全線乗車(小出⇒ ) ...大雪運行中止

所用で上京した帰路をJR只見線経由にし、2008年4月以来、8年8か月ぶりに全線に乗車しようとした。

 

予定は、上野駅を出発し高崎、水上両駅で乗換、小出から只見線に入り会津若松経由で郡山に戻る、というもの。只見駅内では代行バスに乗換え運休区間を経て、会津川口駅から再び只見線の列車に乗車。全線普通列車(一部、代行バス)による旅程だ。

 

*参考:

・東日本旅客鉄道株式会社:「只見線について」(PDF)  (2013年5月22日) 

・NHK:新日本風土記「動画で見るニッポンみちしる~JR只見線」 

・拙著:「次はいつ乗る?只見線」カテゴリ ー只見線の冬ー 

 

 


 

 

 

6:26、上野駅発の高崎線の列車に乗り、只見線の始発駅・小出駅(上越線)を目指した。土曜日、早朝の上野駅。ホームに人影はまばらだった。

土日祝日には、水上~小出間には列車が増発されいるため、8時35分上野駅発の列車でも小出以降の旅程は変わらない。私は、小出駅周辺を散策しようと思い、早い時間の列車に乗車した。

  

 

天候は沼田後閑までは快晴だったが、上牧あたりで積雪が見られ、終点の水上に到着すると一面の雪景色だった。 

谷川岳の向こう、新潟県中越地方は大雪かもしれないと考えたが、雪の中を走る列車で只見線に乗車できると思うと、それはそれで良いと思った。この大雪が只見線の「運休」につながるとは、露にも思わなかった...。

   

上越線下りの新清水トンネル(13,500m)を抜けると積雪は水上駅周辺の比ではなく、沿線は雪に覆われていた。 

越後湯沢を過ぎ、雪の中を北上、浦佐を出てまもなく小出というところで、電池が切れていたiPhoneを充電したいと思い予定変更。小出を通過し、長岡に向かう事にした。

 

長岡駅構内で無事に充電器を購入し、越後湯沢行きの列車に乗り、引き返す形で再び小出に向かった。

  

 

13:08、小出に到着。乗換え時間は3分。急ぎ足で4番ホームに移動。

長岡ではみぞれ交じりの雪だったが、牡丹雪が降り続いていた。屋根の無いホームでも、融雪用の消雪パイプのお陰で雪に埋もれることなく歩く事ができた。

  

ホームで写真を数枚撮って、列車に飛び乗った。


すると、まもなく車内放送が流れた。

本日、大雪の影響でこの列車は行き先を大白川に変更して運行いたします。只見駅には向かいませんのでご注意ください

 

愕然とし、頭が白くなっている中、扉が閉まる音がし列車はディーゼル音を響かせゆっくりと走り出した。

ホームには私と同じく列車に乗車したと思われた数名の客がこの列車を見送っていた。おそらく行き先変更で乗車を断念したのだろうと思った。

   

  

車窓の外は一面の雪。これならば運休も仕方ないのかと思いながら、この先どうするか考えた。


   

考えた末、最初の駅、藪神で降りる事にした。私の他に一人の高校生が下車。除雪後に積もった雪に足を取られながら、家族の運転する車の元に向かっていった。

   

ちなみに、この列車の終点・大白川から折り返した場合、以下の旅程で今日中に郡山に帰る事ができる。

大白川 (発)16:12
 (只見線)
小出 (着)16:55 (発)17:06
 (上越線)
浦佐 (着)17:15 (発)17:59
 (上越新幹線)
大宮 (着)19:14 (発)19:42
 (東北新幹線)
郡山 (着)20:37  

    

駅舎の屋根には、50cmを超える積雪が見られた。関東は晴れ、郡山市でも今朝雪が舞ったというが、ここは別格。只見線の新潟側である小出~六十里越トンネル間も豪雪地帯であることを思い知らされた。


   

私は雪に足を取られながら、国道252号線に出ると、バス停らしい小屋を見つけ、中に入った。

南越後観光バスの時刻表があり、見ると13時16分にバスがあったようだ。現在は13時22分。この雪の中でも、定刻近くに出発してしまったようだ。うまくはゆかない。次のバスは14時36分。暖房は無いが、小屋であることをよしとし、待つ事にした。

  

バス停の窓から外を眺め続けた。

   

しばらくすると、チェーンが道路をたたきつける大きな音とディーゼル音が聞こえた。反対側を窓から外を見ると、除雪用のホイールローダが二台連なってやってきた。

その後、ロータリ式の除雪機も現れ、国道の除雪体制の充実に感心した。同時に、この除雪費用が行政費の大きな割合を占めているだろうと考えた。

 

引き続き、表面のべニア板が一部はがれた椅子に座り、両足をこまめに動かし寒さに耐えながら路線バスを待ち続けた。

  

 

そして、定時から遅れること15分。バスが到着。一時は『この大雪で運休か?』と不安になったが、ホッとひと安心した。

整理券を受け取り乗車。乗客は一人だった。マイカー主体の環境では、除雪も行き届いていることもあり、大雪でもバスは利用されないということか。「公共交通」の役割を考えさせられた。

  

 

「島バス停」を出発すると、路線バスはどこにも停車せず、わずか10分で小出駅に到着。運賃は190円だった。

8年8か月前に訪れた時の印象は薄れているものの、違う建物である事はすぐに分かった。落ち着いた外観ながら、駅名看板や入り口、待合所にお洒落な印象を受けた。

 

この新小出駅は、奇しくも、「平成23年7月新潟福島豪雨」で只見線が部分運休となった翌月、2011年8月26日に供用開始となった。

この日は「六十里越トンネル」などの難工事を経て、大白川(新潟県)~只見(福島県)が開業し、只見線が全線開業して40年を迎える日(8月29日)の三日前だった。

 

この新しい駅舎から、初めて会津若松駅行きの列車が出発する日が、一日でも早くやってきて、遅い“只見線全通40周年”を祝える事を強く願った。

   

駅構内に入り、3番線に移動。

15:13、越後湯沢行きの電車に乗車し、小出を後にした。まさかこのような形で折り返す事になるとは思わず、改めてこの大雪を恨めしく思った。

 

上越線沿線は深い雪に包まれていた。


越後湯沢に到着し、上越新幹線に乗換えた。

 

16:02、7分の乗換時間であったが、問題なく東京行きのMaxとき号に乗車した。

  

新幹線が大清水トンネル(22,221m)を駆け抜けると、景色の変化に驚いた。


『雪がない!』


そして、上毛高原を発車後に車窓から景色を見渡しても、雪が見当たらなかった。この変化に驚きというか、感動さえ覚えた。

谷川連峰を貫く三本の“清水”トンネル、特に長大な上越新幹線の大清水トンネルはこの時期、このような劇的な景色の差を見せてくれるという発見だった。

 

“国境の長いトンネルを抜けると雪国であった” 川端康成著「雪国」

 

彼は下り列車で見る風景を綴ったが、この一文の背景を実感し、その重みを感じた。今回の旅の大きな収穫となった。

 

  

私はその後、列車を乗り継ぎ、21時前に無事に郡山に到着。“全線乗車”は、また改めてチャレンジしたいと思った。

 

 

(了)

 

 

・  ・  ・ 

 

*追記 2016年12月18日

只見線が大雪の影響で運休したことを伝える地元紙。只見町で65cmの積雪を記録したという。

*下掲載記事:福島民報 2016年12月18日(日)付け紙面

次はいつ乗る? 只見線

東日本大震災が発生した2011年の「平成23年7月新潟福島豪雨」被害で一部不通となっていたJR只見線は、会津川口~只見間を上下分離(官有民営)とし、2022年10月1日(土)に、約11年2か月振りに復旧(全線運転再開)しました。 このブログでは、“観光鉄道「山の只見線」”を目指す、只見線の車窓からの風景や沿線の見どころを中心に、乗車記や「会津百名山」山行記、利活事業に対する私見等を掲載します。

0コメント

  • 1000 / 1000