金山町「惣山・前山 トレッキング」 2017年 深秋

快晴の予報を確認し、JR只見線を利用し紅葉の見頃を迎えている金山町の沼沢湖を訪れ、内輪山の「惣山」と「前山」に登った。

沼沢湖は、活火山である沼沢が約5600年前に噴火して出現した湖で只見柳津県立自然公園の中にある二重式カルデラ湖。面積3.0㎢、周囲7.55km、水面標高474mで最大水深は福島県内最深の96m。

内輪山である「惣山」と「前山」は湖のぞれぞれ西北と西南に位置し、登山道は「沼沢湖一周遊歩道」として約10.5kmの一部に組み込まれている。

今回は沼沢湖を一周する計画を立て「惣山・前山トレッキング」に臨んだ。

 

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早朝、磐越西線の始発列車に乗るために郡山駅に向かう。上空には雲一つない明けの青空が広がっていた。

輪行する折り畳み自転車をバッグに収納し、自動改札を通り電車に乗り込む。

5:55、会津若松行きは定刻に発車。

 

平日ということで、切符は「Wきっぷ」を利用。

磐梯熱海駅手前では郡山市の「熱海町駅前市有地整備事業」が着々と進められ、フットボールセンターには芝が張られていた。

 

沼上トンネルを抜け中山峠を越えると会津地方に入ったが、青空は続いていた。

 

猪苗代を過ぎると磐梯山は綺麗な稜線を見せていた。

しかし、磐梯町を過ぎ、終点が近づくにつれ、霧が濃くなってゆく。

 

7:14、定刻を5分ほど遅れて会津若松に到着。

駅舎は濃い霧に包まれていた。快晴予報での濃霧。会津盆地の気象現象か。

切符を購入し、再び改札を通り只見線のホームに向かう。

連絡橋から見ると、駅がすっぽりと霧の中に落とされたようだった。

入線していた列車に乗り込む。三両編成の最後尾のBOX席に座る。

7:37、列車は定刻に出発。3つの県立高校の生徒達で車内は混雑し、賑やかだった。

 

七日町、西若松で高校生が更に乗り込む。車内の活気が増す。

 

列車は大川(阿賀川)を渡り、会津本郷から会津高田に向かい停車。県立大沼高校の生徒を降ろす。

 

根岸、新鶴、若宮沿線でも濃い霧は変わらず、この先の天気が心配になる。

会津坂下に到着。乗客の大半を占めていた県立坂下、会津農林両高校の生徒が降りる。

まもなく、生徒の横断が中断され、会津若松行きの列車が入線する。

上り列車が停車すると、生徒達の大移動が再開される。会津坂下駅、平日の光景だ。

私の乗る最後尾の三号車は、全員が降りてしまい、一気に閑散としてしまった。

乗客は私一人。贅沢やら申し訳ないなら、複雑な気持ちになった。

会津坂下以降の利用者を増やす場合、生徒との“共存”も考えなければならない。

4両編成にして当駅で切り離すというのが理想だが、駅員の配置等の問題があり難しいだろう。

平日の観光客は、会津坂下まで混雑と喧騒を我慢するというのが現実的か。

 

駅を出発すると、列車は短い田園を抜け、ディーゼルエンジンを震わせながら濃霧に包まれた七折峠に向かってゆく。

8:30、七折峠の中にある塔寺駅が近づくと、上空に変化が。

霧が薄まり、青空が見えてきた。

塔寺を過ぎると、霧はスッキリと晴れ、青空の下列車は駆け抜ける。

やはり、霧は会津盆地に発生していたのだろう。上空から、この光景を見てみたいと思った。

 

会津坂本に到着。車窓から右(北)を見ると、冠雪した飯豊連峰が見えた。

次駅の会津柳津では3人の乗車があり、郷戸を過ぎ、滝谷に到着。使われなくなったホームは綺麗に色づいていた。

滝谷を出発すると間もなく、滝谷川橋梁を渡る。

 *以下、各橋梁のリンク先は土木学会附属土木図書館

     (http://www.jsce.or.jp/library/archives/index.html)

     「歴史的鋼橋集覧

只見線内屈指の渓谷美は、朝の陽に照らされた紅葉で、一層美しさを際立たせていた。

 

会津桧原を過ぎると、“橋梁区間”に入る。

 

桧の原トンネル通過中に車掌からアナウンスが入る。

『列車はこのトンネルを抜けると第一只見川橋梁を渡ります。車窓からの風景をお楽しみください』

そして、列車はいくぶん減速しトンネルの出口に向かう。

 

9:05、「第一只見川橋梁」を渡る。

柳津ダムが創り出す水鏡の“映度”は不足気味だったが、車窓から美しい景色が見られた。

 

列車は名入トンネルを抜け、会津西方を出発すると直後に「第二只見川橋梁」を渡る。

「第二橋梁」は左(東)の景色が好きだが、午前中は逆光であるため右を見るようにしている。

 

次駅の会津宮下で会津若松行きとすれ違い、列車は宮下ダムの脇を通り抜ける。

明暗のコントラストが鮮明で美しかった。

 

只見川が離れた直後に、「第三只見川橋梁」で蛇行した只見川を渡河する。

振り返ると、送電鉄塔がわずかに見えるが、人工物が見えない雄大な景色が見えた。

 

列車は滝原トンネルから“早戸俯瞰”で知られる明かり区間を走り、早戸トンネルを抜ける。

9:20、早戸駅(三島町)に到着。下車し列車を見送る。

駅でしばらく景色を眺める。

 

気合を入れ直し輪行バッグから自転車を取り出し組み立てる。

昨年の夏に続き、二度目の“沼沢登坂”に臨む。

9:45、自転車に乗り出発。

駅前の坂を上り国道252号線に合流、すぐに廃道となった旧道に入り早戸駅を俯瞰する。

駅と薄紫の早戸大橋が自然に溶け込んでいる。

国道の早戸温泉郷トンネルを抜けると、眼下に早戸温泉「つるの湯」が現れ、現在改装中の湯池棟(宿泊棟)が見えた。本館や直近のカフェ「つるのIORI」と一体化したデザインのようで、来春の開業が楽しみだ。

国道から町道へ右折し早三橋を渡る。ここから金山町に入る。

ペダルをこぐ足に力を入れ、坂を上る。

道が平坦になると、右に廃止された東北電力㈱沼沢沼発電所の水圧鉄管跡が現れる。

沼沢沼発電所は日本初の純揚水式水力発電所で、当時東洋一の発電能力を持ち、2002(平成14)年9月12日に廃止された。取水が沼沢湖(沼)で放流が只見川(宮下ダム湖)になる。

現在、この役目は第二沼沢発電所に引き継がれている。

 *参考:水力ドットコム「東北電力 沼沢沼発電所 跡

 

町道から右折し県道237(小栗山宮下)線に入り、本格的な登坂に入る。

坂の途中から、先ほどの水圧鉄管跡の横顔を見る。

沼沢湖を源流に持つ沼沢川の急流の音を聞きながら、自転車を進める。

息が切れ、降りて押すこともあったが、10kgの自転車はさほど負担にならず、何よりこの先に待つ景色と復路の快適さを考えると辛くはなかった。

 

10:16、早戸駅を出発して約30分で沼沢湖に到着。

さっそく、自転車を公園の隅に置き、準備を行う。

 

10:30、湖水浴場前を出発。事前の情報で“沼沢湖一周”の所要時間は4時間となっていた。急ぎ足で3時間30分で完走したいと考えていた...のだが。

 

しばらくサイクリングロードを歩く。右奥の建物は「金山町自然休養村センター」でオートキャンプ場の受付や売店などが入っている。

沼沢湖に目を遣る。浅瀬では湖底の様子がはっきりとわかる高い透明度。

サイクリングロードを進むと、右手に“ドームテント”が現れる。

京都府長岡京市の㈱ネイチャーマインドが「金山町地域活性化プロジェクト」で設置した宿泊施設だ。

ドームテントは3基あり、据置タイプが2基。

“ツリードーム”の昇降タイプが1基。周囲の木を利用し固定されている。

施設名は「Dom’Up 沼沢湖」。今月中旬までで、今年の3か月の営業を終えるという。

 *参考:㈱ネイチャーマインド「福島県金山町地域活性化プロジェクト」ブログ

  序(2017年7月15日)その1(8月10日)その2(8月16日)その3(8月20日)

 

サイクリングロードはこの先で町道に合流する。

 

しばらく町道を進むと、これから登る内輪山の全容が見えてきた。

「惣山」(816m)。垂直の岩肌が特徴的だ。

「前山」(835m)。平坦で長い尾根が印象的だ。

町道の脇には「奥会津カヌークラブ」の施設があった。しばらく使われていないようだが、もったいない遊休施設だと思った。

さらに町道を進むと、沼沢沼発電所の取水口跡があった。芝は刈られ整備されていた。

 

町道から見上げると青空に映えた暖色の木々があった。キレイだ。

色付いた木々を通して観る沼沢湖。澄んだ秋の青空と内輪山を映した湖面との組み合わせに見惚れてしまう。

そして、さらに足を進めると目の前に圧巻の光景が現れた。

色づきの違う木々、午前の陽の当たり具合、青空と湖面鏡...この瞬間にしか見られない一点ものの絶景。あまりの美しさに、放心した。

これから800m級の山を二つ乗り越え湖を一周する前に『この先にこれを越える景色があるのだろうか』と思い、達成感を得てしまった。

...しかし、この景観を示す観光案内は無かった事を考えると、非常にもったいない気がした。紅葉の見ごろを迎えたこの地に、私以外の人間がいない。埋もれ過ぎた観光資源、地元では当たり前すぎて敢えて表に出されることはない稀有な観光資源の典型だろう。

この風景には、心底驚いた。

 

もっと眺めて居たかったが、時間の制約があるため、先を急ぐ。

 

“紅葉トンネル”の中を気持ちよく進む。

湖に目を向けると、秋の太陽に透かされた美しい湖底が見えた。

しばらく町道を進むと杉林の中に入り、まもなく前方右に案内板が現れた。

11:03、「沼沢湖一周遊歩道」福沢登山口に到着。山祇宮の赤鳥居が入口だ。

赤鳥居の右脇に建つ石碑をよく見ると“文化14年丁”と刻字されていた。

文化14年は1817年。江戸幕府第11代将軍・家斉の治世。浦賀にイギリス船が来航し、只見線・会津西方駅の北にある乙女三十三観音の「西隆寺」が再建された年だ。

 

遊歩道(以下、登山道と呼ぶ)は、まず山祇宮の参道と重なる。

社の左側を通り抜けると、登山道は北に進路を変え、造林の中を真っすぐ伸びる。

しばらく進むと、苔生した丸太階段を歩く。

九十九折の登山道を進む。一部には足元には薄緑のプラスチック製のメッシュが敷かれていた。歩きやすい。

徐々に登山道に陽が差し込み、直線となる。

11:19、613mの三角点に到着。朽ちたベンチが置かれていた。

登山道から沼沢湖はほとんど見えず、眺望は期待できない。

しばらくは歩きやすいコースとなる。紅葉の中を歩くのは気持ちよい。

左前方に目指す「惣山」が見えてきた。

意外だったが、登山道は何度かアップダウンを繰り返す。

遊歩道ほどの軽さはなく、やはり“トレッキングコース”の名にふさわしい。

さらに「惣山」の頂が近づく。

急な斜面には鎖も垂らされていた。使わなくても登れるが、安心感はある。

11:34、698mポイントを通過。こちらは壊れたテーブル跡が。

ここから先に進むと間もなく、左手が一気に開ける。

“大栗山の眺め”(自称)だ。山肌の木が一斉に伐採されたようで、見事な眺望となっていた。

大栗山集落が大自然の中ぽっつりとある。新緑の頃も良い眺めだろう。

新たに植えられた幼木が育つまで、この景観は楽しめそうだ。

 

登山道を進む。

歩く尾根路が狭くなってゆき、金山町が設置した“足元注意”の看板が現れる。

左手を見下ろすと、沼沢湖に映えた紅葉が目に飛び込んできた。カメラをズームにしてシャッターを切る。

尾根に映えた多幹樹の間を通り抜ける。

11:48、前方に赤岩の痩せ尾根が現れる。

切り立つ狭隘な登山道を進み、巨大な松の根元に作られた単管組みの橋を渡る。

ほぼ垂直の崖の上に設けられているが、しっかり作られていて、ぐらつきもなく安心して渡る事ができた。

 

次は、岩場の側面を回り込むように一旦下り、また登ってゆく。

ここには鎖とロープが張られている、ただ、足元が安定していて大きな不安は感じなかった。

 

まもなく、二つ目の単管組み橋が現れる。

ここも1基目同様に、しっかりと作られていて、安心して進む事ができた。

 

5分ほど進むと、急峻な丸太階段が現れる。

一部丸太が落ちていて、“惣山 福沢口最大難関”かと思ったが、意外と簡単に登る事ができた。ロープも垂らされていたため、恐怖や不安も感じなかった。

 

さらに進むと、左手に紺碧の沼沢湖が見下ろせた。進む度に変化する湖面の色合いに疲れが癒される。

右を向き目を凝らすと、只見川に架かる国道252号線の水沼橋が見えた。

只見線・会津水沼駅のホームも見えるため、入線すればキハ40系の一部が見えるだろう。

 

痩せ尾根にそそり立つブナの巨木。見ごたえがある。

最後の急こう配。落ち葉に覆われ、足元はふかふかだった。

ここから3分ほど進むと、前方に人工物が見えてくる。

東北電力㈱惣山中継所のアンテナだ。この場所が「惣山」の頂上になる。左の擁壁の上に進んで行く。

「惣山」山頂に到着。低木のブッシュが視界を塞ぎ、見晴らしは良くない。

12:06、湖水浴場を出発してから1時間36分でたどり着いた。


山頂標識越しに北北西を見ると、冠雪した山並みが見えた。

会津坂本駅からも見えた飯豊山脈だ。1,000m級の低山が多い会津地方にあって、この2,000m級の山並みはどこででも目に入るようだ。

 

山頂に15分ほど滞在し、次は「前山」を目指して歩みを再開する。中継所の脇をまっすぐ進む。

すると広い“道路”が現れ、前方には「福島県防災行政中継局」「会津若松広域市町村圏整備組合無線中継所」などの複数のアンテナが見えてくる。

足元を見ると自動車の轍があり、「惣山」頂上には車で登頂する事ができることが分かった。少し興ざめしたが、車道を設置できる電波の好適地という条件がそろった「惣山」の特異性にも感心した。

 

登山道はこの“車道”から分岐している。

「太郎布登山口」は「前山」頂上の手前2/3の位置から分岐している。

 

登山道は急な斜面で九十九折になっていた。落ち葉に覆われ、わずかな凹みと低木の空間を見定め進んでゆく。

下りきると、すっーと延びた登山道となる。気持ち良くトレッキングができた。

「惣山」山頂を出ると登山道は沢を回避するように緩やかなV字となっているため、しばらく遠くから沼沢湖を見るようになる。

振り返ると「惣山」の稜線が綺麗に見えた。アンテナが蟹の目のようだ。

 

左に斜面、右に杉の低木林という登山道。

この先は、歩きやすい意趣に富んだ“トレッキングロード”が続く。

 

12:38、716mポイントを通過。前方に「前山」の頂が見える。ここのベンチも朽ちていた。

さらに進むと、林の中を進むトレッキングロードが現れる。

緩やかに九十九折れ、快適に歩みを進める。

直線となり、また進むと沼沢湖か近づき、だいぶ下ってきた事が分かる。


出発点の湖水浴場は、ほぼ水平に見えるほどだった。

 

12:56、「太郎布野鳥の森」(628m)に到着。

色褪せた案内板と官選19代福島県知事・西久保弘道の名が入った「想徳碑」(明治43年建立)なる石碑があり、朽ちた木製のベンチと椅子が設置されていた。

 

沼沢湖に目を向け、遠方を見ると見慣れた山の稜線が見えた。磐梯山だ。

 

13:00、「太郎布登山口」への分岐に到着。右に行くと太郎布(タラブ)地区にある堤(池)の北辺に出る。

分岐点を直進し、「前山」を目指す。細身の木々を通して稜線が見える。

しばらく進むと九十九折の登山道となる。

ここから、進むにつれて傾斜がきつくなる。

突然、岩が現れる。沼沢湖を生み出した噴火によって飛ばされてきたものだろうか。

山頂尾根に向かう最後の直線。はるか先が開けているのが分かり、踏みしめる足に力が入る。

登り切った後は、山頂尾根を快適に歩く。両側は開けておらず、景色を見る事はできない。

「前山」山頂(835m)に到着。

13:25、湖水浴場を出発してから約3時間。想定していたタイムより30分ほど遅れた。

山頂からは磐梯山も見え、両裾の稜線を捉えることができた。

「惣山」同様、山頂からの眺望はよくない。木々の間から沼沢集落を俯瞰できるくらいだ。

『3時間も歩き、二つの山に登ったのにも関わらず、沼沢湖を一望できる場所がないとは...』と残念に思う。

 

10分ほど滞在し、下山する。

山頂尾根を終え、急な下り坂となる。

しかし、この先でまた登る事になり『おやっ』と思った。

 

そして坂の上が開け、痩せ尾根に岩場が現れた。

二つある岩場の奥に立つと、鳥肌が立った。

沼沢湖を一望できるばかりか、180度の圧巻の大パノラマが現れた。

湖水浴場は隠れているが沼沢集落を俯瞰でき、只見川沿いの高畑(830m)、三坂山(831m)、美坂高原の北にある黒男山(980m)がはっきりと見えた。

右奥には磐梯山。

左奥には冠雪した飯豊連峰を捉えることができた。

沼沢集落は、赤を中心とした華やかな大型の屋根が目立ち、風情がある。

そして、荒れた田の様子が分かり、山間のこの集落が置かれた現状の一端を知る事ができた。

カメラをパノラマにして撮影してみるが、実際目にした時の迫力は伝わらない。

“沼沢俯瞰”(自称)は、一人でも多くの人に見てもらいたいと思う。

この眺望で疲労は一気に吹き飛び、3時間歩いた甲斐があったと心から思った。

 

 

13:48、しばらく眺めて居たかったが、列車に乗る前に温泉に立ち寄りたいと考えていたため下山を開始した。

“沼沢俯瞰”を出ると間もなく下りに入る。登山道には大きな石が不規則にあり、気を付けないと足を挫いたり、表面の苔に足を取られかねない。

急な斜面を九十九折に下りてゆく。

標高が下がってくると陽が遮られ、暗くなってくる。

沼沢湖のレベルまで下ったと感じた所で、登山道は杉林の中に入って行く。

熊鈴を大きく鳴らしながら、時折、ぬかるんだ登山道を進んでゆく。

 

14:05、「沼沢湖」と書かれた案内板が現れる。

登山道は落ち葉が積もっていたが、周囲よりは窪んでいたため判別できた。更にピンクのリボンも巻き付けられていたため、安心して進む事ができた。

杉の間からは沼沢湖の湖面が見えるようになった。

 

登山道に横たわる倒木は複数個所あった。越えられない事は無いが残念に思った。


湖に面した登山道を歩く。小枝や低木が邪魔して、見晴らしは良くない。

再び杉林の中を歩く。

しばらく歩くと、前方の杉の木の間に建物が見えてきた。

14:23、前山登山口に到着。沼沢漁業協同組合の事務所がある清水荘の裏手になる。

湖畔に出て、ヒメマス釣り用のボート越しに「前山」と「惣山」を見る。

『あの稜線を歩いてきたのか...』と振り返る。

 

前ノ沢を渡り、沼沢集落の方に目を向けると、田んぼにマコモダケが植えられていた。

この沼沢地区ではマコモダケの栽培に力を入れているという。昨年の地元紙記事で知った。

 

サイクリングロードを歩き、湖水浴場を目指す。

湖畔の紅葉が、傾いた陽を浴びて綺麗に輝いていた。

湖水浴場に到着。

14:36、所要時間は4時間6分。急いだつもりだったが、両頂上での休憩や写真撮影で時間を使ってしまったようだ。

“クマ除け”に流し続けた音楽はケツメイシ。秋だが“さくら”が最後の曲になっていた。

只見線の列車は15:53発。三島町の会津宮下駅から乗る予定なので、今回は温泉には立ち寄れないようだ。

 

さっそく出発の準備をして、自転車を進める。

 

県道237号線に入り、上りに苦労した坂を一気に下る。前方に色づく美坂山を見ながら進む。

早戸駅に向かう町道との分岐まで5分程で下り切ると、その先に第二沼沢発電所の開閉所が見えてきた。

更に進むと沼沢トンネルが現れる。

このトンネルはV字になっていて、底部の右側には「第二沼沢発電所」の入口がある。

この先に、間口25m、高さ50m、奥行き100mの空間があり、そこが発電所であるとは思えない。「第二沼沢発電所」では見学ツアーも企画しているので、機会があれば参加したいと思っている。

 *参考:科学技術振興機構 サイエンスチャンネル 夢をつむぐひと(72)「水力発電を守る 東北電力発変電課員」(2002年)

 

県道を進む。

緩やかな坂のカーブ部分が開けている場所が見えてくる。

只見線の「第三只見川橋梁」のビュー(撮影)ポイントだ。

昨年のこの時期のこの時間、複数の撮り鉄諸氏が居たが、今年はこの色づきと天候に関わらず誰も居なかった。

 

少し県道を進み、下り坂の途中にあるポイントに向かう。滝原トンネルの出入口が見える。

こちらのポイントの方が、私は好きだ。

ここも誰も居なかった。どうしたことだろう、と思った。

 

人(撮り鉄諸氏)が居なかった事を残念に思いながら県道を下る。

まもなく、左下に只見川(宮下ダム湖)を見下ろす区間を走り、只見線の鉄路も近づく。

そして、県道が只見線を跨ぐ箇所で「第一左靭橋梁」を見下ろす。

西陽を浴び右岸の紅葉が輝いていた。ここには一人の撮り鉄諸氏が居て、15:50頃に通過する列車を撮影するようだった。

 

途中、三島役場前で赤城清水を飲み、県道沿いの売店で昼食を手に入れる。

 

15:32、会津宮下駅に到着。

駅前には大型観光バス2台が停車していて、多くの観光客であふれていた。

「第一只見川橋梁」を渡るツアーメニューに臨む方々だった。

聞けば東京方面から来られたという。

 

私は自転車を折り畳み輪行バッグに入れ、混雑する待合室を抜け、ホームに行く。

遅い昼食を摂りながら、列車を待つ。

 

15:52、列車が現れると観光客から歓声が上がる。カメラを構える方も多かった。

列車は定刻をわずかに遅れて出発。

 

列車は「大谷川橋梁」「第二橋梁」「第一橋梁」「滝谷川橋梁」と渡り、その度に車内には歓声が響き、シャッターが切られた。

 

郷戸を過ぎると、添乗員が『次、降ります』と案内して歩き、会津柳津に到着すると、ツアー客はぞろぞろと降りて行き、駅前に回された先ほどの観光バスに乗り込んでいった。

この時期の毎度の光景であるが、一人でも多くの方が只見線のリピーターになる事を願った。

 

列車は快調に会津若松に向かって走る。

 

七折峠を下ると、夕焼けに稜線が浮かんだ磐梯山が見えた。

会津若松に到着後、磐越西線に乗換え、郡山に向かった。

 

19:29、定刻に郡山駅に到着。また自転車を組み立て、家路についた。

沼沢湖を一周した「惣山・前山トレッキング」は、良い意味で大きく裏切られた。

快晴の下で紅葉の色付きとカルデラ湖の青のコントラストは見事に映え、久しぶりに紅葉美を堪能した。

そして、“大栗山の眺め”と“沼沢俯瞰”には言葉を失い、深い感動を味わった。

 

“沼沢湖一周”は約4時間、ゆっくり歩いても4時間30分で“完歩”できる。

是非、多くの人に只見線の乗ってチャレンジしてもらいたい。

 

今回は叶わなかったが、帰りに温泉に入る時間を確保するには、早戸駅~沼沢湖間の移動にバスなどが使えるツアーとなるだろう。

9:20 早戸駅着
(バスなど自動車で移動)
9:45 福沢登山口に到着
(トレッキング 4時間)
13:45 前山登山口に到着
(バスなど自動車で移動)
14:00 早戸温泉「つるの湯」に到着し入浴
15:20 「つるの湯」出発
(徒歩移動) 
15:35 早戸駅に到着
15:44 早戸駅発・会津若松行き

この場合、“一周”とはならず山道だけを歩く「惣山・前山トレッキング」となる。

復路はトレッキングで個人差がでる場合があるので、自転車を用意しておけば各々温泉に向かう事ができる。このオプションがあれば嬉しい。

是非、一人でも多くの方に“大栗山の眺め”や“沼沢俯瞰”で開放的で美しい景観を見る機会、ツアーなどを企画して欲しい。

 

 

[「惣山・前山トレッキング」コースの課題]

今回歩いてみて、『このコースはもっと人が呼べる』と思うと同時に、『しばらく手がかけられていない』と感じた。

多くの観光客を集客するには、コースの整備が欠かせない。私案を以下に記す。

 

1.眺望の創出

沼沢湖を取り囲むコースでありながら、開けた場所は“沼沢俯瞰”しかないのは、観光客の期待を裏切るし、もったいない。

只見柳津県立自然公園の中にあり、制約はあるが、伐採や枝打ちをして眺望を創出する必要があると思う。

伐採による根枯れで崩落の危険がない木や、枝打ちをしても幹に影響のない木を調査し、許可を得て取り掛かって欲しい。

例えば「太郎布野鳥の森」などは、湖側の斜面が急ではなく、細身の木が多い。伐採や枝打ちは可能ではないだろうか。

また、「前山登山口」付近の湖面に面した場所も細身の木が多く、伐採枝打ちによる効果は多きいのはないかと思う。

何より、湖面に近いこの場所で眺望を確保することは、このコースを象徴することになるのではないだろうか。

2.ベンチと椅子の撤去と新設

コース内の5か所にベンチと椅子がある。しかし大半が朽ち、利用不可能なものが多い。

「前山」の頂上にはベンチと椅子は無かった。

これら朽ちたベンチと椅子と撤去し、必要な場所に新しいものを設置すれば、観光客にはありがたいだろう。

私が考える設置必要な箇所は、①福沢登山口からの698m地点、②「惣山」頂上、③「太郎布野鳥の森」案内板前、④「前山」頂上の4箇所。

 

3.朽ちたり、崩れた丸太階段の修繕・補修

急な斜面には丸太階段が設けられていたが、所々で丸太が腐り朽ちていたり、地盤が崩れ転がり落ちている丸太が見られた。

また、丸太の固定に使われている鉄筋が飛び出して、登山者を傷つけかねない箇所もあった。

全体の丸太階段を点検し、交換・補修をする必要があると思う。

 

4.“単管橋”の点検、修繕

2箇所ある単管組みの橋は、渡ったところぐらつきもなく、安心して渡れた。

しかし、単管の一部は錆びついていて、外観上の不安は感じる。

強度を確認し、錆部分には腐食防止剤を塗る等の補修が必要なのではないか。

 

5.コース内の石の撤去

「前山」から下るとき、足元に大きく形が不揃いな30cm大の石がコースに散らばっていた。

これらの石は落ち葉に埋もれ、判別できない場所もあった。

除去できる石は、落石とならないような場所によけて、コースの足元の危険を取り除く必要があると思う。

 

6.木道の設置

「前山」の登山道。杉林の中や、杉林と登坂道の境界付近にはぬかるみが多くあった。

長く、回避できない場所もあるので、ここには木道が必要だと思った。

今日のように“沼沢俯瞰”を見て、最高の気分でここを通りかかったならば、感動は半減してしまう。

最近雨が続いたという理由もあるかもしれないが、ぬかるみは“沢”部分になり、地形・地質的な要因が強いという印象だ。木道を設け、快適な足元を創り出した方が良いと思う。(了)

 

 

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【只見線への寄付案内】

福島県はJR只見線全線復旧後の「上下分離」経営での維持費や集客・地域振興策の実施費用として寄付を募集中(クレジット可)。

福島県ホームページ只見線復旧復興基金寄附金・只見線応援団加入申し込みの方法 

寄付金の使途は以下の通り。

・お寄せいただいた寄附金は、福島県、会津17市町村や新潟県などで 組織する「福島県JR只見線復興推進会議」で協議の上、只見線の復 旧や利活用促進のため使われます。(「只見線復旧復興基金寄附金募集」チラシより)

・ 寄附金は、只見線を活用した体験型ツアーや周遊ルートの整備、 只見線関連コンテンツの充実化等に活用させていただきます。 日本一と言われるロケーションだけに頼らない観光振興を推進し、 新たな観光収入の増加を図ります。 (「JR只見線企業版ふるさと納税(地方創生応援税制)の御案内」より)

よろしくお願い申し上げます。

次はいつ乗る? 只見線

東日本大震災が発生した2011年、「平成23年7月新潟・福島豪雨」で一部不通となっているJR只見線。 2017年6月19日に福島県とJR東日本は復旧の基本合意書を締結し全線復旧が内定しました。 ブログでは車窓からの風景や沿線の見どころを伝える「乗車記」等を掲載します。

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