沿線冬景色 2025年 冬

大雪の影響で大幅な遅れや運休が発生した、今冬のJR只見線。沿線の積雪状況を見たいと、魚沼市の越後須原駅と入広瀬駅周辺を散策した後、会津若松行きの上り列車に乗って車窓から風景を眺めた。

 

今冬、会津地方は記録的な大雪となり、たて続けにその影響が地元紙の一面で報じられた。*下記事出処:福島民報 2025年1月10日、11日付け一面+社会面

只見線も大雪で多大な影響を受け、連日列車の遅れや運休が発生した。*下記事出処:福島民報 2025年1月12日、同14日、同18日、同21日付け

列車の運休は、日本有数の豪雪地である「六十里越」(只見線が貫くの福島県と新潟県の県境、只見駅~大白川駅間)区間が顕著で、只見~大白川、会津川口~大白川、会津坂下~大白川と、運休区間には「六十里越」が必ず含まれていた。 *下記事出処:福島民報 2025年1月31日付け一面+社会面、2025年2月1日付け

 

今回の旅程は以下の通り。

・前日に、小出駅から只見線を利用し、越後須原駅で下車。近くの民宿に宿泊。

・早朝、只見線を走る列車を撮影。

・越後須原駅周辺を散策後、路線バスで入広瀬駅近くに移動。

・入広瀬駅周辺を散策後、会津若松発・小出行きの列車を撮影。

・「寿和温泉」に立ち寄り、温泉に浸かる。

・入広瀬駅から会津若松行きの列車に乗って、車窓から沿線の風景を眺める。

・会津若松駅で磐越西線の列車に乗り換えて、帰途に就く。

 

今日の沿線の天気予報は曇り時々晴れで、降雪確率は20%程度。雪による列車の遅れや運休が発生することはほとんどないと見込み、只見線の旅に臨んだ。

*参考:

 ・福島県・東日本旅客鉄道株式会社 仙台支社:「只見線全線運転再開について」(PDF)(2022年5月18日)

・福島県:只見線ポータルサイト

・(一社) 魚沼市観光協会:秘境を行く! JR只見線

・魚沼市 だんだんど~も只見線沿線元気会議:Facebook (URL: https://www.facebook.com/dandandomotadamisen )

・BSN新潟放送公式チャンネル:【そらなび ~にいがたドローン紀行~】「第73回「只見線(魚沼市)」2020年2月29日放送」

・NHK:新日本風土記「動画で見るニッポンみちしる~JR只見線

・(公社)新潟県観光協会:にいがた観光ナビ「JR只見線

・産経新聞:「【美しきにっぽん】幾山河 川霧を越えてゆく JR只見線」(2019年7月3日) 

・拙著:「次はいつ乗る?只見線」カテゴリ -只見線の冬-

 

 


 

 

昨日、横浜市内での用事を済ませ、只見線の列車に乗るために魚沼市に移動した。

越後湯沢で乗り換えたが、買い物をしようと改札を抜けると、コンコースは大混雑だった。スキーやスノーボードを抱えた方が大半で、その半数以上は外国人でインバウンドの増加を実感した。

 

19:34、上越線長岡行きが小出に停車。雪は降っておらず、ホームにも雪の塊は見当たらなかった。

跨線橋を渡り、只見線のホームに向かった。5番線ホームには上り最終列車(大白川行き)が停車していた。この列車に乗るのは、初めてだった。

車両はキハE120形+キハ110旧国鉄カラー塗装の2両編成だった。

両車両とも客の姿は無かった。ただ、発車時刻が近付くと私の他2人が乗り込んだ。

19:59、只見線の下り最終列車が小出を出発。

 

次駅・藪神に停車。屋根の雪は薄かった。

 

次駅・越後広瀬に停車。ホームには2mを越える雪の壁が連なっていた。

 

次駅・魚沼田中に停車。ここは屋根もホームも、雪が少なかった。

 

 

20:21、越後須原に停車。下車した。

背丈を優に超える雪の壁の間を通り、駅舎に向かった。

 

駅から150mほど歩き、国道252号線沿いにある民宿「加賀屋」に到着。入広瀬駅から一番近い宿だ。今回は到着が遅かったので、朝食のみで予約していた。

母娘の二人で切り盛りしていると聞いていたが、引き戸を開け声を掛けると、女将と若女将が出迎えてくれた。

 

靴を脱いで上がると、さっそく2階の居室に案内された。右奥の3号室だった。

部屋は6畳の、民宿らしい内装や調度品だった。炬燵があったのは嬉しかった。

荷物を解いて、一息つこうとすると、若女将が『夕食は召し上がってこられたと思うのですが、よかったらどうぞ』と餅を差し入れて下さった。

あんこ餅とけんちん汁に入った餅。餅はコシがあり旨かったが、何よりあんこが程よい甘さとコクで、感動的な旨さだった。

 

・  ・  ・ 

 

今朝、小出発・会津若松行きの始発列車を撮影しようと、5時30分頃に小出寄りの第2小須原踏切に向かった。

 

5:55、踏切脇の小高い雪塊の上に立って待っていると、レールを駆る音が小さく聞こえ始め、前方に見え始めたヘッドライトの煌々とした灯りが徐々に大きくなり、こちらに近づいてきた。

列車はキハE120形の2両編成で、後部が旧国鉄カラー塗装だった。客は両車両合わせて10名ほどと見受けられた。

 

宿に戻り少し休んでから、次は大白川発小出行きの列車を撮影。若女将から『只見線の列車が見られますので、お好きに出入りしてください』と言われていた、向かいの7号室に向かった。

6:43、窓を開けて大白川方面を眺めていると、踏切の警報機が鳴り始め、まもなく列車が姿を現し越後須原駅停車した。車両は、昨夜私が乗った最終列車と同じキハ110旧国鉄カラー塗装+キハE120の2両編成だった。

列車が越後須原駅を出ると、まもなく目の前を通過していった。

  

撮影後、1階の食堂(居間)に用意された朝食をいただいた。食べきれないほどのおかずと、出汁の効いたコクのある味噌汁、そして魚沼のコシヒカリ。ご飯は旨く、3杯もおかわりをした。

女将と若女将の見送りを受けて8時30分過ぎに民宿「加賀屋」を出た。アットホームな、良い宿だった。

 

バスの発車時刻まで、周辺を散策した。

まずは、須原スキー場に向かった。

駐車場に到着し、停車している車のナンバーを見ると、長岡のものが多かった。地元の利用者が多いスキー場なのだろうと思った。

 

続いて、越後須原駅に向かった。

駅舎を抜けホームに移動し、大白川方面を眺めた。

「袴岳」(1,537.3m)を主峰とする、真っ白に冠雪した「守門岳」山塊が見えた。“東洋一”と言われている雪庇は、今年どれほどのものになっているだろうと思った。*参考:魚沼市観光協会「守門岳【日本二百名山】(すもんだけ)

 

ホームからは、“西村山”南東面に広がる須原スキー場の上部も見えた。まだ開場前のようで、スキーヤーやボーダーの姿は見られなかった。*参考:拙著「魚沼市「鳥屋ガ峰」ー 四等三角点「西村山」トレッキング 2023年 初冬」(2023年12月9日)

駅を後にして、国道252号線沿いのバス停に向かった。只見線の上り列車(会津若松行き)は、越後須原駅発5時58分、13時34分、16時34分ということで、公共交通は路線バス一択だった。

 

国道に出て『この辺にあるはずだが...』と思い見てみるが見当たらなかったが、路側帯の雪が積み上がった場所を凝視すると、「須原駅角」と記されたバス停案内板があった。

 

定刻よりわずかに遅れ、南越後観光バスの路線バスがやってきた。

8:59、穴沢行きのバスが発車。車内には客が2人乗っていた。


路線バスは国道252号線を快調に進んだ。上条駅前を過ぎて池ノ峠を上り始めると道路脇の雪壁が高くなった。

  

9:11、途中で1人を降ろし、バスは入広瀬中央停留所に停車。下車して、バスを見送った。

国道252号線の両脇には、2mを越える雪壁が続いていた。

 

国道252号線から右に曲がり、県道500号(黒又山大栃山)線に入ってみた。

住宅の敷地で除雪機を操作している方や...、

屋根に、ぶ厚い雪塊を載せた家が見られた。

  

反対側、斜面の下を見ると、破間川沿いに敷かれた只見線のレールが見られた。

  

県道500号線を引き返し、国道252号線を横切り入広瀬駅に向かった。途中、第二中道踏切で只見線のレールを眺めた。

道路の一部には、3mほどの高さの除雪面も見られた。

また、除雪面の両側が綺麗に揃った直線道路があり、見ていて気持ち良かった。

そして、除雪面に新雪が載った場所は、歩いている私の方に雪塊が落ちてくるような感覚になった。

 

除雪されている道から玄関が離れている住宅では、積雪を防ぐため水を流し続けていた。

 

10分ほどで、入広瀬駅に到着。1988(昭和63)年12月に開業した「雪国観光会館」との合築で、大きな建物になっている。

 

駅で支度を済ませ、小出行きの列車を撮影するために移動。

だが、破間川沿いに下ると、雪の壁に阻まれ行き止まりになった。

撮影を予定していた場所までの道は、除雪されていないことを想定していたので、用意してきたワカンを取り出し、両足に取り付けた。

雪壁の上に載ると、先に続く道の形状ははっきりと分かった。

しかし、表面は新雪でかなり柔らかく、踏み入れたスノーシューは30㎝以上沈みこんだ。

数歩進んでみるが、一歩前に出すだけで時間と体力を浪費した。『時間内に500m先の予定撮影ポイントまで到達することは無理』と判断し、進行を断念し引き返した。*下地図出処:国土交通省 国土地理院「地理院地図」URL: https://maps.gsi.go.jp/ *筆者にて文字や記号入れの加工

 

駅方面に戻り、別に撮影場所の候補にしていたポイントに移動。大栃山踏切を渡り、入広瀬駅を右に見ながら線路沿いを小出方面に進んだ。

 

除雪された道を300mほど進むと、民家が途切れる場所で行き止まりになった。

道はこの先にも続いているが、民家が無いため除雪の終点となっているようだった。

 

突当りで、ワカンを履いて雪壁を上ると、小動物の足跡だけが見える雪面に出た。只見線のレールの両脇には、1m弱の除雪面が続いていた。

 

10:09、踏切の警報機の音が聞こえ、まもなく会津若松駅から4時間かけてやってきた列車が入広瀬駅に停車した。キハ110の単行(1両編成)のようだった。

そして、入広瀬駅を出た列車は目の前を通過した。

振り返って、「鷹待山」(339m)を捲くように左に大きく曲がって行く列車を見送った。

  

撮影場所を後にして、日帰り入浴施設「寿和温泉」に移動。

途中、除雪用の大きな道具を担いで移動する男衆が居た。

男衆は雪に埋もれた建物で立ち止まり、梯子を掛け2mを優に超える屋根に積もる雪を降ろし始めた。この建物は空き家のようで、地域の方々による除雪のようだった。

 

家々の間を通ったが、平屋根に載ったぶ厚い雪塊は、意外と多く見られた。

また、屋根の雪下ろしをする方の姿も少なくなかった。好天の今日は除雪日和なのだろうが、ここまで高く積みあがった雪は重く、作業は大変だろうと思った。

 

だが、除雪は過酷な作業だが、整然たる雪の壁を見ると、雪の観光面での訴求力は高いとも感じざるを得なかった。

  

 

途中、スーパー「Aコープいりひろせ」で買い物をして、「寿和温泉」に到着。一昨年の年末以来、2度目の訪問だ。

券売機で入浴券(700円)を購入し、受付スタッフに手渡して浴室へ。先客は少なく、露天風呂は一人独占することができ、ゆったりと雪見風呂をした。

「寿和温泉」
・源泉名:寿和温泉第2号源泉
・泉質:ナトリウム-硫酸塩・塩化物温泉(低張性中性温泉)
・源泉温度:41.8℃
・Ph: 6.9
・湧出量:144L/分 *動力揚湯

 

湯上り後は、会津若松行き列車の時刻まで休憩所で時間をつぶした。休憩所には冷水だけではなく、暖かい麦茶や冷たいお茶が自由に飲めるようになっていて、電子レンジも用意されていた。この施設では飲料以外の販売はしていないが、近所に飲食店が無い中でありがたいサービスだと思った。

また、休憩所は畳敷で、南西と北西面が大きなガラス窓で明るく心地よかった。

只見線は列車の本数が少ないが、駅近くにこのような温泉施設があると空き時間を利用でき、その不都合は感じないだろうと思った。

   

「寿和温泉」を後にして、入広瀬駅に移動。歩いていると、雪壁に“穴”があるように見え、近づいて覗こうとすると...、

なんと、その“穴”に黒い物体が見え、一瞬驚いた。だが、よく見るとそれは自分の姿で、“穴”と見えたものは実はカーブミラーが埋もれたものであることが分かった。

  

入広瀬駅に到着。駅舎を抜けホームに向かった。構内踏切を渡ると、引き込み線には今冬大忙しの除雪車が停車していた。

ホームで待っていると、列車が入線してきた。今朝民宿の2階から撮影した、キハE120とキハ110タラコ色の2両編成だった。

乗り込むと、空席があり、『よかったぁ...』と安堵した。休日のこの小出発・会津若松行き2番列車は混むため、座れない事も覚悟していたが、客数は全BOX席に1人以上で両車両で30名ほどだった。

13:35、会津若松行きの列車が入広瀬を出発。私は先頭のキハE120の運転台に近いロングシートに座り、前面展望を中心に写真を撮る事にした。


列車は山間を進んだが、思いのほか積雪量は多くなかった。

 

「第四平石川橋梁」を渡った際は、下流側を眺めた。国道252号線の柿の木スノーシェッド(以下、SS)の真っ赤な鋼材が目立って見えた。

 

13:56、新潟県側最後の駅・大白川に到着。除雪作業でできた破間川側の雪壁は、3mをゆうに超えていた。

ここで、『列車が新潟県側にいるうちに...』と地酒を吞む事にした。今回は、越後須原駅近くの玉川酒造の「玉風味」ワンカップを選んだ。

何度も呑んでいる只見線・魚沼側沿線の定番だが、安定の旨さだった。

  

大白川を出発すると「第五平石川橋梁」を渡りながら、これから県境まで16回渡河する末沢川を眺めた。

 

只見線は国道252号線と並び、時に交差し進んだ。両側に並び立つスノーポールが、未除雪の国道252号線の位置を示していた。

国道252号線は、国内有数の豪雪地帯で交通量が少ない六十里越区間(魚沼市大白川地区末沢~只見町石伏地区宮渕)が冬季通行止めとなり、除雪されない。通行止め情報は新潟県と福島県が同一期日を、それぞれの管轄区間ついて発表し、通行止め解除も同様に行っている。*下図出処:国道252号線(六十里越)冬期通行止めについて (左)新潟県魚沼地域振興局、(右)福島県山口土木事務所


末沢川は渓谷となっていて斜面の雪塊は厚かったが、ずり落ちないように何とか安定を保っているようだった。

 

前方に見えた国道252号線の仲宿橋は、欄干を越える雪が載っていた。

また、「第六末沢川橋梁」を渡った際には、同じく国道252号線の茂尻橋にも欄干を越える積雪があり、大半がそれを乗り越えていた。国内屈指の豪雪地帯“六十里越え”を実感できる光景だった。

さらに、大雪崩沢2号SSの屋根には、コンクリート梁の厚さを越える雪塊が載っていた。国内屈指の豪雪地帯“六十里越え”を実感できる光景が続いた。

列車は県境を跨ぐ「六十里越トンネル」に向かう坂を、ディーゼルエンジンの出力を上げて力強く進んだ。


「第十四末沢川橋梁」を渡った。上流側には電源開発㈱黒又川第二発電所の取水ダムが見えた。

続いて、毛猛平踏切のそばに建つ、雪にすっぽりと埋まった小屋の脇を過ぎると...、

「第十五末沢川橋梁」(18.46m)、「第四毛猛トンネル」(72m)、「第十六末沢川橋梁」(21.56m)と進み、列車は“会越の界”を貫く「六十里越トンネル」(6,359m)に入った。

  

 

トンネルの中間付近で登坂を終えると、ディーゼルエンジンの出力を抑えたため車内は幾分静かになり、8分ほどで抜けて福島県只見町に入り只見沢を渡った。雪の量は、新潟県側と同じくらい多かった。

国道252号線を潜り抜け、SS内に残る田子倉駅跡を通過。

SSを抜け「余韻沢橋梁」を渡った。電源開発㈱田子倉発電所のダム湖は水位を大きく下げ、“只見沢入江”は中心部近くまで後退していた。

 

列車は坂を軽やかに下り、「第二赤沢トンネル」を抜けた。右車窓から振り返ると電源開発㈱只見発電所・ダムの洪水吐ゲートと、その後方に谷間を塞ぐ田子倉ダムの躯体が見えた。

そして、「上町トンネル」を抜けると、只見地区の市街地が現れ、左車窓からは只見スキー場が見えた。

 

列車は減速し、ホームに滑り込んでいった。ホームには、只見から先会津若松まで乗務する運転手と、車内で“おもてなし企画”を行う緑色の法被を着たスタッフの姿があった。*参考:只見線ポータルサイト「定期列車内で「おもてなし企画」を実施しています!」(2024年4月17日)

14:25、只見に停車。

10分間の停車時間を利用して下車する方が、雪の壁が続く連絡道を歩き駅舎に向かっていった。

 

私も駅周辺の様子を見るため、駅舎に向かった。只見線全線運転再開のカウントボードは“855”日を示していた。

雪に覆われた「要害山」(705m、会津百名山91座、只見四名山)を背後に、駅頭には舗装面が見えていた。

ただ、駅前の旅館「只見荘」の裏手を見ると、建物は雪に覆われ、今年の雪の多さを改めて実感した。

駅前の観光施設「只見線広場」の裏手では、「ふるさとの雪まつり」の準備が進められているようだった。

例年、入場口ゲートになっている「只見線広場」の隣りには、製作途中の雪像も見えた。

「ふるさとの雪まつり」は今年52回を迎え、今週の金曜日に前夜祭を迎え、8日(土)、9日(日)の両日に本祭が行われる。恒例の大雪像は、只見町がロケ地になった、日本・台湾合作の映画「青春18×2 君へと続く道」に縁のある、台湾南部最古の仏教寺院「大崗山超峰寺」(高雄市)をイメージして作成中だという。


*追記:2025年2月8日(土)

「第52回 只見ふるさとの雪まつり」は前夜祭が開催され、『降雪の状況でプログラムを変更する場合もある』というが、本祭も行われるという。*下記事出処:福島民報 2025年2月8日(土)付け


 

14:35、列車は只見を出発。まもなく、2022年春の選抜高校野球選手権に出場した只見高校が見えてきた。野球部員達は、ぶ厚い雪に覆われたこのグラウンドでどんな練習をしているのだろうかと思った。*参考:毎日新聞「センバツ高校野球 只見、後世に残る1点 会津の学校で春夏初得点1/福島」(2022年3月24日) 

叶津集落の住宅が見えてくると、大屋根越しに“会津のマッターホルン”こと「蒲生岳」(828m、同83座、只見四名山)が見えた。

そして、只見線最長の「叶津川橋梁」(372m)の渡った。*以下、各橋梁のリンク先は土木学会附属土木図書館デジタルアーカイブス歴史的鋼橋検索

渡河途中、上流側を眺めた。『この程度の空模様だったら、見えるのは...』と思い、目を凝らすと、

真っ白に冠雪した「浅草岳」(1,585.4m、同29座、只見四名山)の山頂が見えた。

 

渡河後、八木沢集落の背後を駆けると、木々の間から只見川越しに「会津朝日岳」(1,624.3m、同27座、只見四名山)も見えた。薄曇り空の下で「只見四名山」が全て見えた事は、幸運だった。

 

14:44、会津蒲生に停車。1人の“撮る人”が、カメラを列車に向けていた。

 

会津蒲生を出ると、蒲生原の雪原越しに「浅草岳」が見えた。

ここで、“おもてなし企画”のスタッフから『まもなく、いつも2階から手を振る方の家の前を通過します。もし、その方がいらしたら、是非手を振ってください』との言葉があった。

そこで、右車窓に目を凝らすと、手を振っているご婦人の姿を確認した。私も手を振って応えた。*参考:只見町「只見町只見線にみんなで手をふろう条例」 

 

列車は「第八只見川橋梁」を渡った。*只見川は、電源開発㈱滝発電所・ダムのダム湖

「第八只見川橋梁」に使用されている下路式トラス橋は、電源開発㈱佐久間発電所・ダムの建設による旧国鉄飯田線・中部天竜~大嵐間の付替えで、撤去された天竜川橋梁のものが転用されたものだ(1957(昭和32)年7月供用開始)。

 

14:50、会津塩沢に停車。レールの両側は2mを越えていた。

会津塩沢を出ると、只見川の支流・塩沢川の河口には氷が張っていた。

 

只見川沿いに出た列車は、まもなく町境を貫く「滝トンネル」(1,615.2m)に突入した。

 

14:59、金山町に入った列車は、会津大塩に停車。降雪量は只見町側より少ないようで、レール両側の雪壁は1mほどだった。

会津大塩を出ると、2022年10月1日の全線運転再開に付け替えられた「第七只見川橋梁」を渡った。

「第八」は“不渡橋”であるため、初めて只見川を渡った。*只見川は東北電力㈱本名発電所・ダムのダム湖

 

15:02、会津横田に停車。横田鉱山(1972(昭和47)年3月閉山)が駅に隣接していたために設けられたと思われるレールを覆う建屋屋根に、ぶ厚い雪塊が載っていた。

 

会津横田を出ると、「伊南川発電所橋梁」で東北電力㈱伊南川発電所の3本の水圧鉄管を跨いだ。

 

15:08、会津越川に停車。レールの両側の除雪面が、さらに低くなっていた。

 

橋立集落では、只見線(135.2km)中間点を示す看板(ここが、只見線の真ん中だ!)の前を通過。

 

本名トンネルを抜けた直後には、「第六只見川橋梁」を渡った。上流直下では、本名ダムが2門のゲートを開け、豪快に放流していた。

 

15:19、住宅地の中にある本名に停車。

 

本名を出て、「第五只見川橋梁」を渡った。

渡河の途中、右車窓から只見川を眺めた。*只見川は東北電力㈱上田発電所・ダムのダム湖

 

 

列車が減速し、次駅が見えて驚愕。交換を行う小出行きの下り列車が停車していることは想定していたが、ホームの混雑が尋常ではなかった。

観光客に違いなかったが、紅葉期以外に、これほどの客数をホームで見るのは初めてだった。

 

15:25、会津川口に停車。ホームいた、中華圏からのインバウンドと思われる大半のツアー客が乗り込んできて、車内は一気に混雑し、騒がしくなった。

この会津川口駅前から国道400号線が延びているが、その先には昭和村があり、今月23日に「第40回からむし織の里 雪まつり」が開催されることになっている。


*追記:*追記:2025年2月10日(月)

「第40回からむし織の里 雪まつり」は、大雪のため中止となった。*下図出処・昭和村観光協会 URL:https://showakanko.or.jp/2025/02/10/16639/


 

15:35、混雑した列車が、会津川口を出発。まもなく、只見川に突き出た大志集落と、それを囲む風景が只見川に映り込み、なかなかの光景を見せていた。*只見川は本名ダム湖

 

新しい車両に惹かれるのか、ツアー客は先頭のキハE120に集中し、後部のキハ110車内には空席が複数見られた。

 

大志集落の背後を駆け抜けると、東北電力㈱奥会津水力館「みお里」が、只見川に突き出た台地の上に見えた。その崖下には只見川の浚渫工事を行う大型クレーンが置かれ、長いブームが伸びていた。

 

15:38、会津中川に停車。客が2人待っていた。

停車した車内からそとを見ると、美しい雪面が見られた。

無垢の雪面に注ぐ陽光と現れる影は、人工的には表現できないであろうと思われるような、見事なものだった。

 

金山町の雪祭り会場は、この会津中川駅が最寄りとなっている。今月16日(日)に「第47回会津かねやま雪まつり」が開催され、前日の夜には「なかがわ雪月列火」が 行われるという。*参考:拙著「金山町「なかがわ雪月列火」 2019年 冬」(2019年2月16日)


*追記:*追記:2025年2月11日(火)

「第47回会津かねやま雪まつり」は、三島町の「第52回雪と火のまつり」とともに中止となった。地元紙によると、理由は『生活圏の除雪を優先し、会場の除雪にまで至らないこと』と報じられていた。*出処:福島民報 2025年2月11日(火) 社会面


  

会津中川を出てまもなく、列車が上田ダムに近づいた。幅広くなった只見川の水面に、対岸のモザイク模様の山肌が映り込んでいた。

只見町・金山町に見られる山肌の雪食地形や雪崩路(アパランチシュート)は、只見線の車窓から見える山々の景色を特異なものにしている。*参考:国土交通省北陸地方整備局 阿賀野川河川事務所「雪崩によって作られる地形~奥只見」/ 国土地理院「氷河・周氷河作用による地形」アバランチシュート 

 

第四只見川橋梁」を渡る際、シャッターを切ったが、下路式トラスの鋼材が写り込んでしまった。

 

15:44、会津水沼に停車。

  

15:52、三島町に入った列車は、早戸に停車。ここで、近くの「早戸温泉 つるの湯」を利用するという客が1人降りて、駅前に待機していた送迎車に向かっていった。

 

早戸を出て「早戸トンネル」と「滝原トンネル」を抜けると、「第三只見川橋梁」を渡った。下流側には雪に覆われた斜面の中腹に、国道252号線の高清水SSが見えた。

 

渡河後、列車はしばらく東北電力㈱宮下発電所の調整池・宮下ダムのダム湖の右岸を駆けた。

 

16:02、会津宮下に停車。列車の交換は無かったが、数名の乗車があった。

 

会津宮下を出てしばらくすると、「第二只見川橋梁」を渡った。

渡河直後に、会津西方に停車。会津宮下駅に続いて、カメラのピントが前面ガラス窓に合ってしまった。

三島町の雪祭り(第52回雪と火のまつり)は、来週土曜日(15日)に開催予定。今年から、この駅最寄りの町交流センター「山びこ」前広場に会場が変更になった。昨年まで使っていた町民運動場が、県立宮下病院の移転先になり工事が始まるためだ。

 

会津西方を出て名入トンネルを抜けると、「第一只見川橋梁」を渡った。

上流側、駒啼瀬の右岸上方にある送電鉄塔に向けて、カメラをズームにすると....、

「第一只見川橋梁ビューポイント」の最上段Dポイントには、2人の“撮る人”の姿があった。

 

16:10、会津桧原に停車。

 

滝谷川橋梁」を渡り、柳津町に入った。

渡河直後に、滝谷に停車。 

 

16:18、郷戸に停車。ここでも、前面ガラス窓にピントが合ってしまった。

 

郷戸を出て、まもなく“Myビューポイント”を通過。左車窓から振り返ると、西陽に稜線を浮かべた「飯谷山」(783m、同86座)がくっきりと見えた。

 

16:26、会津柳津に停車。

ここで、会津川口駅から乗り込んだ多くのツアー客が降りた。駅頭に付けられていた観光バスに乗り込み、次の目的にに移動するようだった。

今年の柳津町の「第45回会津柳津 冬まつり」は、昨日(1日)に無事に終了した。

この模様は、今日の朝刊一面で報じられていた。*下記事出処:福島民報 2025年2月2日(日)付け

  

16:30、会津坂下町に入った列車は、会津坂本に停車。

貨車駅舎に描かれた「キハちゃん」が、西陽を浴びを浴びながらニッコリと微笑んでいた。*参考:会津坂下町「只見線応援キャラクター誕生!!」(2015年3月13日) https://www.town.aizubange.fukushima.jp/soshiki/2/3337.html / YouTube「キハちゃんねる」URL: https://www.youtube.com/channel/UChBGESkzNzqsYXqjMQmsgbg

 

会津坂本を出てまもなく、木々の間の“坂本の眺め”から、「飯豊山」(2,105.2m、同3座、日本百名山19座) を持つ「飯豊連峰」を見る事ができた。*参考:公益財団法人 福島県観光物産交流協会「ふくしま30座」飯豊山  https://tif.ne.jp/yamafuku/mt30/18.html

 

16:36、七折峠の中の塔寺に停車。

塔寺を出てまもなく、木々の間からは会津平野が見通せた。

そして、“七折越え”を終えた列車は、奥会津から会津平野に滑り込んだ。前方には、山頂付近が真っ白に冠雪した、「磐梯山」(1,816.2m、同18座、日本百名山22座)がはっきりと見えた。

右車窓からも、田園に広がるなめらかな雪原が見渡せた。

 

16:43、会津坂下に停車。列車の交換は行わず、まもなく出発。

 

会津坂下を出て、列車が進路を東から南に変えた。右車窓から西部山地の北側低山帯に沈む陽が見えた。

左車窓からは、雪原越しに「磐梯山」が見えた。

 

16:48、若宮に停車。正面には「神籠ヶ岳」(1,376.3m、同42座)を頂点とする山並みが見えた。

 

16:51、会津美里町に入った列車は、防風林に囲まれた新鶴に停車。

 

16:54、根岸に停車。只見線はこの区間、ほぼ真南に一直線に進むため、「神籠ヶ岳」の山並みは変わらず見え続けていた。

 

根岸を出て、右車窓から西部山地を眺めると、落陽が「明神ヶ岳」(1,074m、同61座)を光背のように浮かび上がらせていた。

 

17:00、“高田 大カーブ”で、進路を再び東に変えた列車が会津高田に停車。

会津高田を出てまもなく、宮川を渡河中に、右車窓からは「明神ヶ岳」と同じく“遷座三峰”の「博士山」(1,481.9m、同33座)が確認できた。

左の車窓からは、薄っすら茜色に染まった層に、「飯豊連峰」の雄大な稜線が浮かび上がっていた。

  

17:05、会津若松市に入った直後に、会津本郷に停車。

会津本郷出発して大川を渡ると、上流側に「大戸岳」(1,415.9m、同36座)の山塊が見えた。

  

17:11、列車は市街地に入り進み、西若松に停車。小出行きの最終列車と交換を行った。

 

17:19、6分停車した西若松を出て、まもなく七日町に停車。

 

七日町を出て、住宅地の間を駆けた列車が減速すると、終点を告げる車内放送が流れた。先頭扉上に設置された運賃表は、会津若松駅以外、全ての爛が埋まっていた。

 


17:24、終点・会津若松に到着。冬景色を見る只見線の旅が無事に終わった。私も多くの客に続いて跨線橋を渡り、磐越西線の列車に乗り換えて、自宅のある郡山に帰った。

  


*追記:2025年2月8日(土)

会津若松市では、「会津 絵ろうそくまつり -ゆきほたる-」が2月7日・8日の両日に開催予定だった。

しかし、大雪の影響で中止となってしまった。下記事出処:福島民報 2025年2月8日(土)付け、1面と社会面 *筆者にて一部モザイク加工等


 

 

(了)

 

 

・  ・  ・  ・  ・

*参考: 

・福島県 :只見線管理事務所(会津若松駅構内)

・東日本旅客鉄道株式会社:「只見線について」(PDF)(2013年5月22日)/「只見線(会津川口~只見間)の鉄道復旧に関する基本合意書及び覚書」の締結について(PDF)(2017年6月19日)

・福島県:平成31年度 包括外部監査報告書「復興事業に係る事務の執行について」(PDF)(令和2年3月) p140 生活環境部 生活交通課 只見線利活用プロジェクト推進事業

 

【只見線への寄付案内】

福島県はJR只見線全線復旧後の「上下分離」経営での維持費や集客・地域振興策の実施費用として寄付を募集中(クレジット可)。

 ①福島県ホームページ:只見線復旧復興基金寄附金

・只見線応援団加入申し込みの方法

*現在は只見線ポータルサイト「只見線応援団」URL:https://tadami-line.jp/support/


②福島県:企業版ふるさと納税

URL:https://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/16005g/kigyou-furusato-zei.html

[寄付金の使途]

(引用)寄附金は、只見線を活用した体験型ツアーや周遊ルートの整備、只見線関連コンテンツの充実化等に活用させていただきます。 沿線地域における日本一の秘境路線と言われる観光資源を活用し、更なる利用者の拡大と認知度向上を図ります。


以上、宜しくお願い申し上げます。


次はいつ乗る? 只見線

東日本大震災が発生した2011年の「平成23年7月新潟福島豪雨」被害で一部不通となっていたJR只見線は、会津川口~只見間を上下分離(官有民営)し、2022年10月1日(土)、約11年2か月振りに復旧(全線運転再開)しました。 このブログでは、車窓から見える風景写真を中心に掲載し、“観光鉄道「山の只見線」”を目指す只見線の乗車記や「会津百名山」等の山行記、利活用事業に対する私見等を記します。

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