会津美里町「あいづみさとワインフェス」 2023年 初秋

今年2回目を迎える「あいづみさと ワインフェス」に行くため、JR只見線の新鶴駅に近い会津美里町の会場を訪れた。

 

「あいづみさと ワインフェス」は、長年新鶴地区の“収穫祭”という位置付けで親しまれてきた「新鶴ワイン祭り」を引き継ぐ形で、昨年10月22日・23日の両日に初めて開催された。『東日本大震災と東京電力福島第1原発事故発生後、県内で復興に向けたワイン造りが活発化』で、県内11ものワイナリー・関係団体が参加したという。*下掲記事:福島民報 2022年10月23日付け紙面

  

2回目となる今年も同じく11のワイナリーなどが出店し、試飲や物販を行うとイベントポスターに記されていた。

出店ワイナリー・関係団体
【新鶴ワイナリー(会津コシェル)】(会津美里町) https://www.aizucoshell.com
【Grapes Hütte】(会津美里町) https://grapes-hutte.com
【会津ワイナリー会】(会津美里町) http://aizuwinerykai.main.jp
【大竹ぶどう園】(会津若松市北会津町) https://www.ootake-vin.jp
【WINERY JUN】(喜多方市) https://iproducts.thebase.in
【ワイン工房あいづ】(猪苗代町) https://www.hondawinery.co.jp

【ふくしま逢瀬ワイナリー】(郡山市逢瀬町) https://ousewinery.jp
【ふくしま農家の夢ワイン】(二本松市) https://www.fukuyume.co.jp
【吾妻山麓醸造所】(福島市) https://azumasanroku-winery.co.jp
【かわうちワイン】(川内村) https://kawauchi-wine.com

【シャトーメルシャン】*メルシャン㈱のワインブランド https://www.chateaumercian.com
(新鶴産ぶどうを原料に勝沼ワイナリー(山梨県)で醸造)


 

 

会津美里町新鶴地区(旧新鶴村)の西部山地からなだらかに東に広がる丘陵には、会津人参(オタネニンジン、薬用人参)の休耕地を活用したブドウ畑があり、1975年から国内有数のワインメーカーであるメルシャン㈱に白ブドウのシャルドネを供給している(2014年からはアルバリーニョの栽培も開始)。メルシャン㈱「シャトーメルシャン」のホームページには、次のように記されている。

新鶴とともに歩んだ45年、そして未来へ。 2021/03/08
<シャトー・メルシャンと新鶴との出会い>
シャトー・メルシャンと新鶴の出会いは50年近くも前に遡ります。 当時はまだ「新鶴村」でしたが、休耕地利用を課題に抱える新鶴村の皆さんから、ブドウ栽培をやってみたいという話をいただいたのが始まりでした。 その後、1973年に試験栽培を開始し、1975年に正式にシャルドネの契約栽培を開始しました。
<中略>
新鶴地区は、日当り、水はけともに良い丘陵地にあり、標高は225~250mと比較的低い平地で、内陸性気候のおかげで昼夜の温度差が大きく、良いブドウを栽培するには好条件...(以下、省略)
*出処:メルシャン㈱ 「シャトーメルシャン」Report & News URL:https://club.chateaumercian.com/article/fun/topics/849/

 

また、会津美里町の「ほのぼの旅する会津美里」という特設サイトに、新鶴地区のブドウ栽培について、次のように記されている。

会津人参からぶどうの産地へ
新鶴地域は自然豊かで農業が盛んなエリア。かつて会津人参(薬用人参)の一大産地として栄えた場所でもあります。しかし会津人参は収穫までに5年もかかる大変な作物で、育てる農家さんはだんだんと減少してしまいました。 その空いた畑を活用してはじまったのが、食用とワイン醸造用のぶどう栽培。山裾の傾斜地は栽培に適しており、一面に広がるぶどう畑を見渡せるスポットもあります。
ぶどうは晩夏から秋にかけて、さまざまな品種が実ります。農家さんが畑で直売所を開くと、地元や隣町の方が次から次へとやって来て、新鶴地域は一気ににぎやかな場所へ。遠方に住む人のなかには毎年電話で注文をする常連さんもいるそう。
実は知る人ぞ知る、ぶどうの名産地なのです。
*出処:会津美里町 政策財政課「ほのぼの旅する会津美里町」読み物「ほのぼの旅する」まちのテロワールを感じる 新鶴ワイナリー URL: https://honobonomisato.jp/articles/niitsuru_winery/



今日は、「あいづみさとワインフェス」会場を訪れた後、只見線の列車に乗って、先日10月1日に復旧1周年を迎えた会津川口~只見間の様子を見るという計画を立てた。

当地の天気は、曇りのち晴れという予報だったが、にわか雨があるかもという事だった。「あいづみさとワインフェス」は野外で行われるため、青空のもとで地産のワインを頂けることを楽しみして、会津美里町に向かった。

*参考:

・福島県:只見線ポータルサイト

・福島県・東日本旅客鉄道株式会社 仙台支社:「只見線全線運転再開について」(PDF)(2022年5月18日) 

・福島県:平成31年度 包括外部監査報告書(令和2年3月) 「復興事業に係る事務の執行について」(PDF) p140 生活環境部 生活交通課 只見線利活用プロジェクト推進事業


 


 

 

今回は、久し振りに、夜勤後に旅に出た。

職場を出て自宅で用意を済ませ、急ぎ郡山駅に向かい、珍しく2番線に停車し、ヘッドマークが取り付けられた磐越西線の列車に乗り込んだ。

10:15、会津若松行きの快速「あいづ」号が郡山を出発。

 

 

天気予報通り、雲が広がり一部に青空が広がるという空模様だった。


 

11:26、すれ違う上り列車の遅れが発生し、定刻から5分ほど遅れて会津若松に到着。急ぎ、駅頭で待機していた「あいづみさとワインフェス」会場行きのシャトルバスに乗車した。只見線の列車は、13時5分発まで無かったため、シャトルバスを利用した。

スタッフに運賃(500円)を支払い、ワインフェスのチラシを受け取った。

 

11:30、10名ほどの客を乗せたシャトルバスが出発した。市街地を抜け、阿賀川(大川)を渡り、根岸駅に北接する根岸踏切で只見線を横切り、シャトルバスは丘陵部を上った。坂の左側にはブドウ畑が広がっていた。ブドウ畑に並んでいる“ビニール傘”は、収穫期に多い秋雨対策の雨除けだという。

今年は、夏の気温上昇で収穫期が早まったようで、先月17日の地元紙一面で、「新鶴ワイナリー」の畑での収穫作業の様子が報じられていた。*下掲記事:福島民報 2023年9月17日付け1面 *新聞社名ヘッダーと記事を、筆者にて組み合わせて掲載


 

 

30分ほどで、「あいづみさとワインフェス」の会場となっている「ふれあいの森公園」に到着。雲は多いものの青空が広がり、駐車場には多くの車が停まっていた。

 

シャトルバスを降りて、会場に向かった。

 

ワイナリーなどの出店ブースとなるテントが近付くと、大きな会場案内図が置かれていた。

 

メイン会場は、ワインの他、フードや物販のブースに囲まれ、中央のテントを中心にテーブルや椅子が置かれ、多くの方が飲食を楽しんでいた。

 

ワイナリーブースは、会場入口の両脇に並んでいた。

 それぞれのブースには、次々に客が訪れ、スタッフを会話をしたり、試飲したりとしながら、ワインを購入していた。


キッチンカーブースには、軽自動車を中心に、様々な形状やカラーリングのキッチンカーが並んでいた。

キッチンカーはメイン会場の端にもあり、ワインに合いそうな料理の他、唐揚げや餃子なども置かれていた。さらに、物販ブースには野菜や果物も置かれ、ワインを飲まない客も楽しめるようになっていた。

 

 

一通り会場を見て回り、ワインを飲む事にした。

まずは、すぐそばに醸造所のある会津コシュルの「新鶴ワイナリー」のテントに向かった。

2021年10月に会津百名山「高尾嶺」登山後に「新鶴ワイナリー」を訪れた際、併設されている売店で「Pinot noir 2020」を購入してが、今回は「Aizu Rouge 2022」をグラスでいただいた。

会津コシュルは、新鶴地区の地域おこし団体を母体に2016年に設立され、2019年5月1日に「新鶴ワイナリー」を同地内に設立させた。“コシュル”とは、“つくる”の方言の“こしぇる”に由来するという。*下掲記事:福島民報 2018年4月18日付け記事 *筆者にて、写真と本文の一部にモザイク加工


続いて、メルシャン㈱の「シャトーメルシャン」のブースで、白ワイン「会津美里シャルドネ」をグラスでいただいた。

会津美里町新鶴地区とメルシャン㈱「シャトーメルシャン」との関係は、冒頭に掲載した「新鶴とともに歩んだ45年、そして未来へ。」の通りだが、同社は産地応援のため寄付などの取り組みもしていて確かな協業が続いている。*下掲記事:福島民報 2022年8月6日付け紙面


テーブルについてワインを飲んだ。つまみは、キッチンカーブースに出店していた秋田県の田沢湖高原の工房で作られたという生ハムを選んだ。*参考:自家製生ハム「グランピア」 URL: https://www.granvia.jp/pages/ham  

赤の「Aizu Rouge 2022」は、少し苦みを感じたが、フレッシュな香りと味で旨かった。白の「会津美里シャルドネ」は爽やかで洗練されていて、期待通りの白ワインの味だった。どちらも、生ハムとの相性は良く、楽しませてもらった。

 

 

新鶴地区には、会津コシュルの他、特定NPO法人「会津ワイナリー会」がありブドウ畑を管理している。*参考:特定NPO法人「会津ワイナリー会」URL: https://aizuwinerykai.main.jp/index.html

「会津ワイナリー会」は、2016年1月に首都圏在住の会津出身者で設立された。現在はワイン用のブドウ・シャルドネを新鶴地区で栽培し、メルシャン㈱勝沼ワイナリーで委託醸造していて、将来的に会津の地にワイナリーを建設する活動をしているという。*下掲記事:福島民報 2016年2月24日付け記事 *筆者にて、写真と本文の一部にモザイク加工


また、新鶴地区に移住した橋本夫妻の「グレープス フュッテ」(Grapes Hütte (旧 HASHIMOTO FARM))という農園では、耕作放棄地でブドウを栽培しワインを委託醸造している。「グレープス フュッテ」は、今回のワインフェスでもブースを構えていた。*下掲記事:福島民報 2022年7月27日付け記事 *筆者にて、写真と本文の一部にモザイク加工



ワインを飲み終え、最後に「新鶴ワイナリー」を見学した。

併設するレストランは、新型コロナウィルスの流行で休業して以来、未だ“臨時休業”となっていたが、試飲もできる物販カウンターには、次々と客が訪れていた。

2018年12月に稼働を始めた醸造所はカウンターの裏にあり、小窓からその一部を覗き見ることができる。*下掲記事:福島民報 2018年11月25日付け、同12月4日付け 紙面 *筆者にて本文の一部にモザイク加工

  

 

「あいづみさとワインフェス」会場を出て、新鶴駅に向かった。

県立会津農林高校の新鶴農場前を右に曲がり、前方に会津平野、その奥に“東部山地”ともいうべき背炙山を見渡しながら丘陵の緩やかな坂を下った。この道にはブドウ畑は無く、ソバ畑が広がっていた。

 

会津平野に下り、県道59号(会津若松三島)線を横切り、田んぼの間を進んだ。

稲刈りを待つ畝には、びっしりと黄金色の穂がこうべを垂れていた。

  

 

 

「あいづみさとワインフェス」会場から20分ほどで新鶴駅に到着。駅舎の時計は、止まっていた。

待合室の入口には、只見線に関する案内が2つ、掲示されていた。“サイクルトレイン実証実験”と“臨時列車運行による定期列車の運転時刻変更”に関するもの。

“サイクルトレイン実証実験”は、福島県を中心とする「只見線利活用推進協議会」、JR東日本(東北本部)、国交省(東北運輸局)の3者が協業して行うもので、先月7日にプレスリリースされ、同16日から今月15日まで6回実施されている。*下掲出処:(左)国土交通省 東北運輸局「【交通政策】只見線サイクルトレイン導入に向けて関係者で運用実験を実施します」(2023年9月7日) / (右)福島民報 2023年9月8日付け紙面より


 

待合室で少し休んでからホームに出ると、南の方から警笛が聞こえ、まもなく列車が姿を現した。

 

ホームに滑り込んだ列車は、キハE120形の2両編成だった。

13:32、小出行きの列車が新鶴を出発。 


車内は、両車両ともほぼ満席だった。会津若松~会津坂下間は、高校生の乗客を中心に混雑するが、座っている大半は、旅行者と思われる方で、結局この混雑は会津坂下以降も続き、私は座る事を断念した。

切符は、今回の旅は土曜日ということで「小さな旅ホリデー・パス」にした。

  

列車は、しばらく会津平野の田園を進んだ。

若宮手前で会津美里町から会津坂下町に入った列車は、左に大きく曲がり市街地の中に入り会津坂下に停車し、上り列車(会津川口 発)とすれ違いを行った。 

 

会津坂下を出た列車は、会津平野と奥会津の“境界”となる七折峠を駆け上り、塔寺を経て登坂を終え、会津坂本に停車。貨車駅舎に描かれた「キハちゃん」は、陽光を浴びていた。*参考:会津坂下町「只見線応援キャラクター誕生!!」(2015年3月13日) https://www.town.aizubange.fukushima.jp/soshiki/2/3337.html 

*下掲記事:福島民報 2015年2月20日付け紙面

この後、列車は柳津町に入り、会津柳津郷戸滝谷で停発車を繰り返し、滝谷川橋梁を渡り三島町を進んだ。

 

 

会津桧原を出ると、列車は“只見川八橋”区間に突入した。

桧の原トンネルを抜け、まずは「第一只見川橋梁」を渡った。上流側、駒啼瀬の渓谷の木々は、一部が色付き始めていて秋の入口を感じさせるものだった。*以下、各橋梁のリンク先は土木学会附属土木図書館デジタルアーカイブス歴史的鋼橋集覧

 

...この後、列車は会津西方を出て「第二只見川橋梁」、会津宮下を出て「第三只見川橋梁」を渡っていったが、私は睡魔に襲われ見過ごしてしまった。磐越西線の列車内で40分ほど眠られたが、夜勤を挟み約22時間の不眠に耐えられるだけの体力は無かった。

 

14:58、早戸を出て金山町に入った列車は、会津水沼、「第四只見川橋梁」、会津中川を経て会津川口に到着した。

 

上り列車とのすれ違いのため、停車時間が31分あるため、客の大半がホームに降りて、眼前に広がる只見川(上田ダム湖)を眺め、写真を撮っていた。

 

私もホームに降りてみた。乗ってきた列車をよくみると、後部車両の下部にラッピングがされていた。

JR東日本が「「福が満開、福のしま。」ふくしま秋観光キャンペーン 2023」に合わせて施した“只見線の四季をイメージしたラッピング”だった。*下掲出処:東日本旅客鉄道㈱「「福が満開、福のしま。」ふくしま秋観光キャンペーン 2023」(2023年9月14日) URL: https://www.jreast.co.jp/press/2023/sendai/20230914_s02.pdf

   

15:25、列車が停車して約30分、会津若松行きの上り列車がやってきた。キハ110+キハE120形の2両編成だったが、先頭は“タラコカラー”だった。

この“タラコカラー”は、只見線の全線運転再開1周年を記念したもので、“かつて活躍した車両をイメージした朱色の懐かしい塗装”となっている。*下掲出処:東日本旅客鉄道㈱「只見線全線運転再開 1 周年を記念したキハ 110 系車両の塗色変更について」(2023年8月25日) URL: https://www.jreast.co.jp/press/2023/sendai/20230825_s01.pdf

 

15:29、上り列車とすれ違いを行った小出行きの列車が会津川口を出発。この後、「平成23年7月新潟・福島豪雨」被害を経て11年2カ月ぶりに復旧した会津川口~只見間(27.6km)に乗車した。→次項「“只見線 全線運転再開一周年” 旧運休区間の乗車 2023年 初秋」(2023年10月7日)参照
 

 

(了)

 

  

*追記:2023年10月9日付け 福島民報 (1面)より

福島県ハイテクプラザ会津若松技術支援センターが主体となり、「新鶴ワイナリー」も協力し、『ワイン用ブドウの成分を分析して各産地の土壌や気候に適した品種、栽培法、収穫期を割り出し』て『知見を共有』し、“福島ワイン”のブランドを確立するという。


・  ・  ・  ・  ・

*参考:

・NHK:新日本風土記「動画で見るニッポンみちしる~JR只見線」 *2008年放送

・産経新聞:「【美しきにっぽん】幾山河 川霧を越えてゆく JR只見線」(2019年7月3日) 

・福島県 :只見線管理事務所(会津若松駅構内)

・拙著:「次はいつ乗る?只見線」カテゴリ -只見線沿線の食と酒- / -只見線の秋-

 

【只見線への寄付案内】

福島県はJR只見線全線復旧後の「上下分離」経営での維持費や集客・地域振興策の実施費用として寄付を募集中(クレジット可)。

①福島県ホームページ:只見線復旧復興基金寄附金

・只見線応援団加入申し込みの方法 *現在は只見線ポータルサイト「只見線応援団」URL:https://tadami-line.jp/support/

 

②福島県:企業版ふるさと納税

URL:https://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/16005g/kigyou-furusato-zei.html

 [寄付金の使途] 

 (引用)寄附金は、只見線を活用した体験型ツアーや周遊ルートの整備、只見線関連コンテンツの充実化等に活用させていただきます。 沿線地域における日本一の秘境路線と言われる観光資源を活用し、更なる利用者の拡大と認知度向上を図ります。

 

以上、宜しくお願い申し上げます。

次はいつ乗る? 只見線

東日本大震災が発生した2011年の「平成23年7月新潟福島豪雨」被害で一部不通となっていたJR只見線は、会津川口~只見間を上下分離(官有民営)し、2022年10月1日(土)、約11年2か月振りに復旧(全線運転再開)しました。 このブログでは、車窓から見える風景写真を中心に掲載し、“観光鉄道「山の只見線」”を目指す只見線の乗車記や「会津百名山」等の山行記、利活用事業に対する私見等を記します。

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