只見町「伊南川沿い春景色」 2022年 春

只見町の春景色を見たいと、JR只見線の列車に乗って只見町に向かった。

 

5月2日、只見駅構内に事務所がある「只見町インフォメーションセンター」に電話し、町内の桜の状態を聞くと『まだ見頃です』ということで、只見町を訪れる事をした。


今日の旅程は以下の通り。

・宿泊地の会津若松市から只見線の列車に乗って会津川口駅で下車。代行バスに乗り換え、只見駅に向かう

・只見駅から、そばにある瀧神社の桜越しに列車を撮影

・輪行した自転車に乗って、町内の桜の名所を巡りながら、伊南川沿いを上流に向かって進む

・小林地区から伊南川沿いの離れ、布沢地区にある「龍泉寺墓地の桜」を見に行く

・布沢地区から再び伊南川沿いに入り、右岸を下り、只見ダムに向かう

・只見ダムから、只見高校などを経て、只見駅に戻る

・只見駅から代行バス、会津川口駅から列車に乗って会津若松駅に戻る


天気予報は、今日も晴れで、只見町も気温が上がるという。連日高温が続いたということで、桜の散り具合を気にしつつ、福島県最深部の町でどんな春景色が見られるか楽しみに、現地に向かった。

*参考:

・福島県:只見線ポータルサイト

・東日本旅客鉄道株式会社:「只見線(会津川口~只見間)復旧工事の完了時期について」(PDF)(2020年8月26日)

・福島県:平成31年度 包括外部監査報告書「復興事業に係る事務の執行について」(PDF)(令和2年3月) p140 生活環境部 生活交通課 只見線利活用プロジェクト推進事業

・拙著:「次はいつ乗る?只見線」カテゴリ ー只見線の春

  



 

 

今朝、会津若松市内の宿から只見線の始発列車にのるため会津若松駅に向かう。途中、南の方を見ると、昨日登った会津百名山36座「大戸岳」の山頂(1,415.9m)が見えた。

 

輪行バッグを抱えて改札を通り、只見線のホームに向かうため連絡橋を渡る。橋上からの北東に会津百名山18座「磐梯山」(1,816.2m)の稜線が浮かび上がっていた。只見線の列車は、キハE120形の2両編成のようだった。

 

切符は昨日のうちに「小さな旅ホリデー・パス」を買っておいた。会津若松~只見間は、運賃が1,690円であるため、日帰り往復の場合はこの切符の方がお得だ。

6:03、会津川口行きの始発列車が会津若松を出発。私が乗る後部車両は私の他3組4名だった。

 

 

列車は、七日町西若松の市街地の駅を経て、大川(阿賀川)を渡る。今日も車窓からは「大戸岳」の山塊がきれいに見えた。

 

大川橋梁を渡ると、右側、北西に冠雪の飯豊連峰が、ぼんやりと見えた。

 

会津本郷を出発直後に、会津若松市から会津美里町に入る。左側、荒起こしの終わった田んぼ越しに西から南に目を向けると、会津百名山61座「明神ヶ岳」(1,074m)と同じく33座「博士山」(1,481.9m)がよく見えた。


会津高田を出ると、大カーブで進路を真北に変える。会津平野の雄大な景色が見られた。

 

代掻きが終わった田んぼは、鏡のような美しさだった。正面に見えた「磐梯山」は、麓が霞み、浮いているようだった。

 

 

 

列車は根岸新鶴を経て会津坂下町に入り、若宮を出ると会津坂下に到着。上りの一番列車とすれ違いを行った。反対側のホームには部活のジャージ姿を中心に、多くの高校生が居た。

 

  

会津坂下を出発し、列車は“七折登坂”に入る。坂の手前で、一旦静かになったディーゼルエンジンが轟音を上げながら、七折峠に向かった。

 

登坂途中、木々の切れ間から会津平野を見下ろす。今日も良い天気が続きそうだと思った。


塔寺を出て、“四連”トンネル付近で“七折”登坂”を終えた。会津坂本の手前、木々が途切れ一瞬開ける“坂本の眺め”から飯豊連峰を眺める。「大日岳」(2,128m、新潟県)を最高点とする、冠雪した山塊が近くに見え、迫力があった。


柳津町に入り、会津柳津を出発し“Myビューポイント”を通過。会津百名山86座「飯谷山」(783m)も、全体がよく見えた。

 

郷戸では、同じ車両に乗っていた高齢の男性が降りた。

 

 

滝谷出発直後に滝谷川橋梁を渡り、三島町に入る。4月30日(舟鼻山登山)に見た時より、木々の早緑は色合いが濃くなり、晴天下で映えていた。

若葉が芽吹き多様に色づくという“春の山咲き”も、周知されれば、紅葉と並び“観光鉄道「山の只見線」”の訴求力の高い観光コンテンツになると改めて思った。*以下、各橋梁のリンク先は土木学会附属土木図書館デジタルアーカイブス歴史的鋼橋集覧1873-1960」  

 


 

 

会津桧原を出て、桧の原トンネルを抜けると、「第一只見川橋梁」を渡る。下流側は、青空の下、雄大な景色が広がっていた。*只見川は、東北電力㈱柳津発電所・ダムのダム湖になっている。

 

上流側は、朝陽が右岸、駒啼瀬の急峻な山に遮られ、渓谷に緑の陰陽を創り出されていた。

  

 

会津西方では、同じ車両に乗っていた若い男女2人組が降りた。観光客のようだった。列車が発車すると、まもなく「第二只見川橋梁」を渡った。下流側の小さく波打つ水面には陽が当たり、乱反射していた。

 

上流側の会津百名山82座「三坂山」(831.9m)上空にも雲一つなく、今日も登山日和だと思った。

 

 

列車は減速し、“アーチ3橋(兄)弟”の次男・宮下橋(県道237号線)を見下ろしながら、長男・大谷川橋梁を渡る。渓谷の緑は繁り、今日も眩しいほどで、生命力に溢れていた。*参考:三島町観光協会(観光交流館からんころん)「『みやしたアーチ3橋(兄)弟』のビューポイント」(2013年6月16日) https://blog.goo.ne.jp/mishimakankou/e/e93620f5690ee4e3adf6d1124b2f46e5

 

会津宮下では、上り列車とすれ違いを行った。反対側のホームには客が1人と、まもなく駅員が1人姿を現した。

 

 

列車は、会津宮下を出ると、東北電力㈱宮下発電所と宮下ダムの脇を駆け抜ける。ダムは1門のゲートを解放し放流していた。

 

 

宮下ダム湖は多様な緑に囲まれていた。ダム湖にせり出した木々は、紅葉期もさることながら、この時期も見ごたえがある。“春の山咲き”という表現は、ここでもふさわしいと思った。

 

 

わずかに只見川が姿を消した後、「第三只見川橋梁」を渡る。 下流側、正面に見える只見川の左岸は、陽光に照らされてた緑は、多様多層で美しかった。

 

上流側、日陰の部分に、界ノ沢の豊富な水が只見川(宮下ダム湖)に落ちていた。

 

 

早戸を出ると、三島町から金山町に入り、細越拱橋を渡る。

 

  

会津水沼を出発し、下路式トラスの「第四只見川橋梁」を渡る。

 

ここは、東北電力㈱上田発電所・ダムの直下で、普段は川床が見えるほどの水量だが、雪融け水の影響か、川幅いっぱいに水が流れていた。

 

 

この先、只見線と並行して延びる国道252号線では、道路改良工事が進められていた。旧道側に重機が入り、地盤改良の作業をしているようだった。

 

この工事のためか、只見線と上田ダム(湖)を隔てていたスギの木が一部伐採されていた。ダム湖とその左岸に連なる雪食地形(アバランチシュート)を見せる山肌が良く見えた。電柱や電線が地中化されれば、もっと良い眺めになるだろうと思った。*参考:国土地理院 「日本の典型地形について」6.氷河・周氷河作用による地形 24.アバランチシュート

 

会津中川を出て、しばらくし振り返ると、東北電力「奥会津水力館 みお里」が見える。取り囲む山々の春の風景にも溶け込んだ、電力会社のPR館とは思えない秀逸なデザインだと改めて思った。

 

 

列車は減速し、車内では終点を告げる放送が流れた。前方の林道の上井草橋がどんどんと近づいてきた。

 

振り返って大志集落を眺めた。只見川(上田ダム湖)の水鏡はまずまずで、周囲の緑や山の斜面の雪食地形を映し込み、“観光鉄道「山の只見線」”屈指の景観美だった。

 

 

列車はポイントを通過し、ゆっくりとホームに向かっていった。

 

 

8:06、現在の終点、会津川口に到着。ここから先、只見までの27.6㎞が「平成23年7月新潟福島豪雨」被害を受け運休となっている。復旧工事は1年ほど延びてしまったがほぼ終わり、今秋の全線再開通に向けてまもなく試運転などが行われると言われている。

 

輪行バッグを抱え駅舎を抜けると、駅頭には代行バスが停車していた。

8:15、只見行き代行バスが会津川口を出発。乗客は、私の他5人だった。

 

 

代行バスは、只見線に沿って延びる国道252号線を進む。西谷地区の坂を下ると、右側に、列車が走る事を待つ「第五只見川橋梁」が見えた。


本名を出発し、再び国道に入ると、左側に東北電力㈱本名発電所・ダムの直下に建つ、架け替えられ形状が変わった新「第六只見川橋梁」が見えた。

 

新造された本名架道橋をくぐり、左側の「第六只見川橋梁」工事ヤードがあった場所を見ると、荷を積んだトラックが停められていた。他は片付いていたようなので、ここも工事は終わったのだろうと思った。


 

国道252号線本名バイパスの本名トンネル(1,429m)を潜り抜け、湯倉橋(219m)を渡ると、只見線の路盤が近づいた。旧道から只見線に近い位置にバイパスが通され、それに付随し電柱も近づいてしまった。復旧後、只見線の車内から見える風景が気になった。

 

 

しばらく、左側に只見線の路盤を見ながら進んだ。復旧工事で枕木の交換工事の資材置き場になっていた場所には、まだ鉄板が敷かれたままだった。

  

会津越川会津横田を経て、二本木橋を渡ると、左側、上流に新「第七只見川橋梁」が見えた。この橋も、「第六」同様に、上路式から下路式に架け替えられた。

 

会津大塩“駅”となっている大塩体育館に到着。大きな桜の木があった。上の方の花びらは散っていたが、なかなか見ごたえのある桜だった。ここから200mほど離れた駅舎付近にも桜が咲いているようなので、来春以降、満開時に見に来たいと思った。

 

 

代行バスは滝バイパスを通り、只子沢を渡り、金山町から只見町に入った。電源開発㈱滝発電所・ダムに向かって大きく蛇行する只見川は、ダム湖となりたっぷりと水を湛えていた。残念だがこの眺めは代行バス限定で、只見線の列車は滝トンネルに入っているため、見られない。

 

塩沢スノーシェッドを抜けると、進路方向に只見川(ダム湖)に映り込んだ、塩沢地区や会津百名山83座「蒲生岳」(828m)、その陰に冠雪した同29座「浅草岳」(1,585.4m)が綺麗に見えた。この景色は、列車の中から見られる。*ダム湖は、電源開発㈱滝発電所・滝ダムのもの

 

正面に目を向けると会津百名山71座「鷲が倉山」(918.4m)の、鷲が羽を広げ休んでいるような独特な稜線が、只見川の水面にも落ちていた。

 

会津塩沢を出ると、まもなく蒲生橋を渡り、橋上から「第八只見川橋梁」を眺めた。

 

宮原集落を抜け、会津蒲生が近づくと、只見川に注ぎ込む蒲生川の扇状地と、背後の山々の良い構図の眺めとなる。この風景も只見線の列車内から見られるので、楽しみだ。

 



“叶津”バス停の手前で叶津川橋梁を潜り、堅盤橋上で正面に眺めた。只見線最長(372m)、R250mの緩やかな曲線を持つ開放的な橋梁を、列車で通過するのも楽しみだ。

 

 

 

9:05、只見に到着。


さっそく、駅舎の南側にある宮道踏切を渡り、瀧神社に向かった。

 

境内の桜は、まだ満開だった。

 

まもなく、汽笛が聞こえ、小出方面からの始発列車がやってきた。

 

9:10、列車が只見駅に停車、この列車は折り返し小出行きになる。

列車の出発まで、周囲の景色を見たり、写真を撮ったりし、時間を過ごした。この間、瀧神社には観桜客が出入りしていた。 


 

9:30、小出行きの列車が出発。乗客は20名ほどだった。

 

列車が駆け抜けて行く。運休前のダイヤでは、今朝私が乗った会津若松発の始発列車が、この小出行きとなっていた。全線復旧(再開通)は秋だが、会津若松からの直通列車が走る姿を想像しながら、キハ110形2両編成を見送った。

 

 

この後、駅舎の北側にある上野原踏切に移動した。

只見駅のホームと桜に包まれた瀧神社、そして新葉の木々を見せる低山と低山の間に、未だ雪残る猿倉山(1,455m)から横山(1,416.7m)の稜線、“寝観音”様がくっきりと見えた。“観光鉄道「山の只見線」”の春を象徴する構図を収める事ができた。

 

 

9:42、ひと休みしてから、輪行バッグから取り出した自転車にまたがり、只見駅前を出発した。

 

2019年に、駅前に新築された只見町観光まちづくり協会の建物の前を通過。入口には、今年1月14日に協会が解散したことを告げる案内文が貼られていた。

まちづくり団体が解散とは珍しいと思っていたが、現在その役割は只見町インフォメーションセンターが引き継いでいる。*参考:只見町観光まちづくり協会「当法人が所有する建物ログハウスの利活用に関する陳情書」(PDF) URL: https://www.town.tadami.lg.jp/parliament/petition/2022/03/17/79edb9792117a5a3b02ef23c8214f5cd.pdf 

 

 

この後、伊南川沿いを小林地区まで上ってゆくが、途中、只見町の桜の名所にも立ち寄ることにした。

まずは、只見川沿いにある「原地区の桜」。

 

一本だけ、散り始めで花びらが未だこんもりと残っているソメイヨシノがあった。*参考:福島県南会津建設事務所「原地区の桜並木」 URL:https://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/41360a/sakura-01.html

 

 

国道289号線に戻り、黒沢橋で伊南川の右岸に渡る。橋上から伊南川の上流を眺める。水量は豊富で、薄緑した水面は清らかで美しかった。

 

伊南川沿いに延びる県道360号(小林館の川)線を進む。国道に比べ通行量は格段に少なく、傾斜も緩やか。何より、伊南川を近くに見続けることができ、サイクリングに適した道になっている。


伊南川越しに、左岸の山並みを眺める。600m級の低山ながら雪食地形の野趣味ある山肌のモザイク植生と、早緑の瑞々しさの対比が美しかった。

 

伊南川沿いの景色が素晴らしく、何度も自転車を停車させ、眺め写真を撮った。

 

一本桜と雪食地形も絵になっていた。稜線の尾根筋に連なる常緑針葉樹(おそらくスギ)は、雪食地形を際立たせ、低いながらも山を存在感あるものにしていると、改めて思った。

 

 

小川地区荒井原集落では、桜をスイセン越しに眺めた。

 

 

しばらく伊南川と離れ、支流・小川沢の脇を進んだ。

 

小川沢の上流側にも桜があった。まだ、満開だった。

 

 

小川沢を渡り、上野集落に進んでゆく。道沿いの、菜の花と桜が良かった。

 

上村集落にあったシダレ桜も満開で、見頃だった。

  


伊南川左岸に移動するため小川橋に向かう。堤防の桜並木は散ってしまっていた。満開だったならば綺麗だろうと思った。冠雪している山は、「浅草岳」。

 

 

 

伊南川左岸に移動し、国道289号線を進む。伊南川の水が豊富ということで、川床の岩盤に段差がある場所で、滝のような迫力ある落水の様子が見られた。

 

10:23、この“滝”のそばにある「福井の桜」に到着。*参考:福島県南会津建設事務所「福井の桜」URL: https://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/41360a/sakura-02.html

 

国道を少し進み、振り返って「福井の桜」を眺める。雪食地形の山々から、冠雪した「浅草岳」山頂が突き出ていて、なかなかの眺めだった。

だた、残念だったのは、桜の中央に遠慮なく張られている電線。“自然首都”を謳う只見町にとって景観面のみならず、豪雪地帯の保守性を考えれば、電柱電線の地中化を進める大義名分が立つと思う。国交省が進める事業に応募し、予算を獲得できるよう政治・行政が動いて欲しいと思った。*参考:国道交通省「無電柱化の推進」URL: https://www.mlit.go.jp/road/road/traffic/chicyuka/

 

「福井の桜」のそばには、“只見マトン”を取り扱う「たつみや」がある。私が利用した時は、希望する量を計り売りしてくれたので、助かった。

 

 

国道289号線を進み、福井地区から黒谷地区に入り、文教エリアに行く。
まずは朝日小学校。校庭の桜は、ほとんど散ってしまっていたが、ここからも雪食地形のモザイク植生と冠雪の「浅草岳」が見えた。

 

隣接する只見中学校の校庭の南端には、大量の雪が残っていた。

 

只見中学校といえば、今春の選抜高校野球大会に出場した13人のうち9人の同校の出身校だ。地元の中学校から地元の高校に進んだ甲子園球児が、これほど輩出されたことは、春の選抜大会以外でこの10年以上福島県では無かった。この偉業を励みに、このグラウンドで基礎を身に着け、次は地区大会を勝ち上って夏の大会に出場して欲しいと思う。*他4名は町の山間留学制度を利用した会津若松市にある中学校の出身

 

黒谷地区を後にして、再び伊南川右岸に移動。朝日橋に向かった。

 

 

朝日橋の左岸の堤防には桜並木があった。下流側はほとんど散っていたが、並木越しに「浅草岳」と会津百名山34座「鬼が面山」(1,465.1m)が連なる“鬼面の眺め”が見えた。

 

並木の上流側は、花びらが半分以上の残り、『満開ならば、さぞや美しいだろう』という風景を見せてくれていた。

 

伊南川右岸に渡り、再び県道360号線に載り、西に進んだ。まもなく、黒谷川が注ぎ込む場所に着いた。

 

ここから少し進み、伊南川左岸の上方を見ると、“只見四名山”の最高峰で会津百名山27座「会津朝日岳」(1,624.3m)の山頂付近が出ていた。黒谷川沿いを上流に向かって進み、赤倉沢登山口から挑むこの山には、今年中に登りたいと思っている。

 

 

県道を先に進み荒島地区に入り、荒島橋のたもとに“親子桜”があった。祖父母と思えるような2つ山が背後に聳え、『三世代の構図だ』、と独り言ちた。


 

自転車を進めていると、土手に紫の点を認め、停まって近づくとカタクリの花だった。奥会津の春を告げる、代表的な花の一つだ。

 

 

また、少し進むと伊南川に堰堤があった。すぅっーと延びる水しぶきの列は清廉で、水音は心地よかった。

 

堰堤の上部、右岸の渕にせり出した早緑はより鮮やかで、美しかった。

 

 

熊倉地区に入ると、次に立ち寄る「季の郷 湯ら里」が右岸の高台に見えた。

  

亀岡集落から右折し、亀岡橋に向かう。亀岡スポーツパークも幼木の若葉が綺麗だった。

 

 

11:08、「季の郷 湯ら里」に到着。八重桜が満開だった。

 

鮮やかな桃色の花びらが、青空に映えていた。

 

L字に植栽された八重桜は、見ごたえがあった。

 

近くで作業をしていた施設のスタッフと話をする。この八重桜は「季の郷 湯ら里」のオープン時に植えられたという。そして、向かい側の満開の一本桜はソメイヨシノで、なぜが開花が遅いということだった。ちなみに、この一本桜の後ろには、“日本三大滝桜”である「三春の滝桜」の子孫樹が植えられているという。

 

 

「季の郷 湯ら里」を後にして、国道289号線を西に進んだ。大倉地区に入り八幡神社の、満開の桜を仰ぎ見た。

 

 

伊南川に近づくと、堤防に八重桜の並木があり、見ごろだった。

 

明和橋に向かう堤防にも桜並木があったが、ほとんど散っていた。これが「大倉の桜並木」で、こちらはソメイヨシノだという。*参考:福島県南会津建設事務所「大倉の桜並木」URL: https://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/41360a/sakura-03.html

  

国道289号線を進み、伊南川にかかる明和橋から「大倉の桜並木」を眺めた。川側に張り出した、立派な桜並木だと分かった。ここも、満開の様を見たいと思った。

 

 

明和橋を渡り、右岸のたもとから、伊南川の上流側を眺めた。ここより先、梁取地区の伊南川堤防にも桜並木があるという。次の機会、町内の桜が見頃の時季に訪れたいと思った。

 

 

 

 

11:37、福島県のホームページに紹介されていた「小林の桜」は見つけることができず、一旦、伊南川沿いの春景色の探索を中断し、布沢地区に向かう事にした。

国道289号線から県道153号(小林会津宮下停車場)線に入り、布沢川に架かる外出橋を渡った。この県道は「(会津)銀山街道」(大町札の辻(若松城下)~小林)の一部になっている。*参考:福島県会津若松建設事務所「会津銀山街道地図


県道153号線の序盤は平坦で、沿道の桜などの花々を見ながら、自転車を進めた。

 

戊辰役の古戦場「滝原村(坂田)の戦いの跡」を通過。*参考:只見町「只見町戊辰戦争史跡」URL: https://www.town.tadami.lg.jp/tourism/facility/002196.html

 

 

この道を通るのは三度目で、道の形状が分かり、気が楽だった。布沢地区まではキツイ上り坂が2箇所あるが、基本坂は緩やかで、布沢川の清流を見ながら進める区間も多いので苦しさは感じない。

 

 

12:00、山村暮らし体験施設「森の分校ふざわ」前を通過。

 

布沢川に架かる菅根橋を渡ると、高台に目的の桜が見えた。

 

さらに県道を進み、布沢川も渡河し少し進むと、左側に龍泉寺入口を示す石柱が立っていた。

 

長い坂を上ってゆくと、斜面に立ち並ぶ墓石の中に堂々と伸びる桜の木が見えた。

 

12:07、「龍泉寺墓地の桜」に到着。

 

樹齢200年を越える、オオヤマザクラだという。崖下から見上げられるので、迫力があった。

今回は2-3割散っていたので、やはり満開の時季に見たいと思った。次の訪問が楽しみだ。

 


12:20、「龍泉寺墓地の桜」を後にし、伊南川沿いに戻った。

途中2箇所の上り坂も快調に越え、布沢川沿いを気持ちよく自転車を進める事ができた。

 

 

 15分ほどで外出橋への分岐に到着。ここは直進し、県道360号(小林館の川)線に入った。

 

まもなく、前方に東北電力㈱伊南川発電所取水口管理棟が見えてきた。

 

管理棟の前を通り過ぎて、取水口のあるゲートを振り返って眺めた。全面真っ白な激流が流れ続けていて、圧巻の光景だった。雪融け水により豊富な水量になっているとはいえ、自然のパワーの強大さを実感するとともに、奥会津の水資源の包含力を可能な限り人間が用いるエネルギーに変換する投資が必要だと思った。

 

この取水口ゲートの先400mの場所に、沈砂施設がある。

 

東北電力㈱伊南川発電所沈砂施設。取水口から分岐された伊南川の水が、50mプールのような場所を通り、導水管を潜り抜け、9.5km北にある伊南川発電所のタービンを回し発電利用されている。そして、水は只見川に注ぎ落ちている。*参考:拙著「金山町「東北電力㈱ 伊南川発電所」2017年 初夏」(2017年6月24日)

 


この沈砂施設から、勢いよく水を吐き出す取水口ゲートを眺めた。伊南川の川幅は広いため、取水口ゲートに水が集まるように、左岸側にコンクリート製の堰堤が設置してある。

 

 

この後は、ひたすら自転車をこぎ、伊南川右岸を東に、小川地区からは北東に、下り基調の県道を進んだ。伊南川の清らかな流れを見ながら進むサイクリングは、とても気持ちが良かった。

 

 

小川地区にも堰堤がある。その側にある「小川 滝ノ曽根清水」で給水し、先に進んだ。

  


小川地区上野集落を通過する際、往路では気づかなかった、“桜四兄弟”が見られた。桜と雪食地形が作り出したモザイク植生、和やかさと荒々しさが同居したこの構図は素晴らしく、奥会津深部の春を凝縮したものだと思った。

 

 

13:20、黒沢地区沖集落のT字路を左折し、伊南川にかかる黒沢川に向かうと、前方に「浅草岳」が大きく見えた。

 

黒沢橋上から、伊南川の河口となる、只見川との合流点を眺めた。只見川の水は、6基の発電用ダムでせき止められながらタービンを回し、阿賀川に注ぎ込んだ後に再び6箇所のダムで発電利用され日本海に向かってゆく。

 

 

 

県道360号線から右折し国道289号線に入り、常盤橋手前を左折した。伊南川沿いを離れ、只見川右岸の町道を進んだ。しばらく、「浅草岳」が綺麗に見えた。 

 

前方に目を向けると、“虫歯”ように中央が凹んだ山が見えた。今までここからの景色は何度か見ているが、初めて目に留まった。国土地理院地図で確認するが、山名は無いようだったが、名付ける価値がある山容だと思った。

 

「奥会津ただみの森キャンプ場」の入口を通過。このGWは賑わったのだろうかと思った。

 

すこし傾斜を増した坂を進んでゆくと、前方右手に電源開発㈱只見発電所・ダムの建屋と洪水吐が見えてきた。

 

只見ダムに到着し、ロックフィル式の天端をそのまま自転車で進み、中央部まで行く。そして、只見ダム湖越しに電源開発㈱田子倉発電所・ダムを眺めた。

 

宮ケ瀬ダム(神奈川県)に次ぐ国内第二位の躯体を持つダム(体積1,949,500㎥)の背後には、“寝観音”様がお休みになっていた。

 

田子倉ダムの下流に架かる、万代橋の右岸のたもとの桜並木は散りが進んでいるようだった。田子倉ダム直下の只見ダム湖は。万代橋が復旧したことで周回可能になったので、この桜が満開の頃にサイクリングをしたいと思った。

 

天端の先を見ると、電源開発㈱只見展示館と、その奥の山の間に「浅草岳」の山頂が見えた。この水力館は淡い色から落ち着きのある色に塗り替えられたが、春の景色にも溶け込んでいるようで良かったと思った。

 

只見ダムの左岸に移動し、再びダム湖越しに田子倉ダム方面を眺めた。只見ダムは巨大な田子倉ダムの逆調整池の役割を果たしているが、ダム天端から上流のダムが見えるという眺めは国内無二ではないかと思う。

 

只見ダム左岸にあり、会津ただみ振興公社が運営していた「歳時記会館」が昨年度で営業を終了したという厳しい環境は理解できるが、この景観を観光やアクティビティーに活かす事が、「只見線利活用」には必要ではないか、と改めて思った。

まだ広く知られていない地域の宝を、只見線の復旧(全線再開通)を機に、“最後の挑戦”と思い総力戦で周知し、鉄道による持続的な観光客の輸送が実現されるようにして欲しい。


 

只見ダムには、左岸に沿って国道252号線が延びているが、新潟県(魚沼市)側への通り抜けはできなくなっている。

 

例年、積雪期(通常11月末~)は通行止めとなり5月中には解除になっていたが、先月28日に只見線・田子倉駅跡に近い「田子倉無料休憩所」までは開通したものの、その先は未定になっている。今年2月に、六十里越に向かう途中に架かるあしよし橋が雪崩で崩落したためだ。

国道通り抜け不可期間は、只見線が新潟方面と行き来できいる唯一の交通機関になる。只見町や福島県は、この機会を只見線にとっての好機ととらえ、“只見線で往来する「六十里越」”の定着にも努めて欲しいと思った。

  

 

只見ダムを後にし、国道252号線を会津若松方面に向かった。

8分で、福島県立只見高校に到着した。選抜出場の垂れ幕は撤去され、敷地全体を覆っていた、雪も見当たらなかった

 

今年2月にここを訪れた時に、グラウンドに載った巨大な雪の“蓋”を見たときに、『これはいつ融けて無くなるのだろう』と思ったが、、きれいに消えていた。

 

只見線の路盤の方に移動し、グラウンドを眺めた。端には雪が残っていたが、野球部が練習するスペースは乾いた土面が見えたていた。選抜出場した13人に新入生を加えた野球部員が、夏の甲子園を目指してここで練習に励むのだろうと思った。只高ナインの奮闘に期待したい。

 

只見高校を後にして、駅に向かう。

途中、只見小学校に立ち寄る。まだ花びらが残る桜越しに、「蒲生岳」が見えた。

 

 

14:08、昼食などの買い物を済ませ、只見駅に到着。約60㎞、4時間26分のサイクリングだった。道中、素晴らしい景色を見続けられたためか疲れは感じず、満足感があった。

 

 

輪行バッグに自転車を収め駅頭で待っていると、会津川口行きの代行バスが、2台でやってきた。聞けば、ゴールデンウィークで、首都圏から只見線を利用した周遊客の乗り残しを防ぐためだという。

14:32、会津川口行きの代行バスが只見を出発。乗客は私の他4人で、2台目が運行されることは無かった。やはり、青春18きっぷの適用期間(夏・冬・春の学校の各長期休暇)以外は、乗り通しの客は少ないと思った。首都圏発着の観光客を対象にした、連続した3日間有効で5,000円の“只見線周遊きっぷ”が設定され周知されれば、このGWや秋のシルバーウィークに只見線ののって、沿線を巡る客が増えるのではないかと思う。「只見線利活用」を進める福島県は、首都圏からの周遊可能な只見線の地理的優位性を活かす案を考え、予算を充てるつもりでJR東日本と交渉して欲しい。

 

代行バスは只見線に沿うように延びる国道252号線を進んだ。

叶津バス停、会津蒲生会津塩沢を経て只子沢で只見町から金山町に入り、会津大塩会津横田に停車し、客が1人降りた。会津越川の手前では、東北電力㈱伊南川発電所のタービン建屋の前を通った。

 

15:22、湯倉温泉バス停、本名を経て、会津川口に到着。

 

輪行バッグを抱、駅舎を通り抜けホームに向かうと、列車が待機していた。キハ110形+キハE120形の編成だった。

15:29、会津若松行きの下り列車が会津川口を出発。車内は賑わっていた。どうやらツアー客のようだった。そして、車内では地元の委託業者による社内販売と、販売員による見どころの説明が行われた。

 

車内では、さっそく缶ビールを取り出し、乾杯。只見町で入手した菓子パンなどで昼食を摂りながら、車窓からの風景を眺め続けた。

 

日本酒も買っておいた。今回選んだのは、只見町のお隣、同じ南会津郡の南会津町の「開当男山」。純米の冷酒を、チーカマをツマミに、チビチビと呑んだ。

 


列車は「第三只見川橋梁」、「第二只見川橋梁」、「第一只見川橋梁」で減速運転し、その度にツアー客は車窓に目を向け、カメラを構えていた。今日は晴れで良い景色が見られたと思うが、次は空気が澄んだ早い時間帯に列車に乗って、車窓からの風景を楽しんで欲しいと思った。

 

ツアー客は、予想通り、会津柳津で降りていった。ここは駅前に大型バスが待機できるスペースがあるので、ツアーの発着点になっている。

 

 

列車は会津坂本を出て“七折越え”に入り、“四連トンネル”を経て下り坂を静かに下った。塔寺を出てしばらくし、木々の間からは会津坂下町越しに、会津平野が綺麗に見えた。

 

“七折越え”を終えた列車は、前方に「磐梯山」を見ながら、会津平野に入って行く。

  

 

若宮を出ると、西部山地の北端に、旧新鶴村最高峰の会津百名山74座「高尾嶺」が見えた。

 

根岸を出ると、伊佐須美神社の最終山岳遷座地である「明神ケ岳」も、少し霞んではいたが、稜線が見えた。

 

会津本郷を出た直後に渡った大川橋梁からは、「大戸岳」の山塊が見えた。

 

七日町を出発すると、「磐梯山」が正面に大きく見えた。

  

 

17:21、終点の会津若松に到着。会津坂下から再び賑わった列車からは、多くの客が降りて連絡橋に向かっていった。

 

 

駅舎を出て駅頭を見ると、静かだった。明日は、暦上は平日(金曜日)なので、こんなものかと思い直したが、観光地としては寂しい気もした。これも“コロナ後遺症”と考え、今後の会津の賑わいに期待したいと思った。

  

 

この後は、風呂。 駅から300mほど離れた「富士の湯」に行き、今日一日の汗を流した。

 

浴後は、「ラーメン金ちゃん」へ。久しぶりの餃子にビールを合わせ、顔がほころんだ。

 

 

20:16、磐越西線の列車に乗って郡山に移動。6泊7日の“会津逗留”の旅が無事に終わった。

キャンプ初日(5月1日)以外は天候に恵まれ、予定通りの山行もでき、何より青空の下、只見線の列車内から沿線の春景色が見られて、充実した旅になった。

明日は実家に行き、墓参りと3月16日福島県沖地震の片付けを行う予定だ。

 

 

(了)

 

 

・  ・  ・  ・  ・

*参考:

・NHK:新日本風土記「動画で見るニッポンみちしる~JR只見線

・産経新聞:「【美しきにっぽん】幾山河 川霧を越えてゆく JR只見線」(2019年7月3日)

 ・福島県 生活環境部 只見線再開準備室:「只見線の復旧・復興に関する取組みについて

・東日本旅客鉄道株式会社:「只見線について」(PDF)(2013年5月22日)/「只見線(会津川口~只見間)の鉄道復旧に関する基本合意書及び覚書」の締結について(PDF)(2017年6月19日)

 

【只見線への寄付案内】

福島県はJR只見線全線復旧後の「上下分離」経営での維持費や集客・地域振興策の実施費用として寄付を募集中(クレジット可)。

①福島県ホームページ:只見線復旧復興基金寄附金・只見線応援団加入申し込みの方法 *現在は只見線ポータルサイト「只見線応援団」URL:https://tadami-line.jp/support/


②福島県:企業版ふるさと納税

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(引用)寄附金は、只見線を活用した体験型ツアーや周遊ルートの整備、只見線関連コンテンツの充実化等に活用させていただきます。 沿線地域における日本一の秘境路線と言われる観光資源を活用し、更なる利用者の拡大と認知度向上を図ります。


よろしくお願いいたします。










次はいつ乗る? 只見線

東日本大震災が発生した2011年の「平成23年7月新潟福島豪雨」被害で一部不通となっていたJR只見線は、会津川口~只見間を上下分離(官有民営)とし、2022年10月1日(土)に、約11年2か月振りに復旧(全線運転再開)しました。 このブログでは、“観光鉄道「山の只見線」”を目指す、只見線の車窓からの風景や沿線の見どころを中心に、乗車記や「会津百名山」山行記、利活事業に対する私見等を掲載します。

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