只見町「太郎鮨」 2021年 初夏

奥会津地域の最深部に位置する只見町。JR只見線の只見駅から徒歩圏にある寿司店「太郎鮨」を訪れた。

 

*参考:

・福島県:只見線ポータルサイト

・東日本旅客鉄道株式会社:「只見線(会津川口~只見間)復旧工事の完了時期について」(PDF)(2020年8月26日)

・拙著:「次はいつ乗る?只見線」カテゴリ ー只見線沿線の食と酒ー / ー只見線の夏

 

  


 

 

会津若松から只見線の列車に乗車。

 

金山町付近が一時大雨に見舞われ、列車が緊急停止するというハプニングがあったが、15分ほど遅れて現在の終点である会津川口に到着。ここから先、会津川口~只見間は「平成23年7月新潟福島豪雨」で3橋梁が破断するなど甚大な被害を受け、部分運休している。

 

会津川口からは輪行してきた自転車で国道252号線を進み、来年度の全線再開通を目指し復旧工事が進められている、運休区間27.6kmの現状を見て回った。

 

橋梁全体が再架橋されるため大工事となっている「第七只見川橋梁」は竣工し、「第六只見川橋梁」は鋼材橋の組み上げが終了し順調に作業が進められていた。他、踏切や枕木交換・バラス敷などの路盤の復旧も8割以上終えているようで、来年の雪融け間もない時期には列車が走るのではないかという印象を持った。 


 

只見には3時間22分かけて到着。この後、町の入浴施設「ひとっぷろ まち湯」に行き汗を流してから「太郎鮨」に向かった。

 

 

 

「太郎鮨」は、只見駅から500mほどの場所にある。「ひとっぷろ まち湯」からは300mほどで、湯上り直後に利用できる。

 

 店内に入ると、カウンターに1人、座席に2人組の先客が居た。私は、カウンターの手前端の席に座り、さっそく生ビールを注文した。


しっかりと冷えた生ビールを吞んでいると、お通しが運ばれてきた。


一息ついたところで、メニューを見る。〆に寿司、とは決まっていたがそれまで何をいただくか迷った。

  

 

3品を決める。まずは、「揚げだし豆腐」。カリッと揚げられた衣と豆腐の柔らかさは、期待に違わぬ旨さだった。


次は盛り合わせ。「刺身盛り」を注文したつもりだったが、揚げ出し豆腐だけにしては油の揚げ音が長く、気にはなっていたが、運ばれてきたのは「天ぷら盛り合わせ」だった。どうやら私が“刺身の盛り合わせ”と言ってしまい、“盛り合わせ”という言葉が女将に届き、“天ぷら”になってしまったようだった。

『しまったぁ~』と一瞬思ったが、明日は20㎞にもおよぶ登山に臨むので、『カロリーは必要』と気を取り直し皿を受け取った。品名は正しく言わないとこうなる、と勉強になった。

「天ぷら盛り合わせ」はナス、サツマイモ、ピーマン、シメジの後ろに、烏賊と2本の海老天が控えていた。衣はサクッとし軽く、丁寧な揚げ具合で、とても旨かった。


少し遅れて、「やきとり かわ(3本)」が運ばれてきた。焦げ目が程よくつき、食感が良く旨かった。

 

酒はビールのあと、お隣の南会津町の酒「花泉」の辛口を2合注文し、呑んだ。“只見町幻の酒”「岩泉」はメニューに無かったが、“メニューに無い酒も取り揃えている”ということなので注文できるかもしれないと思った。

 

 

「太郎鮨」は寿司店ながら、定食や麺類など“食堂”メニューが豊富だった。ランチメニューは全て780円になっていて、町民を支える、貴重な外食店であることが察せられた。

 

 

一通り食べ終える頃、〆の寿司を注文。

しばらくして「並にぎり」が運ばれてきた。6貫の握りにかんぴょう巻が並び、みそ汁もついてきた。


ネタは大きく、それに合わせてシャリもボリュームがあった。マグロ2貫、サケ1貫、そして白身はハマチのようで、あとは卵1貫という組み合わせだった。

 

白身(ハマチ)からいただく。まず、驚いたのがネタの肉厚さ。見た目で分かっていたが、口に入れると一層それを感じた。肉厚ながらネタ本来の旨味や脂身が感じられ、旨かった。サケ、マグロもそれぞれ、ネタの特徴が分かる旨さだった。

そして、シャリは見た目通り食べ応えがあった。食事として申し分のない量だったので、女性客などは、注文の際に『シャリを少なめに』と伝えるのがよいだろうと思った。


にぎりを食べ終え、大満足の夕食になった。“奥会津最深部の寿司店”という海からの距離を忘れてしまう旨さだった。 

 

新型コロナウイルスの影響がなければ、カウンターにいる大将と色々な話をしながら食べるところだった。ただ、今回、一点だけ聞きたい事があり、大将に尋ねた。それは、ネタの仕入れ先だ。

聞けば、今は郡山市の市場から会津若松市の市場を経由して仕入れしている、ということだった。

 

そこで、『現在工事中の、国道289号線が(新潟県三条市)まで開通すれば、変わりますか?』と聞くと、『変わると思う』ということだった。現在は、郡山-会津若松ー只見と時間が掛かっているが、国道289号線を利用すれば新潟県側から仕入れられ、当日仕入れも可能になるのではないだろうか。まだ開通は先だが、それを見越して三条方面から“売り込み”が来ているとも言われていた。 *記事出処:福島民報 2021年4月27日付け

   

「太郎鮨」がある只見町は、福島県の最西部に位置し、太平洋まで、直線距離で約150㎞離れている。日本海の新潟港までは70㎞と半分の距離だが、周囲を1,000m~1,500m級ながら険峻な山々に囲まれ、鉄道や道路は大きく迂回しているため、移動に思いのほか時間がかかってしまっている。そして何より、只見町は日本有数の豪雪地帯で、降雪期は新潟県魚沼市と結ばれている国道252号線が通行止めになってしまうほど、“海から遠い”町になっている。

 

国道289号線が全通すれば、海との所要時間が短くなり、降雪期間の通行止めも無くなるという事で海産物を中心に、通年安定した物流が確保でき、仕入れられる種類も増えるだろう。今回、大将から話を聞くことができなかったが、足が早い青物や光り物などが当日中に仕入れられ、メニューに加わる可能性もある。「太郎鮨」のような生鮮食材を必要する店舗にとっては、“革命”に近い変化になるかもしれない。*参考:只見町:(PDF)広報ただみ(2018 12月号)/三条市三条観光協会「国道289号八十里越」/国土交通省長岡国道事務所「八十里越道路工事レポート」PDF(1号)(7 号)/㈱大林組「越後への八十里越、峠に3本の橋脚がそびえる

 

 

国道289号線の開通は、只見町民の食卓を中心に恩恵をもたらしてくれる事は間違いなさそうだ。また、只見線を利用するなどして奥会津を訪れる観光客にとっても、豊かな山の幸とともに、新鮮な日本海の海の幸も楽しめる可能性が高まり、集客増に期待がもてる。

   

国道289号線八十里越区間は、“2026年にも開通”ということで5年もある。只見線の復旧(全線再開通)は来年度。只見線の復興に関わる関係者は、“只見線利活用”を継続しながら、“八十里越開通”への機運を活かし、乗客や沿線への観光客の増加に繋がる施策を進めて欲しいと思う。

  

 

(了)

 

 

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*参考:

・NHK:新日本風土記「動画で見るニッポンみちしる~JR只見線

・産経新聞:「【美しきにっぽん】幾山河 川霧を越えてゆく JR只見線」(2019年7月3日)

・福島県 生活環境部 只見線再開準備室:「只見線の復旧・復興に関する取組みについて

・東日本旅客鉄道株式会社:「只見線について」(PDF) (2013年5月22日)/「只見線(会津川口~只見間)の鉄道復旧に関する基本合意書及び覚書」の締結について(PDF)(2017年6月19日)

  

【只見線への寄付案内】

福島県はJR只見線全線復旧後の「上下分離」経営での維持費や集客・地域振興策の実施費用として寄付を募集中(クレジット可)。

①福島県ホームページ:只見線復旧復興基金寄附金・只見線応援団加入申し込みの方法 *現在は只見線ポータルサイト「只見線応援団」URL:https://tadami-line.jp/support/


②福島県:企業版ふるさと納税

URL:https://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/16005g/kigyou-furusato-zei.html

[寄付金の使途]

(引用)寄附金は、只見線を活用した体験型ツアーや周遊ルートの整備、只見線関連コンテンツの充実化等に活用させていただきます。 沿線地域における日本一の秘境路線と言われる観光資源を活用し、更なる利用者の拡大と認知度向上を図ります。


以上、よろしくお願い申し上げます。

次はいつ乗る? 只見線

東日本大震災が発生した2011年の「平成23年7月新潟福島豪雨」被害で一部不通となっていたJR只見線は、会津川口~只見間を上下分離(官有民営)し、2022年10月1日(土)、約11年2か月振りに復旧(全線運転再開)しました。 このブログでは、車窓から見える風景写真を中心に掲載し、“観光鉄道「山の只見線」”を目指す只見線の乗車記や「会津百名山」等の山行記、利活用事業に対する私見等を記します。

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