各橋梁のリンク先は土木学会附属土木図書館デジタルアーカイブス歴史的鋼橋検索


会津川口に停車する直前では、只見川に突き出た大志集落を眺めた。*只見川は東北電力㈱上田発電所・ダムのダム湖


会津塩沢を発車した直後には、只見川の左岸縁に架けられた不渡橋「第八只見川橋梁」を渡った。滝ダム湖の水鏡は冴え、周囲の景色を綺麗に映し込んでいた。*滝ダム湖は電源開発㈱滝発電所・ダムによるもの


会津蒲生~只見間では、只見線最長の叶津川橋梁(372m)を渡った。ダム湖に慣れた目に、叶津川の清流は新鮮だった。



9:07、只見に停車。輪行バッグを抱え降りると、雲一つない青空が広がっていた。

駅頭の、JR只見線全線運転再開からのカウントボードは595(日)を示していた。

只見駅からはバスで移動。駅頭につけられた、定期路線バス「自然首都・只見」号に乗り込んだ。


9:56、国道289号線を進んだ「自然首都・只見」号は南会津町に入り、南郷総合支所停留所に停車。下車し輪行バッグを取り出して、ワゴン車を見送った。

支所の限界前で、自転車を組み立てて「駒止峠」に向かった。


11:13、国道289号線の緩やかな坂を上り続け、「駒止峠」に向かう分岐を左折し、旧国道を進んだ。

 

12:11、「駒止峠」のピークの手前にあった、開けた場所に到着。「唐倉山」(1,175.8m、会津百名山54座)越しに、冠雪した「会津駒ヶ岳」(2,132.6m、同2座、日本百名山23座)の山塊、その左側には、東北以北最高峰となる日本百名山「燧ヶ岳」(2,356m、同1座、日本百名山26座)が見える“ビューポイント”だった。*参考:拙著「南会津町「唐倉山」登山 2021年 晩夏」(2021年9月21日)

  

12:30、「駒止峠」の旧道のピーク(1,135m)に到着。林野庁関東森林管理局が設置した「会津山地 緑の回廊」案内板が設置されていた。


「駒止湿原」の南会津町側の入口は、「駒止峠」ピークから旧道を1㎞ほど下った場所にあった。


昼食を摂ってから、「駒止湿原」を開始。大谷地→白樺谷地→水無谷地と巡り、昭和村側の入口(駐車場)まで行き、同じ経路で南会津口に戻った。→(詳しくは拙著「昭和村・南会津町「駒止湿原・駒止峠」 2024年 春」)

16:00、「駒止湿原」南会津口を後にして、会津鉄道の会津田島駅に向かった。



18:10、会津田島駅に到着後、自転車を輪行バッグに収めるなど時間をつぶした後、開店時間に合わせて駅から200mほど離れたクラフトビール醸造所「南会津マウンテンブルーイング」に併設された「Taproom BeerFridge」に向かった。

「南会津マウンテンブルーイング」は町内で製材業を営む関根さん2018(平成30)年2月21日に酒類等製造免許(発泡酒)を取得し醸造を開始し、同年4月から「Taproom Beer Fridge」でクラフトビールを提供し始めたという。ご主人が同世代ということも重なって、気になっていた店で、ようやく訪れることができた。*下掲出処:(左)福島民報 2018年4月11日付紙面 / (右)国税庁「酒類等製造免許の新規取得者等一覧(平成30年分)(発泡酒)」

閉店時はシャッターが閉まっていて『倉庫か⁉』と思ってしまったが、開店すると木材での設えが目を引く、落ち着いた温かみを感じる店構えとなっていた。

 

扉を開けて声を掛けると、ご主人が奥の蒸留所から出てきた。『(入っても)大丈夫ですか?』と尋ねると、どうぞと言われ、カウンター席に座った。カウンターテーブルの一枚板もさることながら、壁、床、ベンチシートなど、木に包まれた空間で良い雰囲気だった。

着席すると、ご主人から『うちはつまみはないので、近くのスーパーや、線路の先のコンビニで買ってきてかまいません』と言われた。腹はすいていたが、ビールを早く呑みたいと思い、その後ご主人との話がおもしろく、結局つまみの買い出しには行かなかった。


正面の壁には、6本のタップがあり、奥の蒸留所のタンクから直接グラスに注ぎ入れられるようだった。

タップには、手書きの品名が書かれていた。“MMtB”とは“Minamiaizu Mountain Brewing”の略のようで、右から「南会津IPA」、「Pale Ale」、「Happy Sour」、East Brother Beer社の「Bo Pils(Bohemian Pilsner)」、「Golden Ale」、「Coffee Amber」と並んでいた。

クラフトビールは初めてで知識が無く、またこうしたTaproom(自家製ビールを客に提供する場所)で呑むのも初めてということもあり、ご主人にそれぞれのフレーバーについて説明を受けて、まず何を呑むかを決めた。


迷った末に、一杯目は「Pale Ale」を注文することにした。ご主人は流れるような動きで、スクーナービールグラスに琥珀色の「Pale Ale」を美しく注いでくれた。

程よく冷えた「Pale Ale」を呑む。柑橘系の香りが立ち、のど越しはビールだが、くどくない濃厚さが感じられ、旨さにうなりながら呑んだ。

 

続けて二杯目。「南会津IPA」を選んだ。「Pale Ale」より苦みがあったが、普段呑んでいるビールとは違う柔らかい苦みで爽快感があり、旨かった。

 

他に客が入ってこないこともあり、ご主人からビールに関する様々な事を聞かせてもらった。

若い時にアメリカに行き、各地に醸造所があり、それぞれで色々なビールが作られ飲まれている文化に触れた事。原材料全てを地元産で、というのが理想だが、それでは1杯が優に千円を超えてしまいとても商売にならず、麦芽やホップは輸入品を使わざるを得ないのが現状。但し、南会津産のコメや、会津地方の果物など、できるだけ地元のモノを取り入れビールを作ってゆきたい、などご主人の言葉には熱があり、ビールが本当に好きなんだなぁと思った。

ご主人は、この店(Taproom BeerFridge)の向かい、会津鉄道の線路沿いに新しい工場を建て、今月3日にオープンさせた。翌日の地元紙で、その様子が報じられていた。*下記事出処:福島民報 2024年5月4日付け紙面

記事では『南会津町の名前を全国に広めながら、旅の目的地になれるようにしたい』との関根さんのコメントが記されていたが、この“旅の目的地となれるよう”という言葉は私との会話の中でも出てきて、南会津町に訪れる人を増やしたいとのご主人の地元愛も感じた。

 

三杯目は「Golden Ale」を選んだ。南会津産のコメを使ったビールということで吞んでみた。すっきりとした呑みごたえだったが、空きっ腹にどんどんとビールを流し込んだせいか、酔い始め細かな味には気づかなかった。

 

会話は、ビールの話から、ご主人の本業であり、店内にふんだんに使われた木材のものに移った。

ご主人は材木店(関根木材工業)を営んでおられるが、南会津町の林業振興のための活動も積極的にされている。*下記事出処:福島民報の紙面よ 左から2016年5月25日付け、2017年4月12日付け、2018年1月30日付け

2020(平成22)年に設立された「NPO法人みなみあいづ森林(もり)ネットワーク」(第3回ふくしま産業賞特別賞受賞)の立ち上げに関わり、2016(平成28)年6月には地元の木材関連17事業所が加わる南会津森林認証推進協議会の会長に就かれるなど、ご主人は町の林業の中心人物として活躍されている。*参考:福島県森林計画課「福島県における森林認証の普及に向けた取組みについて」/ 南会津農林事務所「森林認証材の利活用について」/ 南会津町 みなみあいづ森と木の情報・活動ステーション「きとね」/ 南会津町広葉樹販売サイト「HARDWOOD STATION


一級建築士であり木材のスペシャリストであるご主人の話は分かりやすく、本業ということもあり、言葉一つ一つに経験に裏打ちされた重みがあった。特に、切り出した木を“寝かす”必要性や、使用する木材の“含水率”を考慮した設えの大切さには、興味を惹かれ、質問を繰り返してしまった。

ご主人からは『木の家を建てたいという場合は、よく木を知っている大工を選んだ方がいい』という旨の言葉があり、深く頷いた。


〆の四杯目は「Happy Sour」。酔ってはいたが、このビールはグラスを口元に近づけただけではっきりと違いが出ていた。酸味の効いた香りとのど越し。そして、呑んだ後抜ける爽やかな香り。〆にぴったりの一杯だった。

 

 

19:30、「南会津マウンテンブルーイング Taproom BeerFridge」を後にした。他2種のビールを呑み、もっとご主人の話を聞きたいと思ったが、今日中に郡山に戻るための列車の発車時刻が迫っていた。

「南会津マウンテンブルーイング Taproom BeerFridge」は素晴らしい店だった。ランドマークとなり得る新しい工場と併設された広いTaproomの存在と合わせ、「南会津マウンテンブルーイング」はご主人が望む“旅の目的地”となり、多くの旅行者で賑わうのは時間の問題だと感じた。

次の機会、また只見線に乗った後に南会津町入りし新しいTaproommに立ち寄り、クラフトビールを楽しみたいと思った。*参考:南会津町観光物産協会「南会津マウンテンブルーイング


 

急ぎ会津田島駅に戻り、駐輪場に置かせてもらった輪行バッグを抱え、切符を購入し列車に飛び乗った。 

 

19:40、会津若松行きの列車が会津田島を出発。他に客はおらず、途中駅までしばらく私一人だった。

車内では、「南会津マウンテンブルーイング」で購入した缶ビールを呑んだ。お土産として買ったが、列車に揺られると酒が欲しくなり、「南会津IPA」と「POW POW」双方呑んでしまった。旨かった。*参考:福島県商工会連合会「シオクリビト

 

 

20:47、暗闇の中を快調に駆けた列車は、西若松から只見線に入り終点・会津若松に到着。

下車後、跨線橋を渡り1番線ホームに移動し、磐越西線の郡山行き最終列車に乗り帰途に就いた。

 

 

(了)

 

 

・  ・  ・  ・  ・

*参考:

・福島県・東日本旅客鉄道株式会社 仙台支社:「只見線全線運転再開について」(PDF)(2022年5月18日)

・福島県:只見線ポータルサイト

・福島県:平成31年度 包括外部監査報告書「復興事業に係る事務の執行について」(PDF)(令和2年3月) p140 生活環境部 生活交通課 只見線利活用プロジェクト推進事業

 

【只見線への寄付案内】

福島県はJR只見線全線復旧後の「上下分離」経営での維持費や集客・地域振興策の実施費用として寄付を募集中(クレジット可)。

①福島県ホームページ:只見線復旧復興基金寄附金・只見線応援団加入申し込みの方法 *現在は只見線ポータルサイト「只見線応援団」URL:https://tadami-line.jp/support/


  

②福島県:企業版ふるさと納税

URL:https://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/16005g/kigyou-furusato-zei.html

[寄付金の使途]

(引用)寄附金は、只見線を活用した体験型ツアーや周遊ルートの整備、只見線関連コンテンツの充実化等に活用させていただきます。 沿線地域における日本一の秘境路線と言われる観光資源を活用し、更なる利用者の拡大と認知度向上を図ります。

 

以上、宜しくお願い申し上げます。

次はいつ乗る? 只見線

東日本大震災が発生した2011年の「平成23年7月新潟福島豪雨」被害で一部不通となっていたJR只見線は、会津川口~只見間を上下分離(官有民営)し、2022年10月1日(土)、約11年2か月振りに復旧(全線運転再開)しました。 このブログでは、車窓から見える風景写真を中心に掲載し、“観光鉄道「山の只見線」”を目指す只見線の乗車記や「会津百名山」等の山行記、利活用事業に対する私見等を記します。

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